腓骨神経麻痺(腓骨頭)とは?|下垂足を評価・装具・再発予防につなげる
関連:下垂足の鑑別フロー
関連:腓骨神経麻痺の局在推定
関連:下垂足の装具( AFO )選定
腓骨神経麻痺は、総腓骨神経が腓骨頭周囲で圧迫・牽引・外傷などを受け、足背屈・趾伸展・外反が低下する末梢神経障害です。結果として、つま先が上がりにくい下垂足、足背のしびれ、つまずき、ハイステップ歩行などが問題になります。
この記事では、腓骨神経麻痺のなかでも腓骨頭周囲の圧迫を疑う場面に絞り、評価の最小セット、装具を含めたリハの順番、再発予防、記録の型を整理します。腰椎由来との詳しい鑑別は、下垂足は腓骨神経麻痺?それとも L5?【比較・使い分け】で確認できます。
結論:運動 3 筋+感覚 1 点で腓骨分布を作る
腓骨神経麻痺を疑うときは、検査を増やす前に足背屈( TA )・母趾背屈( EHL )・外反の 3 つを固定して確認します。感覚は、まず第 1 趾間(深腓骨神経領域)を代表点として記録すると、局在の整理がしやすくなります。
この分布がそろえば、腓骨頭周囲の圧迫歴、歩行時の足クリアランス、装具の必要性、再発予防までつなげやすくなります。反対に、分布がそろわない、疼痛が強い、内反や他筋まで巻き込む場合は、L5 神経根障害など他の原因も含めて共有・相談を優先します。
現場の詰まりどころ:迷ったら固定セットに戻す
下垂足の現場で詰まりやすいのは、評価が増えすぎる、装具判断が遅れる、代償歩行が固定するの 3 つです。迷ったら「何を追加するか」ではなく、最小評価セットに戻して、腓骨分布がそろうかを確認します。
- よくある失敗:背屈だけで判断しない
- リハの型:圧迫回避→ ROM →装具→筋再教育→歩行課題
- 関連:装具( AFO )で歩行を成立させる考え方
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
5〜8 分で終わる最小評価セット
| 順番 | みる項目 | 狙い | 記録の型 |
|---|---|---|---|
| ① 病歴 | 脚組み、膝外側への圧、長時間の同一肢位、ギプス・装具の当たり | 圧迫の起点を探す | 「脚組み多い」「装具の腓骨頭部に当たりあり」 |
| ② 運動 3 筋 | TA、EHL、外反 | 腓骨神経領域の運動分布を作る | 「TA 2、EHL 2、外反 3」 |
| ③ 感覚 1 点 | 第 1 趾間 | 深腓骨神経領域の確認 | 「第 1 趾間の触覚低下あり」 |
| ④ 歩行観察 | 足クリアランス、つまずき、ハイステップ、方向転換 | 装具・課題練習の必要性を判断 | 「50 m 歩行でつまずき 2 回」 |
| ⑤ 圧迫部位 | 腓骨頭周囲の圧痛、発赤、装具の当たり | 再発予防につなげる | 「腓骨頭外側に圧痛あり」 |
問診:腓骨頭への圧と長時間の同一肢位を拾う
腓骨頭周囲の腓骨神経は、骨と皮下組織の間を走るため外圧を受けやすい部位です。脚組み、ベッド上での膝外側への圧、長距離移動、ギプス・装具の当たり、急な体重減少などを具体的に確認します。
| 質問 | 拾いたい答え | 意味 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 脚を組む癖はありますか? | 長時間の脚組み、デスクワーク中の癖 | 腓骨頭への慢性圧迫 | 姿勢修正、座位環境調整 |
| 膝の外側が何かに当たっていませんか? | ベッド柵、車椅子、椅子の縁 | 局所圧の持続 | 除圧、クッション、ポジショニング |
| 装具やギプスの当たりはありますか? | 腓骨頭周囲の痛み、発赤、擦れ | 外圧性の悪化因子 | 当たり調整、パッド、早期共有 |
歩行観察:つまずきの場面と代償を言語化する
下垂足では、つまずきの有無だけでなく、どの場面で足先が引っかかるかを記録します。屋内は問題ないが屋外でつまずく、方向転換で足尖が引っかかる、疲労後にハイステップが強くなるなど、場面を分けると装具と練習課題を選びやすくなります。
記録では「下垂足あり」だけで終わらせず、足クリアランス低下、股関節過屈曲による代償、方向転換時のつまずき、装具あり/なしの差まで書くと、介入後の変化を追いやすくなります。
リハの型:圧迫回避→ ROM →装具→筋再教育→歩行課題
腓骨神経麻痺のリハは、まず圧迫を避け、歩行を安全に成立させる順番で組み立てます。背屈が弱いまま歩行練習だけを増やすと、ハイステップや分回しなどの代償が固定しやすくなります。
| 順番 | 目的 | 具体策 | 再評価 |
|---|---|---|---|
| ① 圧迫回避 | 神経への外圧を減らす | 脚組み中止、腓骨頭の除圧、装具の当たり調整 | しびれ・痛み・発赤の変化 |
| ② ROM | 底屈拘縮を予防する | 足関節背屈 ROM、腓腹筋・ヒラメ筋の短縮確認 | 背屈角度、初期接地 |
| ③ 装具 | 足クリアランスを確保する | AFO、背屈補助、靴の調整 | つまずき、歩行距離、疲労 |
