動作分析のやり方|30 秒観察から記録まで型化
動作分析は、きれいなフォームを探す作業ではなく、事実→仮説→次の一手を短時間で回し、次の評価・介入・記録につなげるための臨床推論です。この記事では、歩行だけでなく、立ち上がり・着座・方向転換・階段などにも使える共通フレームを整理します。
読むことで、どの条件をそろえ、何を 30 秒で観察し、どのように 1 行で記録するかが決まります。細かい運動学の暗記よりも、現場で再現しやすい「観察の順番」と「記録の型」を優先します。
現場の詰まりどころは「見すぎ」と「書きすぎ」です
新人が動作分析で詰まりやすい原因は、知識不足だけではありません。見たい項目が多すぎる、仮説が複数ある、条件を同時に変える、記録が長くなるという運用上の問題で、チームに共有されにくくなります。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
評価・記録・報告の型をまとめて整理したい方へ
動作分析では「事実→仮説→次の一手」だけ決めます
動作分析の入口は、観察項目を増やすことではなく、条件をそろえ、事実を 3 点まで拾い、仮説を 1 つに絞り、次に試すことを 1 つ決めることです。これだけで、所見が散らばりにくくなります。
たとえば「立ち上がりで不安定」だけでは、次に何をするかが決まりません。「移行相で健側へ偏る」「疼痛回避を疑う」「足幅を少し広げて変化を見る」まで書くと、再評価につながります。
最初に固定する条件は 4 つです
動作の質は、本人の能力だけでなく環境条件でも変わります。最初に確認するのは、椅子高さ・足底・支持物・速度です。ここをそろえないまま原因を考えると、筋力低下・バランス低下・恐怖心が混ざって見えます。
| 条件 | 見るポイント | 記録に残す例 |
|---|---|---|
| 椅子高さ | 低すぎると代償が増えやすい | 座面高を統一して比較 |
| 足底 | 滑り・踵浮き・足位置を確認 | 足底接地を修正後に再観察 |
| 支持物 | 手すりや机で安定が変わるか | 手すり軽接触でふらつき軽減 |
| 速度 | 速すぎる動作で崩れていないか | ゆっくり実施で移行相が安定 |
30 秒観察は側面 20 秒、正面または後方 10 秒で見ます
観察時間を長くするより、視点を固定する方が所見はまとまります。まず側面で相を決め、最後に正面または後方で左右差を確認します。最初から全方向を見ようとしないことがポイントです。
| 時間 | 視点 | 見ること | 決めること |
|---|---|---|---|
| 0〜20 秒 | 側面 | 準備・移行・出力・再安定 | どの相で崩れるか |
| 20〜30 秒 | 正面または後方 | 左右差・骨盤・膝・足幅 | 左右差が主因か |
フェーズは「準備→移行→出力→再安定」で分けます
動作名が変わっても、観察の骨格は共通化できます。どの相で止まるかを先に決めると、介入の狙いが 1 つに絞れます。
| フェーズ | 目的 | よくあるズレ | 最初に試すこと |
|---|---|---|---|
| 準備 | 出力しやすい姿勢を作る | 足が遠い、姿勢が崩れる | 足位置・座面・支持物を調整 |
| 移行 | 重心を次相へ移す | 反動が強い、左右差が出る | 速度を落として再確認 |
| 出力 | 推進・伸展・制動を出す | 膝だけ、体幹だけに偏る | 支持物の有無で変化を見る |
| 再安定 | 止まって次動作へ移れる | ふらつく、ステップで逃げる | 止まる課題だけに分ける |
5 分フローで観察から記録まで回します
臨床では、長い分析よりも短く再現できる手順が重要です。以下の 5 分フローで、観察・仮説・修正・記録を 1 セットにします。
| 順番 | やること | 出す結論 |
|---|---|---|
| 1 分目 | 条件を固定する | 比較できる状態にする |
| 2 分目 | 側面で相を決める | どこで崩れるか決める |
| 3 分目 | 正面・後方で左右差を見る | 左右差の有無を決める |
| 4 分目 | 変数を 1 つだけ変える | 何で変わるか確認する |
| 5 分目 | 1 行で記録する | 次回の再評価点を残す |
動作分析 5 分フロー記録シート
上の 5 分フローをそのまま臨床で使えるように、A4 1 枚の記録シートにまとめました。条件固定、観察、仮説、1 手だけ変えた反応、次回の再評価点を 1 枚で残せます。
中身をプレビューする
よくある失敗は「全部見る」「全部書く」「同時に変える」です
