褥瘡と低栄養:体位と栄養の連携

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栄養・嚥下
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なぜ「低栄養」が治癒を遅らせるのか

褥瘡は創修復に大量のエネルギーと蛋白を要し、低栄養は肉芽形成・膠原合成・免疫を阻害して治癒を遅らせます。創部滲出や代謝亢進で蛋白喪失が進むため、栄養は「治療の土台」です。

まずは低栄養の把握|GNRI運用

運用フロー(48hでここまで)

  1. スクリーニング栄養スクリーニング→GNRI/体重変化/食事摂取を確認(GLIM 診断は必要に応じて)。
  2. ゴール設定:創治癒と体重(または除脂肪量)維持を両立。経口中心でも蛋白とエネルギーの不足を可視化。
  3. 介入の選択:通常食+高エネ・高蛋白の強化、必要ならONS(経口栄養補助)や経腸栄養を検討。
  4. 体位・体圧分散マットレス選定とオフローディング、体位管理で微小循環を守る。
  5. 72hごと再評価:摂取量・体重・むくみ・創面積/深さ・転倒/せん妄リスクを見直し。

エネルギー・蛋白・水分の実務目安

成人(褥瘡あり/低栄養リスク)における実務目安
項目 目安 補足
エネルギー 30–35 kcal/kg/日 体重維持〜改善が目的。間食や強化食品で補う。
蛋白質 1.25–1.5 g/kg/日 滲出での窒素損失を補い、肉芽・膠原合成を支える。
水分 概ね 1 mL/kcal(または30–40 mL/kg/日 発熱・多量滲出・利尿薬・心腎機能に応じて調整。

栄養素ごとの役割と使い分け

褥瘡治癒に関わる主な栄養素(成人・2025年版)
栄養素 主な役割 いつ補う? 注意点
蛋白質 肉芽形成・膠原合成・免疫、滲出による損失を補填 不足が見える時は食事強化+高蛋白ONS 腎疾患は個別調整(専門職と協議)
亜鉛 DNA合成・上皮化・免疫 欠乏が疑われる時/Arg+Zn+抗酸化強化ONSを短期併用 長期高用量は銅欠乏の懸念→期間・量を管理
ビタミンC 膠原架橋・抗酸化 欠乏リスクがある時、または強化ONS内で 単独高用量の routine 投与は推奨されない
酸素運搬(貧血是正で創酸素化を支援) 鉄欠乏性貧血が確認されたら補充 炎症性貧血は反応乏しい→原因評価を優先
アルギニン NO産生・創血流・免疫調整(条件付き必須) Arg+Zn+抗酸化での強化ONSが有効例あり 単独高用量の汎用は避け、製剤の用法を順守

エビデンス要約(臨床にどう落とすか)

  • エネルギー30–35 kcal/kg/日、蛋白1.25–1.5 g/kg/日は国際ガイドラインの推奨。まずはこのレンジを“達成する仕組み”を作る。
  • 高蛋白に亜鉛・アルギニン・抗酸化を加えた強化ONSは、低栄養のある褥瘡患者で治癒促進が示された試験がある(短期併用を検討)。
  • 一方で、微量栄養素の単独投与を日常的に続けることは推奨されず、欠乏が疑われる時に限る。鉄は欠乏性貧血を是正するときに有効。
  • 体圧分散(支持面)・体位の最適化と栄養介入はセット。マットレス変更で体位交換頻度を調整できる。

多職種での分担(SBARの型)

  1. S:創の部位・Stage・面積/深さ、滲出、疼痛、栄養摂取量
  2. B:体重推移・GNRI/GLIM・併存症・投薬(利尿、鎮静)
  3. A:低栄養の寄与度と圧迫/ずれ・微小循環の問題
  4. R:食強化+高蛋白ONS、Arg+Zn+抗酸化の短期併用、体圧分散マットレス導入、体位交換計画の更新

外部資料・一次情報

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