骨折リスク評価と転倒評価は「別物」ではなく、統合して使うと実務で強いです
骨折リスク評価は「骨の脆弱性」を、転倒評価は「事故が起きる確率」を主に捉えます。 どちらか一方だけでは、実際の再骨折リスクを過小評価しやすくなります。 現場では、2 つを分けて実施しつつ、最終判断で統合する運用が安全です。
本記事では、両者の違い、使い分け、統合手順、介入優先度の決め方までを整理します。 骨折リスク評価の全体像は 親記事 を先に確認してください。
評価は「分けて測る、最後に統合する」で迷いが減ります。
PT キャリアガイドを見るまず整理|骨折リスク評価と転倒評価の違い
骨折リスク評価は、既往骨折、骨密度、薬剤、年齢などから、骨折が起きやすい土台を把握する評価です。 一方、転倒評価は、バランス、筋力、歩行、注意機能、住環境などから、転ぶ可能性と転倒場面を特定します。 着目点が異なるため、同じ結果にはなりません。
実務では「骨は脆いが転倒しにくい人」「骨は保たれているが転倒しやすい人」が存在します。 このズレを見える化することが、介入優先度の最適化につながります。
使い分けの基本|どちらを先にやるか
基本は、短時間で対象者を抽出できる評価を先に回し、次に不足領域を補完します。 例えば、既往骨折や薬剤情報が明らかな場合は骨折リスク評価を先行し、歩行不安定や転倒歴が目立つ場合は転倒評価を先行すると効率的です。
ただし最終判断は必ず統合で行います。 先行評価はあくまで入口であり、介入可否や優先度は単一評価で決めないことが重要です。
統合手順|4 ステップで介入優先度を決める
統合は難しく見えますが、手順を固定すると再現性が上がります。 推奨は「①骨折リスク層別化 ②転倒リスク層別化 ③生活場面の危険因子確認 ④介入優先度の決定」です。 この順に並べるだけで、チーム内の説明が通りやすくなります。
ポイントは、数値の大小だけでなく「どの場面で事故が起きるか」を文章で 1 行追記することです。 リスクの実体が明確になり、介入内容が具体化します。
Step 1:骨折リスクを層別化する
既往骨折、骨関連指標、薬剤情報などから高・中・低の層に分けます。 ここでは骨の脆弱性の把握が目的で、運動処方の禁忌判断まで一気に決めないことが重要です。
Step 2:転倒リスクを層別化する
歩行、バランス、移乗、注意機能、環境因子を評価し、転倒の起きやすさを層別化します。 評価結果には「想定転倒場面」を添えると、介入設計が速くなります。
Step 3:生活場面の危険因子を重ねる
夜間動線、段差、履物、手すり、介助体制などを確認し、病棟・外来・在宅の場面差を反映します。 同じ評価点でも生活条件が違えば、実際のリスクは変わります。
Step 4:介入優先度を決める
「骨折高 × 転倒高」は最優先で安全管理と環境調整を先行します。 「骨折高 × 転倒低」は荷重・活動量の設計を丁寧に行い、「骨折低 × 転倒高」は転倒予防介入を主軸に置くと整理しやすいです。
優先度マトリクス(OK/NG早見)
| 骨折リスク | 転倒リスク | 優先対応 | NG対応 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 高 | 高 | 最優先。安全管理・環境調整・動作再設計を先行 | 筋力訓練のみを先に進める | 転倒場面、禁止/注意動作、共有先 |
| 高 | 低 | 負荷設定を慎重化しつつ活動維持 | 「転ばないから問題なし」と判断 | 負荷条件、再評価トリガー |
| 低 | 高 | 転倒予防を主軸に移動・環境介入 | 骨関連指標が低いので放置 | 想定転倒場面と回避策 |
| 低 | 低 | 教育とセルフモニタリング中心 | 再評価計画なし | 次回評価日、生活変化の確認項目 |
病棟・外来・在宅での使い分けポイント
病棟では、離床初期の移乗・トイレ動作・夜間動線が優先です。 外来では、活動量増加時の転倒場面とセルフマネジメントを重視します。 在宅では、段差、照明、履物、手すり、家族介助の質が結果に強く影響します。
同じ評価項目でも、場面ごとに優先順位は変わります。 施設ごとに「開始条件・中止基準・共有手順」を固定すると、担当者が変わっても質を保ちやすくなります。
よくある失敗と対策
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
FRAXや骨関連指標だけで介入を決めてしまう
骨折リスク評価だけでは転倒場面を拾えません。 転倒評価と環境確認を必ず重ね、統合判断で優先度を決める運用に切り替えます。
転倒評価だけで「骨は問題なし」と扱ってしまう
骨の脆弱性が高い場合、同じ転倒でも結果が重くなります。 骨関連情報を省かず、荷重や活動量の調整に反映します。
再評価の合図が決まっていない
転倒発生、薬剤変更、生活場所変更、活動量変化を再評価トリガーとして事前に定義すると、見直し漏れを防げます。
よくある質問(FAQ)
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骨折リスク評価と転倒評価、どちらを毎回実施すべきですか?
毎回同じ深さで両方実施する必要はありません。 入口は重点対象者抽出を優先し、最終判断時に不足領域を補完して統合するのが実務的です。
統合判断をチームでそろえる方法はありますか?
層別化の定義、高・中・低ごとの優先介入、再評価トリガーを共通シート化すると、判断のばらつきが減ります。
FRAX記事と本記事の使い分けは?
FRAXの入力実務は FRAXの使い方記事、本記事は骨折リスク評価と転倒評価の統合判断に特化しています。
次の一手
- 全体像を再確認する:骨折リスク評価の親記事
- FRAXの入力手順を固める:FRAXの使い方
- 運用を整える:環境の詰まりも点検(無料チェックシート)
参考文献
- 実装時は、施設の評価票・安全管理手順・対象者特性に合わせて層別化基準を調整してください。
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


