なぜ比較が必要?(結論→使い分けの基準)
現場には MNA®-SF ・ MUST ・ GNRI など複数のツールがあり、対象・必要データ・判定軸が異なります。本稿は「目的」「項目数」「カットオフ」「強み/注意」で横並び比較し、場面に応じた最短の選択肢を示します。
実務は ①まずスクリーニング(高齢者なら MNA®-SF、成人汎用なら MUST)→ ②陽性なら診断( GLIM )→ ③介入設計 が原則です。既存の MNA-SF の評価手順とカットオフ も併読推奨です。
主要ツールの比較(1 枚表)
ツール | 目的/対象 | 項目数 | 必要データ | 判定/カットオフ | 強み | 注意 |
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MNA®-SF | 高齢者の低栄養スクリーニング | 6 | 問診+ BMI または CC | 12–14=良好/8–11=リスク/0–7=低栄養(公式ガイド) | 所要 5 分、CC 代替で測定容易 | フォーム改変不可(公式原本使用) |
MUST | 成人全般のスクリーニング | 3(5 ステップ) | BMI・体重減少率・急性疾患効果 | 総合点 0=低/1=中/≧2=高リスク(BAPEN) | 汎用性が高い(病院〜地域) | 身長/体重欠測時の代替判定は妥当性に留意 |
GNRI | 高齢入院患者の栄養リスク指標 | — | Alb(g/dL)+体重/理想体重 | GNRI=14.89×Alb+41.7×(体重/理想体重)/ リスク区分:>98=No、92–98=Low、82–<92=Moderate、<82=Major | 予後予測・重症度層別に有用 | 採血と理想体重の前提に注意 |
GNRI の式・解釈・落とし穴の詳細は、当ブログの解説へ:【GNRI】理想体重比とアルブミン値を用いた高齢者の栄養リスク指標
使い分けの指針(現場別)
在宅・外来:測定資源が限られる → 高齢者では MNA®-SF( CC 代替で完結)。成人汎用:入院時一括スクリーニング → MUST。入院高齢者の層別化や予後評価:GNRI を併用。
いずれのツールでも“陽性の放置”が最大のリスク。スコア別に食事強化・補助食品・口腔/嚥下評価・活動量処方を組み合わせ、1–4 週で再評価します。詳細は 低栄養ケア設計ガイド を参照ください。
スクリーニング→診断(GLIM)→介入
ツールは診断ではなく入口です。 GLIM は「表現型(体重減少・低 BMI・筋量減少)」と「病因(摂取低下/吸収障害・炎症/疾病負荷)」の双方を満たして診断し、重症度を分類します。
MNA®-SF/MUST で陽性なら、体組成・筋量評価や炎症所見を確認し、介入の強度・経路(経口/経腸/静脈)を決定する流れが合理的です。
参考文献(一次情報・DOI/PubMed)
- MNA® User Guide / Forms. Nestlé. Forms/Guide
- BAPEN. Malnutrition Universal Screening Tool (MUST). Explanatory Booklet
- Bouillanne O, et al. A new index for evaluating at-risk elderly medical patients (GNRI). Am J Clin Nutr. 2005;82(4):777–783. PubMed
- Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2019;38(1):1–9. PMC