ICU-AW と FSS-ICU の違いは「筋力」か「課題」かです
ICU-AW と FSS-ICU は、どちらも ICU 患者の状態共有に使われますが、見ているものは違います。ICU-AW は筋力低下の有無や程度を整理したいとき、FSS-ICU は寝返り・起き上がり・端座位・立ち上がり・歩行のどこで止まるかを整理したいときに使いやすい評価です。この記事では、両者の違い、使い分け、記録例を実務向けに整理します。
個別の評価方法を確認したい場合は、ICU-AW( MRC-SS )の評価、FSS-ICU の使い方もあわせて確認すると理解しやすいです。

ICU-AW と FSS-ICU の違いを先に比較します
ICU-AW は「筋力低下を疑う評価」、FSS-ICU は「動作課題ごとの詰まりをみる評価」と考えると整理しやすいです。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 項目 | ICU-AW | FSS-ICU |
|---|---|---|
| 主にみるもの | 筋力低下の有無と程度 | 5 課題ごとの機能レベル |
| 主役の評価 | MRC-SS | FSS-ICU |
| 向く問い | ICU-AW を疑うか | どの課題で止まるか |
| 共有しやすい内容 | びまん性筋力低下の疑い | 寝返り〜歩行の到達段階 |
| 次の一手 | 再評価、鑑別、条件固定 | 低い課題への介入、介助量調整 |
使い分けは「今日知りたいこと」で決めます
実務では、どちらが優れているかではなく、今日の評価で何を共有したいかを先に決める方が迷いません。
| 場面 | 主役にしやすい評価 | 理由 |
|---|---|---|
| びまん性の筋力低下を疑う | ICU-AW | 筋力低下の有無を共有しやすい |
| 起き上がりや立位で止まる理由をみたい | FSS-ICU | 課題別のボトルネックを追いやすい |
| 申し送りで今日の機能差を伝えたい | FSS-ICU | 寝返り・立位・歩行の段階が伝わりやすい |
| ICU-AW の疑いをチームへ共有したい | ICU-AW | MRC-SS を軸に説明しやすい |
| 筋力と動作の両方を追いたい | ICU-AW + FSS-ICU | 筋力低下と課題別の停滞を分けて残せる |
点数だけでなく評価条件も一緒に残します
ICU では、鎮静、せん妄、疼痛、疲労、ライン類、呼吸状態によって、同じ患者でも評価できる日とできない日が変わります。そのため、点数だけでなく「どの条件で評価できたか」を一緒に残すことが重要です。
| 比較軸 | ICU-AW | FSS-ICU |
|---|---|---|
| 評価対象 | 筋力低下の有無・程度 | 動作課題ごとの機能 |
| 主なスコア | MRC-SS( 60 点満点) | 5 課題 × 0〜7 点、合計 0〜35 点 |
| 成立しやすい日 | 覚醒、理解、協力度がそろう日 | 課題動作を安全に実施できる日 |
| 苦手な場面 | 指示理解や協力が不十分な日 | ラインや安全条件で課題実施が難しい日 |
| 強み | ICU-AW の疑いを共有しやすい | どの課題が低いか分かりやすい |
| 記録で残したいこと | 点数、体位、理解、疼痛、評価可否 | 低い課題、介助量、止まった理由 |
カルテ記録は「点数+理由+次の一手」で残します
ICU-AW でも FSS-ICU でも、点数だけでは次の介入につながりにくくなります。記録では、評価目的、成立条件、次の介入目標をセットで残すと共有しやすくなります。
ICU-AW の記録例
覚醒・理解ともに評価可能。MRC-SS 44 / 60。左右対称のびまん性筋力低下を認め、ICU-AW 疑いとして共有。同条件で翌日再評価予定。
FSS-ICU の記録例
FSS-ICU 18 / 35。寝返りと起き上がりは軽介助、立ち上がりで介助量増大。歩行は未実施。立ち上がり課題を主目標に介入継続。
両方使った日の記録例
MRC-SS 46 / 60。FSS-ICU 16 / 35。筋力低下に加え、立ち上がりと歩行課題で停滞あり。翌日も同条件で再評価し、立位介助量の変化を追う。
現場で迷う原因は「評価目的」が曖昧なことです
臨床では、評価そのものよりも「今日は何を答える評価なのか」が曖昧なまま始めると迷いやすくなります。新人 PT では、ICU-AW と FSS-ICU を両方覚えようとして、点数を取ること自体が目的になりやすい点に注意が必要です。
| 詰まりどころ | ありがちな状態 | 見直しポイント |
|---|---|---|
| 毎回どちらも取ろうとする | 評価負担が大きく続かない | 今日は筋力か、今日は課題か、主役を決める |
| 点数だけ残している | 前回と条件が違い比較しにくい | 体位、理解、介助量、ライン条件を併記する |
| 評価できない日に困る | 未実施で終わる | 不可の理由を残し、翌日の条件調整につなげる |
| FSS-ICU を合計点だけでみる | どの課題が詰まったか見えない | 低い課題を次の介入目標にする |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
ICU-AW と FSS-ICU はどちらか 1 つだけでよいですか?
必ずしも 1 つに絞る必要はありません。ただし、毎回どちらも取るより、「今日は筋力低下を共有する日」「今日は課題別の停滞を追う日」と主役を決めた方が運用しやすいです。
FSS-ICU が取れていれば ICU-AW は不要ですか?
不要とは限りません。FSS-ICU は動作課題の評価なので、筋力低下そのものを疑うかどうかを明確にしたい日は ICU-AW の考え方が役立ちます。
ICU-AW は点数だけ残せば十分ですか?
十分ではありません。MRC-SS の点数に加えて、覚醒、理解、疼痛、体位、評価が成立した条件を残すと再評価が安定します。
FSS-ICU は合計点だけ見ればよいですか?
合計点だけでは、どの課題が詰まっているかが見えにくくなります。寝返り、起き上がり、端座位、立ち上がり、歩行のどこが低いかを確認することが重要です。
次の一手
ICU-AW と FSS-ICU の違いは、「筋力低下をみるか」「課題別の詰まりをみるか」で整理すると迷いにくくなります。筋力低下を疑う日の評価はICU-AW( MRC-SS )の評価、課題別の見方を深めたい場合はFSS-ICU の使い方をご覧ください。
参考文献
- Huang M, Chan KS, Zanni JM, Parry SM, Neto AS, Neto JAA, et al. Functional Status Score for the ICU: An International Clinimetric Analysis of Validity, Responsiveness, and Minimal Important Difference. Crit Care Med. 2016;44(12):e1155-e1164. PubMed
- Hermans G, Clerckx B, Vanhullebusch T, Segers J, Vanpee G, Robbeets C, et al. Interobserver agreement of Medical Research Council sum-score and handgrip strength in the intensive care unit. Muscle Nerve. 2012;45(1):18-25. PubMed
- Latronico N, Nattino G, Guarneri B, Fagoni N, Amantini A, Bertolini G, et al. A guided approach to diagnose severe muscle weakness in the intensive care unit. Rev Bras Ter Intensiva. 2015;27(3):199-201. PMC
- Elkalawy H, Abdullatif M, Abdelhamid M. Early detection and assessment of intensive care unit-acquired weakness: an overview of the current evidence. Acute Crit Care. 2023;38(4):347-358. DOI
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

