- 肘関節の整形外科テスト|テニス肘・ゴルフ肘・靱帯損傷・神経障害の評価ポイント
- この記事でわかること(最短ルート)
- まずやる最小セット(症状別)
- 評価の順番|問診 → 圧痛 → 抵抗 → 神経 → 不安定性
- 肘痛の鑑別フロー( 60 秒で分岐)
- 解釈のコツ|痛みの場所 × 再現動作 × 圧痛を一致させる
- 外側上顆炎(テニス肘)を疑うテスト
- 内側上顆炎(ゴルフ肘)を疑うテスト
- 内側側副靱帯( UCL )を疑うテスト
- 肘部管症候群(尺骨神経障害)を疑うテスト
- 中止基準・注意点(安全と再現性)
- 現場の詰まりどころ(読ませるゾーン)
- 症例ミニ( 3 パターンで当てはめ)
- よくある質問
- 次の一手(意思決定の三段+サブ導線)
- 参考文献
- 著者情報
肘関節の整形外科テスト|テニス肘・ゴルフ肘・靱帯損傷・神経障害の評価ポイント
肘痛は「外側が痛い=テニス肘」で決め打ちすると、UCL(靱帯)や肘部管(尺骨神経)を見落として、負荷調整が逆方向に進むことがあります。本記事は、現場で迷いがちな肘の特殊テストを、最小セットで回せるように「まず何をやるか」から整理します。
結論はシンプルで、①痛みの場所 ②再現動作 ③圧痛を 1 セットで一致させることです。さらに 60 秒の鑑別フローで「神経/靱帯/使いすぎ痛」に先に分岐し、必要なテストだけを実施します(陽性・陰性の丸付けで終わらず、次回の介入につながる記録まで落とし込みます)。
標準手順:関節可動域( ROM )検査の運用(記録と中止基準)
代表記事:肩関節の整形外科テスト(総覧)
この記事でわかること(最短ルート)
- 肘痛を「使いすぎ痛/不安定性/神経障害」に分けて、まず何をやるか(最小セット)
- 鑑別フロー( 60 秒)で、必要なテストだけに絞る方法
- テストの解釈:痛みの場所 × 再現動作 × 圧痛を一致させるコツ
- よくある失敗(外側上顆炎の決め打ち、神経症状の見落とし)と回避チェック
- カルテに残る書き方(再現条件、部位、強さ、左右差)
まずやる最小セット(症状別)
※表は横スクロールできます(スマホ OK)。
| 症状パターン | まず確認 | 最小テスト | 追加でみる | 次の判断 |
|---|---|---|---|---|
| 外側痛(握る/伸ばすで痛い) | 外側上顆〜遠位の圧痛 | 抵抗性手関節背屈( Cozen )/中指伸展( Maudsley ) | Mill テスト、握力(肘伸展 vs 屈曲) | 局所負荷(把持・背屈)と動作フォームをターゲット化 |
| 内側痛(掌屈/回内で痛い) | 内側上顆やや遠位の圧痛 | 抵抗性手関節掌屈/抵抗性回内 | 尺骨神経症状(しびれ)確認 | 屈筋回内群の負荷量と、併存する神経症状の有無で分岐 |
| 投球・外反ストレスで痛い(内側) | 内側不安感/クリック/疼痛角度 | Valgus stress/moving valgus stress | Milking maneuver | 不安定性が疑わしければ保護・負荷制限と連携を優先 |
| 小指・環指のしびれ(夜間/肘屈曲で悪化) | 感覚・筋力(骨間筋など)/症状誘発姿勢 | 肘屈曲テスト+尺骨神経圧迫/Tinel(肘部管) | 頸椎要素のスクリーニング | しびれ増悪や筋力低下が疑わしければ精査ルート |
評価の順番|問診 → 圧痛 → 抵抗 → 神経 → 不安定性
肘の整形外科テストは、いきなり一通りやるよりも、「再現できた痛み」を軸に深掘りした方が短時間で精度が上がります。おすすめの順番は、①問診(いつ・何で・どこが)→ ②圧痛(点を絞る)→ ③抵抗(負荷で再現)→ ④神経(しびれ・夜間痛)→ ⑤不安定性(外反・内反)です。
特に外側上顆炎は「外側が痛い=確定」になりやすいので、前腕全体のだるさ/放散痛/しびれが混じるときは、頸椎由来や末梢神経障害も並行して確認します。
