- マン試験はタンデム立位で開眼・閉眼を比較する鋭敏型ロンベルグ検査です
- マン試験では支持基底面を狭くして姿勢保持の崩れ方を観察します
- マン試験のやり方|開眼30秒・閉眼30秒・足の入替で条件をそろえます
- マン試験の判定|30秒未満だけで陽性・異常とは判断しません
- 高齢者では保持時間が短くなるため年齢を無視した一律判定を避けます
- 結果の見方|開眼・閉眼差と崩れ方を他の所見と組み合わせます
- 前後の足を入れ替えた差は「左右差の診断」ではなく再現性・偏りとして記録します
- 開眼で大きく崩れる場合は閉眼へ進まず安全な条件へ段階を下げます
- 記録は標準条件と臨床上の追加所見を分けると再評価しやすくなります
- マン試験でよくある誤解は「30秒未満=異常」と「閉眼で崩れる=特定疾患」です
- よくある質問(FAQ)
- まとめ|マン試験は秒数より「条件と崩れ方」をそろえて読みます
- 参考文献
- 著者情報
マン試験はタンデム立位で開眼・閉眼を比較する鋭敏型ロンベルグ検査です
静的バランス評価の全体像から確認したい方へ
マン試験(Mann test)は、片方の足の踵と反対側の足尖を接するように前後一直線へ置く「タンデム立位(継ぎ足位)」で姿勢保持を観察する静的バランス評価です。日本めまい平衡医学会の用語集では、sharpened Romberg test(鋭敏型ロンベルグ検査)、tandem Romberg test(継ぎ足ロンベルグ検査)と同義に整理されています。
臨床では、開眼・閉眼での姿勢保持、著明な動揺、踏み出し、転倒、介助の有無などを観察します。開眼30秒・閉眼30秒で実施する標準化例がありますが、「30秒未満だったから陽性・異常」と一律に判断する検査ではありません。年齢や実施条件、閉眼による変化も含めて結果を解釈することが重要です。
最初に押さえたい3点
- マン試験はタンデム立位で行う鋭敏型ロンベルグ検査です。
- 30秒は観察時間として使われる条件であり、30秒未満を一律の異常基準にはしません。
- 保持秒数だけでなく、著明な動揺・転倒・踏み出し・介助・開閉眼差を記録します。
マン試験では支持基底面を狭くして姿勢保持の崩れ方を観察します
マン試験の特徴は、通常の閉脚立位より支持基底面を狭くすることです。足を前後一直線に配置すると、とくに側方への姿勢制御が難しくなり、閉脚立位では目立たなかった不安定性が表面化することがあります。
ただし、マン試験は「左右差だけを見る検査」ではありません。足を入れ替えた際の差は有用な追加所見ですが、中心となるのはタンデム立位を保ったときの動揺や転倒と、開眼・閉眼による変化です。
| 観察項目 | 確認する内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 姿勢保持 | タンデム立位をどの程度維持できるか | 基本所見 |
| 身体動揺 | 動揺の程度と方向、著明な増大があるか | 基本所見 |
| 転倒・踏み出し | 姿勢を保てず足を出したか、転倒防止介助が必要だったか | 基本所見 |
| 開眼・閉眼差 | 閉眼によって動揺や保持能力が明らかに変化するか | 基本所見 |
| 前後足の入替 | 足を入れ替えても同じ傾向を示すか、偏りがあるか | 追加所見 |
マン試験のやり方|開眼30秒・閉眼30秒・足の入替で条件をそろえます
マン試験は、毎回同じ足位・視線・上肢位置・計時条件で行うことが重要です。国内の神経耳科領域では、タンデム立位で開眼30秒、閉眼30秒を観察し、その後に前後の足を入れ替える標準化例が報告されています。本記事では、この流れを臨床での運用例として整理します。
ただし、マン試験を含むタンデム立位検査には複数のプロトコルがあります。施設で定められた方法がある場合はその条件を優先し、経時評価では同じ条件を再現してください。
| 手順 | 実施内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1.足位を作る | 両足を前後一直線に置き、前足の踵と後足の足尖を接するタンデム立位をとる | 足位が毎回変わらないよう確認する |
| 2.姿勢を整える | 頭部を正面に向け、前方を見る。上肢位置も施設内で統一する | 視線や上肢条件を再評価時にもそろえる |
| 3.開眼で観察する | 開眼で30秒を目安に姿勢保持を観察する | 動揺、踏み出し、接触介助、転倒を確認する |
| 4.閉眼で観察する | 開眼で姿勢が安定していることを確認してから閉眼し、30秒を目安に観察する | 閉眼直後の崩れを見逃さず、安全確保を優先する |
