Mini-BESTest の評価方法・採点・カットオフ【PT】

評価
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Mini-BESTest とは?(目的と使いどころ)

評価は「実施 → 記録 → 解釈 → 次の介入」までが 1 セット。ブレない型を先に作ると回ります。 理学療法士のキャリアガイドを見る

Mini-BESTest(ミニ ベス テスト)は、動的バランスを 14 項目・各 0〜2 点で評価し、合計 28 点で機能水準を判定する検査です。転倒リスクや歩行自立の見立て、介入効果の把握に有用で、「 Mini-BESTest 評価 」をルーチンに組み込むと、経時変化の見落としを減らせます。

対象は高齢者から神経疾患(例:パーキンソン病・脳卒中)まで幅広く、所要はおおむね 10 分です。続けて読む:バランス評価の使い分け(親記事) も押さえると、症例に合わせて「どれを主評価にするか」が決めやすくなります。

構成と採点(全体像)

Mini-BESTest は 4 ドメイン(予測的姿勢調整/反応的姿勢制御/感覚指向性/動的歩行)で構成されます。各項目は 0(重度障害)〜2(正常)で採点し、総点 0〜28 点で判定します。補助具使用や介助の有無、実施条件は毎回同じ形式で記録し、再評価の比較ができる状態にします。

下表は 14 項目を「何を見ているか」で整理した一覧です(※ No. 3 と 6 は左右の 悪い方のみ を採点し、二重加算しません)。

Mini-BESTest の 14 項目(要旨)と採点の注意(0–2 点/計 28 点)
ドメイン No. 項目(要旨) 見るポイント
予測的姿勢調整 1 立ち上がり 動作の滑らかさ・代償の有無
2 つま先立ち 挙上の大きさ・保持の安定性
3 片脚立位(左右) 悪い方のみ 採点(左右を合算しない)
反応的姿勢制御 4 補償ステップ:前方 ステップ反応の適切さ・介助の要否
5 補償ステップ:後方 同上
6 補償ステップ:側方(左右) 悪い方のみ 採点(左右を合算しない)
感覚指向性 7 閉脚立位(固い床) 最大 30 秒の保持・ふらつき
8 閉脚立位(フォーム上・閉眼) 最大 30 秒の保持・代償
9 傾斜条件での立位 姿勢維持の可否・修正反応
動的歩行 10 歩行速度の変化 速度変更時の安定性
11 頭部回旋しながら歩行 回旋下の安定性・逸脱
12 方向転換して停止 向き直りの質・停止の安定性
13 障害物を跨ぐ( 23 cm ) 接触の有無・速度の維持
14 二重課題 TUG 10 %超 の速度低下は減点(差分 % を記録)

準備物と安全管理(中止基準)

用具:フォーム(厚さ約 10 cm )、肘掛けなし椅子、前傾斜板、ストップウォッチ、 23 cm 箱、 3 m 測定テープ。歩行路は十分な幅と見守りスペースを確保します。

中止基準:胸痛・強い息切れ・失神前駆・血圧異常・失調やふらつきの増悪・疼痛の増悪。見守りはやや後側方で、転倒リスクが高い場合はハーネス等の使用も検討します。評価の前に「気分不良・痛み・めまいが出たらすぐ伝える」ことを共有します。

実施手順(現場で使える逐次プロトコル)

  1. デモ+口頭指示をセットで提示:合格基準を先に明確化し、「ここまでできれば 2 点」のイメージを共有します。
  2. 補助具は常用を許可:ただし使用時は採点に影響するため、種類・使用状況を必ず記録します(再評価で条件が変わると比較が崩れます)。
  3. No. 3・ 6 は左右実施し、悪い方のみ を採点します(左右を合算しません)。
  4. No. 14 は TUG と二重課題 TUG の差を % で記録します(例: TUG 10 秒/二重課題 12 秒 → 20 % 低下)。

カットオフ・基準値・MCID(目安を 1 枚で)

Mini-BESTest のカットオフや基準値は、対象(疾患・年齢・重症度)と転倒定義で変わります。まずは「目安」を押さえ、可能なら自施設の再評価データ( 2〜4 週)と併せて解釈します。

Mini-BESTest の目安(カットオフ/基準値/MCID:集団依存)
対象 目安 使いどころ 注意点
パーキンソン病( PD ) カットオフ: 19〜21.5 / 28
MCID:おおむね 4 点
転倒リスクの見立て/介入効果の判定 転倒定義・病期で変動。合計点だけでなく崩れるドメインを重視。
脳卒中 カットオフ: 17.5 / 28(報告例) 歩行自立・転倒のスクリーニング補助 片麻痺の代償戦略が点数に影響。左右の扱いを固定して比較。
地域在住高齢者 年齢帯で基準値が変動(概ね 22〜26 / 28 近傍の報告) 加齢による変化の把握/介入前後の比較 「基準値との差」より「前回からの変化」と「危険場面」を優先。

採点と判定( 0〜28 点 )

0=重度障害/1=中等度/2=正常として採点し、各項目の質的な特徴もメモします。合計点が低いドメインを優先課題にし、次の介入設計につなげます。カットオフは集団依存のため、文献値と自施設データを併せて解釈してください。