肘痛の鑑別フロー( 60 秒で分岐)
※表は横スクロールできます(スマホ OK)。「痛みの場所」「しびれ」「外反ストレス」の 3 点でまず分岐し、必要なテストだけに絞ります。
| Step | 質問/観察( YES / NO ) | YES → 次 | NO → 次 | この段階でやるテスト(最小) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 小指・環指のしびれ、夜間悪化、肘屈曲で増悪がある? | 神経ルートへ | Step 2 へ | 肘屈曲+尺骨神経圧迫/Tinel(肘部管) |
| 2 | 外反ストレス(投球・体重支持)で内側痛や不安感が増える? | 靱帯ルートへ | Step 3 へ | Valgus stress/moving valgus stress(疼痛角度も記録) |
| 3 | 痛みの主座は外側?(握る/背屈/中指伸展で再現) | 過負荷(外側)ルートへ | Step 4 へ | Cozen/Maudsley(圧痛点と一致するか) |
| 4 | 痛みの主座は内側?(掌屈/回内の抵抗で再現) | 過負荷(内側)ルートへ | Step 5 へ | 抵抗性回内/抵抗性手関節掌屈(しびれ併存なら神経も) |
| 5 | 頸部痛・肩〜前腕への放散、姿勢で増悪など頸椎要素が強い? | 頸椎スクリーニングへ | 詰まりどころで失敗パターンを確認 | 症状が変わる条件(姿勢・動作)を先に特定 |
頸椎スクリーニング(肘痛っぽいが違う時)
- 首の動きで上肢症状が変化する(増悪/軽減)
- しびれが肘より近位から出る、範囲が日によって変わる
- 局所の圧痛と「いつもの痛み」の一致が弱い
この場合は、肘のテストを増やすより「症状が変わる条件(姿勢・動作)」を先に特定し、必要なら連携も含めて評価計画を立てます。
解釈のコツ|痛みの場所 × 再現動作 × 圧痛を一致させる
※表は横スクロールできます(スマホ OK)。
| 狙う病態 | 圧痛の目安 | 再現しやすい動作 | 陽性の書き方(例) |
|---|---|---|---|
| 外側上顆炎( LET ) | 外側上顆〜やや遠位 | 握る/手関節背屈/中指伸展 | Cozen(+):外側上顆部の鋭痛再現。圧痛点と一致 |
| 内側上顆炎 | 内側上顆より遠位 | 手関節掌屈+回内(抵抗) | 抵抗性回内(+):内側上顆遠位の痛み再現 |
| UCL 損傷(内側側副靱帯) | 内側裂隙周辺(クリック) | 外反ストレス/投球動作 | moving valgus(+):痛みの角度範囲(例:70〜120°)も記録 |
| 肘部管症候群 | 肘部管周辺(Tinel) | 肘屈曲保持/神経圧迫 | 肘屈曲+圧迫(+):環指尺側〜小指のしびれ再現(秒数も) |
外側上顆炎(テニス肘)を疑うテスト
Cozen(抵抗性手関節背屈)
- 姿勢:肘軽度屈曲〜伸展位で前腕回内、手関節背屈に抵抗
- 陽性:外側上顆〜遠位の局所痛が再現(圧痛点と一致)
- コツ:「どこが痛いか」を指で示してもらい、部位を固定して記録
中指伸展( Maudsley )
- 狙い:総指伸筋の負荷で外側痛を再現
- 陽性:外側上顆周辺の局所痛(前腕外側の広い痛みだけなら要注意)
Mill テスト(補助)
- 狙い:伸筋群の伸張ストレスで疼痛を誘発
- 注意:強くやりすぎると疼痛が残るため、痛みが強い時期は無理に反復しない
内側上顆炎(ゴルフ肘)を疑うテスト
- 抵抗性手関節掌屈:内側上顆遠位の局所痛が出るか
- 抵抗性回内:回内が痛みを強く再現するなら内側上顆炎を示唆しやすい
- 併存チェック:内側痛+小指・環指のしびれがあれば尺骨神経症状も同時に確認
内側側副靱帯( UCL )を疑うテスト
Valgus stress
- 狙い:内側裂隙の疼痛、または不安感・弛緩
