ICU-AWの評価|MRC-SS 48点未満の見方と診断基準

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ICU-AWの評価|MRC-SS 48点未満だけで判断しない

ICU-AW(intensive care unit-acquired weakness)は、重症病態の経過中に新たに生じる、びまん性・左右対称性の筋力低下を中心とした臨床症候群です。評価ではMRC-SS(Medical Research Council sum score)がよく用いられますが、48点未満という数字だけで判断するものではありません。まず覚醒・理解・協力が得られ、MRC-SSを測定できる状態かを確認し、重症病態後の発症、筋力低下の分布、他の原因の有無と合わせて解釈します。本記事では、PT・OTがベッドサイドで迷いやすい「測れる条件」「48点未満の意味」「測れない場合」「再評価と鑑別」を順に整理します。

先に結論

  • MRC-SSは左右6筋群、計12筋群を評価する60点満点の筋力評価です。
  • 日本集中治療医学会では、24時間以上あけて2回以上のMRC-SSが48点未満、または検査可能な筋の平均MRCスコアが4点未満であることをICU-AWを疑う筋力基準として示しています。
  • 48点未満とは47点以下を指し、48点ちょうどは「48点未満」には含まれません。
  • 36点未満は重度筋力低下の目安として用いられますが、48点未満とは別の診断基準ではありません。
  • 鎮静・せん妄・指示理解困難などで測定できない場合は、無理にMRC-SSを算出しません。
ICU-AW評価の流れ|測定条件、MRC-SS、48点未満の解釈、鑑別と再評価
ICU-AWの評価では、MRC-SS 48点未満だけで判断せず、評価成立条件、筋力低下の分布、他原因の有無、再評価を合わせて確認します。

MRC-SS 48点未満とは?36点未満との違い

ICU-AWの評価では、MRC-SS 48点未満が重要な閾値ですが、単独で確定診断するための数字ではありません。重症病態後に出現した筋力低下であること、びまん性・左右対称性などの臨床像、重症病態以外の原因がないことを合わせて判断します。

MRC-SSの点数をどう解釈するか
結果 位置づけ 次に確認すること
48点未満 ICU-AWを疑う筋力基準として用いられる 発症時期、分布、再評価、他原因の除外
36点未満 重度筋力低下の目安 筋力低下の程度と機能への影響を確認
48点以上 48点未満という数値基準には該当しない 臨床的な筋力低下や経時変化がないか確認

36点未満は、MRC-SSによる筋力低下を重症度で整理するときに用いられてきた閾値です。したがって、「48点未満=ICU-AW、36点未満=別の病態」ではありません。

また、48点以上だからといって「筋力低下なし」を意味するわけではありません。MRC-SSは60点満点であり、数値だけでなく、入院前の身体機能、左右差、経時変化、活動状況と合わせて評価します。

ICU-AWを疑うときは「点数・臨床像・他原因」をセットでみる

ICU-AWは、重症患者に生じた筋力低下のうち、重症病態以外に明らかな原因が見当たらない場合に考える臨床診断です。日本集中治療医学会では、重症病態後に生じた急性の四肢筋力低下に対し、MRC-SSと他疾患の除外を組み合わせて評価する考え方が示されています。

ICU-AWを評価するときの確認ポイント
確認 見る内容 判断のポイント
発症時期 重症病態の発症後に筋力低下が出現したか 入院前からの筋力低下と区別する
分布 四肢にびまん性・概ね左右対称の筋力低下があるか 強い左右差や局在があれば別の原因を考える
MRC-SS 48点未満、または検査可能筋の平均MRCが4点未満か 評価が成立する覚醒・理解・協力が必要
経時確認 24時間以上あけた評価でも筋力低下を認めるか 単回測定だけで固定しない
他原因 中枢疾患、神経筋疾患、内分泌・電解質異常などがないか 非典型所見があれば鑑別を優先する

MRC-SSを測れるか|覚醒・理解・協力を先に確認する

MRC-SSは随意的な筋力評価なので、患者が検査に参加できることが前提です。鎮静が深い、せん妄が強い、指示理解が得られない場合などは、筋力そのものではなく評価条件によって低く見える可能性があります。

