ステロイド性骨粗鬆症の骨折リスク評価は「4項目+3点基準」で整理します
経口グルココルチコイド(GC)を3か月以上使用中、または使用予定の成人では、骨折リスクを「既存骨折・年齢・GC投与量・腰椎骨密度」の4項目で確認します。日本骨代謝学会のガイドラインでは、この危険因子スコアが合計3点以上で薬物治療開始が推奨されています。
この記事では、ステロイド性骨粗鬆症(グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症:GIOP)の評価基準、3点になる境界、FRAXとの違いを整理します。PT・OTなどリハ職が、転倒・身体機能・生活環境をどのように追加評価し、医師・チームへ何を共有するかまで確認できます。
最初に確認するポイント
18歳以上で経口GCを3か月以上使用中/使用予定の場合は、既存骨折・年齢・GC投与量(PSL換算)・腰椎骨密度を確認します。スコア3点以上は薬物治療開始基準に該当するため、リハ職だけで判断を完結させず、治療状況を医師・チームと共有します。

GIOPスコア|既存骨折・年齢・GC投与量・腰椎骨密度を確認する
日本のGIOP評価では、既存骨折、年齢、GC投与量、腰椎骨密度の4項目を点数化します。2023年ガイドラインでは、日本人データから作成された2014年改訂版のカットオフスコアを、薬物治療開始基準として使用することが推奨されています。
| 危険因子 | 条件 | スコア |
|---|---|---|
| 既存骨折 | なし | 0点 |
| あり | 7点 | |
| 年齢 | 50歳未満 | 0点 |
| 50歳以上65歳未満 | 2点 | |
| 65歳以上 | 4点 | |
| GC投与量 (PSL換算) |
5 mg/日未満 | 0点 |
| 5 mg/日以上7.5 mg/日未満 | 1点 | |
| 7.5 mg/日以上 | 4点 | |
| 腰椎骨密度 (%YAM) |
80%以上 | 0点 |
| 70%以上80%未満 | 2点 | |
| 70%未満 | 4点 |
合計3点以上が薬物治療開始基準です。そのため、既存骨折がある場合は7点、65歳以上は4点、PSL換算7.5 mg/日以上は4点、腰椎骨密度がYAM 70%未満なら4点となり、それぞれ単独で3点以上になります。
一方、50歳以上65歳未満の2点や、PSL換算5 mg/日以上7.5 mg/日未満の1点、腰椎骨密度YAM 70%以上80%未満の2点は、ほかの危険因子との組み合わせによって治療開始基準へ到達します。
3点になる境界|単独で該当する場合と組み合わせで該当する場合を分ける
実務で迷いやすいのは、すべてのステロイド使用者を一律に「高リスク」と扱うことではなく、どの危険因子によって3点以上になるかを整理する場面です。単独で基準を超える場合と、複数因子の組み合わせで基準を超える場合を分けると判断しやすくなります。
| 例 | スコア | 整理 |
|---|---|---|
| 65歳以上 | 年齢4点 | 年齢だけで3点以上 |
| 既存骨折あり | 既存骨折7点 | 既存骨折だけで3点以上 |
| PSL換算7.5 mg/日以上 | GC投与量4点 | 投与量だけで3点以上 |
| 腰椎骨密度YAM 70%未満 | 骨密度4点 | 骨密度だけで3点以上 |
| 55歳+PSL換算5 mg/日 | 年齢2点+GC投与量1点=3点 | 単独では届かなくても組み合わせで3点 |
| 55歳+腰椎骨密度YAM 75% | 年齢2点+骨密度2点=4点 | 複数因子の組み合わせで3点以上 |
このスコアは「PTが薬物治療を決めるため」のものではありません。リハ場面では、対象者が治療開始基準に該当する可能性を把握し、骨粗鬆症治療の有無や評価状況を医師・看護師・薬剤師などと共有するための共通情報として使います。
椎体骨折と骨密度|骨密度だけで判断しない
GIOPでは、骨密度の低下だけを追うのではなく、椎体骨折の有無を確認することが重要です。2023年ガイドラインでは、GC治療開始後早期に椎体骨折を評価すること、GC治療中はDXAによる骨密度測定を定期的に行うことが推奨されています。
特に既存骨折は7点と最も大きく配点されています。画像や診療情報で既存の椎体骨折・脆弱性骨折が確認されている場合は、その情報を評価前に把握しておく必要があります。
