FABERテストは「やり方」と「症状が出た場所」をセットで見る
FABER(Patrick)テストは、股関節を屈曲・外転・外旋位にして、普段の症状が再現されるか、左右で可動性に差があるかを確認する整形外科的テストです。重要なのは、FABERが陽性か陰性かだけで病態を決めないことです。
鼠径部に症状が再現するのか、殿部・後方なのか、外側なのかによって次に確認する評価は変わります。この記事では、FABERテストのやり方、陽性所見の考え方、痛みの部位別の解釈、FADIRとの使い分け、再評価しやすい記録方法まで整理します。
FABERテストで最初に押さえる3点
- 背臥位で股関節を屈曲・外転・外旋位にする
- 疼痛再現と可動性を確認し、症状が出た場所を記録する
- 単独で診断せず、症状部位に応じて次の評価へ進む
FABERテストのやり方|骨盤を安定させて4の字をつくる
FABERは、背臥位で評価側下肢を「4の字」にして実施します。反対側の骨盤が浮いたり回旋したりすると、股関節そのものの可動性を比較しにくくなるため、骨盤の安定を確認しながら行います。
| 手順 | 実施内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| ① 背臥位 | 患者を背臥位とし、骨盤・股関節の開始位置を確認する | 開始時の疼痛、左右差、骨盤の傾き |
| ② 4の字をつくる | 評価側股関節を屈曲・外転・外旋し、足部を反対側大腿部付近へ置く | 肢位をとる途中で症状が出ないか |
| ③ 骨盤を安定させる | 反対側の上前腸骨棘付近を安定させ、骨盤の回旋を抑える | 骨盤が浮く、回旋するなどの代償 |
| ④ 膝を誘導する | 評価側膝を検査台方向へゆっくり誘導する | 普段の症状の再現、症状部位、可動性 |
| ⑤ 終点を確認する | 疼痛または抵抗による終点で止める | 停止理由と左右差 |
強く押し込むこと自体が目的ではありません。症状を必要以上に増悪させる前に、どの肢位で、どこに、どのような症状が再現されたかを確認します。
術後の可動域制限、骨折・脱臼が疑われる状態、強い急性痛などがある場合は、一般的なFABERの手順をそのまま適用せず、病態や術式に応じた制限を優先します。
FABERテストの陽性とは|痛みの再現と可動性をどう見るか
FABERでは、一般に疼痛の再現や対側と比較した可動性低下が所見として扱われます。ただし、「FABER陽性」という一語だけでは、どの組織・病態が関与しているかまでは判断できません。
評価では、次の4点を分けて確認すると解釈しやすくなります。
| 確認項目 | 見るポイント | 解釈上の注意 |
|---|---|---|
| 疼痛再現 | 患者が普段感じている症状と一致するか | 単なる伸張感や新たに生じた局所痛と区別する |
| 症状部位 | 鼠径部、殿部・後方、外側など | 部位によって次に確認する評価を変える |
| 可動性 | 膝の位置や左右差 | 骨盤代償があると比較しにくい |
| 停止理由 | 疼痛、抵抗感、防御、その他の制限 | 同じ膝の高さでも停止理由が異なれば意味も異なる |
近年の系統的レビューでも、股関節内病変に対するFABERの感度・特異度は研究によるばらつきが大きく、単一のテストだけで診断することはできません。FABERは、診断名を決めるテストというより、症状再現と可動性から次の評価を選ぶ材料として使う方が実務的です。
FABERで痛む場所をどう読む?|鼠径部・殿部・外側で分ける
FABERで症状が再現した場合は、まず場所を確認します。鼠径部、殿部・後方、外側では次に考える仮説が異なりますが、痛む場所だけで原因を確定しないことが重要です。
| 症状の場所 | 考えること | 次に確認したい評価 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 鼠径部・前方 | 股関節内の関与を考える | FADIR、Scour、股関節内旋ROMなど | FABERだけで関節唇損傷やFAIなどを確定しない |
