ズボンの上げ下ろし動作は「支持・骨盤・片脚・手の操作」を分けて見ると、介助量の判断が安定します
ズボンの上げ下ろし(下衣更衣)は、立位保持・片脚支持・骨盤操作・手の操作が短時間に重なるため、転倒や動作停止が起こりやすい場面です。本記事は「できる/できない」の二択ではなく、どの工程で詰まったかを見える化し、評価→記録→介入までつなげる実装手順を整理します。
結論として、まず観察の型を固定し、次に記録の型を揃えると、担当者間の判定差が小さくなります。新人教育・申し送り・再評価のどれにも使える形で、現場でそのまま使える要点をまとめます。
全体像(概念図)
下図は、ズボンの上げ下ろしを「支持」「骨盤」「片脚」「手の操作」の 4 要素で捉えるための共通フレームです。カンファレンスや指導時に、どの要素で破綻したかを共通言語化する際に使ってください。

なぜ分解評価が必要か
下衣更衣では、歩行より短い時間に不安定要素が重なります。1 つの失敗が連鎖しやすいため、「バランス不良」でまとめると介入が再現しにくくなります。分解評価の目的は、破綻点を工程単位で特定し、介助位置・環境設定・練習課題を具体化することです。
評価の最小単位は「立位保持→片脚支持→骨盤操作→手の操作」です。順番を固定して観察すると、改善の確認と担当者間の共有が速くなります。
観察早見表(そのまま使える記録軸)
次の表は、観察・原因推定・その場の対策・記録文を 1 枚に統合した運用版です。まずはこの型に合わせて記録し、再評価時の比較をしやすくしてください。
| 観察要素 | よくある失敗 | 主な原因 | その場の対策 | 記録の 1 行例 |
|---|---|---|---|---|
| 支持 | 開始直後にふらつく | 支持点不足、足幅が狭い | 足幅を調整し、手すり位置を近づける | 開始時に後方ふらつき、手すり把持で安定 |
| 片脚 | 片脚に乗った瞬間に崩れる | 荷重移動が急、裾の引っかかり | 荷重移動を分割し、裾処理を先行 | 右片脚支持 2 秒未満、左荷重へ戻る代償あり |
| 骨盤 | 引き上げ時に体幹が折れる | 前傾・回旋コントロール不足 | 骨盤前傾を先に作ってから操作 | 引き上げ時に骨盤後傾が増大し動作停止 |
| 手の操作 | 把持替えで動作が止まる | 左右手順の混乱、把持点不一致 | 把持点を固定し、左右順を統一 | 把持替え 2 回で停止、口頭 cue で再開 |
現場の詰まりどころ
評価はできても、介助量の判断と記録が揃わない場面で止まりやすくなります。次の 3 点を固定すると、運用が安定します。
- よくある失敗を先に共有して、観察視点を揃える
- 回避の手順をチェック式で統一する
- 介助割合の境界は FIM 4〜1 点の判定テンプレで合わせる
よくある失敗
- 開始条件(足幅・手すり・立ち位置)を固定せず、毎回別条件で評価する
- 下ろす/上げるを一括で見て、どの工程で破綻したかを特定しない
- 記録が「ふらつきあり」で止まり、次の介入に直結しない
回避の手順(5 分で回す)
- 開始条件を固定する(手すり・足幅・履物・開始姿勢)
- 4 要素を順番に観察する(支持→片脚→骨盤→手の操作)
- 破綻工程を 1 つに絞ってその場で介入する
- 再試行して改善の有無を確認する
- 記録は「条件+失敗工程+介入+結果」で 1 行化する
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. まずどこを最優先で観察すればよいですか?
「開始 5 秒」と「引き上げ開始の瞬間」を優先してください。支持不足と骨盤操作の破綻が最も見つけやすく、転倒予防に直結します。
Q2. 見守りと軽介助の境界が曖昧です。
工程ごとに「身体接触の有無」と「実行割合」を分けて記録すると判定が揃います。どの工程で接触が必要だったかを明記してください。
Q3. 手すり使用は評価に影響しますか?
影響します。重要なのは、再評価まで使用条件を固定することです。条件が変わると改善の判定が難しくなります。
Q4. 記録はどれくらい詳しく書くべきですか?
最低限は「条件・失敗工程・介助・結果」の 4 点です。長文より、次の担当者が再現できる短文を優先してください。
次の一手
- 運用を整える:評価ハブで関連評価を横断する(全体像)
- 共有の型を作る:FIM 4〜1 点の判定テンプレを使う(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に「続ける/変える」の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- rehabilikunblog. ズボンの上げ下ろしの動作分析. https://rehabilikunblog.com/pants-up-down-analysis/
- rehabilikunblog. FIM の評価方法と採点基準. https://rehabilikunblog.com/adl_fim/
- rehabilikunblog. FIM 4〜1 点の決め方. https://rehabilikunblog.com/fim-scoring-4to1-assistance/
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