MRC-SS実施前に確認したい項目
項目 確認すること 評価が難しい例
覚醒 呼名や刺激に対して安定した反応がある 深い鎮静、意識障害
指示理解 運動指示を理解して実行できる せん妄、著明な注意障害、理解困難
協力 最大努力に近い随意運動を繰り返せる 著明な疲労、呼吸苦、検査への参加困難
疼痛・可動制限 疼痛や固定が筋力発揮を妨げていない 骨折、術後制限、強い疼痛、関節可動域制限

重要なのは、「測れない患者を0点にする」のではなく、なぜ測定できないのかを記録することです。覚醒不十分なのか、指示理解が難しいのか、疼痛や整形外科的制限なのかによって、その後の評価方法が変わります。

MRC-SSは左右6筋群、計12筋群を0〜5点で評価する

MRC-SSでは、上肢3筋群・下肢3筋群を左右それぞれ評価し、合計0〜60点で表します。各筋群を0〜5点で採点しますが、本記事では尺度の判定文を転載せず、評価対象となる運動を整理します。

MRC-SSで評価する6つの運動
部位 評価する運動 左右
上肢 肩関節外転 左右
肘関節屈曲 左右
手関節背屈 左右
下肢 股関節屈曲 左右
膝関節伸展 左右
足関節背屈 左右

MRC-SSは簡便ですが、4点と5点のような抵抗を加える判定では検者間差が生じることがあります。経時変化を見る場合は、可能な範囲で体位、疼痛、覚醒状態、評価方法を記録し、点数の変化が患者の変化なのか、測定条件の違いなのかを確認できるようにしておくことが重要です。

一部の筋群を測れない場合はどうする?

骨折、術後制限、疼痛などにより一部の筋群を評価できない場合、未評価項目を0点として60点満点の合計へ入れると、筋力低下を過大評価してしまいます。

日本集中治療医学会が紹介する診断枠組みでは、MRC-SS 48点未満に加えて、検査可能な筋の平均MRCスコアが4点未満という考え方が示されています。評価できなかった筋群と理由を明記し、合計点と平均値を混同しないようにします。

MRC-SSを測れない場合|無理にICU-AWを点数化しない

覚醒・理解・協力が得られない患者では、MRC-SSによるICU-AW評価は成立しません。この場合、「MRC-SSが低い」のではなく「現時点ではMRC-SSを評価できない」と区別します。

記録では、たとえば「鎮静下で指示理解が得られずMRC-SS評価困難」「せん妄により最大努力の再現性が得られず未評価」など、評価不能となった理由を具体的に残します。

一方、離床・移動能力の経過を残したい場合には、IMS(ICU Mobility Scale)の評価方法など、目的の異なる指標を併用できます。ただし、IMSは移動能力を評価する尺度であり、MRC-SSの代わりにICU-AWを診断する尺度ではありません。

覚醒・協力が得られない状態が続く場合や、神経・筋障害の詳細な評価が必要な場合には、病態に応じて神経伝導検査や筋電図などの電気生理学的評価が検討されます。

ICU-AWらしくない所見|強い左右差や局在があれば鑑別を優先する

典型的なICU-AWは、重症病態後に生じるびまん性・左右対称性の筋力低下で、脳神経は比較的保たれます。このパターンから外れる場合は、MRC-SSが低くてもICU-AWだけで説明しないことが重要です。

典型像から外れるときに確認したいこと
所見 考えること 追加確認
明らかな左右差・局在性 脳・脊髄・末梢神経などの局所病変 神経学的所見、画像、発症経過
脳神経症状が目立つ ICU-AW以外の神経筋疾患 眼球運動、顔面、嚥下・構音など
特徴的な感覚障害 末梢神経・脊髄病変など 感覚分布、反射、神経学的所見
疲労性・眼症状など 重症筋無力症など 症状の日内変動、眼球・球症状
採血異常 電解質・内分泌異常など K、Mg、甲状腺機能など病態に応じた検査

ギラン・バレー症候群(GBS)、重症筋無力症(MG)、中枢神経疾患、内分泌疾患、電解質異常などは、ICU-AWと区別すべき代表的な病態です。

また、ICU-AWという臨床像の背景には、critical illness polyneuropathy(CIP)、critical illness myopathy(CIM)、両者が混在する病態などがあります。MRC-SSだけではCIPとCIMを区別できません。必要に応じて電気生理学的検査などを組み合わせます。

再評価では「点数」だけでなく測定条件と分布を比較する

再評価では、MRC-SSの合計点だけを並べるのではなく、測定条件と筋力低下の分布を合わせて比較します。日本集中治療医学会が紹介する診断枠組みでは、24時間以上あけた2回以上の評価が示されています。

