- 褥瘡ハイリスク患者ケア加算(様式 37 の 2)|①〜④の数え方と月次運用を固定
- まず結論|③は実人数、9 項目は「項目別は延べ」、報告は前月 1 か月
- 点数と位置づけ| A236 は入院中 1 回( 500 点)で「予防ケアの継続」を評価
- 様式 37 の 2|①〜④は「実人数」でそろえる(記載上の注意)
- 数え方の実務|③(患者単位)と 9 項目(項目単位)を分けて持つ
- ハイリスク 9 項目|拾う場所(記録のどこを見るか)を固定する
- 月次運用の 5 分フロー|集計→カンファ→修正→年次報告に流す
- 現場の詰まりどころ|まずは「失敗パターン」と「回避の手順」を固定する
- よくある失敗|③の水増し・ 9 項目の取り漏れ・ ④の算定漏れ
- 回避の手順/チェック|「拾う → 残す → 点検する」を最小セット化
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手|運用を整える → 共有の型を作る → 環境要因も点検する
- 参考文献
- 著者情報
褥瘡ハイリスク患者ケア加算(様式 37 の 2)|①〜④の数え方と月次運用を固定
このページは「褥瘡ハイリスク患者ケア加算( A236 )」の実務で一番詰まりやすい、様式 37 の 2(①〜④ と 9 項目)の数え方を、監査でもブレない形に固定するためのまとめです。結論はシンプルで、③は “実人数”、9 項目は “項目別は複数回答(延べ)”、報告は “前月 1 か月”の 3 点を押さえるだけで運用が安定します。
読み終えると、月次集計→褥瘡対策チーム→年次報告が同じ型で回り、書類が「年 1 回のイベント」から「日常業務の延長」に変わります。関連する全体設計(施設基準フロー)も併せて確認すると、院内の標準化が一段ラクになります。
まず結論|③は実人数、9 項目は「項目別は延べ」、報告は前月 1 か月
③(ハイリスク該当患者数)は実人数です。同一患者が複数のハイリスク項目に該当しても、③の患者数は 1 名として数えます。一方で、様式内の9 項目( 1〜9 )の人数欄は、運用上「どの項目で拾えたか」を残すために、項目別は複数回答(延べ)で数えると、現場の改善に使えるデータになります。
また、様式 37 の 2 は報告月の前月 1 か月の実績を記入します。月次で集計の型を作り、年次報告(提出)にそのまま流し込める形にしておくのが最短です。
| チェック | 結論 | よくあるズレ | 直し方(運用ルール) |
|---|---|---|---|
| 報告期間 | 報告月の前月 1 か月 | 当月を入れてしまう | 「締め日=月末」で固定し、月初に集計する |
| ① 入院患者数 | 前月に入院していた患者の実人数 | 延べ入院日数を数える | 病棟台帳から「実人数」を抽出する |
| ② リスクアセスメント | 実施した患者の実人数 | 複数回実施を延べ計上 | 「 1 患者= 1 」で固定 |
| ③ ハイリスク該当 | 該当患者の実人数 | 複数項目で人数が膨らむ | ③は「患者単位」。項目別は別管理(延べ) |
| ④ 算定人数 | 入院中 1 回の算定をした実人数 | 対象なのに算定漏れ | 「抽出→計画→実施→算定」を 1 本の流れで残す |
点数と位置づけ| A236 は入院中 1 回( 500 点)で「予防ケアの継続」を評価
褥瘡ハイリスク患者ケア加算( A236 )は、施設基準の届出を行った医療機関で、重点的な褥瘡ケアが必要な患者に対して、予防治療計画に基づく総合的な褥瘡対策を継続した場合に、入院中 1 回加算として算定します(所定点数に 500 点)。
実務では「ハイリスク抽出」だけで終わると算定根拠が弱くなります。抽出(③)→計画→ケア実施→評価までが 1 セットです。様式 37 の 2 は、その運用が回っているかを示すための実績報告(見える化)として使います。
様式 37 の 2|①〜④は「実人数」でそろえる(記載上の注意)
①〜④は、原則として実人数で記入します。②は「リスクアセスメントを複数回実施していても 1 名」、③は「複数のハイリスク項目を有していても 1 名」と整理されているため、患者単位でぶれないことが最優先です。
一方、 9 項目の人数欄は「何が多いか」を示す改善材料になります。③(患者単位)と 9 項目(項目単位)を分けて持つと、会議が “数字合わせ” から “打ち手” に変わります。
| 項目 | 何の人数? | カウントのコツ | よくある NG |
|---|---|---|---|
| ① 入院患者数 | 前月に入院していた患者の実人数 | 病棟台帳から実人数を抽出 | 延べ入院日数を入れる |
| ② リスクアセスメント実施 | ①のうち実施した患者の実人数 | 複数回でも 1 患者= 1 | 定期評価を延べ計上 |
| ③ ハイリスク該当 | ②のうち 9 項目いずれか該当の実人数 | 複数項目でも患者数は 1 | 項目別人数の合計を③にする |
