動作分析のやり方|観察から仮説・記録につなげる基本

評価
記事内に広告が含まれています。

動作分析のやり方|観察した事実から仮説・評価・記録へつなげる

動作分析では、見た動きをそのまま原因と決めつけず、観察した事実→原因仮説→追加評価・条件変更→再評価→記録の順で考えることが重要です。「立ち上がりで右へ傾く」ことは事実ですが、「左下肢筋力が弱い」はまだ仮説です。

この記事では、立ち上がり・着座・方向転換・階段などに共通して使える動作分析の考え方を、観察条件のそろえ方、事実の書き方、仮説の検証、記録まで一続きで整理します。個別動作の細かな相分けより、次に何を評価すればよいか判断できることを重視します。

基本動作をどの評価から確認するか迷う場合は、先に基本動作の評価・観察ハブで全体像を確認してください。

動作分析は「観察→仮説→検証→再評価」で進めます

動作分析の中心は、異常な動きを探すことではなく、目的とする動作のどこで何が起こり、それを説明する仮説をどう確かめるかです。観察だけで原因を確定せず、必要な理学療法評価や条件変更を組み合わせて仮説を更新します。

動作分析の基本フレーム図
動作分析の基本フレーム
段階 確認すること 次に残す情報
1. 条件設定 どの課題を、どの環境・介助条件で見るか 比較できる観察条件
2. 動作観察 いつ・どこで・どのような動きが起きたか 解釈を含まない事実
3. 問題局面の特定 動作のどの局面が課題達成を妨げているか 優先して分析する局面
4. 仮説形成 事実を説明し得る要因は何か 確認すべき原因候補
5. 検証 追加評価や条件変更で仮説と整合するか 仮説を支持・否定する情報
6. 再評価 同じ条件または意図した条件で何が変わったか 次回比較できる所見

この流れで重要なのは、最初から原因を当てることではありません。仮説と検証結果が一致しなければ、もう一度動作を観察して別の仮説を考えます。

最初に観察条件をそろえて比較できる状態を作ります

同じ人でも、開始姿勢、支持物、介助量、環境、指示、速度が変われば動作は変化します。そのため、動作の違いを本人の機能だけで説明する前に、何の条件で観察した所見なのかを明確にします。

動作分析前に確認したい観察条件
条件 確認例 記録例
課題 立ち上がり、着座、移乗、方向転換など 通常の椅子から立ち上がり
開始姿勢 座位姿勢、足部位置、立位姿勢など 両足底接地、足部左右対称
環境 座面高、床面、履物、段差など 座面高42cm、普段の靴を使用
支持・介助 手すり、杖、上肢支持、介助量 上肢支持なし、見守り
指示 通常速度、できるだけ速く、自由な方法など 「普段どおり立ってください」と指示

すべての動作で同じ条件項目を使う必要はありません。立ち上がりなら座面高や足部位置、歩行なら歩行補助具や履物、階段なら段差高や手すりなど、その動作に影響する条件を記録して再現できることがポイントです。

観察では「原因」ではなく見えた事実を書きます

動作観察で最も分けたいのが、観察できた事実と、その理由についての解釈です。「筋力不足」「バランス低下」「恐怖心」は肉眼で直接観察できる事実ではなく、所見から考えた仮説です。

事実と仮説を分ける例
観察した事実 この時点では仮説
立ち上がりで離殿前から体幹が右へ偏位する 左下肢筋力低下、左下肢痛、荷重への不安など
立位直後に後方へ1歩踏み出す 前方への重心移動不足、足関節戦略の問題など
方向転換時に歩数が増え、動作速度が低下する バランス能力、運動計画、疼痛、恐怖など
階段降段時に患側立脚時間が短い 疼痛、支持性低下、遠心性制御の問題など

「ふらつく」「ぎこちない」「不安定」といった表現だけでは、次回に同じ所見を比較しにくくなります。可能な範囲で、いつ、どの部位が、どの方向へ、どのように変化したかまで記述します。

次に「どの局面で問題が起きたか」を絞ります

動作全体を一度に分析すると、所見と原因候補が増えすぎます。まず、課題達成に影響している局面を絞ってから詳しく見ると、追加評価を選びやすくなります。

ただし、すべての基本動作を「準備→移行→出力→再安定」のような同一の4相で分類する必要はありません。動作ごとに研究上・臨床上用いられる相分けが異なるため、対象とする動作に適した区切り方を使用します。

