ロンベルグ試験は開眼と閉眼の差で見る静的バランス評価です
ロンベルグ試験( Romberg test )は、閉脚立位で開眼と閉眼の保持状態を比較し、視覚を外したときに姿勢保持が崩れるかを見るベッドサイド評価です。開眼では保てるのに閉眼で著明な動揺・踏み出し・転倒傾向が出る場合、固有感覚(後索)や前庭入力の関与を考えます。
この記事では、ロンベルグ試験の手順、陽性の意味、小脳性失調との見分け方、無効試行を避けるコツ、記録例までを臨床で使いやすい形に整理します。単に「できた/できない」で終わらせず、再評価で比較できる条件固定まで決めることが目的です。
ロンベルグ試験で決めるのは「閉眼で崩れるか」です
ロンベルグ試験の本質は、立位保持の成否ではなく、開眼条件と閉眼条件の差を見ることです。視覚が使える開眼で保てるのに、閉眼で大きく崩れる場合は、視覚代償が外れたことで固有感覚や前庭入力の弱さが表面化した可能性を考えます。
一方で、開眼の時点から不安定な場合は、ロンベルグ陽性と単純に扱わず、小脳性失調、筋力低下、疼痛、恐怖心、注意障害なども含めて再確認します。ロンベルグ試験は原因を確定する検査ではなく、次に確認すべき所見を絞るための入口として使います。
やり方は足位・上肢・視線・見守り位置を固定します
再現性を高めるには、評価前に足位、上肢位置、視線、評価者の位置を固定します。条件が毎回変わると、陽性・陰性よりも手技差が結果に混ざり、再評価で比較しにくくなります。
| 手順 | 実施内容 | 観察ポイント | 時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 両足をそろえて立位をとる | 踵の接触、足先角度、上肢位置を固定する | 準備 |
| 2 | 開眼で保持する | 体幹動揺、踏み出し、介助要否を確認する | 約 30 秒 |
| 3 | 閉眼で保持する | 揺れの急増、方向性、踏み出し、転倒傾向を確認する | 約 30 秒、必要時 60 秒 |
| 4 | 開眼と閉眼の差を記録する | 秒数だけでなく、破綻の形を残す | 終了後 |
陽性は「開眼で保てるのに閉眼で崩れる」状態です
ロンベルグ試験の陽性は、開眼では立位保持できるのに、閉眼で著明な動揺・踏み出し・転倒傾向が出る状態です。軽い揺れだけで即陽性とせず、開眼条件との差と、介助を要するほどの破綻があるかを合わせて判断します。
臨床では、固有感覚(後索)や前庭入力の関与を疑いつつ、単独で診断を決めないことが重要です。開眼から不安定な場合は、小脳性失調や下肢筋力低下など別の要因を優先して考えます。
| 観察パターン | 考えやすい要因 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 開眼は安定し、閉眼で崩れる | 固有感覚(後索)や前庭入力の関与 | 足底感覚、関節位置覚、振動覚、めまいの有無 |
| 開眼から不安定で、閉眼でも同程度 | 小脳性失調、筋力低下、疼痛、恐怖心など | 協調性検査、体幹失調、下肢筋力、歩行時の動揺 |
| 閉眼後に徐々に一方向へ偏る | 前庭系の関与を疑う | 眼振、頭位変換、めまい、方向転換時の不安定性 |
現場の詰まりどころは条件不一致による無効試行です
ロンベルグ試験で最も多い詰まりは、判定そのものよりも毎回の条件がそろっていないことです。足位、上肢位置、声かけ、見守り位置が変わると、閉眼で崩れた理由が感覚入力の問題なのか、実施条件の違いなのか判断しにくくなります。
失敗パターンと回避策
| よくある失敗 | 結果への影響 | 回避策 | 記録に残す項目 |
|---|---|---|---|
| 足位が毎回違う | 支持基底面が変わり、揺れや保持時間が変動する | 踵接触、足先角度、靴の有無を統一する | 足位、靴の有無 |
| 上肢位置がばらばら | 上肢代償により安定して見える | 体側、胸の前、腰当てなど施設内で固定する | 上肢位置 |
| 声かけや見守り位置が変わる | 注意配分や恐怖心の影響で結果が変わる | 説明文、立ち位置、介助準備を統一する | 声かけ、見守り位置、介助量 |
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、評価技術だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
中止基準は転倒傾向・めまい・恐怖心で判断します
ロンベルグ試験はシンプルな評価ですが、閉眼立位を行うため転倒リスクがあります。安全管理では、最後まで実施することよりも、破綻の形を確認した時点で止める判断を優先します。
| 状況 | 判断 | 代替・次の対応 |
|---|---|---|
| 開始時点で明らかなふらつきがある | 閉眼条件へ進まない | 支持物あり立位、座位評価、別のバランス評価へ変更する |
| 閉眼直後に踏み出し・転倒傾向が出る | その時点で中止 | 破綻までの時間、方向、介助量を記録する |