| ④ 筋再教育 | 背屈・趾伸展を再学習する | 短時間反復、代償抑制、随意収縮の確認 | TA、EHL、外反の推移 |
| ⑤ 歩行課題 | 生活場面へつなげる | 段差、方向転換、屋外、疲労条件での練習 | 主訴場面での達成度 |
再発予防:腓骨頭に圧が乗る場面を 3 つ書き出す
圧迫性の腓骨神経麻痺は、原因場面が残ると再発しやすくなります。本人・家族に伝えるときは、専門用語よりも「膝の外側を長く押しつけない」「脚を組み続けない」「装具の当たりや赤みを放置しない」と具体化します。
| 場面 | 問題 | 対策 | 記録 |
|---|---|---|---|
| 脚組み | 腓骨頭への圧迫が続く | 脚を組まない、座位姿勢を変える | 頻度、最長時間 |
| 装具・ギプス | 局所圧、発赤、擦れ | 当たり調整、皮膚確認 | 発赤・痛みの有無 |
| 長時間同一肢位 | 圧迫が蓄積する | 体位変換、休憩、除圧 | 連続時間 |
よくある失敗:背屈だけで判断しない
| 失敗 | 起きること | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 背屈だけを見る | 局在が曖昧になる | TA、EHL、外反、第 1 趾間を固定 | 運動 3 筋+感覚 1 点 |
| 装具判断が遅れる | つまずきで歩行量が落ちる | 歩行成立を優先する | 装具あり/なしの差 |
| 代償歩行を放置する | ハイステップが固定する | 装具と筋再教育を併用する | 代償の出る場面 |
| 原因場面を残す | 再発しやすい | 腓骨頭に圧が乗る場面を 3 つ書く | 本人が説明できるか |
共有・相談の目安:分布が揃わないときは抱え込まない
腓骨神経領域として分布が揃わない、腰殿部痛が強い、内反や他筋も低下する、疼痛が強い、症状が進行する、数週間単位で改善が乏しい場合は、他の原因も含めて共有・相談します。医師へ伝えるときは、運動 3 筋、感覚 1 点、圧迫歴、歩行所見、装具あり/なしの差をまとめると、神経伝導検査や筋電図の相談につなげやすくなります。
よくある質問(FAQ)
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Q1. まず確認する筋はどれですか?
足背屈( TA )、母趾背屈( EHL )、外反の 3 つです。背屈だけでなく、趾伸展と外反を合わせると腓骨神経領域として整理しやすくなります。
Q2. 感覚はどこから見ればよいですか?
まず第 1 趾間を代表点として確認します。深腓骨神経領域の感覚低下があるかを固定して記録し、必要に応じて足背全体へ広げます。
Q3. 装具はいつ検討しますか?
つまずき、足クリアランス低下、疲労後の下垂足がある場合は早めに検討します。装具で歩行を成立させたうえで、筋再教育と生活場面の歩行課題へつなげます。
Q4. 腓骨頭圧迫を疑う病歴は何ですか?
脚組み、膝外側を当てる座位、長時間の同一肢位、ギプス・装具の当たり、急な体重減少などです。原因場面を拾うことが再発予防にもつながります。
Q5. L5 神経根障害との違いは何ですか?
腓骨神経麻痺では、TA、EHL、外反、第 1 趾間の低下がまとまり、腓骨頭への圧迫歴が拾えることがあります。分布が揃わない、腰殿部症状が強い、内反や他筋も巻き込む場合は、他の原因も含めて共有・相談します。
次の一手
この記事で腓骨頭周囲の評価とリハの流れを確認したら、次は鑑別と装具運用を分けて整理します。
- A:全体像を整える → 下垂足の鑑別フロー(脳卒中 vs 末梢)
- B:すぐ実装する → 下垂足の装具( AFO )選定と運用
参考文献
- 日本整形外科学会. 腓骨神経麻痺. 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
- Baima J, Krivickas L. Evaluation and treatment of peroneal neuropathy. Curr Rev Musculoskelet Med. 2008;1(2):147-153. doi: 10.1007/s12178-008-9023-6 / PMID: 19468889
- Marciniak C. Fibular (peroneal) neuropathy: electrodiagnostic features and clinical correlates. PM R. 2013;5(4):e41-e46. doi: 10.1016/j.pmrj.2012.08.016 / PMID: 23177035
- Lezak B, Massel DH, Varacallo M. Peroneal Nerve Injury. StatPearls. 2024-. NCBI Bookshelf
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