運用のコツ:「合計点」だけで終わらせず、最も低いドメイン再評価で変えたい項目 を 1 つだけ決めると、介入がブレにくくなります。

解釈と次のアクション(介入へつなぐ)

  • ボトルネック特定:最低得点のドメインを優先課題として設定し、課題別の練習(方向転換・ステップ反応・フォーム立位など)へ落とし込みます。
  • ベースライン化:入退院・通所開始時に測定し、 2〜4 週で再評価します。測定タイミングをカルテのテンプレにすると運用しやすくなります。
  • 効果判定: PD では 4 点前後 が MCID の目安とされ、 4 点以上の改善は「意味のある変化」として扱いやすくなります。
  • 他評価との束化: 10 m 歩行、 6 分間歩行、 TUG、転倒自己効力感などと組み合わせると、歩行能力・バランス・心理面を立体的に把握できます。

記録テンプレ(コピペ用)

以下は、電子カルテの定型文にも流用しやすい記録テンプレートです(条件固定と差分 % 記録を優先します)。

【Mini-BESTest】合計 __/28 点(予測 __/反応 __/感覚 __/動的歩行 __)
- 3 片脚立位:右 __ 秒/左 __ 秒(※悪い方を採点)
- 6 側方ステップ:右 __ /左 __(※悪い方を採点)
- 14 TUG __.__ 秒/二重課題 TUG __.__ 秒(差 __%)※10%超で減点
- 補助具:無・有(種類:____)/介助:無・有
所見:____(例:方向転換で不安定、頭部回旋で逸脱)
介入:____(例:方向転換練習、反応的ステップ練習、フォーム立位訓練)

現場の詰まりどころ(よくあるミスと対策)

「点数の取り違え」と「条件の揺れ」が、再評価の価値を下げやすいポイントです。下の表だけ先にチームで共有すると、ブレが一気に減ります。

Mini-BESTest のよくあるミス( NG )と対策( OK )
詰まりどころ( NG ) 何が起きる? 対策( OK ) 記録の一言
No. 3・ 6 を左右で二重加算 重症度を過大評価し、経時比較も崩れる 左右は実施するが、採点は悪い方のみ を採用 「左右実施、悪い方のみ採点」
二重課題を絶対時間だけで判断 「少し遅いだけ」に見えて減点・解釈を外しやすい TUG 比の % 差 を毎回記録( 10 %超は減点の目安) 「差 __%(基準: 10 %)」
用具・環境が日によって変わる 点数の変化が「介入効果」か「条件差」か不明になる フォーム硬さ、傾斜条件、箱 23 cm、歩行路などを 固定 「条件:フォーム __ /箱 23 cm /歩行路 __」
安全確保より点数を優先 転倒リスクが上がり、評価継続が困難 中止基準を先に共有し、無理に 2 点を狙わない 「中止サイン共有済/見守り位置 __」

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Mini-BESTest はどのくらいの頻度で実施するのがよいですか?

介入効果をみたい場合は、 2〜4 週に 1 回の頻度を目安にすると変化を捉えやすくなります。急性増悪や転倒などイベントがあった場合は、その前後で臨時に実施し、どのドメインが悪化したかを確認すると方針の立て直しに役立ちます。

Mini-BESTest だけで転倒リスクを判断してもよいですか?

Mini-BESTest は有用な指標ですが、転倒歴、服薬(睡眠薬・降圧薬など)、視力・環境要因(段差・手すり・照明)とあわせて総合的に判断します。特に高齢者では「病棟内の歩行」と「自宅環境」のギャップにも注意してください。

Mini-BESTest と Berg Balance Scale( BBS )はどう使い分ければよいですか?

BBS は静的〜準動的課題が中心で、「どこまで自立してできるか」を押さえるのに向きます。一方、Mini-BESTest は方向転換や二重課題など動的要素が多く、日常生活に近いバランス課題を評価できます。目的が「転倒場面の特定」なら Mini-BESTest を主にし、 ADL の安全確認なら BBS を併用すると整理しやすいです。

次の一手(迷ったらここへ)

参考文献

  1. Franchignoni F, Horak F, Godi M, et al. Using psychometric techniques to improve the BESTest: the mini-BESTest. J Rehabil Med. 2010;42:323–331. DOI: 10.2340/16501977-0537
  2. King L, Horak F. On the Mini-BESTest: Scoring and the Reporting of Total Scores. 2013. PDF: Mini-BESTest Instructions
  3. Godi M, Franchignoni F, et al. Responsiveness and MCID of the Mini-BESTest in PD. Gait Posture. 2020;80:14–19. DOI: 10.1016/j.gaitpost.2020.05.008
  4. Tsang CSL, et al. Psychometric Properties of the Mini-BESTest in Stroke. Phys Ther. 2013;93(8):1102–1115. DOI: 10.2522/ptj.20130035
  5. Lopes LKR, et al. Mini-BESTest predicts falls in PD. Parkinsonism Relat Disord. 2019. PMC: PMCID: PMC7564029
  6. Jonsdottir J, et al. The Mini-BESTest: a review of psychometric properties and use in stroke. Int J Rehabil Res. 2016;39(2):97–105. Article link
  7. Seidel D, et al. Norm values and age-related cutoffs of the Mini-BESTest in community-dwelling older adults. J Neuroeng Rehabil. 2022;19:60. PMCID: PMC9784881

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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