- ICUせん妄評価は「覚醒度」と「評価の目的」を分けて考える
- RASS・CAM-ICU・ICDSCは評価しているものが違う
- CAM-ICUはRASS -4 / -5なら評価不能、-3〜+4なら評価へ進む
- CAM-ICUとICDSCは「その時点」か「観察の積み上げ」かで使い分ける
- 「評価不能」「陰性」「陽性」は同じ線上で扱わない
- 実際の評価は「安全確認→覚醒度→せん妄評価→再評価」で整理する
- PT・OT・STは結果を離床可否ではなく安全評価の一部として使う
- 記録は「覚醒度+せん妄評価+成立条件+次の行動」で残す
- よくある間違いは5つあります
- よくある質問(FAQ)
- まとめ|覚醒度とせん妄評価を混同しない
- 参考文献
- 著者情報
ICUせん妄評価は「覚醒度」と「評価の目的」を分けて考える
ICU のせん妄評価では、RASS・CAM-ICU・ICDSCを同じ役割の尺度として並べるのではなく、まず覚醒度を確認し、評価が成立する状態かを判断したうえで、目的に合うせん妄スクリーニングを選ぶことが重要です。RASS は覚醒・鎮静の深さ、CAM-ICU は評価時点のせん妄、ICDSC は一定期間の観察情報を整理する役割があります。
特に CAM-ICU では、RASS -4 / -5 は評価不能、RASS -3〜+4 では評価へ進むという境界を押さえておくと判断が整理しやすくなります。この記事では、RASS・CAM-ICU・ICDSCの違い、評価不能・陰性・陽性の扱い、PT / OT / ST が結果をどう臨床へつなげるかをまとめます。
意識・鎮静・せん妄評価の全体像から確認する
RASS・CAM-ICU・ICDSCは評価しているものが違う
最初に押さえたいのは、RASS はせん妄を判定する尺度ではないという点です。RASS は覚醒度・鎮静深度を評価し、CAM-ICUを行える状態かを確認する入口として使えます。一方、CAM-ICUとICDSCは、成人ICU患者のせん妄を拾い上げるためのスクリーニングツールです。
| 尺度 | 主に評価するもの | 評価の特徴 | 結果の扱い |
|---|---|---|---|
| RASS | 覚醒度・鎮静深度・興奮 | 評価時点の反応を段階化する | せん妄そのものの陽性・陰性は判定しない |
| CAM-ICU | せん妄 | 評価時点で4つの特徴を構造化して確認する | 陽性・陰性・評価不能を分ける |
| ICDSC | せん妄 | シフト中など一定期間の観察情報を積み上げる | 0〜8点で整理し、4点以上がせん妄スクリーニング陽性の目安となる |
つまり、RASS・CAM-ICU・ICDSCを「どれが優れているか」で選ぶのではなく、覚醒度を見たいのか、その時点のせん妄を構造化して見たいのか、一定期間の変動を含めて見たいのかで役割を分けます。
CAM-ICUはRASS -4 / -5なら評価不能、-3〜+4なら評価へ進む
CAM-ICUで特に迷いやすいのが、どの覚醒水準なら評価を進めてよいかです。CAM-ICUのトレーニングマニュアルでは、RASS -4 / -5 ではCAM-ICUを実施せず、評価不能として再評価し、RASS -3〜+4ではCAM-ICUへ進む流れが示されています。
| RASS | CAM-ICU | 考え方 | 次の対応 |
|---|---|---|---|
| -5 | 評価不能 | 声かけ・身体刺激にも反応がなく、内容的な評価が成立しない | 覚醒状態が変化した時点で再評価する |
| -4 | 評価不能 | 声かけでは反応せず、身体刺激で反応する状態のためCAM-ICUを進めない | 覚醒状態が変化した時点で再評価する |
| -3〜+4 | 評価へ進む | 声かけへの反応が確認できる範囲では、CAM-ICUの特徴を評価する | CAM-ICUの標準手順に沿って判定する |
重要:RASS -4 / -5 は「CAM-ICU陰性」ではありません。覚醒不十分のため評価不能です。陰性と評価不能を同じ欄で処理すると、せん妄がない患者として誤って引き継がれる可能性があります。
RASS -3 は境界に見えやすい状態ですが、CAM-ICUでは評価へ進む範囲です。反応が乏しいからといって、評価者の判断だけで自動的に「評価不能」とせず、標準手順に沿って判定します。CAM-ICUそのものの4特徴や判定方法は、CAM-ICUの評価方法で詳しく整理しています。
CAM-ICUとICDSCは「その時点」か「観察の積み上げ」かで使い分ける
CAM-ICUとICDSCはいずれもせん妄を拾い上げるために使われますが、評価の組み立て方が異なります。その時点の状態を短時間で構造化して判定したいならCAM-ICU、一定期間の観察情報や変動をまとめて捉えたいならICDSCという違いがあります。