一方で、骨密度が比較的保たれているからといって、GIOPの骨折リスクを否定することはできません。GCによる骨折リスクは投与量や年齢、既存骨折などにも左右されるため、骨密度だけで安全・危険を二分しないことが重要です。
FRAXとの違い|日本のGIOPスコアを置き換えるものではない
FRAXは、臨床的危険因子などから将来10年間の骨折確率を推定するツールです。一方、日本のGIOPスコアは、経口GCを3か月以上使用中/使用予定の成人について、薬物治療開始基準を判断するために用いられます。目的が異なるため、同じものとして扱いません。
| 項目 | GIOPスコア | FRAX |
|---|---|---|
| 主な目的 | 日本でのGIOP薬物治療開始基準を整理する | 10年間の骨折確率を推定する |
| GC投与量 | PSL換算量を区分して点数化する | 標準入力ではGC使用を臨床的危険因子として扱う |
| 骨密度 | 腰椎骨密度の%YAMをスコアへ反映する | 大腿骨頸部BMDを利用できる |
| 日本のGIOP治療開始基準 | 3点以上 | GIOPに対する明確なFRAX介入閾値は日本では確立されていない |
2023年ガイドラインでは、日本国内でFRAXに基づく明確な薬物治療開始閾値は決まっていないため、GIOPの治療開始基準には2014年改訂版のスコアを使用することが推奨されています。FRAXの入力方法や結果の読み方は、FRAXの使い方で詳しく整理しています。
PTが追加でみる項目|「骨折しやすさ」と「転びやすさ」を分けて考える
GIOPスコアが示す骨折危険因子と、リハ場面で確認する転倒・身体機能リスクは役割が異なります。PT・OTでは、スコアを確認したうえで、実際に転倒や強い外力が生じる可能性を追加評価します。
| 視点 | 確認例 | 評価後に決めること |
|---|---|---|
| 転倒歴 | 最近の転倒、転倒しかけた場面、発生場所 | 再発しやすい状況を特定する |
| 歩行・移乗 | 立ち上がり、方向転換、歩行、移乗時の不安定性 | 介助量や動作方法を調整する |
| バランス | 静的・動的バランス、支持基底面の変化への反応 | 転倒につながる課題を絞る |
| 疼痛 | 新規の背部痛・腰痛、荷重や動作に伴う痛み | 負荷を続けてよいか再評価する |
| 活動量 | 臥床時間、離床量、歩行量、最近の活動性変化 | 廃用と転倒リスクの双方を考える |
| 生活環境 | 段差、手すり、履物、夜間動線、補助具 | 骨折につながる外的要因を減らす |
重要なのは、「骨折リスクが高いから動かさない」と短絡しないことです。原疾患、疼痛、画像所見、医師の指示、転倒リスク、現在の身体機能を統合し、安全に必要な活動を確保します。
医師・チームへ共有したい所見|新しい変化を見逃さない
リハ中に新しい症状や治療条件の変化を確認した場合は、初回スコアだけで判断を続けず、医師・チームへ共有して再評価につなげます。
- 新規または増悪した背部痛・腰痛:特に明確な外傷がなくても、椎体骨折などを含めて評価が必要か確認します。
- 身長低下や姿勢の明らかな変化:既存・新規椎体骨折を示唆する所見がないか確認します。
- 新たな転倒・転倒反復:骨折の有無だけでなく、次の転倒を防ぐため身体機能と環境を再評価します。
- GCの増量・治療期間の延長:前回確認時から投与条件が変化していないか確認します。
- 既存骨折が新たに判明:GIOPスコアとリハ時の安全管理を見直します。
- 長期GC使用中で骨密度や骨粗鬆症治療状況が不明:評価・治療状況を確認できるよう情報共有します。
リハ職が画像診断や薬物治療の適否を独自に決めるのではなく、「何が変わったか」「いつからか」「動作や荷重でどう変わるか」を整理して共有することが実務上重要です。
再評価|初回スコアではなく「前回から何が変わったか」を確認する
GIOPの骨折リスクは固定ではありません。GC投与量、骨密度、骨折歴、身体機能、転倒状況が変われば、リハ時に注意すべき内容も変化します。
再評価では、少なくともGC投与条件、新規骨折の有無、骨密度評価、疼痛、転倒、身体機能、生活環境について前回との差分を確認します。骨密度測定や画像評価の時期は、画一的な間隔をリハ職側で設定するのではなく、ガイドライン、原疾患、治療内容、主治医の計画に沿って確認します。
| 変化 | 再確認すること | リハでの対応 |
|---|---|---|
| GC増量・治療期間延長 | PSL換算量、GIOPスコア、治療状況 | 負荷条件と安全管理を再確認する |
