OT 初期評価チェックリスト|抜け漏れゼロの「 6 ブロック」運用
OT の初期評価は、情報量が多いほど「見たのに繋がらない」「記録が散らばる」「抜け漏れる」が起きがちです。本記事は、初回〜 1 週間で必要な評価を 6 ブロックに整理し、新人でも再現できるチェックリストとして固定します。
結論:①背景 ②安全 ③心身機能 ④活動( ADL / IADL )⑤環境 ⑥目標の順に見れば、評価→仮説→介入→記録が一本化します。
同ジャンルの全体像から整える:評価記事をまとめて探すなら、まずは評価ハブから辿るのが最短です。
このページで答えること(役割の再定義)
このページは「 OT 初期評価で何をどこまで見るか」を、順番と粒度まで落として固定する親記事(総論)です。個別スケールの解説や疾患別の深掘りは、別ページ(子記事)に分けて回遊を作ります。
読むべき人:新人 OT /異動直後で評価が散らばる方/評価の標準化を進めたい指導者。ゴールは「同じ患者を見ても、同じ項目が同じ順に残る」状態です。
初期評価を「 6 ブロック」で標準化する
初期評価は、全体像が見えないまま検査を足していくと、記録が増えるほど意思決定が遅くなります。そこで、評価項目を 6 ブロックに分け、上から順に埋める運用にします。
この枠組みは、 ICF の考え方(心身機能・活動・参加・環境)と相性がよく、介入計画や目標設定へ自然に繋がります。
| ブロック | 目的 | 代表項目 | アウトプット |
|---|---|---|---|
| ①背景 | 生活像の仮説を作る | 職業 / 役割、生活歴、家族、趣味、価値観 | 「何が大事か」を 1 文で |
| ②安全 | 禁忌・中止を先に潰す | 疼痛、バイタル、リスク、注意点、既往 | 安全条件(可・不可) |
| ③心身機能 | 活動の制限要因を特定 | 運動 / 感覚、認知、視知覚、精神、嚥下など | 主要因を 2〜 3 個 |
| ④活動 | 介入の主戦場を決める | ADL 、 IADL 、移動、更衣、家事、仕事 | 最優先 ADL を決定 |
| ⑤環境 | 「できる」を増やす設計 | 住環境、福祉用具、家族支援、制度、職場 | 環境調整の候補 |
| ⑥目標 | 合意形成と評価軸の固定 | 短期 / 長期、優先順位、測定指標 | 目標+評価指標 |
初期評価チェックリスト(抜け漏れ防止)
以下は「そのまま見返せる」運用チェックリストです。初回(当日)/ 72 時間/ 1 週間の 3 段で、無理なく埋めていきます。
ポイントは、全部を一気にやらないこと。初回は「安全+活動の優先順位」まで到達すれば合格です。
| タイミング | ブロック | 見ること(最小セット) | 記録のコツ | 目安 |
|---|---|---|---|---|
| 初回(当日) | ②安全 | 疼痛 / 禁忌、バイタル、注意点、疲労、転倒リスク | 「 OK 条件 / NG 条件」を 1 行で | 5–10 分 |
| 初回(当日) | ④活動 | ADL の優先順位(食事 / 更衣 / トイレ / 移乗) | 「最優先 ADL +理由」を 1 行で | 10–15 分 |
| 72 時間 | ①背景 | 生活歴、役割、価値観、家族支援、退院先の方向 | 大事にしたい作業を 1 つ確定 | 15–20 分 |
| 72 時間 | ③心身機能 | 上肢機能 / 感覚、認知、注意、視知覚(必要最小) | 活動に効く「主要因」を 2〜 3 個 | 15–30 分 |
| 1 週間 | ⑤環境 | 住環境・福祉用具・家族介助・制度・職場(必要範囲) | 「環境で増やす作業」を 1 つ | 15–30 分 |
| 1 週間 | ⑥目標 | 短期 / 長期、測定指標、優先順位の合意 | 「目標+評価指標+期限」を 1 セット | 10–15 分 |
現場の詰まりどころ:よくある失敗と詰まる理由
詰まりどころは「努力不足」ではなく設計不足で起きます。ここでは、初期評価が迷子になりやすいポイントを、原因と修正手順で固定します。
| よくある失敗 | 起きる原因 | 修正の型 | 記録の一言例 |
|---|---|---|---|
| 検査が増えるほど判断が遅い | 先に「優先 ADL 」を決めていない | ④活動→③心身機能の順に戻す | 最優先:トイレ動作。主要因:体幹安定と注意低下。 |
| 記録が散らばって読めない | ブロックの見出しが無い | 6 ブロック見出しで統一 | ②安全:NG 条件…/④活動:優先… |
