MWST と WST の違い【水飲みテスト比較・使い分け】

栄養・嚥下
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MWST と WST の違い・使い分け(先に全体像)

ベッドサイドで素早く誤嚥リスクを見極めるために、MWST(改訂水飲みテスト)と WST(30 mL/3 oz・100 mL 系)の違い・使い分けを 1 ページに整理します。本記事は「どちらを、どこまで実施するか」という意思決定に特化し、手順の細部は“施設 SOP と画像評価( VFSS / FEES )”を前提に運用できる形へ落とし込みます。

結論として、MWST は少量・低侵襲で入口を作りやすい一方、WST は連続嚥下(負荷)で陽性を拾いやすいのが強みです。ただし両者とも silent aspiration を見逃しうるため、疑わしい症例では「陰性=安全」と決め打ちせず、早めに VFSS / FEES へ切り替える判断軸を持っておきます。

嚥下の判断は「同じ言葉・同じ順番」を先に揃えると、共有と再評価が速くなります。 PT の臨床フロー(評価 → 介入 → 再評価)を 3 分で揃える( #flow )

MWST と WST の比較(ひと目で整理)

迷いを減らすコツは、テスト名ではなく「目的」と「負荷(量)」で整理することです。MWST は“少量水の安全性の一次確認”、WST は“連続嚥下の可否(負荷)”を見にいく位置づけにすると、適応選別と中止判断が揃いやすくなります。

なお、100 mL を用いて時間や嚥下回数を取り、mL/s として定量追跡する運用( TWST 系)もあります。これは「合否」より「数値で追う」目的に向きます。

MWST と WST の比較( 2025 年版・成人ベッドサイドの運用整理)
テスト 主目的 用量 / 手順の骨子 観察・判定 主なメリット 注意 / 限界
MWST 少量水での嚥下安全性の一次確認 冷水 3 mL を口腔内へ → 嚥下 → 必要に応じて唾液嚥下を追加 むせ・湿性嗄声・呼吸変化( SpO2 は任意) 低侵襲・準備が容易・段階的漸増に移りやすい silent aspiration を拾い切れない/スコア運用は施設差あり
WST( 30 mL/3 oz/100 mL 系) 連続嚥下の安全性と“負荷”への耐性を確認 30 mL or 3 oz を連続飲水、または 100 mL をできるだけ速く連続飲水( TWST 系は時間・回数も記録) 連続嚥下の可否・むせ・中断・湿性嗄声( TWST 系は mL/s など) 短時間で“危険サイン”を拾いやすい/定量追跡に拡張できる 負荷が高く適応選別が必須/silent aspiration の見逃しあり

場面別:どこまで実施するかの目安

場面ごとに「ここまでで止める」を先に決めておくと、実施者間のブレが減ります。特に急性期や肺炎直後は、テスト結果よりも“中止できる設計”が安全を左右します。

  • 急性期・肺炎後直後:RSST・咳反射・呼吸状態を先に確認し、MWST の 3 mL までで止めることが多いです。陽性や強い疑いがあれば WST は行わず、VFSS / FEES を検討します。
  • 回復期・経口摂取再開期:MWST で少量の安全性を確認し、全身状態が許せば WST で連続嚥下を追加評価します。陽性は「食形態・一口量の見直し」「 VE / VF での再評価」へつなげます。
  • 維持期・在宅:在宅では肺炎既往や家族所見(食後の咳・痰・倦怠感)を重視しつつ、MWST のみでフォローすることもあります。WST は介助体制と観察条件を整えた場で慎重に検討します。

患者因子からみたテストの選び方

同じテストでも「成立するか」「負荷が過大でないか」で適応が変わります。患者因子は、実施の可否だけでなく“陰性結果をどこまで信用できるか”にも影響します。

  • 呼吸機能が脆弱:高度 COPD・在宅酸素・呼吸予備能が乏しい場合は、MWST のみまたは RSST・画像評価優先を検討します。WST の連続飲水は避けるのが無難です。
  • 認知機能・理解力:指示理解が不十分な症例は、WST の「一気飲み」が成立しません。MWST や RSST、実食観察で評価軸を組み立てます。
  • 既往歴:反復性肺炎や silent aspiration 疑いが強い場合は、陰性結果を過信せず、早めに VFSS / FEES を主評価へ切り替える前提で位置づけます。
  • 筋力・持久力:サルコペニア・フレイルが強い患者では、WST が「持久力テスト」として過大負荷になることがあります。少量での MWST と、全身負荷(歩行・ ADL )の情報も合わせて判断します。

適応・禁忌 / 安全管理(共通)

