褥瘡ハイリスク患者ケア加算とは?点数・算定要件・ハイリスク項目を現場目線で整理

制度・実務
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褥瘡ハイリスク患者ケア加算とは?

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褥瘡ハイリスク患者ケア加算は、「褥瘡が発生しやすい高リスク患者」を早期に抽出し、予防的な看護・多職種連携を行ったことを評価する入院料加算です。ショックや長時間手術、強度の下痢、医療関連機器の長期使用など、褥瘡リスクが急上昇する状況を対象とし、ハイリスク患者に重点的なケアを行う体制づくりが求められます。

算定には、褥瘡対策チームの整備やリスクアセスメントの実施だけでなく、毎年の施設基準の届出・実績報告が必須です。その中核となるのが「褥瘡ハイリスク患者ケア加算に係る報告書(様式 37 の 2)」です。本記事では、この様式の意味と ①〜④ の数え方、ハイリスク 9 項目の整理、月次集計を現場で回しやすくするコツをまとめます。

点数と算定要件の概要(何点・いつ算定するか)

褥瘡ハイリスク患者ケア加算は、入院中 1 回に限り算定する加算です。点数は原則として 500 点で、医療提供体制の状況に応じて指定された「特定地域」では 250 点として算定できるケースもあります。いずれも、対象となる入院基本料または特定入院料を算定している病棟に入院している患者に対し、重点的な褥瘡ケアを実施した場合に所定点数に上乗せされます。

「入院初日しか算定できないのか?」「算定日はいつにするのか?」という疑問も多いところですが、実務上は「ハイリスク条件を満たし、予防治療計画に基づく重点的な褥瘡ケアを実施した入院期間中に 1 回」と整理するとイメージしやすくなります。急性期・回復期・療養など病棟種別ごとの可否は、告示で列挙されている対象入院料ごとに異なるため、自施設が算定している入院料が対象かどうかをレセプト担当や事務と一緒に確認しておくことが重要です。

報告書(様式 37 の 2)の役割と位置づけ

「褥瘡ハイリスク患者ケア加算に係る報告書(様式 37 の 2)」は、褥瘡ハイリスク患者の抽出と予防ケアが日常診療として定着しているかを確認するための実績報告です。加算を算定した患者数だけでなく、入院患者全体に対するリスクアセスメントの実施状況や、ハイリスク患者の割合を併せて示す点が重要なポイントです。

実務では多くの病院で、年 1 回(おおむね 8 月頃)に「前年度分の実績」として様式 37 の 2 を提出します。しかし、その裏側には月次の集計や褥瘡対策チームでのカンファレンスが欠かせません。様式 37 の 2 は単発の書類ではなく、「月次集計 → 年次報告」というプロセスのゴールと捉えると運用イメージがつきやすくなります。

①〜④の意味とカウントのポイント

様式 37 の 2 では、基本となる 4 つの数値(①〜④)を報告します。ここを取り違えると集計のやり直しや、実態と異なる数字が出てしまうため、定義はチームでそろえておくことが大切です。

様式 37 の 2:①〜④の項目と意味(概要)
項目 対象となる人数 カウントのポイント
① 入院患者数 報告対象期間中に入院していた患者の実人数 褥瘡の有無に関わらず全入院患者が対象です。同一患者の再入院を 1 名として扱うかどうかは、病院ごとにルールを決めておきましょう。
② ①のうち褥瘡リスクアセスメント実施人数 Braden などのリスクアセスメントを実施した患者人数 複数回評価していても、1 患者あたり 1 回としてカウントします。使用した評価ツール名と評価タイミング(入院時・定期評価など)を記録しておくと、後の監査にも対応しやすくなります。
③ ②のうち褥瘡ハイリスク項目該当患者数 ハイリスク 9 項目のいずれかに該当する患者の実人数 患者単位では 1 名ですが、ハイリスク 9 項目ごとの人数集計では複数回答可です(例:No.3 と No.4 に同時該当なら、両方の項目へ 1 名ずつカウント)。
④ 本加算算定人数 実際に加算を算定した患者人数 「ハイリスクに該当するが加算算定には至っていない患者」がどの程度いるかを把握することで、算定漏れや運用上の課題が見えやすくなります。