| 評価と介入が繋がらない | 主要因が多すぎる | 主要因は 2〜 3 個に絞る | 主要因 2:右上肢巧緻性、注意配分。 |
| 家族説明が毎回ブレる | 目標が「言語化」されていない | ⑥目標を「行為+条件+期限」で固定 | 2 週間で更衣:上衣を監視で完了。 |
このページの読み進め方(解決の三段)
回避の手順:迷ったらこの順で戻す
迷ったときは「足す」より「戻す」です。初期評価が散ったら、次の順で整え直します。
- ②安全:禁忌・中止・注意点を 1 行で固定
- ④活動:最優先 ADL を 1 つ決める(迷ったらトイレ / 移乗)
- ③心身機能:優先 ADL を邪魔している主要因を 2〜 3 個に絞る
- ⑤環境:用具・介助・動線で「できる」を先に増やす
- ⑥目標:行為+条件+期限で合意する
この順で整えると、評価の追加は「必要な分だけ」に収まります。
記録の型: 6 ブロック見出しで「読める」初期評価にする
初期評価の記録は、文章量より構造が重要です。 6 ブロックの見出しを固定しておけば、誰が見ても「どこに何があるか」が一致します。
おすすめは、各ブロックを 1 〜 3 行でまとめること。特に②安全と④活動は「最初に結論」を置くと、回診・カンファで強いです。
| 見出し | 書く内容(最小) | 1 行の型 |
|---|---|---|
| ①背景 | 大事にしたい作業、生活像の仮説 | 重要作業:◯◯。退院後は ◯◯ を再開したい。 |
| ②安全 | OK / NG 条件、注意点 | NG:疼痛 NRS ◯ 以上/ SpO2 ◯ 未満で中止。 |
| ③心身機能 | 主要因 2〜 3 個(活動に効くもの) | 主要因:体幹安定、注意配分、右上肢巧緻性。 |
| ④活動 | 最優先 ADL +現状 | 最優先:トイレ。現状:移乗は介助 ◯ 、更衣は ◯ 。 |
| ⑤環境 | 用具・介助・動線で増やすポイント | 用具:◯◯。介助:◯◯。動線:◯◯ を調整。 |
| ⑥目標 | 行為+条件+期限+評価指標 | 2 週:更衣(上衣)監視で完了。指標:観察記録。 |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 初期評価は「初日」にどこまでやればいいですか?
初日は「②安全」と「④活動(最優先 ADL の決定)」まで到達できれば合格です。検査を増やすより、最優先 ADL を 1 つ決めて、主要因を 2〜 3 個に絞るほうが、その後の介入が速くなります。
Q2. 評価項目が多すぎて、毎回バラバラになります。
「足す」前に「戻す」が効きます。迷ったら 回避の手順の順に戻り、ブロック見出し( 6 ブロック)で記録を揃えてください。検査は「最優先 ADL を改善するために必要な分だけ」に絞れます。
Q3. 先輩と評価の順番が違って不安です。
順番は現場で差が出ますが、重要なのは「同じ患者なら同じ要点が残る」ことです。本記事の 6 ブロックは、判断と記録の再現性を上げる設計なので、チームで運用するほど強くなります。
Q4. 認知や高次脳をどこまで初期に見ればいいですか?
初期は「 ADL の優先課題に直結する範囲」に限定するのがおすすめです。例えば更衣が最優先なら、注意配分・遂行機能・視知覚など、作業に影響する要素から確認し、主要因を 2〜 3 個に絞ります。
次の一手:運用を整える→共有の型→環境も点検
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health ( ICF ). 2001. WHO IRIS
- American Occupational Therapy Association. Occupational Therapy Practice Framework: Domain and Process—Fourth Edition. Am J Occup Ther. 2020;74(Suppl 2):7412410010p1-7412410010p87. doi: 10.5014/ajot.2020.74S2001
- American Occupational Therapy Association. Documentation of occupational therapy services. AOTA
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


