胸腔ドレーン中の離床・歩行|泡と水面で止めどきを判断

臨床手技・プロトコル
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胸腔ドレーン留置中の離床・歩行は「泡と水面」で止めどきを揃える

胸腔ドレーン(気胸・術後)留置中の離床で迷うポイントは、バイタルだけではなく排液ボトル(水封室)の変化です。結論として、①泡(エアリーク)の変化、②水面の呼吸性移動、③症状・バイタルの 3 点を同じ順番で確認し、変化があれば「中止→回路確認→報告」へ翻訳すると、安全判断がブレません。

本記事は採点や機器の細かい解説ではなく、PT が現場で使える準備 → 離床前チェック → 段階プロトコル → 中止基準 → SBAR → 記録の「型」を 1 ページに固定します。

呼吸リハ・離床の安全管理をまとめて確認

胸腔ドレーン単体ではなく、ライン管理・中止基準・報告まで整理できます。

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関連:ICU リハの安全 SOP気道クリアランスプロトコル

5分フロー:離床前に「見る順番」を固定する

胸腔ドレーン留置中の離床は、開始前に「何を見るか」を固定すると安全です。最初に確認するのは歩けるかではなく、変化したら止める所見です。

基本は、①泡、②呼吸性移動、③症状、④バイタル、⑤回路確認の順です。泡が断続から連続へ変化する、呼吸性移動が消える、呼吸苦や胸痛が増える場合は、次へ進まず中止します。

胸腔ドレーン離床の5分フロー図版
胸腔ドレーン留置中の離床 5 分フロー
順番 確認すること 変化があるとき
1 水封室の泡:なし/断続/連続/急増 中止し、接続・挿入部・回路を確認する
2 呼吸性移動:水面が呼吸に合わせて動くか 屈曲・閉塞・位置ずれを疑い、回路を確認
3 症状:呼吸苦、胸痛、冷汗、不穏、会話量低下 安静化 → バイタル再評価 → 報告
4 バイタル:SpO2、RR、HR、血圧が施設基準内か 施設の中止基準に沿って判断
5 回路:屈曲、引っ張り、接続ゆるみ、ボトル転倒リスク 形を作り直し、再評価してから再開

離床前の準備は「引っ張られない形」を作ること

離床前の準備で最優先するのは、胸腔ドレーンの回路が屈曲せず、引っ張られず、ボトルが倒れない形を作ることです。歩行距離より先に、患者・ライン・排液ボトルを誰が見るかを決めます。

吸引か水封か、離床時にどう扱うかは施設ルールと主治医指示に従います。PT の判断だけで吸引・水封を切り替えず、開始前に看護師と状態を共有してから進めます。

離床前チェックリスト:Yesなら進む/Noなら止めて確認

チェックリストは、項目を増やすよりも毎回同じ順番で見ることが大切です。下の表は、端座位・立位・歩行の前に使える最小セットです。

胸腔ドレーン留置中の離床前チェック(成人・一般病棟〜ICU)
項目 見るポイント No/変化ありの行動
断続か、連続か、急に増えていないか 中止 → 回路・接続・挿入部を確認 → 必要時報告
呼吸性移動 水面が呼吸に合わせて上下しているか 屈曲・閉塞・位置ずれを疑い、回路を確認
症状 呼吸苦、胸痛、冷汗、不穏、会話量低下 安静化 → バイタル再評価 → 報告
バイタル SpO2、RR、HR、血圧が施設基準内か 施設の中止基準に沿って判断
回路・固定 屈曲、引っ張り、接続ゆるみ、皮下気腫の拡大 形を作り直し、再評価してから再開
チーム合意 吸引/水封、離床時の扱い、役割分担 合意がなければ開始しない

段階プロトコル:端座位・立位・歩行で同じ確認を繰り返す

離床は、段階を刻んで進めるほど安全です。端座位、立位、歩行の各段階で、泡・呼吸性移動・症状・バイタル・回路を同じ順番で確認します。

端座位

端座位では、まず 30 秒〜 1 分ほど観察します。体幹を起こしたタイミングでチューブが引っ張られたり、ボトル位置が不安定になったりするため、立位へ進む前に回路の形を整えます。

立位

立位では、呼吸苦・胸痛・冷汗・不穏の変化を見ます。バイタルが許容範囲でも、泡が連続化する、急増する、呼吸性移動が消える場合は歩行へ進めません。

歩行

歩行は、短距離で区切り、立ち止まるたびに再評価します。回路が衣服・手すり・歩行器に引っ掛かることがあるため、患者を見るスタッフと回路を見るスタッフを分けると安全です。

中止基準:バイタルだけでなく泡と水面の変化を入れる

胸腔ドレーン留置中の中止基準は、バイタル異常だけでは不十分です。泡の変化と呼吸性移動の変化を入れることで、再発・回路異常・閉塞を早めに拾いやすくなります。

胸腔ドレーン留置中の離床中止トリガー
トリガー 疑うこと PT の行動
泡が断続から連続へ変化/急増 気胸再発、回路の気密不良、接続ゆるみ、挿入部リーク 中止 → 安静化 → 回路確認 → SBAR で報告
呼吸性移動が突然消える 屈曲、閉塞、位置ずれ、回路異常 中止 → 屈曲解除・接続確認 → 改善しなければ報告
呼吸苦・胸痛・不穏が増える 呼吸仕事量増大、再発・悪化、疼痛コントロール不良 中止 → 安静化 → バイタル再評価 → 報告
SpO2 低下、RR・HR・血圧が施設基準に抵触 呼吸・循環負荷の増大 施設基準で中止し、必要時に報告
回路の屈曲・引っ張り・ボトル転倒リスク ドレナージ不良、逆流、偶発抜去 中止 → 形を作り直す → 再評価してから再開

