痛みの評価スケール【図解・使い分け】

評価
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痛みの評価|NRS・VAS・VRS・FPS-R・BPI の実践ガイド【図解&テンプレ付】

臨床で再現性の高い疼痛評価を行うために、代表的な 5 つの尺度(NRS/VAS/VRS/FPS-R/BPI)を手順・解釈・注意点まで掘り下げて解説し、すべて図解(SVG)で可視化しました。場面(安静・運動・夜間)を分け、同一の説明文と条件で繰り返すことで、効果判定の精度が上がります。

疼痛評価スケールの使い分け(全体像)

疼痛評価スケールの使い分け(成人・2025 年版)
尺度 主目的 適した場面 強み 注意点/落とし穴
NRS(0–10) 強度の経時追跡・効果判定 病棟・外来の迅速測定、カンファ共有 手順が簡便/応答性が高い 説明(アンカー)と条件を毎回同一に
VAS(10 cm) 微小変化の検出(連続量) 研究/外来の標準化、感度重視 0–100 mm で精密記録が可能 視覚・理解に不利な例は NRS/VRS を検討
VRS(段階評定) 概括分類(なし/軽度…) 高齢者・認知機能低下の配慮 理解しやすく短時間 段階間隔は等間隔とは限らない
FPS-R(顔スケール) 小児の自己申告(0–10 の偶数 6 段階) 3 歳以上の小児 図示で直感的に選べる 顔は感情ではなく痛みの強さ
BPI(簡易疼痛質問票) 強度+生活干渉の包括評価 慢性痛・がん痛、目標設定・教育 行動変容に直結しやすい 自己記入の理解度を確認

NRS(Numerical Rating Scale)

目的と利点

0(痛みなし)〜10(想像できる最大の痛み)で評定。経時的な変化と介入の応答性を捉えやすく、日常臨床の第一選択になりやすい尺度です。

標準手順(30 秒テンプレ)

  1. 場面を指定:「いまこの瞬間の安静時の痛みは…」※運動時・夜間は別系列。
  2. 読み上げ:「0 は痛みなし、10 は想像できる最大の痛みです。何点ですか?」
  3. 記録:整数または 0.5 刻み(施設 SOP に合わせ統一)。

解釈と共有

  • 例:介入前後 6 → 3。同一の説明文・体位・時間帯で測定されているか確認。
  • 安静時/運動時/夜間は別系列でグラフ化し、チーム共有を容易に。
0 2 4 6 8 10 現在値:6 0=痛みなし 10=想像できる最大の痛み
NRS:0〜10。アンカー説明は毎回同一の文言で実施。

VAS(Visual Analogue Scale)

目的と利点

10 cm の直線上に印を付け、左端からの距離をmmで測定(0–100)。微小変化の検出に向きます。

標準手順(失敗しない 3 ステップ)

  1. 10 cm の直線を提示:「左端は痛みなし、右端は最悪の痛みです」。
  2. 患者に現在の痛みに相当する位置に印を付けてもらう。
  3. 左端から印までをmmで測定し、0–100で記録。

注意点

  • 認知・視覚障害がある場合は不適;NRS や VRS に切替。
  • 紙・フォーマット差は誤差要因。同一用紙で継続。
0 mm(痛みなし) 100 mm(最悪の痛み) 0 20 40 60 80 100 記録:73 mm
VAS:10 cm 線上の印を mm で測定(0–100)。

VRS(Verbal Rating Scale)

目的と利点

言語ラベル(例:なし/軽度/中等度/高度)で評定。理解しやすく短時間で、認知機能に配慮したい場面に適します。

標準手順とコツ

  • 段階を提示して「現在の痛みに最も近い段階」を 1 つ選んでもらう。
  • 段階間隔は等間隔と限らないため、同一患者の経時比較で運用。
  • 必要に応じて段階に説明語(日常生活への影響など)を補足。
なし 軽度 中等度 高度 日常生活に影響なし 時々気になる 動作で支障あり 休息や介助が必要
VRS:段階ラベルから 1 つ選択。段階数・文言は施設で統一。

FPS-R(Faces Pain Scale – Revised)

目的と利点

3 歳以上の小児に推奨される顔スケール。0・2・4・6・8・10の 6 段階で自己申告します。顔は痛みの強さであり、気分(悲しい/嬉しい)ではない点を短く説明します。

0 2 4 6 8 10 0 2 4 6(選択) 8 10
FPS-R:顔は痛みの強さを表す。段階数は 6(0,2,4,6,8,10)。

BPI(Brief Pain Inventory)

目的と利点

痛みの強度(最強・最弱・平均・現在)と、生活への干渉(一般的活動・気分・歩行・仕事・人間関係・睡眠・生活の楽しみ)を可視化。慢性痛の目標設定・教育・行動変容に直結します。

運用の要点

  • 強度 4 指標+干渉 7 ドメインを棒状またはスパイダーで共有。
  • 「最も高い干渉 → 先に対処(ペーシング、環境調整、自己管理教育)」の順で介入。
BPI:痛みの強度(0=なし / 10=最大) 0510 最強(24h)最弱(24h)平均(24h)現在 8/102/105/106/10
強度は 4 指標を別系列で取得。条件(説明・体位・時間帯)を統一。
BPI:生活への干渉(0=なし / 10=最も強い) 0510 一般的活動気分歩行通常の仕事人間関係睡眠生活の楽しみ 7/104/106/108/103/105/106/10
最も高い干渉ドメインに優先介入(ペーシング/環境調整/教育)。

共通の失敗と対策(チェックリスト)

測定の再現性を高める 5 つのコツ
ポイント 理由 実装例
同じ説明(アンカー) 説明差で点数がブレる NRS 読み上げテンプレを配布
同じ条件で測定 体位・時間帯で強度が変動 安静/運動/夜間を別系列で固定
同じ用紙・目盛 用紙差は VAS の誤差要因 病棟共通の 10 cm VAS を使用
系列で可視化 効果判定は変化量で評価 週次グラフで 3 条件を追跡
対象に応じた選択 認知・視覚・年齢に左右 小児は FPS-R、高齢者は VRS

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参考文献

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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