認知症ケア加算と身体拘束の記録は「当日」と「再評価」でそろえる
このページで答えるのは、認知症ケア加算の文脈で身体的拘束を実施した日に、何を記録し、どう再評価へつなぐかです。制度の全体像を広く追うよりも、対象判定・代替手段・当日記録・解除トライ・再評価の順番を固定したほうが、病棟内の判断と申し送りがそろいやすくなります。
認知症ケア加算 1 / 2 / 3 の点数差を網羅比較する記事ではありません。本記事では「実施した日に何を残すか」「次の判定をどう書くか」に絞り、A4 記録シート PDF とあわせて、現場でそのまま使える記録の型として整理します。
最初に決める 5 分フロー
迷ったら、対象判定 → 代替手段 → 当日記録 → 解除トライ → 再評価の順で考えます。身体拘束の有無だけを残すのではなく、「なぜ必要だったか」「何を試したか」「いつ解除を再判定するか」まで同じ流れで記録します。

| 段階 | 現場で決めること | 記録で残すこと |
|---|---|---|
| 対象判定 | 危険行動の内容、実施必要性 | なぜ今必要かを具体語で残す |
| 代替手段 | 見守り、環境調整、声かけなど | 実施した代替手段と結果を書く |
| 当日記録 | 開始時刻、観察項目 | 理由・時系列・共有先を記録する |
| 解除トライ | 解除条件と実施時刻 | 解除可否と反応を残す |
| 再評価 | 継続/解除、次回判定 | 根拠と次回時刻をセットで残す |
A4 記録シート PDF
当日運用をそろえたいときは、下の A4 記録シートを使えます。赤旗確認 → 分類 → 最小評価 → 介入目標 → 再評価の流れに沿って、実施理由・代替手段・解除トライ・次回判定を 1 枚で確認できます。
中身をプレビューする
当日記録は「6 点セット」で抜けを防ぐ
当日は長文よりも、必要項目が抜けずに残ることが重要です。身体拘束を実施した理由だけでなく、代替手段の結果、観察、解除トライ、再評価までを 1 セットにすると、次の担当者が同じ判断をしやすくなります。
| 項目 | 最低限書くこと | 申し送りで効くポイント |
|---|---|---|
| 実施理由 | 危険行動と実施理由 | 「不穏」だけで終わらせない |
| 代替手段 | 実施した代替と結果 | 「検討した」ではなく結果を書く |
| 開始情報 | 開始時刻、実施者、共有先 | 時系列で追える形にする |
| 観察項目 | 表情、拒否、痛みなど | 観察項目を固定する |
| 解除トライ | 解除条件と実施時刻 | 解除条件を先に決める |
| 再評価 | 継続/解除、次回判定時刻 | 惰性継続を防ぐ |
記録文は「曖昧語」から「説明できる文」へ変える
記録で差が出るのは、実施の有無よりも説明できる言葉に変換できているかです。「不穏」「危険」「経過観察」だけでは次の判断に使いにくいため、危険行動・代替手段・再評価時刻を入れて書き換えます。
| 場面 | NG 記録(曖昧) | OK 記録(説明可能) |
|---|---|---|
| 実施理由 | 不穏のため実施 | 離床時に転倒リスクの高い行動あり。見守り強化と環境調整を行ったが危険行動が継続したため、一時的に実施 |
| 経過観察 | 経過観察中 | 30 分ごとに表情・体動・拒否の有無を確認。17:30 に落ち着きあり、解除トライを実施 |
| 再評価 | 継続 | 解除トライ後に再び離床行動あり。19:00 に再評価し、夜間は短時間継続。21:00 に再判定予定 |
次担当が迷わない引き継ぎ 1 行
引き継ぎは文章量より、次の判断が同じになる 1 行が有効です。危険行動、代替手段の結果、次回判定時刻をこの順番で残すと、継続か解除かの判断が引き継ぎやすくなります。
| 書く順番 | テンプレ | 記録例 |
|---|---|---|
| 1 → 2 → 3 | 危険行動 → 代替結果 → 次回判定 | 離床時に転倒リスク行動あり。見守り強化では不十分のため実施中。21:00 に解除トライを再判定予定 |
再評価は「時間・症状・環境」で前倒しする
再評価は、予定時刻だけでなく状態が変わったタイミングでも前倒しします。時間経過、症状変化、環境変化の 3 つを共有しておくと、解除できる可能性を見逃しにくくなります。
| トリガー | 判断の目安 | 記録ポイント |
|---|---|---|
| 時間経過 | 一定時間ごとに解除可否を確認 | 評価時刻と理由をセットで残す |
| 症状変化 | 不穏・痛み・せん妄徴候の変動 | 変化前後を比較して書く |
| 環境変化 | 家族同席・人員配置変更など | 代替手段が成立したかを書く |
現場の詰まりどころ
よくある失敗は、制度は理解しているのに、当日の記録と再評価の型がそろっていないことです。下の 3 点を先に直すと、説明・申し送り・監査対応が楽になります。
よくある失敗
| 失敗 | 原因 | 修正ポイント |
|---|---|---|
| 判定が人でブレる | 対象条件が共有されていない | 対象判定を 1 枚で共有する |
| 記録が抽象的 | 危険行動が具体化されていない | 理由・代替・再評価をセットで書く |
| 再評価が遅れる | 解除トライ条件が曖昧 | 次回判定時刻を固定する |
5 分チェック
| チェック項目 | OK 基準 |
|---|---|
| 対象判定を説明できる | 危険行動が具体語で書かれている |
| 記録が最小セットでそろう | 理由・代替・観察・再評価がある |
| 再評価トリガーがある | 次回判定時刻が決まっている |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 本記事は比較記事と何が違いますか?
本記事は、身体拘束を実施した日の「記録」と「再評価」の運用に限定しています。区分比較ではなく、現場実装を整理する記事です。
Q2. まず整えるべきは点数確認ですか?
まずは記録運用です。対象判定・代替手段・再評価の型がそろうと、説明と申し送りが安定します。
Q3. 最低限そろえたい項目は?
実施理由、代替手段、開始時刻、観察項目、解除トライ、再評価、次回判定時刻です。
次の一手
- 全体像を押さえる:身体拘束最小化の親記事
- すぐ実装に寄せる:認知症ケアチーム記録テンプレ
参考資料(一次情報)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。


