NDI(Neck Disability Index)とは?評価でわかること
NDI(Neck Disability Index)は、頚部痛に関連した「日常生活での支障(機能障害)」を、本人の自己記入で数値化するアウトカム指標です。痛みの強さそのものよりも、「生活の困りごと」がどの程度あるかを点数で示せるため、介入の優先順位づけや説明、再評価の意味づけに向いています。
一方で、NDI は “測り方” が揃っていないと解釈が不安定になります。この記事では、設問文の掲載は避けつつ、点数の作り方/欠損の扱い/再評価のコツまで、現場で詰まりやすい部分を中心に整理します(評価の全体像は 評価ハブ からも辿れます)。
NDI を使う場面:向いているケースと注意点
NDI は、頚部痛が「生活にどれだけ影響しているか」を追うのに適しています。急性期〜慢性期まで幅広く使われ、外来・回復期・訪問など、環境が変わっても同じ枠組みで経過を見やすいのが強みです。
ただし、重い神経症状や強い認知機能低下など、自己記入の前提が崩れる場合は、補助的な観察指標や別の評価で補完します。また、点数だけで判断せず、「どの領域の困りごとが残っているか」を言語化して併走させると、介入の精度が上がります。
| 観点 | 向いている | 注意点 |
|---|---|---|
| 目的 | 生活上の支障を数値化し、説明と経過観察に使う | 痛みの強さだけの指標ではない(困りごとの量と質を見る) |
| タイミング | 初回評価/介入の節目/退院前後のフォロー | 再評価間隔がバラバラだと、変化の意味が読みにくい |
| 対象 | 自己記入が可能で、生活場面を想起できる | 自己記入が難しい場合は、補助評価を併用する |
実施手順:迷わない運用フロー
NDI は “配布して回収” でも実施できますが、運用のブレを減らすには、最初に「想起期間」「欠損の扱い」「再評価間隔」を固定しておくのが効果的です。ここが揃うと、点数の上下を “症状の変化” として読み違えにくくなります。
実施は、①想起期間を宣言 → ②自己記入 → ③欠損があれば理由を確認 → ④合計点だけでなく困りごと上位を記録の順に統一します。短時間で回すほど、記録の型(テンプレ)が効いてきます。
| 手順 | やること | 記録の型 |
|---|---|---|
| 1 | 想起期間を固定(例:過去 1 週間) | 「想起期間:__」を初回で決めて固定 |
| 2 | 自己記入( 1 人で難しければ読み上げ補助) | 補助の有無と理由を短く残す |
| 3 | 欠損(未回答・非該当)があれば理由を確認 | 欠損理由(未経験/非該当など)を 1 句で残す |
| 4 | 合計点+変化した領域+困りごと上位を共有 | 合計点だけ保存しない(説明が通りにくい) |
点数の作り方:合計点と欠損の扱い
NDI は、各設問が一定の範囲で採点され、合計点としてまとめます。運用上は、合計点(例: 0 〜 50 点)に加えて、必要に応じて百分率(%)に換算して説明すると、他職種や本人にも伝わりやすくなります。
注意したいのは欠損です。欠損を “ 0 点扱い” にすると、軽く見積もられて改善に見えることがあります。欠損が出た場合は、欠損理由を残し、採点ルールをチームで統一して、比較の精度を守ります。
| 論点 | 推奨運用 | よくある落とし穴 |
|---|---|---|
| 合計点の扱い | 合計点+困りごと上位(生活・仕事)をセットで残す | 合計点だけ保存して、何が困りごとか伝わらない |
| %換算 | 必要に応じて%で説明し、経過比較をわかりやすくする | 点の単位だけが独り歩きして、説明が曖昧になる |
| 欠損 | 欠損は理由を残し、扱いを統一する | 欠損を 0 点として扱い、改善に見えてしまう |
点数の見方:変化を “読める” 状態にする
NDI は、点数を “良い/悪い” で終わらせると、次の介入に繋がりにくくなります。臨床では、①現状の重さ(目安の区分)と、②どの領域の困りごとが残っているかをセットで扱うと、説明と計画が安定します。
さらに、再評価間隔が揃っていないと、点数が動いても “何が起きたのか” を読み違えます。再評価のタイミング(例: 2 〜 4 週)を固定し、同じ条件で比較するのが、NDI を活かす近道です。
| 合計点(例) | 目安 | 説明のコツ |
|---|---|---|
| 0 〜 4 | 支障なし〜最小 | 点数より “困りごとの有無” を確認 |
| 5 〜 14 | 軽度 | 生活のどこで支障が出るかを特定 |