| 比較項目 | CAM-ICU | ICDSC |
|---|---|---|
| 主な目的 | せん妄を構造化してスクリーニングする | 観察情報を積み上げてせん妄をスクリーニングする |
| 時間軸 | 評価時点を中心に判定する | シフト中など一定期間の情報を統合する |
| 結果 | 陽性・陰性・評価不能 | 0〜8点で整理する |
| 向いている場面 | 評価者間で短時間の判定をそろえたい | 夜間不穏、低活動、日内変動などを観察情報から拾いたい |
| 覚醒度との関係 | RASS -4 / -5では実施せず、-3〜+4で評価へ進む | 一定期間の意識状態も含めて評価する。深鎮静・昏睡が評価期間を通して続く場合は評価不能となり得る |
ここで注意したいのは、CAM-ICUが評価不能だからICDSCへ切り替えれば必ず評価できる、という関係ではないことです。ICDSCも深鎮静・昏睡が観察期間を通して続く場合には評価が成立しません。施設で採用している評価様式と実施基準に合わせて運用します。
ICDSCの8観察領域、採点、4点以上の扱いについては、ICDSCの評価方法で詳しく解説しています。
「評価不能」「陰性」「陽性」は同じ線上で扱わない
せん妄評価を実際に運用するときは、結果の数字以上に評価不能・陰性・陽性を正しく分けることが重要です。特に評価不能を陰性に含めると、覚醒が改善した後に必要な再評価が抜けやすくなります。
| 結果 | 意味 | 避けたい解釈 | 次の行動 |
|---|---|---|---|
| 評価不能 | 覚醒状態などのため評価そのものが成立しない | 「せん妄なし」と扱う | 理由を記録し、状態変化後に再評価する |
| 陰性 | 評価時点ではスクリーニング陽性条件を満たさない | 1回の陰性だけで以後のせん妄を否定する | 変動や違和感があれば時間を変えて再評価する |
| 陽性 | せん妄スクリーニングで陽性所見を認める | 尺度だけで診断確定とする | チームで共有し、背景因子・原因の評価と対応につなげる |
覚えておきたい3点:
① 評価不能 ≠ 陰性
② 陽性 = 診断確定ではない
③ 陰性でも臨床所見が変動すれば再評価する
実際の評価は「安全確認→覚醒度→せん妄評価→再評価」で整理する
RASS・CAM-ICU・ICDSCを臨床で使うときは、尺度だけを連続して実施するのではなく、まず急性の状態変化や全身状態を確認します。急な意識変化、呼吸・循環の不安定化、低酸素、低血糖などが疑われる場面では、尺度採点より原因検索や急変対応を優先します。
| 順番 | 確認すること | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 1 | 急変・全身状態 | 新たな呼吸・循環・神経学的異常があれば原因評価を優先する |
| 2 | 覚醒度 | RASSで現在の覚醒・鎮静状態を確認する |
| 3 | CAM-ICUの成立可否 | RASS -4 / -5なら評価不能、-3〜+4ならCAM-ICUへ進む |
| 4 | 使用するせん妄評価 | 評価時点を構造化するならCAM-ICU、観察期間を積み上げるならICDSCを使う |
| 5 | 結果と再評価 | 評価不能・陰性・陽性を分け、必要な再評価条件を共有する |
この順番は「すべての患者でRASS→CAM-ICU→ICDSCと順番に実施する」という意味ではありません。CAM-ICUとICDSCは目的や施設運用に応じて選択し、同じ患者に機械的に両方を重ねる必要はありません。
PT・OT・STは結果を離床可否ではなく安全評価の一部として使う
RASS・CAM-ICU・ICDSCは、リハビリテーション場面でも有用な情報になります。ただし、これらの尺度だけで離床できる・できないを決めるものではありません。離床・運動では、呼吸、循環、神経学的状態、医療機器、患者の苦痛などを含めた安全評価が必要です。
| 所見 | リハビリで見ること | 調整例 |
|---|---|---|
| 覚醒が低い | 声かけへの反応、指示理解、姿勢保持、全身状態 | 課題を単純化し、短時間で反応を確認する |
| 注意障害が目立つ | 注意持続、二重課題、ラインへの注意、安全認識 | 一度に伝える指示を1つにし、環境刺激を減らす |
| 不穏・興奮がある | 自己抜去、転倒、疼痛、不安、刺激への反応 | 見守り量を増やし、課題難易度と刺激量を調整する |
| 時間帯で変動する | 午前・午後・夜間での覚醒や注意の違い | 反応の良い時間帯を把握し、チームで共有する |
せん妄評価陽性だから一律に離床を中止する、RASSが低いから一律にベッド上介入だけにする、といった使い方は避けます。評価値は、患者のその時点の反応と安全性を説明する情報の1つとして扱います。
