結論:退院前 72 時間は「変更点・注意点・フォロー先」を定型で揃えると漏れません
回復期リハ病棟の退院支援で漏れが起きるのは、忙しさよりも「直前に決まった変更」が記録と情報提供に反映されないことです。結論として、退院前 72 時間は変更点/注意点/フォロー先を 1 枚( 1 か所 )に集約し、最終カンファで “決めたこと” をその場で反映すると、スタッフが入れ替わっても同じ品質で回ります。
本記事は、退院前の動きを 5 分フローと表に落として、病棟でそのまま使える “型” にします。制度解釈ではなく、実務として漏れを減らすことを目的に整理します。
運用を整えるなら、まず「転職の全体フロー」を固定しておくと迷いが減ります。
退院支援の “漏れ” は、教育体制・記録文化・人員配置の影響を受けやすいです。環境の選び方も含めて、全体像を 1 ページで整理しています。
なぜ「退院前 72 時間」が一番漏れやすいのか
退院前は、食形態・内服・移動手段・介助量・福祉用具・サービスなど、複数の変更が短時間で重なります。しかも、決定が分散(主治医・看護・リハ・ MSW ・栄養・口腔)しやすく、“決まったこと” がどこに残っているかが追いにくいです。
そこで、退院前 72 時間は「決定を束ねる」タイミングと割り切り、情報の置き場を 1 か所に固定します。監査で見られる証跡の全体像は、親記事で整理しています(関連: 回復期リハ病棟の運用:監査で見られる証跡)。
まず決める 4 点:締めの場・置き場・担当・送付先
退院前の漏れを減らすコツは、項目を増やすより運用の固定です。最初に 4 点を決めると、チェックリストが機能します。
| 固定する項目 | おすすめ | 残す証跡 | よくある詰まり | 対策 |
|---|---|---|---|---|
| 締めの場(どこで) | 退院前最終カンファ( 10 分)を固定 | 議事メモ( 3 行) | 決定が分散 | 「最終で束ねる」場を作る |
| 置き場(どこに) | 退院前 72 時間シートを元データ 1 か所に | 更新日時/更新者 | 探せない | 置き場を明文化 |
| 担当(誰が) | 窓口 1 名+代替 1 名 | 役割分担表( 1 行) | 不在で止まる | 代替も同時に教育 |
| 送付先(誰に) | 退院先(家族/施設/ケアマネ等)を固定で記載 | 宛先と共有方法 | 渡し漏れ | 「誰に渡すか」を先に決める |
5 分フロー: 72 時間で「確認→決定→反映→共有」を回す
退院前はまとめて対応すると詰まります。おすすめは、 72 時間の中で “小さく回す” ことです。
| タイミング | やること | 見るポイント | 残す証跡(最小) |
|---|---|---|---|
| 72 ~ 48 時間前 | 変更点の候補を集める(未確定も可) | 食形態、移動手段、介助量、内服 | 候補リスト(箇条書きで可) |
| 48 ~ 24 時間前 | 最終カンファで “決めること 1 つ” を決める | 最大の詰まり 1 点 | 議事メモ( 3 行) |
| 24 時間前 | 72 時間シートへ反映し、宛先へ共有準備 | 注意点、フォロー先、連絡先 | 更新者/更新日時 |
| 当日(退院前) | 渡す/説明する(家族・施設・ケアマネ等) | 伝達の抜け | 渡した記録(チェック欄) |
退院前 72 時間チェックリスト(漏れやすい順)
チェックは “全部やる” ではなく、漏れやすい順に並べると回ります。病棟で使いやすいように、項目は最小にしています。
| 領域 | 確認すること(最小) | 決めること( 1 行) | 誰に渡す | 記録の置き場 |
|---|---|---|---|---|
| 移動・移乗 | 歩行補助具/介助量/転倒リスク | 家での移動手段と “止めどき” | 家族/施設 | 72 時間シート |
| ADL | トイレ・更衣・入浴の介助量 | 介助の手順( 1 つだけ) | 家族/サービス | 72 時間シート |
| 食形態・嚥下 | 最終の食形態/注意点/姿勢 | 禁忌と代替(むせたらどうする) | 家族/施設 | 72 時間シート |
| 栄養 | 摂取量の目安/補助食品の有無 | “ 1 日の目安” を 1 行で | 家族/施設 | 72 時間シート |