| 5.足を入れ替える | 前足と後足を入れ替え、同じ条件で再度確認する | 保持時間や崩れる方向の再現性・偏りを記録する |
安全上の注意
評価者は側方〜後方など、崩れた瞬間に転倒を防止できる位置で見守ります。開眼ですでに大きく崩れる場合や、タンデム位をとるだけで接触介助が必要な場合は、無理に閉眼へ進めません。
マン試験の判定|30秒未満だけで陽性・異常とは判断しません
マン試験で最も注意したいのは、「30秒保持できなかった=マン試験陽性」と単純化しないことです。30秒は観察時間として用いられることがありますが、それ自体が全年齢・全対象に共通した異常カットオフではありません。
航空身体検査マニュアルの Mann Test では、タンデム立位で開眼・遮眼を観察し、前後の足を交替します。その判定基準は「開眼時及び閉眼時ともに著明な動揺又は転倒のないこと」とされており、30秒未満という保持時間だけで異常を定義しているわけではありません。
なお、航空身体検査は航空従事者の医学適性を判断するための制度上の検査です。その判定基準を、リハビリテーション患者の診断基準や一般的な正常値としてそのまま置き換えることはできません。臨床では、保持時間とともに以下の所見をまとめて評価します。
| 所見 | 読み方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 30秒保持できる | その条件では姿勢を保持できた | 「バランス障害なし」とまでは断定しない |
| 30秒未満で終了 | 保持時間と終了理由を記録する | 秒数だけで陽性・異常としない |
| 著明な動揺 | 動揺の程度・方向と条件を記録する | 開眼か閉眼かを区別する |
| 踏み出し | 姿勢保持を継続できず支持基底面を変更した所見として残す | 何秒時点か、方向も記録する |
| 接触介助・転倒 | 安全確保が必要だった重要な所見として記録する | 無理に計時を継続しない |
| 閉眼で悪化 | 視覚情報を除いた条件で不安定性が増したことを示す | マン試験単独で障害部位を断定しない |
高齢者では保持時間が短くなるため年齢を無視した一律判定を避けます
高齢者のマン試験では、若年者と同じ保持時間をそのまま正常基準として当てはめないことが重要です。加齢に伴ってタンデム立位の保持能力は低下し、とくに閉眼条件では短時間になることがあります。
65歳以上111名を対象とした日本の研究では、各年代の成績の90%を含む値を用いてマン検査の参考値が検討されました。著者らが提示した値は、開眼では65〜69歳で20秒、70〜79歳で10秒、80歳以上で5秒未満、閉眼では65〜69歳で5秒、70歳以上では5秒未満でした。
| 年齢 | 開眼 | 閉眼 |
|---|---|---|
| 65〜69歳 | 20秒可能 | 5秒可能 |
| 70〜79歳 | 10秒可能 | 5秒未満 |
| 80歳以上 | 5秒未満 | 5秒未満 |
※水田ら(1991)が65歳以上の対象者から設定した研究上の判定値です。対象集団や測定方法が限定された古い研究であり、現在の全高齢者へ適用できる普遍的な正常値ではありません。
このデータから重要なのは、「高齢者なら何秒が正常か」を一つの数字で決めることではなく、年齢が上がるほど保持時間が短くなり得るため、30秒未満だけで異常と判断してはいけないという点です。再評価では同じ患者の経時変化と、同じ測定条件での変化を重視します。
結果の見方|開眼・閉眼差と崩れ方を他の所見と組み合わせます
マン試験の結果は、保持時間だけでなく「どの条件で、どのように崩れたか」を読むことが重要です。たとえば開眼では安定しているのに閉眼後に著明な動揺が増える場合は、視覚情報を利用できなくなった条件で姿勢保持が難しくなったことを示します。
ただし、この所見だけから「前庭障害」「深部感覚障害」「小脳障害」などと障害部位を断定することはできません。感覚所見、眼振・めまい症状、協調運動、立ち直り反応、歩行などを追加して原因を絞り込みます。
臨床での読み方
「閉眼で6秒だった」だけで終えず、開眼ではどうだったか → 閉眼で何が変わったか → 足を入れ替えても再現するか → 他のバランス・感覚・歩行所見で説明できるかの順に考えると、結果を次の評価につなげやすくなります。
ロンベルグ試験との目的や使い分けを整理したい場合は、マン試験とロンベルグ試験の違いで詳しく解説しています。
前後の足を入れ替えた差は「左右差の診断」ではなく再現性・偏りとして記録します
