作業療法士向け認知症介入|紙面課題の選定と運用

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作業療法士の認知症介入で紙面課題を使うときは「選定基準」と「運用条件」を先に固定します

認知症への介入で紙面課題(ドリル)を使う場面は多いですが、課題の種類を増やすだけでは実施が安定しません。先に「誰に、どの条件で、何分、どの手がかりで行うか」を固定すると、介入の再現性が上がります。結果として、担当者が変わっても同じ質で回しやすくなります。

本記事では、作業療法士が現場で使えるように、適応判断、実施手順、難易度調整、記録、再評価までを 1 本のフローで整理します。認知機能の訓練を「やった」で終わらせず、生活場面へつなぐ設計を重視します。

紙面課題の選定フロー|まず適応と目的を一致させます

紙面課題の選定は、課題の見た目より「介入目的」との一致が優先です。見当識の維持、注意の持続、手順化の支援など、狙う機能を先に決めると、課題選択の迷いが減ります。加えて、視覚・聴覚・上肢機能・易疲労性を確認し、実施可能性を担保します。

評価の全体像は評価ハブで整理してから選定に入ると、根拠のある運用になりやすいです。本記事の実務上の要点は「適応判断→短時間実施→記録→再評価」の循環を切らさないことです。

選定時にそろえる 5 項目

紙面課題の選定で最初に固定する 5 項目
項目 確認内容 実務メモ
目的 見当識・注意・記憶・遂行機能のどれを狙うか 1 セッション 1 目的に絞ると運用が安定
適応 覚醒、理解、視覚・聴覚、疼痛、疲労 実施前に 30 秒でスクリーニング
条件 時間、座位耐久、環境刺激、実施場所 同条件で再評価できるよう固定
手がかり 口頭提示、視覚提示、部分介助の量 手がかり量を記録して次回調整
出口 生活場面にどう接続するか 服薬・予定確認・買い物などへ橋渡し

運用プロトコル|導入 5 分 → 実施 10〜15 分 → 振り返り 3 分

紙面課題は、短時間で実施条件を統一すると再現性が高まります。目安は導入 5 分、実施 10〜15 分、振り返り 3 分です。導入で目的共有、実施で手がかり量の調整、振り返りで「できた点」を本人と共有すると、拒否や不安の軽減につながります。

この流れは単発より反復で効果を発揮します。週内の頻度や負荷を固定し、変えるのは 1 変数ずつにすると、変化の解釈がしやすくなります。運用設計の近接テーマは評価フレームの作り方も参考になります。

難易度調整の原則

難易度調整の実務ルール(易→難)
調整軸 易しい設定 難しい設定
課題量 設問数を少なくする 設問数を増やす
刺激密度 余白を広く、刺激を減らす 刺激を密にする
時間制約 制限時間なし 制限時間あり
手がかり 口頭・視覚ヒントを多め ヒント最小限

現場の詰まりどころ|よくある失敗と回避策

現場で詰まりやすいのは「課題が難しすぎる」「正答率しか見ない」「生活へ接続しない」の 3 点です。課題難易度が合わないと、拒否や疲労が先行して介入継続が難しくなります。正答率だけでなく、集中持続時間や手がかり量を合わせて評価することが重要です。

また、机上での達成を生活に転写する工程がないと、介入の価値が伝わりにくくなります。実施後に「次にどの生活行為へつなぐか」を毎回 1 つ決めるだけでも、チーム共有がしやすくなります。

紙面課題で起こりやすい失敗と修正ポイント
よくある失敗 起きる理由 回避策 記録ポイント
難しすぎる課題を選ぶ 目的より課題の見た目で選定 1 段階易しい設定から開始 中断理由、疲労サイン
正答率のみで評価 経過比較の軸が不足 手がかり量と集中時間を併記 ヒント回数、完遂時間
生活に結びつかない 出口設計がない 毎回 1 つ生活課題へ接続 IADL での変化メモ

記録の型|SOAP に落とせる最小テンプレ

紙面課題の記録は、簡潔でも再評価に使える項目を残すことが重要です。主観(拒否感・不安)、客観(課題量・手がかり量・完遂時間)、評価(実施条件下での達成度)、計画(次回の調整点)を固定すると、担当変更時の引き継ぎが滑らかになります。

とくに「同条件で取り直せる設計」にしておくと、介入効果の解釈がぶれにくくなります。評価値だけでなく、実施条件の記録をセットで残すのが実務上のコツです。

SOAP ミニテンプレ(例)

  • S:開始時に「難しそう」と発言。途中離席なし。
  • O:注意課題 12 問、10 分実施、口頭ヒント 3 回で完遂。
  • A:同程度難易度なら継続可能。視覚提示を増やすと安定。
  • P:次回は刺激密度をやや下げ、生活課題(服薬確認)へ接続。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

紙面課題は毎日実施したほうがよいですか?

毎日固定が必須ではありません。重要なのは、同じ条件で再評価できる頻度と時間を決めることです。週内で 2〜5 回など、施設運用に合わせて固定し、変更は 1 変数ずつ行うと解釈しやすくなります。

拒否がある日は中止すべきですか?

無理に継続するより、負荷を下げるか非紙面課題へ切り替えるほうが安全です。拒否の背景(疲労・不安・環境刺激)を記録し、次回条件の調整材料にします。

正答率が低いときは失敗と判断しますか?

正答率のみで判断しません。集中持続時間、ヒント量、離席の有無、終了後の表情などを含めて評価すると、介入継続の可否を実務的に判断できます。

机上課題を生活場面へつなぐコツはありますか?

毎回「次に使う生活行為」を 1 つだけ決めることです。予定確認、服薬手順、買い物メモなど、日常の意思決定に接続すると効果の実感が得られやすくなります。

次の一手

まずは本記事の選定フローを、あなたの病棟・通所の標準手順として 1 枚に要約してみてください。運用が整うと、課題の種類を増やす前に介入の質が安定します。

環境要因(教育体制・記録文化・人員)まで含めて働き方を点検したい場合は、マイナビコメディカルの無料チェックシートも次の判断材料になります。

参考文献

  • World Health Organization. Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. 2019. WHO guideline
  • Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396(10248):413-446. DOI
  • 日本作業療法士協会. 認知症の人の生活行為向上マネジメント関連資料(参照時点の最新版を確認). 公式サイト

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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