障害年金(肢体)評価の要点| ROM・ ADL の整合を取る

制度・実務
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障害年金(肢体)の評価依頼が来たら: ROM ・ ADL の “整合” を先に作る

障害年金(肢体)の診断書作成では、医師が等級判断に必要な材料として、リハ職へ ROM(関節可動域)・筋力・巧緻性 と、日常生活動作の状態( ADL )の確認を求めることがあります。

肢体の機能の障害は、 ROM だけで決まりません。 ROM・筋力・巧緻性・速さ・耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する、とされています。つまり現場で重要なのは、数値を集める前に 「数値と ADL の整合」を取ることです。

評価の引き出しを増やしつつ、働き方の選択肢も整理すると迷いが減ります。

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障害年金(肢体)で求められやすい評価: 3 つの柱

依頼が来たら、まず「どの情報が等級判断に直結するか」を押さえます。評価は大きく 3 つの柱で整理すると回しやすくなります。

  • 身体機能(数値): ROM、筋力、巧緻性(指先・把持)、速さ、耐久性
  • 生活機能(場面):日常生活動作の状態(移動・更衣・排泄・入浴など)
  • 測定条件(解釈):疼痛、痙縮、装具、疲労、日内変動、代償動作

依頼が来たら最初に確認する 4 点

取り直しを減らすため、依頼者(医師・事務・ MSW )に最初に確認します。

  1. 目的:障害年金(肢体)か、他制度(手帳・介護保険)も同時か
  2. 期限:いつまでに、メモ/所定欄/口頭のどれで返すか
  3. 時点:現状、退院時、外来フォロー時など「いつの状態」か
  4. 制約:疼痛、痙縮、装具、体位、疲労、測定の中止基準

最小セット:まずは “主要 ROM +主要筋力+ ADL 3 場面”

最小セットを固定してから、必要時のみ追加します。忙しい現場ほど「最小セット→追加」の順が安全です。

障害年金(肢体)向け:評価の最小セット(目安)
領域 最小セット 追加の判断 返却の型
ROM 主要関節(障害部位に直結する運動を中心) 痛み・痙縮・拘縮が強い/左右差が大きいときは関連運動を追加 角度+測定条件(体位・他動/自動・制限因子)
筋力 主要筋群( MMT 等)+ “動作での実用性” 歩行・移乗に影響するなら下肢、巧緻性なら手指機能を深掘り 段差・立ち上がり・把持など 1 行所見を添える
巧緻性・速さ・耐久性 日常で困る “作業” を 1 ~ 2 例(書字、ボタン、つまみ、歩行継続など) 症状の変動が大きい/疲労で崩れるときは “再現性” を追加 できる/できない+時間・回数・疲労で変わるか
ADL 移動・更衣・入浴(または排泄)の 3 場面 生活上の主訴が別にあるとき(例:家事、買い物)を追加 手段+介助量+危険場面(転倒/痛み)

ROM を “書類に耐える” 形で返すコツ:条件が 8 割

障害年金の肢体の障害関係では、関節可動域の表示ならびに測定法を一定の方法で示し、障害認定業務を的確化・簡素化する意図が示されています。現場では「角度」だけでなく、測定条件を残すほど解釈が安定します。

評価の全体像(測定の標準化・記録の型)は、評価まとめ(ハブ)に集約しています。

ROM 返却メモ:最低限の “ 5 行 ”

  • 体位:背臥位/座位/立位 など
  • 運動:他動/自動(どちらで測ったか)
  • 制限因子:疼痛、痙縮、拘縮、恐怖、腫脹 など
  • 補助:固定、代償の抑制、介助の有無
  • 再現性:日内変動、疲労、実施回数