| ④ 算定人数 | 入院中 1 回、算定した実人数 | 対象抽出から算定までを 1 本で残す | 対象=算定と誤解して漏れる |
数え方の実務|③(患者単位)と 9 項目(項目単位)を分けて持つ
運用が崩れるポイントは、「③」と「 9 項目」を混ぜてしまうことです。③は患者単位(実人数)、 9 項目は項目単位(改善のための内訳)と割り切ると、月次集計が一気にラクになります。
おすすめは、月次で( A )③の実人数と、( B ) 9 項目の延べ内訳を同時に残すことです。③が横ばいでも、項目の構成が変われば打ち手(手術周り/下痢/医療機器など)が変わるため、会議の質が上がります。
| 論点 | OK | NG | なぜダメ? |
|---|---|---|---|
| ③の数え方 | 該当患者の実人数( 1 人= 1 ) | 項目別人数を合計して③にする | 複数項目該当で水増しされる |
| 項目別人数 | 複数項目に該当なら、それぞれ 1 ずつ計上(延べ) | 患者が複数項目でも 1 項目にしか入れない | 改善の「原因内訳」が見えなくなる |
| ②の扱い | 複数回評価しても 1 患者= 1 | 定期評価を延べ計上 | 実施率が不自然に上がる |
ハイリスク 9 項目|拾う場所(記録のどこを見るか)を固定する
9 項目は “定義を暗記する” より、院内で「どの記録を見れば拾えるか」を固定した方が再現性が上がります。担当者が変わっても同じ数になり、監査でも説明しやすくなります。
下の表は「拾う場所」の例です。病院の記録様式に合わせて、参照元(オーダー/麻酔記録/看護記録/機器管理)を 1 つに決めるだけで、集計の手戻りが減ります。
| 項目 | 何で拾う?(例) | 誰が最終確認? | メモ(運用で決める) |
|---|---|---|---|
| 1 ショック状態 | 急変記録/循環作動薬開始 | 看護師・医師 | 定義は院内で 1 行に固定 |
| 2 重度の末梢循環不全 | 診療録/検査所見/治療内容 | 医師 | 対象病棟で拾う記録を統一 |
| 3 麻薬等の鎮痛・鎮静剤の持続使用 | 持続投与オーダー/注射指示 | 薬剤・看護 | 「持続」の判断をルール化 |
| 4 6 時間以上の全身麻酔手術 | 麻酔記録(時間) | 手術室・医師 | 時間の切り取り(麻酔時間)で統一 |
| 5 特殊体位の手術 | 手術記録(体位) | 手術室 | 腹臥位/砕石位などを院内一覧化 |
| 6 強度の下痢が続く | 看護記録(排便) | 看護師 | 「強度」「続く」の線引きを固定 |
| 7 皮膚の脆弱(低出生体重児、 GVHD、黄疸など) | 診療録/小児・血液内科記録 | 医師 | 対象診療科で拾い方を統一 |
| 8 医療関連機器の長期かつ持続的な使用 | 機器管理/処置内容(固定具・弾性ストッキング等) | 看護師 | 対象機器リストを院内で固定 |
| 9 危険因子があり、既に褥瘡を有する | 褥瘡ケア計画/褥瘡評価(部位・重症度) | 褥瘡対策チーム | 「既に褥瘡あり」の拾い元を統一 |
月次運用の 5 分フロー|集計→カンファ→修正→年次報告に流す
様式 37 の 2 は “年 1 回の提出” に見えますが、勝ち筋は月次で回すことです。月次で数字の整合が取れていれば、年次報告は「コピペで終わる仕事」になります。
おすすめの最小フローは次のとおりです。ポイントは、③(患者単位)と 9 項目(内訳)を同時に残すことと、算定(④)まで落とし込むことです。
| タイミング | やること | 成果物 | 担当(例) |
|---|---|---|---|
| 月初( 1〜 5 日) | 前月の①〜④を下書き(実人数) | 集計表(下書き) | 病棟担当+事務 |
| 同週 | ③の対象を抽出し、 9 項目の内訳を付ける | ③(実人数)+ 9 項目内訳(延べ) | 看護師・褥瘡管理者 |
| カンファ(週 1 回) | 対象患者の計画・ケア・評価の整合を確認 | 算定根拠のメモ | 褥瘡対策チーム |
| 月中 | 算定漏れ(④)を点検し、運用を修正 | ④ の確定 | 管理者+病棟 |
| 年次 | 月次を集計して提出用に整形 | 提出用 様式 37 の 2 | 施設基準担当 |
現場の詰まりどころ|まずは「失敗パターン」と「回避の手順」を固定する
現場で止まりやすいのは、③の扱いと医療関連機器( 8 )の拾い方、そして算定(④)まで一気通貫で残せないことです。ここは “読ませるゾーン” なので、最短で解決できる導線だけ置きます。
よくある失敗|③の水増し・ 9 項目の取り漏れ・ ④の算定漏れ
ミスの大半は「数字の定義が混ざる」ことから起きます。③(患者単位)と 9 項目(内訳)を分けるだけで、集計の再現性が上がります。
下の表の NG を、院内ルールとして 1 行で固定すると、担当交代があっても数字が揃います。