マン試験では、前足と後足を交替して同じ観察を行う方法があります。足を入れ替えたときに保持時間や動揺方向が変われば、臨床上の追加情報になります。
ただし、「右足前の方が短いから右側の障害」といった一対一の対応で解釈することは避けます。前後足の違いは、筋力・可動域・感覚・疼痛・足部機能・姿勢戦略など複数の要素の影響を受けます。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 前足 | 右足前/左足前 |
| 保持時間 | 右足前30秒、左足前14秒 |
| 動揺方向 | 左足前で右側方への動揺増大 |
| 踏み出し | 閉眼14秒で右側へステップ |
| 再現性 | 再試行でも左足前で同様の傾向 |
開眼で大きく崩れる場合は閉眼へ進まず安全な条件へ段階を下げます
マン試験は支持基底面が狭く、閉眼するとさらに難易度が高くなります。タンデム立位そのものが困難な患者では、検査を最後まで実施することより転倒を防ぐことを優先します。
| 状況 | 対応 | 記録 |
|---|---|---|
| タンデム位を自力で作れない | 無理に開始せず、より広い足位を検討する | 初期支持・介助の必要性を記録する |
| 開眼直後から著明に動揺する | 閉眼へ進まない | 開眼での保持時間と崩れ方を記録する |
| 踏み出しや接触介助が必要 | 安全を確保して計時を終了する | 終了秒数、踏み出し方向、介助量を残す |
| 強い恐怖感がある | 検査条件を下げる、または中止する | 実施できなかった理由を記録する |
| 指示理解が不十分 | 結果の妥当性を考慮し、別の評価を検討する | 指示理解の状況を残す |
段階を下げる場合は、セミタンデム立位や閉脚立位など、より安全に実施できる条件から姿勢保持能力を確認します。ただし、条件を変えた結果をマン試験の結果として混在させず、「セミタンデム」など実施した足位を明記してください。
記録は標準条件と臨床上の追加所見を分けると再評価しやすくなります
マン試験は施設や研究によって細かな実施条件が異なるため、再評価では「何秒だったか」以上に同じ条件で測れているかが重要です。タンデム立位研究では、開始時に支持が必要だったかどうかも結果の解釈に影響することが報告されています。
そのため、標準的な検査条件と、臨床で追加すると有用な記録項目を分けて整理しておくと比較しやすくなります。
| 区分 | 項目 | 記録内容 |
|---|---|---|
| 実施条件 | 足位 | タンデム位、右足前/左足前 |
| 視覚条件 | 開眼/閉眼 | |
| 上肢・視線 | 上肢位置、固視点など | |
| 初期支持 | 足位を作る際の支持・介助の有無 | |
| 結果 | 保持時間 | 何秒保持したか |
| 動揺 | 程度と方向 | |
| 踏み出し | 有無、方向、発生した秒数 | |
| 介助 | 見守り、接触介助、転倒防止介助 | |
| 終了理由 | ステップ、転倒防止、恐怖感など | |
| 追加所見 | 前後足の入替 | 保持時間や崩れ方の再現性・偏り |
カルテ記録例
例:マン試験、タンデム立位、上肢体側。右足前:開眼30秒保持可、閉眼12秒で左側方への動揺増大後に左ステップ。左足前:開眼24秒で右側方への動揺あり、閉眼6秒で接触介助。閉眼で不安定性が増大。前後足の入替でも保持時間・崩れ方に差を認めるため、歩行・感覚・その他のバランス所見と合わせて評価する。
このように、条件 → 結果 → 解釈を分けると、次回の評価者が同じ条件を再現しやすくなります。「マン試験陽性」と一言だけ記録するより、保持時間・終了理由・介助量まで残す方が臨床的な情報量は多くなります。
マン試験でよくある誤解は「30秒未満=異常」と「閉眼で崩れる=特定疾患」です
マン試験は簡便ですが、結果を単純化すると解釈を誤りやすい検査です。とくに、30秒という数字や閉眼条件だけを切り取らないよう注意します。
| 避けたい解釈 | 問題点 | 実際の考え方 |
|---|---|---|
| 30秒できない=異常 | 年齢やプロトコルを無視している | 30秒は観察時間として扱い、保持時間と崩れ方を記録する |
| 閉眼で崩れる=前庭障害 | 単独所見から障害部位を断定している | 感覚・前庭・小脳・歩行など他所見と合わせる |
| 足を入れ替えた差=患側 | 複数の身体要因を無視している | 再現性・偏りを示す追加所見として扱う |
| 秒数だけ記録する | 前回との条件差を判断できない | 足位、初期支持、動揺、ステップ、介助も残す |
よくある質問(FAQ)
マン試験は何秒行いますか?
