mMRCとBorgの違いは「生活への影響」と「その時点のつらさ」
結論:mMRCは、息切れによって日常生活の活動がどの程度制限されているかをみる尺度です。一方、この記事で比較する修正Borg CR10は、運動中など「その時点」の息切れや脚疲労といった知覚強度を評価します。
つまり、生活上の活動制限を整理したいときはmMRC、歩行練習や運動療法中のつらさを確認したいときは修正Borg CR10と考えると使い分けやすくなります。2つの点数を直接比べるものではなく、それぞれ異なる側面を評価する尺度です。
この記事では、PT / OT / STが迷いやすいmMRCと修正Borg CR10の違い、使い分け、併用する場面、結果がズレたときの読み方、臨床記録例まで整理します。
呼吸困難スケール全体から選びたい方へ
mMRCと修正Borg CR10は「何を測るか」が違う
mMRCと修正Borg CR10は、どちらも呼吸困難の評価に使われますが、評価している内容は同じではありません。mMRCは活動レベルに基づいて息切れによる生活上の制限を分類する尺度、修正Borg CR10は運動などの刺激に対する、その時点の息切れの強さを評価する尺度として整理すると理解しやすくなります。
mMRCは一般に0〜4の5段階で扱われます。一方、修正Borg CR10はカテゴリ比尺度を用いて息切れなどの知覚強度を評価します。したがって、「mMRC 2とBorg 2は同じ程度」といった比較はできません。
| 比較項目 | mMRC | 修正Borg CR10 |
|---|---|---|
| 主にみるもの | 息切れによる日常生活・活動への制限 | その時点の息切れ、脚疲労などの知覚強度 |
| 代表的な場面 | 初回評価、再評価、退院前、外来フォロー | 歩行練習、運動療法、運動負荷試験、6分間歩行など |
| 評価の時間軸 | 生活場面での活動制限を捉える | 運動前・運動中・終了時・回復時など、その時点を捉える |
| 臨床での役割 | 生活上の息切れによる制限を分類・共有する | 負荷量や休憩方法を調整する際の補助情報にする |
| 点数の比較 | mMRCとBorgの数字を直接比較しない。それぞれの尺度内で意味を解釈する | |
| 記録で残したい条件 | 生活場面、移動方法、息切れで制限された活動 | 運動課題、取得時点、息切れか脚疲労か、補助具・酸素条件など |
ポイント:mMRCは「病気そのものの重症度」を単独で決める尺度ではありません。息切れによる機能的な活動制限を捉える尺度として扱います。
使い分けは「生活を知りたいか、今のつらさを知りたいか」で決める
どちらを使うか迷ったときは、評価したい内容を先に決めます。生活全体への影響を知りたいならmMRC、今行っている運動による息切れを知りたいなら修正Borg CR10が基本です。
- 日常生活で息切れがどの程度行動を制限しているか知りたい
→ mMRCを使います。 - 歩行や運動中に、今どの程度息切れしているか知りたい
→ 修正Borg CR10を使います。 - 運動療法の前後で息切れの変化を確認したい
→ 同じ条件・同じ取得時点で修正Borg CR10を比較します。 - 生活上の変化と運動中の反応を両方みたい
→ mMRCと修正Borg CR10を併用します。
特に注意したいのは、mMRCを「今日の息苦しさ」のような短時間の変化として扱わないことです。反対に、修正Borg CR10の1回の値だけから、患者の生活全体における呼吸困難の程度を判断することも避けます。
mMRCとBorgは「節目+セッション中」で併用すると整理しやすい
mMRCと修正Borg CR10は競合する尺度ではなく、異なる時間軸を補い合う組み合わせとして使えます。たとえば初回評価や退院前にはmMRCで生活への影響を確認し、日々の歩行練習や運動療法では修正Borg CR10でその場の反応を確認します。
| 場面 | mMRC | 修正Borg CR10 | 評価後に考えること |