たとえば立ち上がりでは、離殿前後を含む複数の局面に分けて運動学・運動力学を検討した研究があります。一方、方向転換や階段では見るべきイベントが異なります。そのため本記事では相の名称を固定せず、まず「問題が出現し始める時点」と「その後どう変化するか」を確認します。

観察した事実から原因仮説を立てます

問題となる局面を絞ったら、観察事実を説明できる要因を考えます。候補には、関節可動域、筋力、感覚、疼痛、姿勢制御、バランス、運動学習、認知機能、恐怖、環境条件などがあります。

ここで重要なのは、1つの所見と1つの機能障害を機械的に結びつけないことです。同じ体幹偏位でも、疼痛回避、支持性、感覚、課題条件など複数の要因で生じる可能性があります。

観察所見から追加評価へ進む考え方
観察所見 考えられる仮説例 追加確認の例
一側への荷重回避 疼痛、筋力、感覚、恐怖など 疼痛、荷重量、筋力、感覚、別条件での動作
前方への移動不足 開始姿勢、可動域、運動戦略など 足部位置、関節可動域、座面条件
動作後のふらつき 姿勢制御、支持基底面、速度など 静的・動的バランス、速度条件、支持物

仮説が複数ある場合は、すべてを同時に評価する必要はありません。安全性、所見との整合性、確認しやすさを踏まえて優先順位をつけ、結果に応じて次の仮説へ進みます。

追加評価と条件変更で仮説を検証します

動作分析は、観察しただけでは終わりません。仮説に対応する理学療法評価を行い、必要に応じて開始姿勢、支持物、速度などの条件を変え、動作がどう変化するか確認します。

たとえば、立ち上がり時の左右偏位に対して足部位置を変更し、偏位が減ったとします。この結果は、足部条件が動作に影響したことを示す情報にはなりますが、それだけで筋力低下や疼痛など特定の原因を確定できるわけではありません。

条件変更は診断そのものではなく、仮説を検討するための情報として扱います。変化しなければ仮説を見直し、別の評価・条件から再検討します。

再評価では「何が変わったか」を同じ条件で比較します

介入前後を比べるときは、できるだけ観察条件をそろえます。開始姿勢、支持物、介助量、指示などが変わっていると、介入による変化なのか条件差なのか判断しにくくなるためです。

再評価では「できた・できない」だけでなく、次のような変化を確認します。

  • 問題となる所見が出現する時点
  • 偏位や代償の方向・程度
  • 必要な支持・介助量
  • 動作速度や停止の有無
  • 疼痛や不安など本人の反応
  • 課題終了後に安定して次の動作へ移れるか

条件を意図的に変えて比較した場合は、「何を変えたか」もセットで残します。これにより、次回の評価で同じ条件を再現しやすくなります。

記録は「条件・事実・仮説・確認結果・次回」を分けます

動作分析の記録では、観察事実と解釈を同じ文の中で混ぜないことが重要です。長文にするよりも、何を見て、何を疑い、何を確認し、その結果どう考えたかが追える形を優先します。

動作分析の記録例
項目 記録例
条件 座面高42cm、上肢支持なし、見守りで立ち上がり
事実 離殿前から体幹・骨盤が右へ偏位し、立位直後まで持続
仮説 左下肢への荷重回避が関与している可能性
確認 左下肢痛、足部位置、筋力、感覚を確認。足部位置変更時の動作も比較
結果 足部位置変更後も偏位は残存。左膝痛の訴えあり
次回 疼痛条件と左右荷重の変化を再評価する

SOAPで記録する場合も、同じ考え方を使えます。観察した動作をO、そこから考えた仮説や統合・解釈をA、次に確認・介入する内容をPとして整理すると、事実と推論を分けやすくなります。

30秒・5分は標準手順ではなく、情報を絞るための実務上の目安です

限られた時間で動作を見る場合、観察時間を区切る方法は情報を整理する助けになります。ただし、「30秒で観察する」「側面を20秒、正面を10秒見る」「5分で完結する」ことが標準化された動作分析の方法というわけではありません。

短時間で整理したい場合は、時間そのものより次の順番を保つことを優先します。

  1. 観察する課題と条件を決める
  2. 動作全体を見て、問題が出る局面を絞る
  3. 必要な方向からもう一度確認する
  4. 観察事実から原因候補を考える
  5. 追加評価または1つの条件変更で確かめる
  6. 反応と次回の再評価点を記録する