安全管理は「やり方」より「やらない判断(中止)」が重要です。禁忌寄りの状態を先に列挙し、実施条件と中止基準をチームで共有しておくと事故が減ります。

  • 禁忌寄り:臥位での意識障害、持続する湿性嗄声、著明な呼吸不安定、重度の咳嗽発作、循環不安定などでは慎重適応または見送りを検討します。
  • 原則:背もたれと足底接地を確保した座位で実施します。パルスオキシメータは任意ですが、装着時は体動によるアーチファクトに注意します。
  • 中止基準:激しいむせ込み、窒息感、SpO2 の急低下、顔色不良、強い苦悶表情などが出現したら即時中止・安静化し、必要に応じて医師へ報告します。
  • 次段:陽性または疑わしい場合は、RSST・咳反射・嚥下誘発性などの補助所見を組み合わせ、VE / VF へ連結するか、食形態・一口量の調整にとどめるかをチームで検討します。

MWST / WST 手順の「ここだけは外せないポイント」

細かな手順差よりも、再現性を担保する“条件固定”が結果を左右します。座位条件・声かけ・中止基準を揃え、同じ条件で再評価できる形に寄せます。

MWST(改訂水飲みテスト)のポイント

  • 座位・頭部正中位・口腔内清潔を確認し、冷水 3 mL を口腔内へ静かに入れます。
  • むせ・湿性嗄声・呼吸努力の変化を観察し、必要時 SpO2 を併記します(例:96 → 94 %)。
  • 陰性の場合のみ、施設運用に沿って 5–10 mL へ段階的に増量し、少量水の安全性の目安を作ります。

WST( 30 mL/3 oz/100 mL 系)のポイント

  • 事前に「途中でつらくなったら止めてよい」と説明し、連続嚥下が成立しそうか見通しを立てます。
  • 30 mL or 3 oz の連続飲水、または 100 mL の連続飲水を行い、連続嚥下の可否・むせ・中断・湿性嗄声を観察します。
  • 飲み切れない/むせる/湿性嗄声が出る場合は陽性として中止し、食形態調整や VE / VF への移行を検討します。
  • 高リスク症例では「WST を無理に行わない」も選択肢に含め、MWST・実食観察・画像評価の組み合わせで判断します。

記録と解釈(テンプレ)

<記録例>「座位。MWST 3 mL:むせなし・湿性嗄声なし。SpO2 96 → 95 %。WST 30 mL:連続嚥下は可能だが、終了後に軽度湿性嗄声。食形態は現状継続、VE で精査予定。」

  • MWST は「少量水の安全性」、WST は「連続嚥下と負荷」を主に見ていることを明示し、結果を分けて記述します。
  • 陰性でも silent aspiration の可能性をゼロとはせず、咳反射・喀痰性状・胸部画像・肺炎既往などとセットで解釈します。

現場の詰まりどころ:陰性でも「怪しい」が残るときの次の一手

水飲みテストが陰性でも、臨床では「何となく怪しい」が残ることがあります。ここで重要なのは、陰性を否定することより、“陰性のあとに固定して観察する項目”を決めておくことです。

  • 飲水後の声(湿性嗄声)・痰の変化
  • 食後の呼吸数・呼吸努力・倦怠感の変化
  • 反復する発熱・肺炎・痰量増加などの経過
  • 咳が弱い/咳が出にくい( silent aspiration を疑う背景)

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よくある質問(FAQ)

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Q1. どちらを先にやる?

A. 初期スクリーニングは、まず MWST( 3 mL )から始め、少量で明らかな問題がなければ必要に応じて WST を検討する流れが安全です。高リスク症例では、WST を無理に行わず VFSS / FEES へ移行する判断も含めて設計します。

Q2. SpO2 の低下を判定基準にしてよい?

A. SpO2 は参考指標として併用できますが、体動の影響(アーチファクト)を強く受けます。主要判定は、むせ・湿性嗄声・連続嚥下可否など臨床所見に置き、SpO2 は補助として記録すると運用が安定します。

Q3. RSST や EAT-10 との使い分けは?

A. RSST は嚥下反射の惹起性、EAT-10 は自覚的な嚥下困難感を主にみます。MWST / WST と完全に置き換えるものではなく、「少量水の安全性」「連続嚥下」「自覚症状」を組み合わせて全体像をつかむイメージで運用します。

次の一手:関連ページで回遊する

  • 3 oz(約 90 mL)と TWST( mL/s )の違いと使い分け
  • 改訂水飲みテスト( MWST )のやり方・評価・中止基準
  • 誤嚥性肺炎の PT 実務(評価 → 介入の全体像)

参考文献

  1. Oguchi N, et al. The modified water swallowing test score is the best predictor of aspiration pneumonia in acute stroke patients. Medicine (Baltimore). 2021. PMC
  2. Suiter DM, Leder SB. Clinical utility of the 3-ounce water swallow test. Dysphagia. 2008. PubMed
  3. Kuuskoski J, et al. The Water Swallow Test and EAT-10 as Screening Tools. Laryngoscope. 2024. Publisher
  4. Lin Y, et al. Modified volume-viscosity swallow test: diagnostic value. Front Neurol. 2022. PMC
  5. Persson E, et al. Repetitive Saliva Swallowing Test: Norms and Clinical Relevance. Dysphagia. 2018. PMC
  6. Donovan NJ, et al. Dysphagia Screening: State of the Art. Stroke. 2013. AHA

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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