- 記録:痛みの有無だけでなく「不安感」「クリック」「角度」を残す
moving valgus stress(投球関連で有用)
- 狙い:外反ストレスを保ったまま屈曲位から伸展し、疼痛の出る角度範囲を特定
- 記録:疼痛が出る範囲(例:70〜120°)を残すと共有しやすい
肘部管症候群(尺骨神経障害)を疑うテスト
Tinel(肘部管)
- 陽性:環指尺側〜小指に放散するしびれ・ビリビリ感
- 注意:Tinel 単独で決め打ちせず、肘屈曲保持や圧迫で再現性を確認
肘屈曲テスト+尺骨神経圧迫
- 狙い:肘屈曲位での症状誘発(夜間悪化と整合するか)
- 記録:何秒で出たか(例:30 秒以内/ 60 秒で出現)を残す
中止基準・注意点(安全と再現性)
※表は横スクロールできます(スマホ OK)。
| 状況 | 中止の目安 | その場でやること | 次の打ち手 |
|---|---|---|---|
| しびれが増悪する | 範囲拡大、強さ増加、持続 | 姿勢を戻す/神経圧迫を解除 | 神経評価を優先、必要なら精査ルート |
| 鋭い裂ける痛み+不安感 | 外反・内反で強い恐怖 | 無理に続けない | 不安定性の可能性を共有し、保護・連携 |
| 痛みが残存して悪化 | 検査後に痛みが引かない | 負荷量を下げる | 最小限の再現で十分、反復しない |
現場の詰まりどころ(読ませるゾーン)
肘の特殊テストは、やり方より「まとめ方」で詰まりやすいです。迷ったら、まずここに戻ってください。
同ジャンルの記録の型:上肢の「生活での困りごと」まで一緒に残すなら DASH の評価方法 を 1 枚かませると、負荷調整の説明が通りやすくなります。
よくある失敗
- 外側が痛い=テニス肘で固定:前腕のだるさ・放散痛・しびれが混じるときは神経要素も並行評価
- 陽性/陰性だけ書いて終わる:痛みの部位(指差し)と再現動作(握る/背屈など)を必ずセットで残す
- 強くやりすぎて痛みが残る:再現は 1 回で十分、反復しない
- 内側痛で UCL を見ない:投球・外反ストレスで悪化するなら不安定性を先に疑う
回避の手順/チェック( 60 秒)
- 痛みの場所を指で示してもらい、圧痛点と一致するか確認
- 抵抗テストで「いつもの痛み」が再現できるか(強くやりすぎない)
- しびれがあるなら、肘屈曲保持+圧迫で再現性を確認(秒数も残す)
- 内側痛で外反ストレスが関係するなら、UCL 系テストを追加
- カルテには「部位・再現動作・強さ・左右差・角度(必要時)」を残す
症例ミニ( 3 パターンで当てはめ)
症例 1:デスクワークで外側が痛い(握ると響く)
状況:マウス作業・荷物を持つと外側上顆周辺が痛い。しびれはなし。
最小セット:圧痛(外側上顆〜遠位)→ Cozen/Maudsley。痛みの場所が一致するかを確認。
解釈:局所痛が一致すれば外側上顆炎を疑いやすい。一方、前腕全体のだるさが強い場合は「負荷の掛け方(把持・手関節背屈の連動)」の問題も同時に見る。
次の一手:作業動作の負荷(把持の強さ/手関節角度)を調整し、再現動作が減るかで介入の方向性を決める。
症例 2:投球で内側が痛い(外反で怖い)
状況:投球や腕立てで内側痛。クリックや不安感がある。
最小セット:Valgus stress → moving valgus stress。疼痛が出る角度範囲も記録。
解釈:内側上顆炎(抵抗性回内・掌屈)だけで説明できない場合は、UCL の関与を優先して疑う。強い恐怖感があれば無理に反復しない。
次の一手:不安定性が疑わしければ保護・負荷制限を優先し、連携を含めて方針を整理する。
症例 3:夜間のしびれ(肘を曲げると悪化)
状況:小指・環指のしびれ。夜間に悪化し、肘屈曲で増える。
最小セット:肘屈曲保持+尺骨神経圧迫/Tinel(肘部管)。「何秒で出るか」も残す。