| めまい・悪心・強い恐怖心が出る | 継続しない | 症状、バイタル、前庭症状の有無を確認する |
記録は条件・秒数・破綻様式をセットで残します
ロンベルグ試験の記録は、陽性・陰性だけでは再評価に使いにくくなります。足位、上肢位置、開眼・閉眼時間、破綻様式、介助量をセットで残すと、担当者が変わっても比較しやすくなります。
| 記録項目 | 残す内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 条件 | 足位、上肢位置、視線、靴の有無 | 閉脚立位、上肢体側、裸足、前方注視 |
| 保持時間 | 開眼と閉眼を分けて記録 | 開眼 30 秒保持、閉眼 8 秒で右後方へ踏み出し |
| 破綻様式 | 揺れ、方向、踏み出し、介助要否 | 閉眼後に左右動揺増大、軽介助で転倒予防 |
| 解釈 | 断定せず、追加確認につなげる | 閉眼で動揺増大あり。固有感覚・前庭入力の関与を追加評価する |
記録例:閉脚立位、上肢体側、裸足で実施。開眼 30 秒保持可能。閉眼 10 秒で左右動揺増大し、右後方へ踏み出しあり。軽介助で転倒予防。開眼閉眼差が明確であり、固有感覚・前庭入力の関与を追加確認する。
ロンベルグ試験の記録シートをダウンロード
開眼・閉眼の保持時間、破綻様式、介助量、解釈メモを 1 枚で残せる A4 記録シートです。印刷して評価場面で使う場合は、足位・上肢位置・靴の有無などの条件もあわせて記録しておくと、再評価時に比較しやすくなります。
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よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
ロンベルグ試験は何秒できたら正常ですか?
臨床では、まず開眼 30 秒、閉眼 30 秒を目安に観察し、必要に応じて 60 秒まで確認します。ただし、秒数だけで正常・異常を決めるのではなく、開眼と閉眼の差、踏み出し、介助要否、転倒傾向を合わせて判断します。
閉眼で少し揺れるだけでも陽性ですか?
軽い揺れだけでは過判定になることがあります。臨床では、閉眼で動揺が明らかに増える、保持できない、踏み出す、介助を要するなど、開眼条件との差がはっきりした場合に陽性として扱います。
小脳性失調とはどう見分けますか?
小脳性失調では、開眼の時点から体幹動揺や協調性低下が目立つことがあります。ロンベルグ試験だけで見分けるのではなく、協調性検査、眼振、歩行時の失調、体幹保持の様子と合わせて整理します。
高齢者ではどう解釈すればよいですか?
高齢者では、感覚入力、筋力、注意、恐怖心、既往歴が結果に影響します。単回の陽性・陰性より、同じ条件での再評価、転倒歴、歩行評価、他のバランステストとの組み合わせで判断すると実用的です。
カルテには最低限何を書けばよいですか?
足位、上肢位置、開眼・閉眼の保持時間、破綻様式、介助量を残します。余裕があれば、揺れの方向、踏み出し方向、めまい・恐怖心の有無、次に確認する評価も追記すると再評価しやすくなります。
次の一手
- 全体像を整える:評価ハブで評価全体の流れを確認する
- すぐ実装する:静的バランス評価の使い分けを確認する
参考文献
- Forbes Kaprive J, Munakomi S, Cronovich HA. Romberg Test. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan-. PMID: 33085334. PubMed / NCBI Bookshelf.
- Khasnis A, Gokula RM. Romberg’s test. J Postgrad Med. 2003;49(2):169-172. PMID: 12867698. PubMed.
- Halmágyi GM, Curthoys IS. Vestibular contributions to the Romberg test: testing semicircular canal and otolith function. Eur J Neurol. 2021;28(9):3211-3219. doi:10.1111/ene.14942. PubMed.
- Anagnostou E, Kouvli M, Karagianni E, Gamvroula A, Kalamatianos T, Stranjalis G, et al. Romberg’s test revisited: changes in classical and advanced sway metrics in patients with pure sensory neuropathy. Neurophysiol Clin. 2024;54(5):102999. doi:10.1016/j.neucli.2024.102999. PubMed.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


