褥瘡対策の基準は「対象 → 計画 → 確認資料」で整理すると分かりやすいです
入院基本料の褥瘡対策で最初に押さえたいのは、日常生活の自立度が低い入院患者を対象に危険因子を評価し、危険因子がある患者や既に褥瘡を有する患者では、褥瘡対策チームの専任医師・専任看護職員が診療計画の作成・実施・評価に関与するという流れです。
本記事では、2026年度の施設基準と現行の「褥瘡対策に関する診療計画書」をもとに、対象 → 危険因子評価 → 計画 → 実施・評価 → 適時調査で確認する資料までを一続きで整理します。診療計画書の各欄の書き方や様式5の4の集計は子記事へ分け、ここでは施設基準の骨格と判断の分岐を確認します。
施設基準全体から確認したい方へ
褥瘡対策の基準とは?まず4つの要件を押さえます
褥瘡対策の施設基準は、単に褥瘡が発生した患者へ処置を行うための基準ではありません。院内に評価・計画・実施・評価を継続できる体制を整えておくことが中心です。
- 院内で褥瘡対策が行われている
- 専任の医師と、褥瘡看護に関する臨床経験を有する専任の看護職員から構成される褥瘡対策チームが設置されている
- 日常生活の自立度が低い入院患者について褥瘡の危険因子を評価し、必要な患者へ適切な診療計画を作成・実施・評価する
- 患者の状態に応じて体圧分散式マットレス等を適切に選択・使用できる体制を整える
PTが押さえておきたいのは、PT自身が施設基準上の診療計画作成者になるということではなく、褥瘡対策チームが作成した計画に沿って、基本動作能力、座位姿勢、除圧、ポジショニング、離床などの所見を多職種へ共有し、実施へつなげるという位置づけです。
危険因子評価は「できない/あり」が1つ以上なら看護計画へ進みます
現行の別紙様式43「褥瘡対策に関する診療計画書」では、危険因子評価の「できない」または「あり」が1つ以上の場合、看護計画を立案し実施すると示されています。
危険因子評価では、ベッド上での自力体位変換、イス上での坐位姿勢の保持・除圧、病的骨突出、関節拘縮、栄養状態低下、皮膚湿潤、浮腫、スキン-テアの保有・既往などを確認します。
判断の境界
危険因子評価で1項目でも「できない/あり」に該当すれば、そこで評価を終えるのではなく、看護計画へつなげます。また、褥瘡に関する危険因子がある患者や既に褥瘡を有する患者については、褥瘡対策チームの専任医師・専任看護職員が適切な診療計画の作成・実施・評価に関与する体制が必要です。
各欄の意味や記載方法まで確認したい場合は、褥瘡診療計画書の書き方で詳しく整理しています。
入院患者1人あたりの褥瘡対策フロー
患者単位では、対象確認 → 危険因子評価 → 必要時に看護計画・診療計画 → 実施・評価 → 確認資料の順で見ると整理しやすくなります。危険因子評価そのものをゴールにせず、その後の計画・実施・評価までつなげることがポイントです。

PTが関わる場合は、危険因子評価や診療計画と切り離して介入するのではなく、体位変換能力、坐位保持・除圧、関節拘縮、骨突出部への圧集中など、リハビリテーション場面で確認した所見を計画へ戻せる形にしておくと多職種で共有しやすくなります。
施設として必要なのは「チーム・計画・使用できる体制」です
施設基準として重要なのは、委員会や資料の数を増やすことではなく、褥瘡対策チームが実際に機能し、対象患者に必要な計画が作成・実施・評価され、患者に応じた褥瘡対策用品を使用できる状態にすることです。
特に、褥瘡対策チームについては、専任の医師と専任の看護職員が誰なのかを明確にします。診療計画についても、専任医師・専任看護職員の関与が不明確なまま、他職種だけで作成・評価して完結する運用には注意が必要です。
体圧分散式マットレス等については、単に保有しているかではなく、患者の状態に応じて適切に選択し使用できる体制になっているかを確認します。
適時調査では何を準備する?公式資料から確認します
厚生労働省の適時調査「当日準備していただく書類」では、入院基本料等に共通する褥瘡対策関係として、褥瘡対策チームの設置が分かる資料と、実際に作成した診療計画書が明示されています。
褥瘡対策に関して、特に確認しておきたいのは次の2点です。
※スマートフォンでは表を横にスクロールして確認してください。
| 確認する資料 | 確認ポイント | ありがちな不備 |
|---|---|---|
| 褥瘡対策チーム関係 | 専任の医師・専任の看護職員の名簿と、褥瘡対策チームの設置が分かる書類を確認する | 誰が専任者なのか分からない/名簿と実際の運用が一致しない |
| 褥瘡対策に関する診療計画書 | 作成例3例を準備し、対象患者の評価から計画・実施・評価まで確認できるようにする | 専任医師・専任看護職員の関与が不明/必要な欄が未記載/患者ごとの計画になっていない |
なお、院内ではこれら以外にも運用を確認する資料を整備している場合があります。ただし、院内独自の活動記録、研修記録、物品台帳などと、厚生労働省が褥瘡対策として当日準備を明示している資料は区別して整理してください。