動作分析が共有されない原因は、観察技術そのものよりも運用にあります。所見を増やすほど、チーム内では何を優先すべきか伝わりにくくなります。
| 失敗 | なぜ困るか | 回避策 |
|---|---|---|
| 見たい項目が多すぎる | 結論が出ない | 事実は 3 点までに絞る |
| 仮説が多すぎる | 検証できない | 仮説は 1 つにする |
| 条件を同時に変える | 何が効いたか不明になる | 変数は 1 つだけ変える |
| 記録が長い | 次回の比較点が残らない | 相・事実・仮説・反応で 1 行にする |
回避手順は「条件→相→変数→反応」です
迷ったときは、能力評価へ進む前に、条件と相を先に確認します。条件をそろえずに筋力やバランスだけを原因にすると、介入の優先順位がずれやすくなります。
- 条件を固定する:椅子高さ、足底、支持物、速度をそろえる
- 相を決める:準備、移行、出力、再安定のどこで崩れるかを見る
- 変数を 1 つ変える:足位置、足幅、支持物、速度、声かけのどれか 1 つにする
- 反応を書く:できた・できないではなく、何が変わったかを残す
記録テンプレは 1 行で共有します
記録は、長いほど丁寧とは限りません。動作分析では、相+事実+仮説+修正結果を 1 行にまとめると、次回の再評価点が明確になります。
| 型 | 記録例 |
|---|---|
| 相+事実 | 移行相で健側偏位が強い |
| 仮説 | 患側荷重への恐怖と疼痛回避を疑う |
| 修正結果 | 足幅を指 2 本分広げるとふらつき軽減 |
| 1 行完成形 | 移行相で健側偏位あり。患側荷重への恐怖を疑い、足幅を指 2 本分広げるとふらつき軽減。次回は支持物条件で比較。 |
動作別記事ではこの型を各論に落とします
このページは共通フレームです。個別動作では、同じ型を使いながら、観察ポイントと修正例を具体化します。
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 動作分析では最初に何を見ればいいですか?
最初は条件を固定します。椅子高さ、足底、支持物、速度をそろえたうえで、側面から相を決めます。事実は 3 点まで、仮説は 1 つ、変える条件も 1 つにすると整理しやすくなります。
Q2. 「筋力がない」で止まるときはどうしますか?
出力の前に、足位置、座面、支持物、速度を確認します。条件変更だけで動作が変わる場合は、筋力だけでなく環境条件や恐怖心の影響も考えます。
Q3. 所見が長くなるときの対策はありますか?
相、事実、仮説、修正結果の 4 要素に絞ります。「移行相で健側偏位あり。疼痛回避を疑い、足幅調整でふらつき軽減」のように 1 行で残すと、共有と再評価がしやすくなります。
Q4. 評価と練習が混ざってしまいます。
まず同じ条件で 2 回観察し、その後に 1 つだけ条件を変えて反応を見ます。評価パートと練習パートを分けると、何で変わったのかを記録しやすくなります。
Q5. 動画を使う場合の最小ルールはありますか?
側面 1 本、正面または後方 1 本に絞り、角度・距離・速度をそろえます。比較するときは、同じ条件の動画同士を並べ、変えた条件を記録に残します。
次の一手
参考文献
- Baker R. Gait analysis methods in rehabilitation. J Neuroeng Rehabil. 2006;3:4. doi: 10.1186/1743-0003-3-4
- Janssen WGM, Bussmann HBJ, Stam HJ. Determinants of the sit-to-stand movement: a review. Phys Ther. 2002;82(9):866-879. doi: 10.1093/ptj/82.9.866
- Etnyre B, Thomas DQ. Event standardization of sit-to-stand movements. Phys Ther. 2007;87(12):1651-1666. doi: 10.2522/ptj.20060378
- Guralnik JM, Simonsick EM, Ferrucci L, et al. A short physical performance battery assessing lower extremity function. J Gerontol. 1994;49(2):M85-M94. doi: 10.1093/geronj/49.2.M85
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