イメージとして、①は「母集団」、②は「リスクアセスメントの実施率」、③は「ハイリスク患者の比率」、④は「加算算定率」です。毎月この 4 つを並べて確認することで、「評価はできているが算定につながっていない」「そもそもリスクアセスメントの実施率が低い」といった課題をチームで共有しやすくなります。

ハイリスク 9 項目を臨床イメージで整理する

ハイリスク 9 項目は通知上の表現がやや抽象的で、「どこまで含めるか」で現場が迷いやすいところです。理学療法士や看護師がカンファレンスでイメージをそろえやすいよう、典型的な場面と褥瘡リスクの理由をセットで整理します。

褥瘡ハイリスク 9 項目の典型場面とリスクのイメージ
No. ハイリスク項目 典型的な場面 褥瘡リスクとなる理由
1 ショック状態 敗血症性ショック、心原性ショック、出血性ショックなどで昇圧剤管理中 末梢循環が著しく低下し、仙骨・踵など末端部位の血流が保てず、短時間で深い褥瘡が形成され得ます。
2 重度の末梢循環不全 重度心不全、末梢動脈疾患、高度浮腫を伴う症例 軽い圧迫でも組織虚血が起こりやすく、通常の体位変換間隔では除圧が不十分になる可能性があります。
3 麻薬等の鎮痛・鎮静剤の持続使用 ICU での鎮静管理中、持続硬膜外麻酔や PCA 使用中など 自発的な体位変換や痛みの訴えが減少し、長時間同一部位に荷重が集中しやすくなります。
4 6 時間以上の全身麻酔下手術 心臓外科、脊椎手術、大血管手術など長時間仰臥位が続く症例 長時間の圧迫に加え、体温低下や循環変動が重なることで、術後早期から深部組織損傷が顕在化しやすくなります。
5 特殊体位での手術 腹臥位、砕石位、側臥位固定など 通常とは異なる部位(顔面・胸骨・膝・肘など)に圧迫が集中し、予想外の部位に褥瘡が生じるリスクがあります。
6 強度の下痢が続く状態 抗生剤関連下痢、化学療法、腸炎などで頻回の水様便が持続している 便失禁による皮膚湿潤と摩擦が増え、IAD(失禁関連皮膚障害)を経て褥瘡へ進展しやすくなります。
7 極度の皮膚脆弱 高齢の重度フレイル、ステロイド長期使用、GVHD、黄疸など ごく軽い剪断力やテープ固定でも表皮剥離が起こりやすく、防水シーツやスライディングシートなどの工夫が必須です。
8 医療関連機器の長期・持続使用 マスク型 NPPV、酸素カニューレ、弾性ストッキング、シーネやギプス固定など 機器接触部位の局所圧迫が続き、「医療機器関連圧迫損傷」として褥瘡が生じるため、パッドや当て物・位置調整が重要です。
9 既に褥瘡を有し、危険因子を伴う状態 既存褥瘡に加え、病的骨突出・浮腫・皮膚湿潤などを合併している すでに脆弱な皮膚・軟部組織に追加のストレスがかかるため、悪化と新規発生の双方に注意が必要です。

9 項目のうち複数に該当する患者は、集計上は①:1 名、③:1 名ですが、項目別集計では該当番号すべてに 1 名ずつカウントします。月次カンファレンスでは、「どの項目が多いか」「病棟・診療科で傾向が違うか」を確認し、重点的に対策すべき場面を絞り込むと効果的です。

月次集計の流れとチーム内の分担

年 1 回の報告書だけを意識すると負担が大きく感じられますが、実務としては「月次で軽く回る仕組み」を作っておくのが現実的です。特に、褥瘡対策チーム(専任看護師・リンクナース・リハ・栄養など)の役割分担を明確にしておくことで、集計漏れや担当者依存を防ぎやすくなります。