たとえば44点から48点へ改善した場合でも、初回は強い疼痛があり、再評価時には疼痛が軽減していたのであれば、4点の差をそのまま筋力回復と判断することはできません。

再評価時に比較したい項目
項目 記録する内容
MRC-SS 合計点、または検査可能筋の平均MRC
評価成立条件 覚醒、理解、協力度
測定への影響 疼痛、疲労、固定、可動域制限など
筋力低下の分布 びまん性・左右対称性、局在や左右差の有無
他原因 新たな神経学的所見、採血、病態変化など

記録例

MRC-SSを評価できた場合

覚醒・指示理解良好。MRC-SS 44/60。四肢に概ね左右対称の筋力低下を認める。疼痛による明らかな測定制限なし。ICU-AWを疑う筋力低下として共有し、他原因の有無を確認したうえで24時間以上あけて再評価する。

MRC-SSを評価できない場合

覚醒不十分で運動指示への一貫した反応が得られず、MRC-SSは評価困難。現時点で点数化せず、評価不能理由を記録。覚醒・協力が得られた時点で再評価する。

ICU-AW評価・MRC-SS記録シート|Excel・PDF

MRC-SSを「測定条件→12筋群→点数の解釈→非典型所見→再評価」まで一続きで記録できるシートを用意しています。Excel版は入力・計算用、PDF版は印刷して記入する場合に使用できます。

ICU-AW 評価・MRC-SS 記録シート

MRC-SSの左右12筋群、評価成立条件、48点未満・36点未満の位置づけ、非典型所見、再評価内容をまとめて記録できます。

※本シートは診断を自動確定するものではありません。MRC-SSと臨床像、他原因の確認を整理するための記録補助として使用してください。

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ICU-AWとMRC-SSでよくある質問

Q1. MRC-SSが48点ちょうどならICU-AWですか?

日本集中治療医学会が紹介する筋力基準は「48点未満」です。そのため、48点ちょうどはこの数値基準には該当しません。ただし、48点以上だから筋力低下がないという意味ではないため、臨床像や経時変化も確認します。

Q2. MRC-SSが1回だけ48点未満ならICU-AWと判断できますか?

日本集中治療医学会が紹介する診断枠組みでは、24時間以上あけて2回以上のMRC評価が示されています。単回で48点未満を認めた場合は筋力低下として共有し、評価条件や他原因を確認しながら再評価へつなげます。

Q3. 36点未満なら何が変わりますか?

36点未満は重度筋力低下の目安として用いられています。ICU-AWを判断するための別の診断基準ではなく、筋力低下の程度を整理する指標として位置づけます。

Q4. 鎮静中でMRC-SSを測れない場合はどうしますか?

無理に0点として合計せず、「覚醒不十分」「指示理解困難」など評価できない理由を記録します。覚醒・協力が得られた時点で再評価します。移動能力を別尺度で評価することはできますが、それをMRC-SSによるICU-AW評価の代わりにはしません。

次の一手|筋力評価から離床・機能評価へつなげる

MRC-SSで筋力低下を確認した後は、筋力だけで離床レベルを決めず、循環・呼吸状態、意識、活動能力、安全性を合わせて判断します。


参考文献

  1. 日本集中治療医学会. PICS 集中治療後症候群:身体機能障害・ICU-AW. https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html
  2. Stevens RD, Marshall SA, Cornblath DR, et al. A framework for diagnosing and classifying intensive care unit-acquired weakness. Crit Care Med. 2009;37(10 Suppl):S299-S308. doi: 10.1097/CCM.0b013e3181b6ef67
  3. Hermans G, Clerckx B, Vanhullebusch T, et al. Interobserver agreement of Medical Research Council sum-score and handgrip strength in the intensive care unit. Muscle Nerve. 2012;45(1):18-25. doi: 10.1002/mus.22219
  4. Chen J, Huang M. Intensive care unit-acquired weakness: Recent insights. J Intensive Med. 2024;4(1):73-80. doi: 10.1016/j.jointm.2023.07.002
  5. Piva S, Fagoni N, Latronico N. Intensive care unit-acquired weakness: unanswered questions and targets for future research. F1000Res. 2019;8:F1000 Faculty Rev-508. doi: 10.12688/f1000research.17376.1

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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