| 新規骨折・骨折疑い | 部位、画像評価、医師の指示 | 従来の運動・動作練習をそのまま継続しない |
| 疼痛増悪 | 発症時期、部位、荷重・動作との関係 | 負荷を中断・調整し、必要時に共有する |
| 転倒 | 骨折の有無、転倒要因、歩行・移乗能力 | 再発予防策を更新する |
| 生活環境変化 | 移動範囲、補助具、段差、介助状況 | 現環境に合わせて動作方法を再設計する |
よくある失敗|GIOPスコアとPT評価の役割を混ぜない
ステロイド使用者の骨折リスク評価では、「数字を出したら終了」ではなく、何のための評価かを分けておく必要があります。
| 避けたい判断 | 整理の仕方 |
|---|---|
| ステロイド使用者を全員同じ「高リスク」にする | まず日本のGIOPスコアで4項目を確認する |
| 骨密度だけで骨折リスクを判断する | 既存骨折、年齢、GC投与量も合わせて確認する |
| FRAXの値だけでGIOP治療開始を判断する | 日本の治療開始基準はGIOPスコア3点以上で整理する |
| GIOPスコアだけでリハ中の転倒リスクを判断する | 歩行、移乗、バランス、転倒歴、環境を別に評価する |
| 初回評価後に見直さない | GC増量、新規骨折、疼痛、転倒などの変化時に再評価する |
よくある質問(FAQ)
ステロイドを使用していれば全員が薬物治療の対象になりますか?
一律ではありません。日本のGIOP管理では、経口GCを3か月以上使用中または使用予定の18歳以上を基本対象として、既存骨折、年齢、GC投与量、腰椎骨密度を点数化します。合計3点以上が薬物治療開始基準です。
65歳以上なら骨密度が正常でも治療開始基準に該当しますか?
GIOPスコアでは65歳以上は4点なので、年齢だけで3点以上になります。ただし、実際の治療内容や薬剤選択は原疾患、禁忌、併存症なども踏まえて医師が判断します。
FRAXが低ければGIOPスコアは確認しなくてもよいですか?
いいえ。2023年ガイドラインでは、日本でGIOPの薬物治療を開始する明確なFRAX閾値は確立されておらず、2014年改訂版のGIOPスコアを治療開始基準として用いることが推奨されています。FRAXとGIOPスコアは役割を分けて考えます。
PTはGIOPスコアが3点以上なら運動を中止すべきですか?
3点以上というだけで運動中止を意味するものではありません。GIOPスコアは薬物治療開始基準を整理する指標です。リハの実施可否や負荷量は、骨折の有無、疼痛、画像所見、原疾患、医師の指示、転倒リスク、身体機能などを統合して判断します。
次の一手
次は「骨折しやすさ」と「転びやすさ」を分けて整理すると、評価結果を介入へつなげやすくなります。
A|骨折リスク評価全体を確認する:骨折リスク評価の全体像
B|転倒リスクと統合する:骨折リスク評価と転倒リスク評価の統合
参考文献
- 日本骨代謝学会, グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン作成委員会. グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023. 東京: 南山堂; 2023. 日本骨代謝学会 ガイドライン
- Tanaka Y, Soen S, Hirata S, et al. The 2023 Guidelines for the management and treatment of glucocorticoid-induced osteoporosis. J Bone Miner Metab. 2024;42(2):143-154. doi: 10.1007/s00774-024-01502-w
- Suzuki Y, Nawata H, Soen S, et al. Guidelines on the management and treatment of glucocorticoid-induced osteoporosis of the Japanese Society for Bone and Mineral Research: 2014 update. J Bone Miner Metab. 2014;32(4):337-350. doi: 10.1007/s00774-014-0586-6
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