診療計画書で崩れやすい3つのポイント
診療計画書では、単に様式が保存されているかではなく、誰が計画へ関与し、患者ごとの必要事項が記載され、実施後の評価につながっているかを確認します。
- 作成・評価する職員:褥瘡対策チームの専任医師・専任看護職員の関与を確認する
- 薬学的管理・栄養管理:患者の状態に応じて必要事項を確認し、必要な対応へつなげる
- 使用様式:現在の診療報酬改定に対応した様式・評価方法になっているか確認する
適時調査の指摘例では、専任医師が診療計画の作成・実施・評価に関与していない例や、必要な管理内容の記録が確認できない例などが示されています。院内様式を置いて終わりにせず、実際の症例で評価 → 計画 → 実施 → 評価が追える状態にしておくことが重要です。
褥瘡対策の基準と各種加算は分けて考えます
入院基本料の褥瘡対策の基準と、療養病棟の褥瘡対策に関する評価や褥瘡ハイリスク患者ケア加算などは、同じ褥瘡関連でも役割が異なります。
本記事で扱っているのは、院内の褥瘡対策を回すための土台です。加算の対象患者、算定条件、月次集計などをこのページへ混在させると判断しにくくなるため、各制度の詳細は子記事で確認します。
褥瘡対策の基準セルフチェックシート【Excel・PDF】
施設内の運用を確認するときに使えるよう、今回の内容に合わせて「褥瘡対策の基準セルフチェックシート|対象 → 計画 → 確認資料」を作成しました。
シートは、患者単位の確認 → 施設単位の確認 → 適時調査前の確認資料 → 院内運用上の追加確認の順に整理しています。公式の当日準備書類と、院内独自で管理する活動記録・研修記録・物品管理資料を分けて確認できる構成です。
褥瘡対策の基準セルフチェックシート v2
Excel版は院内ルールに合わせて編集するとき、PDF版はA4で印刷・共有するときに使えます。
PDFプレビューを開く
このシートは公式様式そのものではなく、院内で褥瘡対策の運用を確認するための補助資料です。算定、届出、適時調査への対応では、必ず最新の厚生労働省通知・様式・地方厚生(支)局の案内を確認してください。
褥瘡対策でよくある3つの詰まりどころ
施設基準の運用で確認したいのは、評価しただけで終わっていないか、計画作成者が曖昧になっていないか、計画が患者の状態変化に対応しているかの3点です。
- 危険因子評価で止まる:「できない/あり」が1つ以上なら看護計画へつなげる
- 誰が計画を作成・評価したか分からない:専任医師・専任看護職員の関与を確認する
- 様式を作っただけになる:実施した内容と評価まで追えるようにする
ケアそのものの評価や除圧、再評価の流れで迷う場合は、褥瘡予防の基本フローもあわせて確認してください。
よくある質問
各質問をタップ(クリック)すると回答が開きます。
危険因子評価で「できない」「あり」が1つだけでも該当したらどうしますか?
現行の別紙様式43では、「できない」または「あり」が1つ以上の場合に看護計画を立案し実施することが示されています。複数項目がそろうまで待つという扱いではありません。
褥瘡対策の診療計画はPTが作成してもよいですか?
施設基準では、褥瘡に関する危険因子がある患者や既に褥瘡を有する患者について、褥瘡対策チームの専任医師・専任看護職員が適切な診療計画の作成・実施・評価に関与することが求められています。
PTは、体位変換能力、坐位保持、除圧、関節拘縮などリハビリテーション場面で把握した所見を共有し、計画に沿った介入や再評価へつなげます。
適時調査で褥瘡対策について準備する資料は何ですか?
厚生労働省の当日準備書類では、褥瘡対策に係る専任医師・専任看護職員の名簿とチーム設置が分かる書類、褥瘡対策に関する診療計画書の作成例3例が明示されています。
院内独自の活動記録、研修記録、物品管理資料などを整備している場合でも、公式に明示された準備資料とは分けて整理してください。
次に確認する記事
このページでは褥瘡対策の基準を対象 → 計画 → 確認資料の全体フローで整理しました。次は、目的に応じて各論へ進むと迷いにくくなります。
- 診療計画書の各欄を確認する:褥瘡診療計画書の書き方
- 報告・集計を確認する:様式5の4の書き方
参考文献
- 厚生労働省保険局医療課.基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて.保医発0305第7号.2026年3月5日.2026年7月30日訂正後.厚生労働省資料
- 厚生労働省保険局医療課.令和8年度診療報酬改定 様式(医科).別紙様式43 褥瘡対策に関する診療計画書.2026年6月19日訂正後.厚生労働省資料
- 厚生労働省.適時調査実施要領等:当日準備していただく書類.厚生労働省資料
- 東北厚生局.令和6年度 適時調査における主な指摘事項.東北厚生局資料
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