ADL は “短文” に落とす:できる/している/させている

障害年金(肢体)では、 ROM・筋力などの数値要素に加え、日常生活動作の状態から総合認定されます。つまり ADL の “書き方” が評価の芯になります。

ADL を短文で返すときの型(例)
場面 最小の書き方
移動 手段+監視/介助+危険場面 屋内は T 字杖で監視、方向転換でふらつき(転倒注意)
更衣 上衣/下衣で分ける 上衣は自立、下衣は立位保持不安で見守り必要
入浴 出入り/洗体/更衣に分解 浴槽出入りは手すり必須で監視、洗体は一部介助
排泄(必要時) 移動+動作+夜間 夜間は痛みで立位保持困難、トイレ移動に見守り必要

医師に返す「 1 枚メモ」テンプレ:数値+場面+注意点

返却は長文よりも「判断できる材料」が優先です。以下の順で並べると、読み手の負担が下がります。

  • 測定条件:体位/他動・自動/疼痛・痙縮/装具/再現性
  • ROM :主要運動、左右差、制限因子
  • 筋力・巧緻性:数値+実用性(段差、立ち上がり、書字、ボタン)
  • ADL :手段+介助量+危険場面
  • 一言まとめ:生活上の主な制約を 1 行

よくある失敗: OK / NG で “整合” を崩さない

数値があっても、 ADL と噛み合わないと説明が難しくなります。矛盾が出るときは、代償や疲労、再現性を 1 行で補います。

障害年金(肢体)で詰まりやすいポイント( OK / NG )
論点 NG(起きがち) OK(こう直す) ひと言
ROM の条件 角度だけ返す 他動/自動+疼痛・痙縮+体位を 1 行で添える 条件がない数値は誤解される
数値と ADL 重度の ROM 制限なのに ADL は “自立” の一言 代償(手すり、手順)と見守り理由を短文で 整合が取れると説明が短くなる
疲労・変動 良い日だけで評価 日内変動や疲労で崩れるかを “再現性” として追記 耐久性の説明に直結
巧緻性 「巧緻動作低下」だけ ボタン、つまみ、書字など “困る作業” を 1 ~ 2 例 場面があると伝わる

忙しい日に回す「 5 分フロー」

  1. 1 分:目的、期限、時点、制約( 4 点)を確認
  2. 2 分:最小セット(主要 ROM +主要筋力+ ADL 3 場面)
  3. 1 分:測定条件 “ 5 行 ” を記録
  4. 1 分:一言まとめ(生活上の制約を 1 行)

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. ROM は他動と自動、どちらで返すべきですか?

原則は、運用で求められている方法に合わせます。迷うときは、他動/自動の別と、疼痛・痙縮・体位などの測定条件を 1 行で残すと、数値の解釈が安定します。

Q2. 数値と ADL が矛盾します。どう書けばいいですか?

矛盾が出るときは、代償や環境(手すり、動作手順、見守り)で成立していることが多いです。代償(何で補っているか)再現性(疲労・日内変動)を 1 行添えると整合が取れます。

Q3. 巧緻性や耐久性は何を返せばいいですか?

検査名を増やすより、日常の作業例で返すほうが伝わりやすいことがあります。例:ボタンが留められない、つまみが回せない、歩行が 5 分で崩れる、など「作業+どの程度」で短文化します。

Q4. 期限が短く、全部は測れません。

最小セット(主要 ROM +主要筋力+ ADL 3 場面)だけ先に押さえ、条件 5 行と一言まとめで返します。必要なら “追加の判断” を後追いで提案します。

次の一手:共有の型を作って、依頼対応をラクにする

運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検(無料チェックシート)

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参考文献

  1. 日本年金機構.国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(第 4 肢体の機能の障害).PDF
  2. 日本年金機構.(別紙)肢体の障害関係の測定方法.PDF
  3. 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会/公益社団法人 日本整形外科学会/一般社団法人 日本足の外科学会.関節可動域表示ならびに測定法改訂について( 2022 年 4 月改訂).Jpn J Rehabil Med.2021;58(10):1188-1200.DOI:10.2490/jjrmc.58.1188
  4. 政府広報オンライン.障害年金の制度(障害等級の位置づけ等).Web

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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