解釈:局所で再現できれば尺骨神経障害を疑いやすい。しびれの範囲が広い/変動が大きいなら頸椎要素も併存し得る。
次の一手:しびれ増悪や筋力低下が疑わしい場合は精査ルートを優先し、負荷を上げる介入は慎重にする。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Cozen(抵抗性手関節背屈)が陽性なら、テニス肘で確定ですか?
確定ではありません。圧痛点(外側上顆〜遠位)と、握る/背屈などの再現動作で局所痛が一致するかをセットで判断します。放散痛やしびれが混じる場合は末梢神経障害や頸椎由来も並行して疑います。
中指伸展( Maudsley )は Cozen とどう使い分けますか?
両者は外側肘痛を再現しやすい誘発テストです。Cozen で曖昧なときに Maudsley を補助として加え、同じ部位に同じ痛みが出るかで解釈を安定させます。
ゴルフ肘は何を最優先で見ればよいですか?
まずは内側上顆遠位の圧痛と、抵抗性回内・手関節掌屈での疼痛再現です。加えて、尺骨神経症状(環指・小指のしびれ)を併存しやすいので、神経症状がある場合は肘部管のテストも同時に行います。
肘部管症候群は Tinel だけで判断してよいですか?
Tinel 単独では弱いことがあるため、肘屈曲保持や尺骨神経圧迫と組み合わせて「普段のしびれ」が再現されるかを確認します。しびれの増悪や筋力低下が疑われる場合は精査ルートを優先します。
UCL 損傷を疑うのはどんなときですか?
投球や外反ストレスで内側痛が強く、クリックや不安感を伴う場合に疑います。moving valgus stress では疼痛の角度範囲も記録すると共有しやすくなります。
テスト結果はカルテにどう書くのが実用的ですか?
「陽性/陰性」だけでなく、①痛みの部位(指差し)②再現動作(握る/背屈/回内など)③強さ( NRS など)④左右差⑤角度(必要時)を 1 行で残すと、次回の負荷調整が速くなります。
次の一手(意思決定の三段+サブ導線)
- 運用を整える:関節可動域( ROM )検査の運用(記録と中止基準)
- 共有の型を作る:DASH で上肢の生活障害も一緒に残す
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Lucado AM, et al. Lateral Elbow Pain and Muscle Function Impairments. J Orthop Sports Phys Ther. 2022;52(12):CPG1-CPG111. DOI: 10.2519/jospt.2022.0302
- Karanasios S, et al. Diagnostic accuracy of examination tests for lateral elbow tendinopathy ( LET ) – A systematic review. J Hand Ther. 2022. DOI: 10.1016/j.jht.2021.02.002
- O’Driscoll SWM, et al. The moving valgus stress test for medial collateral ligament tears of the elbow. Am J Sports Med. 2005;33(2):231-239. DOI: 10.1177/0363546504267804
- Novak CB, et al. Provocative testing for cubital tunnel syndrome. J Hand Surg Am. 1994;19(5):817-820. DOI: 10.1016/0363-5023(94)90193-7
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