| 15 〜 24 | 中等度 | 優先課題を 2 〜 3 個に絞って介入計画へ |
| 25 〜 34 | 重度 | 活動制限の背景(恐怖回避・睡眠・負荷量)も併走 |
| 35 以上 | 最重度 | 安全・受診連携・生活支援を含めて段階設計 |
よくある失敗:NDI が “伸びない/読めない” ときの整理
NDI の運用が詰まる原因は、患者さんの問題だけでなく、評価の条件が固定できていない/記録と共有の型がないなど “仕組み側” にあることも多いです。ここを整えるだけで、点数の解釈と説明が安定します。
運用を整える際は、抜け漏れチェックを先に作っておくとラクです。教育・記録の詰まりが強い職場ほど、最初に “型” を置くのが近道になります(状況整理の素材が必要なら 無料のチェックシートを見る も使えます)。
| よくある NG | 起こる問題 | 現場での対処 |
|---|---|---|
| 想起期間を毎回変える | 点数の上下が “症状” ではなく “期間差” になる | 初回に想起期間を決め、記録欄に固定(例:過去 1 週間) |
| 欠損を 0 点扱いする | 軽く見積もられて改善に見えてしまう | 欠損の扱いを統一し、欠損理由も残す |
| 合計点だけ保存する | 何が困りごとか伝わらない | 困りごと上位(生活・仕事)とセットで残す |
| 再評価間隔がバラバラ | 変化の意味が読めない | 再評価の間隔を固定(例: 2 〜 4 週) |
| 点数の改善だけで判断する | 復職/活動が戻らない原因を見落とす | 点数+ “実生活の課題” を 1 文で併記する |
よくある質問( FAQ )
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Q1. 点数が上下します。悪化でしょうか?
まずは “悪化” と決めつけず、想起期間と再評価間隔が初回と同じかを確認します。条件が揃っていないと、点数の上下が “症状の変化” ではなく “測り方の差” になります。条件を揃えた上で、変化した領域が生活・仕事の困りごとにどう影響しているかまでセットで読むと、判断が安定します。
Q2. 欠損(未回答・非該当)があるときはどうしますか?
欠損を 0 点扱いにすると、軽く見積もられて改善に見えることがあります。欠損が出た場合は、欠損理由(未経験/非該当など)を短く残し、扱いをチームで統一して比較の精度を守ります。
Q3. 合計点だけで説明しても伝わりません。
合計点だけだと、何が困りごとなのかが伝わりにくいです。変化した領域と困りごと上位 3(生活・仕事)をセットで共有すると、説明が通りやすくなります。
Q4. 点数は良いのに、活動や復職が進みません。
点数が改善しても、活動が戻らないことはあります。負荷量の再開、睡眠、恐怖回避、職場調整など “運用と環境” が詰まりどころになることが多いです。点数に加えて「実生活の課題」を 1 文で残すと、次の介入が明確になります。
次の一手
NDI は “測る” だけでなく、条件を固定して比較できる状態にして初めて価値が出ます。まずは運用の型を小さく作って、説明と再評価のコストを下げましょう。
次にやることは、①想起期間と再評価間隔の固定、②欠損対応の統一、③合計点だけ保存しない、の 3 点です。ここが揃うと「伸びない/読めない」が一気に減ります。
- 運用を整える:想起期間/欠損の扱い/再評価間隔をチームで固定する
- 共有の型を作る:合計点+困りごと上位(生活・仕事)をセットで残す
- 環境の詰まりも点検:教育体制や記録文化の抜け漏れ確認に 無料のチェックシートを見る
参考文献
- Vernon H, Mior S. The Neck Disability Index: a study of reliability and validity. J Manipulative Physiol Ther. 1991;14(7):409-415. PubMed
- Takeshita K, et al. Validity, reliability and responsiveness of the Japanese version of the Neck Disability Index. 2013. PubMed
- Neck Disability Index (NDI) instrument information. MAPi Research Trust(ePROVIDE)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