一例として、次のようなサイクルをイメージすると整理しやすくなります。① 入院患者一覧からリスクアセスメント実施状況を抽出する、② 褥瘡対策チームでハイリスク 9 項目の該当を確認する、③ 加算算定患者をレセプト点検と照合する、④ 月次カンファレンスで数字と代表事例を振り返る――という流れです。このサイクルの積み重ねが、そのまま様式 37 の 2 に転記できる「年次実績」となります。

集計ヘルパー A4 シートの使い方

rehabilikun blog では、様式 37 の 2 に対応した「月次集計ヘルパー A4 シート(HTML)」を用意しました。印刷して手書きで運用しても、ブラウザで開いて画面上の補助として使っても構いません。

構成は、①〜④のサマリー表ハイリスク 9 項目別の人数欄患者単位のハイリスク一覧の 3 ブロックです。月末に各病棟から情報を集め、このシートへ転記しておくと、年次報告の際は様式 37 の 2 にほぼ書き写すだけで済みます。

褥瘡ハイリスク患者ケア加算 集計ヘルパー A4(HTML)を開く

最初から完璧を目指す必要はありません。「まずは 1 か月分だけ埋めてみる」「多かった項目や病棟をカンファレンスで共有する」といった小さな一歩から始めるのがおすすめです。半年ほど継続すると、施設としての課題や強みが数字として見えやすくなります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q. 記録が不十分で ①〜④ の数字があいまいなとき、どうすればよいですか?

まずは「今後の記録方法」を優先して整え、そのうえで過去分は可能な範囲で遡って集計するのが現実的です。電子カルテや褥瘡ラウンド記録から、リスクアセスメント実施日・ハイリスク該当の有無・加算算定日を拾えるか確認しましょう。どうしても欠損が大きい期間については、施設内で経緯を共有し、褥瘡対策委員会の議事録などに残しておくと、後の監査でも説明しやすくなります。

Q. ハイリスク該当が「ほとんど 0 」または「極端に多い」場合は問題ですか?

極端な数字は、「評価の抜け」または「基準が広すぎる」サインかもしれません。例えば、ICU を有する急性期病院で 1 年間ハイリスク該当がほぼ 0 であれば、長時間手術やショック症例の拾い方を見直す必要があります。一方で、ほとんどの入院患者がハイリスクにカウントされている場合は、項目の解釈が広すぎるか、リスクアセスメント運用に課題があることが多いです。病棟ごとの傾向を比較しながら、チームで基準をそろえていきましょう。

Q. 月の途中で入退院や病棟転棟があった患者は、①〜④ をどのようにカウントすればよいですか?

基本的には、「その月のあいだに対象病棟に在院したかどうか」で整理し、①〜④ すべてを患者実人数でカウントするのが分かりやすいです。例えば、同じ月内に一般病棟から対象病棟へ転棟した患者は、対象病棟の①(入院患者数)として 1 名、リスクアセスメントを実施していれば②、ハイリスク該当があれば③、加算を算定していれば④にも 1 名として反映します。

再入院や他病棟とのまたがりが多い施設では、「同一患者が同じ年度内に複数回対象期間に入院した場合をどう扱うか」など、院内ルールを文書化しておくことが重要です。ルールを決めたあとは、月次集計ヘルパー A4 シートや様式 37 の 2 の備考欄に簡単に記録しておくと、翌年度以降の再現性と説明のしやすさが高まります。

おわりに

褥瘡ハイリスク患者ケア加算に係る報告書は、単なる「書類作成のための紙」ではなく、日々のリスクアセスメントと予防ケアがどれだけ機能しているかを映す鏡のような存在です。①〜④ の数字の裏側にある患者像やチームの動きを丁寧に振り返ることで、褥瘡対策の弱点と強みが立体的に見えてきます。

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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