現場の詰まりどころ:知識より運用の穴で止まる

胸腔ドレーン中の離床でつまずく原因は、知識不足だけではありません。実際には、誰がボトルを見るか決まっていない、異常時の報告文が揃っていない、記録で次回の注意点が残らないといった運用の穴で止まりやすくなります。

特に新人や病棟応援では、「泡があるか」だけを見てしまい、泡の変化・呼吸性移動・症状をセットで判断できないことがあります。迷ったときは、中止基準と SBAR 報告に戻り、次回も同じ判断ができるように記録へ残します。

判断に迷う背景には、教育体制や標準化不足があることも

評価・報告・記録の型を学び直したい場合は、PT 向けの働き方と学び方も整理しておくと臨床判断が安定しやすくなります。

PT キャリアガイドを見る

トラブル時の SBAR:報告は短く、変化を中心に伝える

異常時の報告は、原因を断定するよりも、観察した変化を短く伝えることが重要です。泡、呼吸性移動、症状、バイタル、実施した回路確認を順番に伝えます。

  • S(状況):胸腔ドレーン留置中。離床中に排液ボトル所見の変化があり、中止しました。
  • B(背景):目的は(気胸/術後)です。現在は(吸引/水封)で、開始前は泡(なし/断続)、呼吸性移動(あり)でした。
  • A(評価):離床中に泡が(断続→連続/急増)しました。呼吸性移動は(あり/消失)です。症状は(呼吸苦/胸痛/不穏)、SpO2 は( )%、RR は( )回/分です。
  • R(提案):離床を中止し、安静化と回路確認を行いました。設定確認、診察、画像確認の要否をご指示ください。

記録の最小セット:前・中・後で残す

診療記録は、次の担当者が同じ判断を再現できる形にすることが目的です。最低限、開始前、離床中、終了後の 3 タイミングで、泡・呼吸性移動・症状・バイタル・回路確認を残します。

胸腔ドレーン離床の記録テンプレート
タイミング 必須項目 記録例
開始前 泡、呼吸性移動、症状、主要バイタル、吸引/水封 開始前、泡は断続、呼吸性移動あり。呼吸苦なし。SpO2 96%。
離床中 段階、変化、回路確認、中止・継続判断 端座位 1 分で泡の増加なし。立位でチューブ屈曲あり修正後、症状変化なし。
終了後 泡・呼吸性移動の再確認、症状、次回注意点 終了後も泡は断続、呼吸性移動あり。次回は歩行器右側で回路係を配置。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

泡が出ていれば、すべて危険と判断しますか?

泡の有無だけでなく、泡の変化を見ます。断続的な泡が連続した泡へ変化する、急に増える、症状やバイタル変化を伴う場合は中止して回路確認と報告を行います。

呼吸性移動が見えないときは何を疑いますか?

突然見えなくなった場合は、回路の屈曲、閉塞、位置ずれなどを疑います。一方で、病態や治療経過によって見え方が変わる場合もあるため、急な変化かどうかを確認し、改善しなければ報告します。

吸引か水封かを PT が切り替えてもよいですか?

PT 単独で切り替える運用は避けます。吸引・水封の扱いは施設ルールと主治医指示に従い、離床前に看護師と共有してから開始します。

歩行まで進めるときの注意点は何ですか?

短距離で区切り、立ち止まるたびに泡・呼吸性移動・症状を再確認します。回路の引っ掛かり、接続ゆるみ、ボトル転倒リスクが増えるため、回路を見るスタッフを決めて進めます。

術後ドレーンと気胸ドレーンで見方は変わりますか?

泡・呼吸性移動・症状を見る基本は共通です。ただし術後では排液量、性状、疼痛、循環動態も重要になるため、術式別の施設プロトコルと合わせて判断します。

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参考文献

  1. 日本離床学会. 離床 Q&A Vol.365「泡の変化がポイント!胸腔ドレーン挿入下での離床」. https://www.rishou.org/activity-new/qa/qa-vol-365
  2. Ernstmeyer K, Christman E, editors. Manage Chest Tube Drainage Systems. Nursing Advanced Skills. NCBI Bookshelf. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK594490/
  3. Royal Children’s Hospital Melbourne. Nursing guideline: Chest drain management. https://www.rch.org.au/rchcpg/hospital_clinical_guideline_index/chest_drain_management/
  4. BCcampus Open Education. 10.6 Chest Tube Drainage Systems. Clinical Procedures for Safer Patient Care. https://pressbooks.bccampus.ca/clinicalproceduresforsaferpatientcaretrubscn/chapter/10-6-chest-tube-drainage-systems/
  5. Roebker JA, et al. Chest Tube Placement and Management: A Practical Review. Semin Intervent Radiol. 2023;40(3):321-330. PMCID: PMC10275667. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10275667/

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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