作業療法 初期評価シート|OTらしいチェック項目

評価
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作業療法 初期評価シートのねらい

臨床で伸びる学び方の流れを見る(PT・OT キャリアガイド)

本記事は、作業療法士の「初期評価」に必要な項目を、ICF と OT らしい視点で整理したチェックリストとしてまとめたものです。カルテ様式は施設ごとに違いますが、押さえるべき情報の柱はそれほど大きく変わりません。そこで、転職・配置換え・新人教育など、どの現場でも共通して使える“汎用テンプレ”をイメージして構成しています。

特に、「評価が聞き取りで終わってしまう」「作業や生活の情報がうまく整理できない」「先輩によって見るポイントがバラバラで迷う」といった悩みを持つ OT・PT の方を主な読者として想定しています。この記事のチェックリストをもとに、自部署のカルテや既存様式と突き合わせながら、明日からの初期評価シートをブラッシュアップしていくことを目標とします。

OT 初期評価の全体像(ICF × 作業の視点)

作業療法の初期評価では、ICF の「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」を意識しつつ、作業パフォーマンスと生活歴・価値観を中心に情報を集めます。単に「どこまで ADL ができるか」だけでなく、「どのような作業に意味を感じてきたか」「退院後にどんな生活を送りたいか」といった文脈まで押さえることで、同じ FIM スコアでも目標や介入の方向性が変わってきます。

評価の流れとしては、①基本情報と医療情報の確認 → ②生活歴・役割・価値観の聴取 → ③作業パフォーマンスの観察と自己評価 → ④心身機能のスクリーニング → ⑤環境・家族・支援状況の把握 → ⑥リスクと優先目標の整理、というサイクルをイメージしておくと、聞き取りや観察が散らかりにくくなります。作業療法士の評価の全体像は、すでに公開している作業療法士の評価入門も併読していただくと位置づけがより明確になります。

評価項目チェックリスト(身体・作業・環境・文脈)

ここでは、OT 初期評価シートに最低限入れておきたい評価項目を、チェックリスト形式で整理します。すべてを 1 回で埋める必要はなく、急性期では医療情報とリスクを優先、回復期・生活期では作業パフォーマンスと環境を深掘りするなど、フェーズに応じて重点を変える使い方を想定しています。

※スマートフォンでは横スクロールしてご覧ください。実際のシート作成時は、施設の様式や電子カルテの構成に合わせて取捨選択してください。

OT 初期評価で押さえたい主な項目(成人・身体・老年期領域を想定)
カテゴリー 主な項目 チェックのポイント
基本情報・医療情報 診断名・既往歴・発症日/手術日・合併症・禁忌/注意点・服薬状況など リスク管理と予後の見通しに直結する情報を優先。医師記録とダブルチェックし、OT 独自の視点(疲労・痛み・せん妄など)も補足します。
生活歴・役割・価値観 家族構成・居住形態・職業歴・役割(家事・趣味・地域活動)・大切にしていること 「これまで」「いま」「これから」の 3 つの時間軸で聴取し、作業歴や役割の変化を把握します。本人の語りをそのまま引用しておくと目標設定の材料になります。
作業パフォーマンス(ADL/IADL) 食事・更衣・整容・排泄・移動・入浴・家事・買い物・外出・仕事・趣味など 自立度だけでなく、「所要時間」「安全性」「疲労感」「代償動作」「支援の内容」を具体的に記載します。本人の自己評価(困りごと・優先順位)も忘れずに。
心身機能 ROM・筋力・麻痺の程度・感覚・痛み・バランス・巧緻性・高次脳機能・情緒・意欲など OT の担当領域や他職種との分担を意識しつつ、作業パフォーマンスと関連の強い機能から優先的に評価します。標準化検査の有無も併記しておくと便利です。
環境・支援状況 家屋構造・動線・段差・手すり・福祉用具・介護力・通院手段・地域資源の利用状況 家屋調査が未実施の場合は、間取りや写真、家族からの情報をもとに仮のイメージを作ります。退院先が未定の場合は候補パターンごとに必要な支援を整理します。
本人の目標・希望 退院後の暮らし方・復職/復学の希望・やりたい作業・不安に思っていること 「いつまでに」「どの程度まで」を一緒に言語化できるとベストですが、初期は漠然とした希望でも構いません。後の COPM や GAS に展開できる形でメモしておきます。
リスク・留意点 転倒・誤嚥・褥瘡・せん妄・行動上の危険・虐待リスク・権利擁護など OT セッション中に起こり得るリスクと、病棟生活・在宅生活でのリスクを分けて整理します。「何が起きると危ないか」「どこまでなら許容できるか」をチームで共有します。