| 口腔 | 口腔ケアの頻度/義歯/乾燥 | ケアの手順( 1 つだけ) | 家族/施設 | 72 時間シート |
| 福祉用具 | 手配状況/納品日/使い方 | “誰が教えるか” を決める | 家族/ケアマネ | 72 時間シート |
| フォロー先 | 外来/訪問リハ/通所など | 連絡先と初回予定 | 家族/ケアマネ | 72 時間シート |
情報提供の “型” :変更点・注意点・フォロー先を 1 枚にまとめる
情報提供が断片になると、受け手は “どれが最新か” を判断できません。おすすめは、 1 枚に集約して、更新日時を入れることです。
| ブロック | 書く内容(最小) | 例 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 変更点 | 退院直前に変わったこと | 歩行:四点杖→ T 字、食形態:刻みへ | 最新情報を揃える |
| 注意点 | やってはいけない/止めどき | 息切れ強い日は屋外歩行中止、むせ増加で一段戻す | 事故を減らす |
| フォロー先 | 次に相談する場所 | 通所:週 2、訪問:導入検討、外来:○月 | 連携を途切れさせない |
| 更新 | 更新者/更新日時 | PT ○○/ 2026-02-21 | “最新” を保証する |
現場の詰まりどころ:よくある失敗( OK / NG 早見)
退院前は “頑張る” ほど漏れます。失敗パターンを先に潰すと、短い運用で回ります。
| 論点 | NG(詰まる) | OK(回る) | 直し方(最小) |
|---|---|---|---|
| 決定 | 決まった場所がバラバラ | 最終カンファで束ねる | 締めの場を固定 |
| 記録 | どれが最新か分からない | 1 枚に集約し更新日時 | 更新者/日時を必須に |
| 共有 | 渡す相手が曖昧 | 宛先を先に決める | 送付先を固定欄に |
| 内容 | 説明が長く要点が抜ける | 変更点/注意点/フォロー先 | 3 ブロックで固定 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q 1: 72 時間より前から準備できません。
問題ありません。重要なのは “早さ” より、退院前に決定を束ねる場と置き場があることです。 72 時間は最終の締めとして使い、未確定の候補はリスト化だけしておくと回ります。
Q 2:情報提供が長文になって時間がかかります。
長文より、変更点/注意点/フォロー先の 3 ブロックに絞ります。更新者と更新日時を入れると、受け手が “最新” を迷いません。
Q 3:家族への説明で伝達漏れが起きます。
“全部説明する” ではなく、注意点(止めどき)と、困ったときのフォロー先(連絡先)を必ず入れます。渡した記録(チェック欄)までセットにすると漏れが減ります。
Q 4:食形態・口腔・栄養が別々に動いてまとまりません。
最終カンファで束ねます。決めることは 1 つに絞り、情報提供は 1 枚に集約します。領域ごとの詳細は別記録でも、退院時の “最新” は 1 か所に置きます。
次の一手
まずは、退院前 72 時間の置き場と締めの場(最終カンファ)を決めて、チェックリストを 2 週間だけ回してみてください。退院支援の漏れは “努力” ではなく “型” で減らせます。
運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検(無料チェックシート)
教育体制・記録文化・人員の詰まりは、個人の努力だけでは解消しにくいです。環境面も含めて見直すと、退院支援の “回り” が変わります。
参考文献
- 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案). https://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/dl/p20260114-01-01.pdf
- 厚生労働省. 中央社会保険医療協議会(回復期リハ病棟の要件見直し等に関する記載を含む資料). https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631272.pdf
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