事実を3点、仮説を1つなどと機械的に制限する必要もありません。所見が多いときに優先順位をつける実務上の工夫として使い、必要な情報まで削らないことが重要です。

動作分析で避けたいのは「観察した瞬間に原因を決める」ことです

動作分析では、所見をたくさん列挙することより、観察と解釈を分けて検証できる形にすることが重要です。特に次のような進め方では、原因を誤って固定しやすくなります。

動作分析で起こりやすい失敗と修正方法
失敗 問題点 修正方法
「右へ傾く=左筋力低下」と決める 事実と原因仮説が混ざる 偏位を事実として記載し、筋力・疼痛・感覚などを確認する
全身の所見を同時に並べる どこが課題達成を妨げているか分からない 問題が始まる局面を先に絞る
複数条件を一度に変更する 何が動作変化に関与したか分からない 検証目的を決めて条件を変更する
条件変更で改善したら原因確定とする 機能障害との因果を言い過ぎる 条件変更の反応と追加評価を統合する
介入後だけ良い条件で評価する 介入前後を比較できない 同一条件での再評価と条件変更時の評価を分ける

個別動作では、その動作に合った相分けと評価へ進みます

このページで扱っているのは、動作分析に共通する臨床推論のフレームです。実際には、立ち上がり、着座、方向転換、階段などで観察すべきイベントや影響因子が異なります。

まず具体例でこの流れを当てはめたい場合は、立ち上がりの動作分析で、開始条件・離殿前後の所見・原因仮説・条件変更のつなげ方を確認してください。

よくある質問

Q1. 動作分析では最初にどこを見ればよいですか?

最初から関節ごとに細かく見るのではなく、まず観察する課題と条件を確認し、動作全体のどの局面で問題が出始めるかを見ます。その後、問題となる局面を必要な方向から詳しく確認すると、所見を整理しやすくなります。

Q2. 動作を見ただけで筋力低下などの原因を判断できますか?

観察だけで特定の機能障害を確定することは避けます。体幹偏位や荷重回避などを観察事実として記載し、関節可動域、筋力、疼痛、感覚、バランスなど必要な評価を追加して仮説を検証します。

Q3. 条件を変えて動作が良くなれば、その条件が原因だったと考えてよいですか?

条件が動作に影響したことを示す情報にはなりますが、それだけで機能障害の原因を確定することはできません。条件変更による反応と、追加した理学療法評価の結果を統合して判断します。

次の一手

動作分析では、観察した所見を増やすことより、条件をそろえる→事実を書く→問題局面を絞る→仮説を立てる→評価・条件変更で確かめる→再評価するという流れを保つことが重要です。


参考文献

  1. Tyrell CM, Judd D, Riley N, Hedman LD, Kleinschmidt L, Doyle L, et al. Movement Analysis of Tasks: An Update From the Academy of Neurologic Physical Therapy’s Taskforce. J Neurol Phys Ther. 2026;50(2):96-107. doi: 10.1097/NPT.0000000000000542
  2. 鈴木俊明, 西守隆. 動作観察・動作分析. 関西理学療法. 2003;3:33-39. doi: 10.11354/jkpt.3.33
  3. 藤澤宏幸, 伊橋光二, 臼田滋, 対馬栄輝, 田中敏明. 臨床における運動・動作分析の科学的検証―体系化に向けて―. 理学療法学. 2004;31(8):483-488. doi: 10.15063/rigaku.KJ00003365991
  4. 江原皓吉. 動作分析の見方について. 理学療法科学. 1993;8(3):141-146. doi: 10.1589/rika1986.8.141
  5. Frykberg GE, Häger CK. Movement analysis of sit-to-stand—research informing clinical practice. Phys Ther Rev. 2015;20(3):156-167. doi: 10.1179/1743288X15Y.0000000005
  6. Janssen WGM, Bussmann HBJ, Stam HJ. Determinants of the sit-to-stand movement: a review. Phys Ther. 2002;82(9):866-879. doi: 10.1093/ptj/82.9.866

著者情報

rehabilikun(理学療法士)のアイコン

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、臨床で判断・実践するための情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

運営者プロフィール / 編集・引用ポリシー / お問い合わせ