|---|---|---|---|
| 初回評価 | 生活上の息切れによる活動制限を確認 | 歩行や運動課題に対する反応を確認 | 生活で困る場面と運動時の限界因子が一致するか |
| 運動療法中 | 原則として毎回の短時間変化を追う目的にはしない | 運動中・終了時・回復時などで確認 | 負荷量、ペース、休憩方法をどう調整するか |
| 再評価・退院前 | 生活上の活動制限が変化したか確認 | 同程度の運動課題で反応が変わったか確認 | 生活への汎化と運動耐容能の両面から整理する |
同じ患者でも、生活では息切れを避けるよう行動している一方、リハビリでは普段より高い運動負荷まで実施することがあります。そのため、mMRCと修正Borg CR10の結果が一致しないこと自体を「評価ミス」と考える必要はありません。
mMRCとBorgがズレたときは「何を測っているか」に戻って考える
この記事で最も重要なのが、mMRCと修正Borg CR10の結果がズレたときの読み方です。両者は異なる側面を評価するため、結果が一致しないことはあり得ます。
なお、ここでいう「Borg高値・低値」は特定の一律カットオフを意味しません。患者本人の過去の値や、同じ運動条件での反応と比較して考えるための表現です。
| 組み合わせ | 考えられること | 次に確認したいこと |
|---|---|---|
| mMRC軽度 + Borg高値 |
日常生活では高負荷活動を避けている一方、運動課題で息切れが表面化している可能性 | 歩行速度、坂・階段、運動時間、SpO2、心拍、脚疲労、活動回避の有無 |
| mMRC重度 + Borg低値 |
当日の課題が生活で問題となる活動より軽い、またはペース・補助具・環境調整が有効に働いている可能性 | 運動課題の負荷量、歩行距離、補助具、介助量、生活場面との条件差 |
| mMRC重度 + Borg高値 |
生活上の活動制限に加え、現在の運動課題でも強い症状が出ている可能性 | 負荷量、休憩設計、バイタルサイン、酸素条件、検査・運動の中止基準 |
| mMRC軽度 + Borg低値 |
現在確認している生活・運動条件では息切れの影響が比較的小さい可能性 | より高い活動レベルでの症状、本人が活動を制限していないか、客観的運動反応 |
ズレたら追加評価:「どちらが正しいか」を決めるのではなく、生活で避けている活動はないか、運動課題の強度は十分か、呼吸困難と脚疲労のどちらが主因か、SpO2・心拍などの客観指標はどうかを確認します。
記録は「数字+場面+条件+何がつらいか」で残す
mMRCも修正Borg CR10も、数字だけを記録すると後から解釈しにくくなります。特に修正Borg CR10では、いつ取得した値なのか、何に対する評価なのかを残すことが重要です。
また、「Borg 4」だけでは息切れなのか脚疲労なのか分かりません。歩行や6分間歩行では、可能であれば息切れと脚疲労を分けて記録すると、次の介入を考えやすくなります。
| 場面 | 尺度 | 記録例 |
|---|---|---|
| 初回評価 | mMRC | mMRC 2。屋外歩行では息切れにより速度低下あり。坂道は休憩を要する。 |
| 歩行練習 | 修正Borg CR10 | 歩行4分終了時、CR10(息切れ / 脚疲労)=4 / 3。杖使用。休憩2分で息切れ軽減。 |
| 6分間歩行 | 修正Borg CR10 | 運動前と終了時の息切れ・脚疲労をCR10で記録。歩行距離、SpO2最低値、心拍、補助具条件も併記。 |
| 退院前 | mMRC+修正Borg CR10 | mMRCの変化と、同条件歩行終了時のCR10を比較。屋外歩行時の休憩回数も併記。 |
再評価では、靴、歩行補助具、酸素投与、歩行コース、運動時間、介助量などの条件が変わっていないかも確認します。条件が変わった場合は、点数の変化だけを介入効果として解釈せず、変更内容を記録します。
修正Borg CR10とRPE 6–20は同じものとして扱わない