| 殿部・後方 | SIJ由来痛を含め、腰椎・骨盤帯なども鑑別する | SIJ疼痛誘発テスト群、腰椎スクリーニングなど | FABER単独でSIJ由来と判断しない |
| 外側・大転子周囲 | 外側股関節痛の関与も考える | 大転子周囲の圧痛、抵抗下股関節外転、片脚立位時の症状など | FABERのみでGTPSを確定しない |
| 疼痛なし・可動性差のみ | 複合的な股関節可動性の差として扱う | 股関節ROM、骨盤代償、左右差の再確認 | 左右差だけで病態を決めない |

鼠径部痛が再現した場合
評価側の鼠径部や前方深部に普段の痛みが再現した場合は、股関節内の関与を考える材料になります。ただし、FABER陽性だけで関節唇損傷、FAI、変形性股関節症など特定の病態を決めることはできません。
股関節内旋ROM、症状が出る動作、他の疼痛誘発テストなどを組み合わせ、同じ症状が一貫して再現されるか確認します。
殿部・後方痛が再現した場合
殿部や骨盤後方に普段の痛みが再現した場合は、SIJ由来痛も鑑別候補になります。ただし、腰椎や周囲組織からの関連痛もあり得るため、FABER単独で「SIJが原因」と判断するのは避けます。
SIJを疑う場合は、単独テストではなく複数の疼痛誘発テストを組み合わせ、その結果を問診や腰椎スクリーニングと統合します。SIJ疼痛誘発テスト群についても、陽性所見だけで確定するのではなく、検査前確率や他所見と合わせた判断が必要です。
外側痛が再現した場合
大転子周囲など股関節外側に普段の症状が再現する場合は、外側股関節痛を評価するきっかけになります。
この場合はFABERの結果だけで終えず、大転子周囲の圧痛や抵抗下股関節外転など、外側股関節痛に関連する所見を追加します。歩行、階段、片脚立位、患側下での側臥位など、普段の症状が出る負荷との一致も確認します。
FABERとFADIRはどちらを先に行う?|固定した順番はない
FABERとFADIRに、すべての患者へ共通する固定された実施順はありません。どちらを先に行うかではなく、何を確認したいのかで選びます。
| テスト | 主な肢位 | 評価で重視すること |
|---|---|---|
| FABER | 屈曲・外転・外旋 | 症状再現部位と複合的な可動性 |
| FADIR | 屈曲・内転・内旋 | 前方・鼠径部症状の再現など |
例えば、問診や動作で鼠径部痛が主症状であれば、股関節内の関与を確認する評価の一部としてFADIRを組み合わせることがあります。一方、FABERで殿部・後方に普段の症状が再現した場合は、FADIRを機械的に追加するより、SIJや腰椎を含めた別の仮説を確認する方が適切なことがあります。
つまり、FABER→FADIRという順番を覚えるのではなく、FABERで得られた所見から次の検査を選ぶことが重要です。
FABERの左右差・膝の高さを見るときの注意点
FABERは疼痛誘発だけでなく、複合的な股関節可動性を見る目的でも用いられます。膝と検査台との距離などを測定する方法もありますが、左右差だけで病態を判断することはできません。
特に注意したいのは、骨盤の回旋です。膝を検査台へ近づけようとして反対側骨盤が浮けば、見かけ上の可動域は大きくなります。再評価では、測定条件をそろえることが重要です。
| 項目 | そろえるポイント |
|---|---|
| 開始肢位 | 背臥位と骨盤位置をそろえる |
| 足部の位置 | 毎回できるだけ同じ位置から開始する |
| 骨盤 | 反対側骨盤の浮き・回旋を確認する |
| 終点 | 疼痛で止めたのか、抵抗感で止めたのかを区別する |
| 測定方法 | 距離・角度など同じ方法を使用する |
FABER肢位の測定は、方法を統一すれば一定の再現性が報告されています。一方、単純な左右差の解釈には測定誤差も含まれるため、数値だけではなく、症状・骨盤代償・他のROM所見と合わせて判断します。