現場の詰まりどころ(よくあるつまずきと対策)

初期評価シートを運用していると、「項目が多すぎて時間内に終わらない」「書くことに精一杯で、利用者さんと向き合う余裕がない」「誰が見ても同じようには使えていない」といった悩みが生まれがちです。特に、新人 OT は “空欄を埋めること” がゴールになってしまい、評価のストーリーが見えなくなることがあります。

対策としては、まず「今日の評価で何を決めたいか」を 1〜2 個だけ明確にしてからシートを使うことが有効です(例:退院先の見通し、トイレ動作の自立度、復職の可能性など)。そのうえで、必須の安全情報と作業パフォーマンスに関わる部分を優先し、詳細な心身機能や環境情報は次回に回すなど、フェーズごとに“埋める範囲”を決めておきます。シート自体も、定期的にカンファレンスで見直し、「もう使っていない項目」は思い切って削ることが大切です。

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1.初回で全部聴き切れません。どこまでを目標にすればよいですか?

急性期や多忙な病棟では、初回でシートを完璧に埋めるのは現実的ではありません。まずは、安全管理に必須の情報(医療情報・リスク)と、ADL のごく基本(トイレ・移乗・移動)を優先的に押さえましょう。生活歴や価値観、将来の希望などは、状態が安定してから少しずつ深掘りすれば十分です。「今日はここまで」と決めておくことで、聴き取りの質も保ちやすくなります。

Q2.カルテ様式が職場ごとに違い、転職のたびに迷います。

様式が変わっても、OT が押さえるべき軸(作業パフォーマンス・心身機能・環境・価値観)は大きく変わりません。まずは、自分の中に共通の“頭の中のテンプレ”を持つことが大切です。本記事のチェックリストをもとに、転職先のカルテ項目と対応関係を作っておくと、「この欄は作業パフォーマンス」「この欄は環境因子」といった整理がしやすくなり、書き慣れるまでのストレスを減らせます。

Q3.OT と PT/ST の評価が重なるとき、どのように差別化すればよいですか?

ROM や筋力、高次脳機能などの評価はどうしても職種間で重なりますが、「どの作業にどう影響しているか」を説明することが OT の強みです。例えば、「注意障害あり」だけで終わらせず、「調理中に鍋の火から目が離れがち」「トイレでズボンを下ろしたまま動き出す」など、具体的な作業場面と結びつけて記載します。こうした視点を意識しておくと、同じ検査結果でも OT の記録が他職種にとって読みやすくなります。

おわりに

OT 初期評価シートは、単なる「記録用紙」ではなく、作業パフォーマンス・心身機能・環境・価値観をつなげて理解するためのフレームワークです。すべての項目を完璧に埋めることよりも、ケースごとに優先順位をつけながら、生活のストーリーを描ける情報が集まっているかを意識することが大切だといえます。

評価や目標設定の整理に悩むときは、見学や情報収集の段階でも使える面談準備チェック( A4 ・ 5 分)と職場評価シート( A4 )を活用すると、働き方や学び方の振り返りにも役立ちます。印刷して持ち歩き、気になった職場やケースで書き込んでおくと、次のステップを考える際の“自分用データベース”としても使いやすくなります。詳しくはこちらのダウンロードページから確認してみてください。

参考文献

  • 世界保健機関. 国際生活機能分類 ICF. 総合リハビリテーション誌などの和文解説を含め、各施設で参照しやすい版を確認してください。
  • 日本作業療法士協会. 作業療法ガイドライン 各版. 日常生活活動・高次脳機能・老年期などの章に、評価の枠組みが整理されています。
  • Kielhofner G. Model of Human Occupation: Theory and Application. 4th ed. Lippincott Williams & Wilkins; 2008.
  • Law M, et al. Canadian Occupational Performance Measure. 4th ed. CAOT Publications ACE; 2005.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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