結論:PHQ-9/HADS/SRQ-D の使い分け早見表
まず結論です。一次スクリーニング=PHQ-9、身体合併の多い外来で不安も拾う=HADS、SRQ-D は施設運用や教育場面での初期スクリーニングとして選択肢になります。いずれも診断ではなく臨床所見と併読が前提です。
各尺度の基本スペック
項目 | PHQ-9 | HADS | SRQ-D |
---|---|---|---|
主目的 | うつ重症度の把握 | 不安(A)・抑うつ(D)の二軸スクリーン | 抑うつ症状のスクリーニング |
項目数 | 9 | 14(A7/D7) | 18(非症状6項目は0点固定) |
合計点 | 0–27 | 各下位尺度 0–21 | 0–36 |
目安カットオフ | ≥10 で要配慮(施設基準で調整) | 各下位尺度 8–10 境界/≥11 異常の目安 | ≥16 で抑うつ傾向の目安(施設で調整) |
所要時間 | 約 2–3 分 | 約 5–7 分 | 約 3–5 分 |
得意領域 | 重症度の追跡・反応性 | 身体合併外来で不安/抑うつを同時に把握 | 教育・地域・リハ領域の初期スクリーニング |
弱み/注意 | 合併症で過小/過大評価の可能性 | 下位尺度で解釈(合算のみは避ける) | 古い運用もあり施設基準の明示が重要 |
各尺度は自己記入式ですが、結果は面接所見、機能評価(ADL/参加)と併読して解釈します。SRQ-D の評価表DLはこちら。関連:QIDS-J / GDS-15
場面別の使い分け(外来・回復期・地域)
- 外来初診/フォロー:まず PHQ-9。身体合併が多く不安症状も想定される場合は HADS を併用。
- 回復期リハ/地域リハ:短時間でのスクリーニングに SRQ-D も選択肢。経過追跡は PHQ-9 が扱いやすい。
- 教育・集団指導:SRQ-D を配布し、スクリーニング結果は 診断でないことを明示。必要時は医師評価へ導線。
尺度の選定~共有フローは、このフローも参考にしてください。
カットオフと解釈上の注意
- PHQ-9:施設基準に合わせる(例:10 以上で要配慮)。重症度分類は運用教授。
- HADS:各下位尺度(不安A/抑うつD)を個別に解釈。8–10 境界/≥11 異常を目安に。
- SRQ-D:2・4・6・8・10・12 は非症状項目(0点固定)。合計 0–36、16 以上で要注意の目安。施設で明文化。
いずれも自己診断用途にしないこと、自殺リスク示唆時はスコアに依存せず即時対応を優先します。
よくある質問(FAQ)
- 重症度の追跡にはどれが向いていますか?
- 反応性・再現性から PHQ-9 が扱いやすいです。HADS は不安/抑うつの両軸を見たいときに有用です。
- スクリーニングだけなら何を選べば良いですか?
- 外来では PHQ-9、身体合併が多い場合は HADS を併用。教育・地域では SRQ-D も実務的です。
- 複数尺度の同日併用は問題ありませんか?
- 可能です。負担や重複を考慮し、目的(重症度追跡/二軸把握/教育)で選定してください。
関連:評価ハブ | 運動機能評価ハブ | SRQ-Dの評価表DL