FABERテストの記録例|「陽性」だけで終わらせない
記録では「FABER陽性」とだけ書くより、左右、症状部位、普段の症状との一致、可動性、骨盤代償、停止理由を残す方が、次回の再評価や多職種共有に使いやすくなります。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| 鼠径部痛 | FABER(右):右鼠径部に普段と一致する疼痛を再現。骨盤代償なし。股関節内の関与を考え、内旋ROM・FADIR等を追加評価。 |
| 殿部痛 | FABER(左):左殿部後方に普段と一致する疼痛を再現。FABER単独では由来を確定せず、SIJ疼痛誘発テスト群および腰椎所見を確認。 |
| 外側痛 | FABER(右):右大転子周囲に疼痛再現。大転子周囲圧痛、抵抗下股関節外転、荷重時症状を追加確認。 |
| 左右差のみ | FABER:疼痛再現なし。右は左より可動性低下あり。骨盤代償に注意し、股関節ROMと合わせて再評価。 |
| 途中で中止 | FABER(左):誘導途中で疼痛増悪のため中止。終末域まで評価せず。中止位置と症状部位を記録。 |
「+/-」は情報を圧縮できますが、それだけでは次の担当者が同じ条件を再現できません。FABERでは特に、どこに症状が出たのかを残すことが重要です。
FABERテストでよくある失敗
FABERで解釈がぶれやすいのは、手技そのものよりも「陽性」の扱い方です。次のような使い方は避けます。
-
FABER陽性=特定の病態と決める
FABERは複数の病態・部位で症状が再現し得ます。陽性は診断名ではなく、次の仮説を選ぶ情報として扱います。 -
痛みの場所を書かない
鼠径部と殿部では次に確認すべき評価が異なります。「疼痛あり」だけで終わらせず部位を残します。 -
骨盤代償を無視して左右差を比べる
骨盤が回旋すれば膝の位置も変わります。可動性を見る場合は骨盤条件をそろえます。 -
FABERのあとに毎回同じテストを行う
次の評価は固定せず、症状部位・問診・ROM・荷重時症状などから選びます。 -
普段の症状と検査で生じた痛みを区別しない
単に伸ばされた感覚や、検査によって新たに生じた局所痛ではなく、患者が問題としている症状との一致を確認します。
FABERテストのよくある質問
FABERが陽性なら仙腸関節障害ですか?
FABER陽性だけでは判断できません。殿部・後方に普段の症状が再現した場合はSIJ由来痛も候補になりますが、腰椎など他の原因も考えます。問診、腰椎スクリーニング、複数のSIJ疼痛誘発テストなどを組み合わせて判断します。
FABERで鼠径部が痛い場合は何を考えますか?
股関節内の関与を考える材料になります。ただし、FABERだけで特定の股関節内病変を確定することはできません。股関節ROMや他の疼痛誘発テスト、普段の動作での症状などを統合します。
痛みはないのに膝が反対側より下がらない場合も陽性ですか?
FABERでは可動性低下も所見になりますが、疼痛陽性とは分けて記録した方が明確です。骨盤代償や開始肢位をそろえたうえで左右を比較し、通常の股関節ROM評価と合わせて解釈します。
FABERとFADIRはどちらを先に行いますか?
全例に共通する固定順はありません。問診や他の所見から何を確認したいかで選びます。FABERで得られた症状部位によってはFADIR以外の評価を優先する場合もあります。
次の一手|FABERの結果から評価を広げる
FABERは、単独で診断を完結させるテストではありません。股関節の整形外科的テストを全体から選びたい場合は、股関節の整形外科テスト一覧で目的別の使い分けを確認できます。
FABERで鼠径部・前方の症状が再現し、股関節内の関与をさらに確認したい場合は、FADIRテストのやり方と陽性の見方へ進んでください。
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

