FADIR テストのやり方|鼠径部痛を “関節内の疑い” に寄せる最短チェック
FADIR テスト( Flexion / Adduction / Internal Rotation )は、鼠径部痛や内旋制限があるときに関節内( FAI / 関節唇など)の関与を疑う入口として使われます。ポイントは「陽性 / 陰性」よりも、どこに痛みが出たか(鼠径部か、外側か、殿部か)と、可動域制限(特に内旋)をセットで残すことです。
本記事では、① 最短手順( 30 秒)→② 陽性の読み方→③ 次にやる 2 テスト→④ よくある失敗と回避チェックの順に、 FADIR を “ブレない運用” に固定します。
股関節テスト全体の “順番” を先に固定する:迷うときは親記事で最小セット( 5 分フロー)から整えるのが最短です。
いつ使う?| FADIR は “関節内の疑い” を拾う入口
FADIR は、股関節屈曲位で内旋・内転方向に詰まりを作り、痛みを再現しやすいテストです。研究では FADIR の感度が高めに出る一方、特異度は高くない報告もあり、単独で診断を確定する用途には向きません。そのため「除外(スクリーニング)」と「仮説の絞り込み」に寄せて使うと失敗しにくいです。(Shanmugaraj 2020 / Reiman 2015)
- 使う場面:鼠径部痛、内旋制限、引っかかり感、歩き始めや立ち上がりでの深部痛
- 注意:急性炎症で強い痛みがあるときは “角度と圧” を小さくし、再現の確認で止める
やり方( 30 秒)|角度より “痛みの部位” を優先して記録
やり方はシンプルですが、最も大事なのは痛みの部位と内旋の詰まりを言語化することです。無理に最終域まで押し込むほど、過剰な疼痛誘発になりやすいので注意します。
| 手順 | 操作 | 観察 | 記録の型( 1 行) |
|---|---|---|---|
| ① 体位 | 背臥位。骨盤が浮かないように近位を軽く固定 | 防御性収縮、恐怖、代償 | 背臥位・骨盤固定(有 / 無) |
| ② 屈曲 | 股関節をおよそ 90° まで屈曲(痛みが強ければ浅く) | 屈曲での鼠径部痛 / クリック | 屈曲で痛み(部位) |
| ③ 内転+内旋 | 内転→内旋方向へ(圧は最小) | 痛みの部位(鼠径部 / 外側 / 殿部)と内旋制限 | FADIR:鼠径部痛+内旋詰まり(右)など |
| ④ 停止 | 痛みが急増 / 防御が強い時点で中止 | 増悪の有無 | 中止理由(痛み急増 / 防御 / 術後制限) |
陽性の読み方| “鼠径部” と “内旋制限” のセットで仮説を絞る
FADIR の “陽性” は 1 種類ではありません。どこが痛いかで次の一手が変わります。研究では FADIR は感度が高めでも特異度が低めになり得るため、痛み部位 + ROM(特に内旋)で “関節内に寄せるか / それ以外も疑うか” を決めるのが安全です。(Pålsson 2020)
| 反応 | 示唆 | 次にやる確認(最小) | メモ |
|---|---|---|---|
| 鼠径部痛が再現 | 関節内の関与( FAI / 関節唇など)を優先 | Scour( Quadrant )、Log roll、内旋 ROM | 「場所」を最優先で残す |
| 外側痛が再現 | 外側股関節(中殿筋 / 大転子周囲)も疑う | Trendelenburg、片脚立位で疼痛 | 支持で増悪するか |
| 殿部痛が再現 | 腰椎 / SIJ 由来の併存も疑う | FABER(痛み部位確認)、腰椎スクリーニング | 決め打ちしない |
| 痛みはないが内旋が硬い | ROM を “ルールイン” に使う考えも有効 | 内旋 ROM(条件固定) | ROM の条件を揃える |
次にやる 2 テスト| Scour と Log roll で “関節内” を補強する
FADIR 単独では絞り込みが弱くなりやすいので、最小でも 2 つ追加して仮説を固めます。
- Scour( Quadrant ):圧縮しながら回旋し、痛みやクリックの有無を確認
- Log roll:他動外旋で “遊び” と痛みをみる(刺激は軽め)
この “最小セット” の並べ方は、親記事の 5 分フローにまとめています:股関節の整形外科テスト一覧。
現場の詰まりどころ|よくある失敗 → 回避チェック
ここは “読ませるゾーン” なので、ボタン無しで整理します。
よくある失敗(あるある 5 つ)
- 最終域まで押し込みすぎる:痛みの再現確認で止める(角度と圧は最小)。
- 陽性 / 陰性だけ記録:痛み部位(鼠径部 / 外側 / 殿部)を書かないと鑑別が進まない。
- 骨盤が浮いたまま実施:代償が混ざり、再現性が落ちる。
- “関節内確定” と誤解: FADIR は診断確定ではなく、仮説を絞る入口。
- 再評価で毎回フルセット:追うテストは 1〜3 個に固定。
回避チェック(この順に直す)
| チェック | 見ること | 直し方(最小) |
|---|---|---|
| ① 条件 | 骨盤固定、屈曲角度、代償 | まず骨盤の位置を揃え、浅い角度で再現できるか確認 |
| ② 刺激量 | 圧が強すぎて “強制陽性” | 圧を半分、角度も浅くして部位だけ読む |
| ③ 記録 | 再評価で比較できない | 「痛み部位 + 内旋詰まり + 代償」を 1 行で統一 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
FADIR が陽性なら、関節唇損傷や FAI が確定ですか?
確定ではありません。研究では FADIR の感度が高めでも特異度が低めになり得るため、単独で診断確定には使いにくいとされています。痛みの部位(鼠径部など)、内旋制限、動作時痛(歩き始め / 立ち上がり)を合わせて仮説を絞り、必要なら Scour や Log roll、 ROM を追加して “関節内に寄せるか” を判断します。
痛みが強い症例でも FADIR はやるべきですか?
痛みが強いときは、角度と圧を小さくして “再現の有無” を確認するに留めます。防御性収縮や痛みの急増があれば中止し、安全確認と ROM 条件の固定を優先します。
FADIR の次に、最低限やるなら何を足すのが良いですか?
最小なら Scour( Quadrant )と Log roll を追加し、関節内の関与を補強します。加えて内旋 ROM を条件固定で測ると、再評価で比較しやすくなります。
次の一手
評価は “実施” で終わらせず、共有できる型に落とすほど再現性が上がります。次の 3 つをセットで進めると迷いが減ります。
- 運用を整える:ROM 検査のやり方(条件固定)
- 共有の型を作る:SOAP の A が書けない時の書き方テンプレ
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Shanmugaraj A, et al. How Useful Is the Flexion-Adduction-Internal Rotation Test for Femoroacetabular Impingement? Clin J Sport Med. 2020. PubMed
- Reiman MP, et al. Diagnostic accuracy of clinical tests for the diagnosis of hip pathology: a systematic review. Br J Sports Med. 2015. PubMed
- Pålsson A, et al. Combining results from hip impingement and range of motion tests: reliability and diagnostic implications. 2020. PMC
- Fernandes DA, et al. Diagnostic accuracy of clinical tests and imaging examinations for femoroacetabular impingement syndrome: umbrella review. PM&R. 2022. PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・じょくそうなどで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- じょくそう・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、じょくそう・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


