MWST と WST の違い・使い分け【比較】

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栄養・嚥下
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ベッドサイドの嚥下スクリーニングは「安全に段階を踏む」ことが最優先です。本稿では、MWST(3 mL)と WST(30 mL)を、目的・手順・判定・禁忌・実務フローまで 1 ページで比較。Yale 3-oz の位置づけや、いつ VE/VF に進むかの判断材料も整理しました。

結論(先に要点)

実務は RSST → MWST → WST の順でリスクを段階化するのが基本です。MWST は少量 3 mL で安全域を確認し、WST は 30 mL 連続飲水で飲み方のパターンと 5 秒基準を評価します。いずれもベッドサイドのスクリーニングであり、異常所見や不安要素があれば VE/VF による精査を前提とします。

MWST は安全性に優れ、段階判定が可能。WST はパターン+時間という別軸の情報が得られます。Yale 3-oz(90 mL)は場面が異なるため、単純代替は不可。まずは RSST を踏んでから前進するのが安全です。

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MWST(3 mL)とは

3 mL の水を用いて嚥下の安全域を段階的に評価します。1〜5 点法で判定し、むせ・湿性嗄声・咳・呼吸苦・SpO2 低下などの異常があれば中止。少量での実施により、誤嚥リスクが相対的に低く、急性期や病棟回診でも扱いやすいのが利点です。

レビューでは、カットオフ 3 で感度・特異度のバランスが良好とされます(詳細は参考文献 1)。ただし個別の病態・口腔乾燥・意識レベル・姿勢などの影響を受けるため、結果は他の所見と併せて解釈します。

WST(30 mL)とは

30 mL を連続飲水し、飲み方のプロフィール(連続・分割・中断)と5 秒以内の完了可否を評価します。短時間で飲水パターンを把握でき、咽頭残留や嚥下タイミングの異常を示唆する情報が得られる一方、MWST より誤嚥リスクは高く、準備(吸引器・パルスオキシメータなど)と中止基準の徹底が前提です。

Yale 3-oz(90 mL)は外来・術後評価など特定の文脈で用いられるスクリーニングで、目的・対象が異なります。本稿では WST 原法(30 mL)を基準として比較します。

MWST と WST の比較(表)

MWST と WST の比較(成人・臨床一般・2025 年版)
項目 MWST(3 mL) WST(30 mL)
主目的 少量で安全域の段階判定 飲水パターン+所要時間
判定 1–5 点(カットオフ 3 目安) プロフィール × 5 秒基準
強み 安全性が高い・段階的 パターン把握・タイム指標
弱み 不顕性誤嚥は拾いにくい 誤嚥リスクが相対的に高い
次の一手 良好なら WST(または別日再評価) 異常なら VE/VF(精査)

禁忌・中止基準

禁忌:重度の意識障害・指示理解困難、著明な呼吸不全や急性増悪、重篤な循環器不安定、直前の誤嚥エピソードなど。病態が不安定なときは実施を延期し、医師と方針を確認します。

中止:むせ・湿性嗄声・呼吸苦の出現、SpO2 の有意低下(例:90%未満またはベースラインからの急低下)、咳嗽持続、顔色不良、訴え(胸部不快・めまい)など。必ず中止時点・症状・対応を記録します。

実務フロー(段階評価)

簡易アルゴリズム
① RSST(30 秒) → 3 回未満や症状あり:慎重に進める/VE/VF を検討。
② MWST(3 mL) → 4–5 点で次へ、3 未満または異常所見で VE/VF。
③ WST(30 mL) → プロフィール × 5 秒。むせ・湿性嗄声・SpO2 低下で即時中止 → VE/VF。

記録と共有のコツ

MWST/WST ともに、「姿勢・環境」「回数/所要時間」「症状」「中止の有無」「SpO2 変化」「備考(口腔乾燥・疼痛・注意の持続など)」をテンプレで記録。0 回と「実施不能」は区別します。記録の標準化は多職種カンファレンスの質を上げます。

注意:軽度例では単回評価で差が出にくいことがあります。時間帯・前後の服薬・疲労でパフォーマンスが変わるため、必要に応じて反復測定を。

参考文献

  1. Oguchi N, et al. Modified water swallowing test score and its relationship with aspiration pneumonia. Sci Rep. 2021;11:3212. PMC
  2. Horiguchi S, Suzuki Y. Screening Tests in Evaluating Swallowing Function. JMAJ. 2011. WST 原法(30 mL)概説。PDF
  3. National Rehabilitation Center. Dysphagia Rehabilitation Manual. 2015. WST 手順・プロフィール。PDF
  4. Suiter DM, Leder SB. The 3-ounce (90-cc) water swallow challenge. Otolaryngol Head Neck Surg. 2008/2009. DOI / PDF 概説
  5. Yoshimatsu Y, et al. Predictive Roles of Bedside Swallowing Tests. Dysphagia. 2020. PMC
  6. JSDR Working Group. Japanese Dysphagia Diet 2021. Jpn J Dysphagia Rehabil. 2021. PMC
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