記録は「覚醒度+せん妄評価+成立条件+次の行動」で残す
記録では、RASSやせん妄評価の結果だけでなく、評価が成立したか、成立しなかった理由、次にいつ再評価するかまで残すと、他職種や次シフトへ状態変化を伝えやすくなります。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| CAM-ICU評価可能 | RASS -1。CAM-ICU陰性。午前より注意持続低下あり。状態変動を踏まえ夕方に再評価予定。 |
| CAM-ICU評価不能 | RASS -4。声かけで反応なく、CAM-ICUは覚醒不十分のため評価不能。覚醒状態変化後に再評価。 |
| CAM-ICU陽性 | RASS +1、CAM-ICU陽性。注意障害と状態変動を認める。チーム共有し背景因子を確認。 |
| ICDSC | 観察期間のICDSC 4 / 8点。せん妄スクリーニング陽性。日内変動を含めてチーム共有し再評価を継続。 |
「CAM-ICU陰性」だけでは、評価時のRASSやその前後の変動が分かりません。同じ陰性でも、終日RASS 0で安定している場合と、直前まで深鎮静で覚醒した直後では臨床的な背景が異なるため、条件をセットで残します。
よくある間違いは5つあります
ICUせん妄評価では、尺度の採点ミスだけでなく、それぞれの尺度の役割を混同することで判断がずれます。特に次の5点は先にそろえておきたいポイントです。
| よくある間違い | 修正する考え方 |
|---|---|
| RASSをせん妄評価として使う | RASSは覚醒度・鎮静深度の尺度であり、せん妄の陽性・陰性は判定しない |
| RASS -4 / -5をCAM-ICU陰性とする | CAM-ICUは評価不能として、覚醒状態が変化してから再評価する |
| CAM-ICU陰性1回でせん妄を除外する | せん妄は変動するため、臨床的な違和感や変化があれば再評価する |
| CAM-ICU陽性=診断確定とする | スクリーニング結果として共有し、患者背景や原因評価と合わせて判断する |
| CAM-ICUとICDSCを同じ方法として扱う | 評価時点を構造化するCAM-ICUと、観察情報を積み上げるICDSCの時間軸を分ける |
よくある質問(FAQ)
Q1. RASS -3でもCAM-ICUは評価できますか?
A. CAM-ICUの標準的な手順では、RASS -3〜+4でCAM-ICUへ進みます。RASS -3は反応が乏しく見えることがありますが、声かけへの動きや開眼がある状態としてCAM-ICUの評価対象に含まれます。RASS -4 / -5では評価を進めません。
Q2. RASS -4 / -5なら「せん妄なし」でよいですか?
A. いいえ。CAM-ICUでは「陰性」ではなく「評価不能」です。覚醒が不十分でせん妄評価そのものが成立していないため、状態が変化した後に再評価します。
Q3. CAM-ICUとICDSCはどちらを使えばよいですか?
A. その時点の状態を構造化して短時間で判定する場合はCAM-ICU、シフト中など一定期間の観察情報や変動を積み上げる場合はICDSCが使いやすくなります。実際の運用では施設で採用しているツールと手順を優先します。
Q4. CAM-ICUやICDSCが陽性ならせん妄の診断確定ですか?
A. スクリーニング結果だけで診断を確定するのではなく、急性・変動性の経過、患者背景、薬剤、感染、低酸素、代謝異常などの原因評価と合わせて臨床的に判断します。陽性結果はチームで共有し、原因検索と対応につなげます。
Q5. RASSやCAM-ICUの結果だけで離床可否を決められますか?
A. 決められません。RASSやせん妄評価は覚醒・注意・不穏などを把握する重要な情報ですが、離床では呼吸、循環、神経学的状態、医療機器、患者の苦痛なども合わせて安全性を判断します。
まとめ|覚醒度とせん妄評価を混同しない
ICUせん妄評価では、RASS・CAM-ICU・ICDSCを同列の尺度として扱わず、それぞれの役割を分けることが重要です。RASSで覚醒度を確認し、CAM-ICUではRASS -4 / -5を評価不能、-3〜+4を評価へ進む範囲として整理すると、陰性との混同を防ぎやすくなります。
CAM-ICUは評価時点を構造化して判定し、ICDSCは一定期間の観察情報を積み上げます。そして、評価不能は陰性ではなく、陽性も尺度だけで診断確定とするものではありません。結果を単発で終わらせず、状態変化と再評価条件までチームで共有することが、ICUでの安全な運用につながります。
参考文献
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