「Borg」という名称から混同されやすいのが、修正Borg CR10とBorg RPE 6–20です。この記事でmMRCと比較している主役は、呼吸困難などの知覚強度を評価するときに用いられる修正Borg CR10です。
一方、Borg RPE 6–20は、主として運動時の全身的な自覚的運動強度を評価する文脈で使われます。どちらもBorgによる知覚尺度ですが、尺度の形式と使い方は同じではありません。
この記事での表記:呼吸困難や脚疲労について述べる場合は、原則として「修正Borg CR10」と明記します。「Borg(CR10 / RPE)」のように2つを一括して扱いません。
修正Borg CR10そのものの評価方法や記録方法を詳しく確認したい場合は、Borgスケールの評価方法もあわせて確認してください。
Borgの値だけで運動の中止・再開を決めない
修正Borg CR10は運動負荷を調整するうえで有用ですが、Borgの値だけを中止基準にするものではありません。患者の症状、顔色、会話、胸痛、めまい、SpO2、心拍、血圧などの反応に加え、実施している運動・検査ごとの中止基準や医師指示、施設基準を確認します。
たとえば6分間歩行では、歩行距離だけでなく呼吸困難や疲労、酸素化などを同じ条件で確認することで、運動時の反応をより立体的に捉えられます。
6分間歩行での具体的な評価条件や記録方法は、6分間歩行テストの実践ガイドで整理しています。
よくある質問
mMRCと修正Borg CR10を使うときに迷いやすいポイントを整理します。
Q1. mMRCとBorgは両方取る意味がありますか?
A. あります。mMRCは生活上の息切れによる活動制限、修正Borg CR10はその時点の息切れや脚疲労を評価するため、異なる情報が得られます。初回・再評価などの節目でmMRC、運動療法中に修正Borg CR10を使うと整理しやすくなります。
Q2. mMRCとBorgの点数は対応していますか?
A. 対応していません。mMRCと修正Borg CR10は尺度の構造と評価する内容が異なるため、「mMRC 2=Borg 2」のようには比較できません。それぞれの尺度内で解釈します。
Q3. mMRCが軽いのにBorgが高いのはおかしいですか?
A. 必ずしもおかしくありません。生活では息切れが出る活動を避けていてmMRCが軽くみえる一方、運動療法や歩行テストでは普段より高い負荷が加わり、息切れが表面化することがあります。運動強度、SpO2、心拍、脚疲労、普段の活動回避などを追加で確認します。
Q4. Borgの数値が毎回バラつく場合はどうしますか?
A. まず取得条件を確認します。運動課題、速度、補助具、酸素条件、取得タイミング、患者への説明が変わっていないかを確認してください。息切れと脚疲労も分けて聴取し、同じ条件で比較することが重要です。
Q5. CR10とRPE 6–20はどちらを使えばよいですか?
A. 呼吸困難や脚疲労など特定の知覚強度を追いたい場合は修正Borg CR10、全身的な自覚的運動強度を評価する目的ではRPE 6–20が使われます。目的に合わせて選び、同じ評価の中では使用する尺度と取得条件を明確に記録します。
まとめ|mMRCは生活、修正Borg CR10は運動中をみる
mMRCと修正Borg CR10は、どちらが優れているかを選ぶ関係ではありません。mMRCは息切れによる日常生活の活動制限、修正Borg CR10は運動中・その時点の息切れや脚疲労を評価します。
臨床では、まず「何を知りたいか」を決め、生活への影響ならmMRC、その場の運動反応なら修正Borg CR10を選びます。両方を使った結果がズレた場合は、点数を無理に一致させるのではなく、生活での活動回避、運動負荷、息切れと脚疲労、SpO2・心拍、補助具や環境条件を追加で確認することが次の評価につながります。
参考文献
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