開眼30秒、閉眼30秒で観察し、その後に前後の足を入れ替える標準化例があります。ただし、マン試験のプロトコルは完全に統一されているわけではありません。経時評価では、採用した時間や足位などの条件を毎回そろえることが重要です。
30秒できなければマン試験陽性ですか?
30秒未満という保持時間だけで一律に陽性・異常とは判断しません。著明な動揺、転倒、踏み出し、介助の有無、開眼と閉眼の差、年齢などを合わせて評価します。「陽性」という表現を使う場合は、どの判定基準やプロトコルに基づくのかを明確にする方が安全です。
開眼と閉眼はどちらを先に行いますか?
開眼を先に行います。開眼でタンデム立位が安定していることを確認してから閉眼へ進みます。開眼ですでに大きく崩れる場合は、閉眼を無理に実施しません。
高齢者でも30秒を基準にしますか?
30秒を観察時間として設定することはできますが、30秒保持できることを全年齢共通の正常基準にはできません。高齢者では加齢に伴って保持時間が短くなることが報告されているため、年齢、実施条件、経時変化を考慮して解釈します。
左右の足は必ず入れ替えますか?
前後の足を交替して同様に観察する方法があります。足を入れ替えたときの保持時間や崩れ方の違いは、再現性・偏りを見る追加所見になります。ただし、その差だけから障害側を断定することは避けます。
マン試験とロンベルグ試験の違いは何ですか?
マン試験はタンデム立位を用いるため、通常の閉脚立位で行うロンベルグ試験より支持基底面が狭くなります。日本めまい平衡医学会では Mann test を sharpened Romberg test、tandem Romberg test の同義語として整理しています。臨床での使い分けは「マン試験とロンベルグ試験の違い」の記事で整理しています。
まとめ|マン試験は秒数より「条件と崩れ方」をそろえて読みます
マン試験は、タンデム立位で開眼・閉眼の姿勢保持を観察する鋭敏型ロンベルグ検査です。開眼30秒・閉眼30秒と前後足の入替は実施条件をそろえる一つの方法ですが、30秒未満=一律に陽性・異常ではありません。
臨床では、保持時間だけでなく、著明な動揺、踏み出し、転倒、介助の有無、開閉眼差、足を入れ替えた際の再現性を記録します。高齢者では年齢によって保持時間が短くなる可能性も考慮し、単独の秒数ではなく、同じ条件での経時変化と他のバランス所見を合わせて判断することが重要です。
参考文献
- 日本めまい平衡医学会用語委員会. 日本めまい平衡医学会用語集「検査」. Equilibrium Res. 2023;82(6):552-555. J-STAGE.
- 一般財団法人 航空医学研究センター. 航空身体検査マニュアル:耳鼻咽喉・平衡機能検査. Web. Accessed 2026 Sep 7.
- Mizuta K, Akita S, Miyata H, Ito Y, Sakuma S, Shirato H, et al. Criteria for the Standing Test and the Deviation Test in the Elderly. Equilibrium Res. 1991;50(4):352-357. J-STAGE.
- Hile ES, Brach JS, Perera S, Wert DM, VanSwearingen JM, Studenski SA. Interpreting the need for initial support to perform tandem stance tests of balance. Phys Ther. 2012;92(10):1316-1328. doi:10.2522/ptj.20110283.
- Anh DT, Takakura H, Asai M, Ueda N, Shojaku H. Application of machine learning in the diagnosis of vestibular disease. Sci Rep. 2022;12:20805. doi:10.1038/s41598-022-24979-9.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

