要介護認定の評価依頼は「手間+頻度」で返します
要介護認定でリハ職に評価依頼が来たときは、歩行距離や ROM だけを返すのではなく、介護の手間がどの場面で、どの条件で、どの頻度で生じるかを整理して返すことが重要です。この記事では、主治医意見書や認定調査の特記事項に落としやすい形で、移動・移乗・ ADL の情報を短くまとめる方法を解説します。
このページで答えるのは「要介護認定の評価依頼に、リハ職が何をどう返すか」です。制度全体の流れや申請手続きそのものは深掘りせず、現場で依頼を受けたときに使える確認 4 点、最小セット、1 行テンプレに絞ります。
最初に確認する 4 点|目的・時点・条件・補助具をそろえる
依頼を受けたら、測定より先に「どこへ反映する情報か」を確認します。主治医意見書、認定調査の特記事項、ケアプランでは、同じ評価結果でも使われ方が変わります。特に補助具や評価時点が混ざると、介護の手間が読み取りにくくなります。
原則は、普段の生活条件に近い状態で整理します。最大能力だけでなく、直近の生活実態として、どの場面で見守り・介助・声かけが必要になるかを確認します。
※スマホでは表を横スクロールしてご覧ください。
| 確認ポイント | なぜ重要か | 聞き返す一言 |
|---|---|---|
| 目的 | 主治医意見書、特記事項、ケアプランで必要な情報が変わる | 「どこに反映する想定ですか?」 |
| 時点 | 一時的な最大能力ではなく、生活実態としての手間を整理するため | 「直近の生活状況としてまとめますか?」 |
| 条件 | 屋内外、段差、介助者、環境で介助量が変わるため | 「病棟・施設内か、在宅生活を想定しますか?」 |
| 補助具・装具 | 杖・装具あり/なしが混ざると解釈しにくいため | 「普段どおり杖・装具ありで統一してよいですか?」 |
最小セット 6 つ|移動・移乗・ADLから返す
要介護認定では、数値そのものよりも「介護者が何をしているか」が伝わる情報が使いやすくなります。迷ったら、移動、移乗、ADL、見守り、補助具、変動の 6 つに絞って返すと、特記事項に転記しやすくなります。
ROM や筋力を記載する場合も、単独の数値で終わらせず、立ち上がり、歩行、浴槽またぎ、更衣など、生活動作の詰まりと結びつけます。
| 項目 | 返す内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 移動 | 屋内外、距離、介助量、休息、危険サイン | 屋内は T 字杖で見守り、20 m で休息。方向転換でふらつきあり。 |
| 移乗 | 立ち上がり、手すり、介助者の手出し | トイレ移乗は手すり必須。立ち上がりで膝折れがあり監視を要する。 |
| ADL | 排泄、更衣、入浴で介助が発生する場面 | 浴槽またぎで疼痛と恐怖があり、一部介助が必要。 |
| 見守り | 転倒リスク、声かけ、危険行動 | 段差で足が止まり、毎回声かけと近接見守りが必要。 |
| 補助具 | 杖、歩行器、装具、手すりの必要性 | 屋外は杖が必須。なしでは 10 m 以内でふらつきが増える。 |
| 変動 | 疼痛、疲労、時間帯による介助量の変化 | 午後は疼痛増悪により、移乗が見守りから一部介助に増える。 |
5 分フロー|依頼から返却までを固定する
要介護認定の評価依頼は、評価項目を増やすよりも、条件と手間をそろえる方が実務で使いやすくなります。返却までの流れを固定すると、依頼者との手戻りを減らせます。
- 目的を確認:主治医意見書、特記事項、ケアプランのどこへ使うかを確認する
- 条件を固定:時点、環境、介助者、補助具・装具の扱いをそろえる
- 最小セットを埋める:移動、移乗、ADL、見守り、補助具、変動を 1 行ずつ整理する
- 生活上の手間に変換:できる/できないではなく、介助者が何をするかに直す
- 特記事項の型にする:場面、条件、手間、頻度、リスクの順で返す
A4 記録シートをダウンロードする
評価依頼を受けたときに、目的・条件・最小セット・特記事項のメモを 1 枚で整理できる PDF です。印刷して使う場合は、依頼元への返答前の下書きとして活用してください。
中身をプレビューする
1 行テンプレ|場面→条件→手間→頻度で書く
転記されやすい書き方は、短くても条件がそろっています。おすすめは、場面 → 条件 → 手間 → 頻度の順で 1 行にすることです。
| 場面 | 条件 | 手間 | 頻度 | 例文 |
|---|---|---|---|---|
| 屋内歩行 | T 字杖使用 | 方向転換で見守り | 移動のたび | 屋内歩行は T 字杖で 20 m 程度。方向転換でふらつきがあり、移動のたびに見守りを要する。 |
| トイレ移乗 | 手すり使用 | 立ち上がりで監視 | 排泄のたび | トイレ移乗は手すり必須。立ち上がりで膝折れがあり、排泄のたびに監視を要する。 |
| 入浴 | 浴槽またぎ | 一部介助 | 週 2 回 | 浴槽またぎは疼痛と恐怖が強く、週 2 回の入浴時に一部介助を要する。 |
歩行・移乗の書き方|距離・介助量・安全を入れる
歩行や移乗は「可能」とだけ書くと、介護の手間が伝わりません。距離、介助量、安全上の理由を入れると、生活実態として読みやすくなります。
| NG 例 | 弱い理由 | OK 例 |
|---|---|---|