| 失敗 | NG 例 | OK(直し方) | 固定するルール( 1 行) |
|---|---|---|---|
| ③が合わない | 項目別人数の合計を③にする | ③は該当患者の実人数(患者単位) | ③は「 1 人= 1 」で数える |
| 8 の拾い漏れ | 機器を看護記録だけで拾う | 「機器管理」か「処置指示」など参照元を固定 | 8 は “見る記録” を 1 つに統一 |
| ④の漏れ | ③の対象=算定と誤解して放置 | 抽出→計画→実施→評価→算定の線を残す | ④は “算定実績” を月次で点検 |
回避の手順/チェック|「拾う → 残す → 点検する」を最小セット化
回避のコツは、拾う場所(記録)と残し方(メモ)と点検のタイミング(月次)を固定することです。下のチェックを月次会議の前に埋めるだけで、手戻りが激減します。
運用が固まったら、年次提出の直前に慌てる必要がなくなります。
| チェック | 見る場所(固定) | 合否 | メモ(残す一言) |
|---|---|---|---|
| ① 実人数が取れている | 病棟台帳 | □ | 集計ルール(再入院の扱い) |
| ② は 1 患者= 1 | リスクアセスメント実施一覧 | □ | 評価ツールとタイミング |
| ③ は患者単位(実人数) | ハイリスク該当者リスト | □ | 該当の根拠(項目) |
| 9 項目の参照元が統一 | 麻酔記録/機器管理/看護記録(院内で固定) | □ | 拾い元の変更は会議で決める |
| ④ の算定漏れを点検 | 算定リスト/請求確認 | □ | 漏れの原因(記録不足/手順抜け) |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. ③は、 9 項目の人数を合計して作っていいですか?
いいえ。③は「②のうち、 9 項目に該当する患者の実人数」です。同一患者が複数項目に該当しても、③は 1 名として数えます。項目別人数は内訳(改善用)として別で持つと運用が安定します。
Q2. 同一患者が 3 と 4 に該当した場合、 9 項目はどう数えますか?
③(患者単位)は 1 名です。一方で、 9 項目の内訳は「 3 に 1 名」「 4 に 1 名」として、項目別に 1 ずつ計上(延べ)すると、どの要因が多いかが見える化できます。
Q3. 8(医療関連機器の長期かつ持続的使用)は、何を対象にしますか?
様式の例示(医療用弾性ストッキング、シーネ等)を軸に、院内で「対象機器リスト」と「拾う記録(機器管理/処置指示など)」を 1 つに固定するのが安全です。対象の境界を人に依存させないのがポイントです。
Q4. ④は、③の該当患者と同じ人数になりますか?
一致するとは限りません。④は「実際に加算を算定した実人数」です。抽出(③)だけでなく、計画・ケア・評価・記録が整って算定に至った人数として月次で点検すると、漏れが減ります。
Q5. この報告は “いつの実績” を書きますか?
様式 37 の 2 は「報告月の前月 1 か月」の実績を記入します。月次で締めておくと、年次の提出作業が最小化できます。
次の一手|運用を整える → 共有の型を作る → 環境要因も点検する
- 運用を整える:褥瘡対策の施設基準フロー(全体設計)
- 共有の型を作る:様式 5 の 4(褥瘡報告)の数え方・集計
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。/pt-career-guide/
参考文献
- 地方厚生(支)局:褥瘡ハイリスク患者ケア加算に係る報告書(様式 37 の 2)/記載上の注意( PDF )。https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/000407511.pdf
- 地方厚生(支)局:褥瘡ハイリスク患者ケア加算に係る報告書(記載上の注意を含む PDF 例)。https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/000370683.pdf
- 地方厚生(支)局:褥瘡ハイリスク患者ケア加算の施設基準に係る届出書添付書類(様式 37 )。https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/r6-k37.pdf
- 診療報酬点数表( A236 褥瘡ハイリスク患者ケア加算: 500 点・入院中 1 回)掲載ページ(参照用)。https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r06_ika/r06i_ch1/r06i1_pa2/r06i12_sec2/r06i122_A236.html
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