| 歩行可能 | 距離、介助量、危険サインが不明 | 屋内は T 字杖で 20 m 程度。方向転換でふらつきがあり見守りを要する。 |
| 移乗見守り | どこで危険か分からない | トイレ移乗は手すり必須。立ち上がりで膝折れがあり、排泄のたびに監視を要する。 |
| 段差注意 | 介助内容と頻度が不明 | 玄関段差で足が出ず停止するため、外出時は毎回声かけと身体支持を要する。 |
ADL は介助量+理由+場面で短く書く
ADL は「介助あり」だけでは、何に困っているかが伝わりません。排泄、更衣、入浴のどの場面で、なぜ介助が必要かを短く書きます。
| 項目 | NG 例 | OK 例 |
|---|---|---|
| 排泄 | 排泄介助 | 立位保持が不安定で、下衣操作時に一部介助を要する。 |
| 入浴 | 入浴不可 | 浴槽またぎで疼痛と恐怖が強く、介助なしでは転倒リスクが高い。 |
| 更衣 | 更衣見守り | 袖通しで片手操作が詰まり、上衣更衣に一部介助を要する。 |
特記事項に落とす型|手間・頻度・リスク・条件をそろえる
特記事項では、介護認定審査会が介護の手間を読み取れるように、何を、どれくらい、なぜ行う必要があるかを具体化します。単なる能力評価ではなく、介助者の対応として書くのがポイントです。
| 要素 | 書く内容 | 例文 |
|---|---|---|
| 手間 | 介助者が実際に行うこと | 立ち上がりで身体支持を要する |
| 頻度 | 毎回、1 日数回、週数回など | トイレのたびに見守りを要する |
| リスク | 転倒、疼痛増悪、失敗、危険行動など | 見守りなしでは方向転換時に転倒リスクが高い |
| 条件 | 補助具、環境、時間帯、疲労の影響 | 午後は疲労により介助量が増える |
現場の詰まりどころ|能力評価のまま返してしまう
要介護認定の評価依頼で詰まりやすいのは、リハ評価としては正しくても、介護の手間に変換されていないケースです。次の 2 点を先に確認すると、返却文が実務で使いやすくなります。
関連:書類全般で迷う場合は、評価依頼が来たときの確認 4 点も確認してください。
| NG | なぜ弱いか | OK |
|---|---|---|
| 歩行可能だけで返す | 見守りや休息の手間が伝わらない | 距離、補助具、見守り理由を 1 行で足す |
| ADL を介助ありだけで返す | どの動作で介助が発生するか不明 | 介助量、理由、場面をセットで書く |
| 補助具あり/なしが混在する | 同じ動作でも解釈が変わる | 普段の生活条件で統一し、例外は別記する |
| 最大能力だけを書く | 日常的な介護の手間が見えない | 直近の生活実態と頻度を添える |
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
PT キャリアガイドを見るよくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 補助具や装具は「あり」で評価してよいですか?
原則は、普段の生活で使用している条件にそろえます。杖や装具ありで生活している場合は、その条件で介助量や安全性を整理し、なしの場合に危険が増えるなら別途補足します。
Q2. 「できるけど危ない」はどう書けばよいですか?
「可能」だけで終わらせず、見守りが必要な理由を書きます。例として「方向転換でふらつきがあり、移動のたびに近接見守りを要する」のように、場面と頻度を添えると伝わりやすくなります。
Q3. 疲労や痛みで日内変動がある場合はどうまとめますか?
変動は重要な情報です。午前・午後、訓練後、入浴後など、変化が出やすい条件を示し、「介助量がどう変わるか」まで書きます。
Q4. 依頼内容が曖昧なときは何から返せばよいですか?
まず目的、時点、評価条件、補助具の扱いを確認します。そのうえで、移動・移乗・ADL・見守り・補助具・変動の 6 つを最小セットとして返すと、手戻りを減らせます。
次の一手|書類対応をチームで標準化する
要介護認定の評価依頼は、個人の文章力だけに頼ると毎回ばらつきます。まずは確認 4 点と 1 行テンプレを共通化し、同じ条件で返せるように整えましょう。
- 全体像を確認する:書類対応の評価依頼まとめで制度別の違いを整理する
- 依頼時の型をそろえる:評価依頼が来たときの確認 4 点で、目的・時点・条件・補助具を固定する
参考文献
- 厚生労働省. サービス利用までの流れ(介護保険の解説).
- 厚生労働省. 要介護認定における「認定調査票記入の手引き」.
- 厚生労働省. 要介護認定における「認定調査票記入の手引き」特記事項関連.
- 厚生労働省. 主治医意見書(様式例)(PDF).
- Takahashi K, et al. A scoring system and seven factors associated with certification for Japanese long-term care insurance in older people. J Bone Miner Metab. 2025;43(4):419-429. doi:10.1007/s00774-025-01606-x.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


