Pusher 評価の総論|導入から再評価までの全体像
Pusher 評価は、尺度名を覚えることよりも先に「何を判断するか」をそろえると運用が安定します。まずは目的(重症度把握か、スクリーニングか)、場面(病棟・訓練室・介助量)、再評価頻度の 3 点を固定し、同条件で追跡できる状態を作ることが重要です。
本記事は、初回評価から再評価までの流れを総論として整理します。尺度の細かな使い分けは比較記事で補完し、ここでは「迷わず回すための標準手順」に集中します。
Pusher 評価で最初にそろえる 3 条件
評価の再現性を高めるには、初回の時点で「目的・場面・再評価頻度」を明文化しておくことが有効です。これにより、担当者が変わっても解釈のズレが小さくなり、記録の比較がしやすくなります。
| 項目 | 決める内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 目的 | 重症度の経時変化を追う/初期把握を優先する | 「重症度追跡を目的に実施」 |
| 場面 | 実施場所、姿勢、介助量、時間帯 | 「午前・病棟・端座位・最小介助」 |
| 再評価頻度 | 週次、状態変化時、カンファ前など | 「週 1 回+状態変化時」 |
初回から再評価までの標準フロー
- 初回:目的を明確化し、ベースラインを取得する。
- 共有:同条件で実施するための観察条件をチームで統一する。
- 再評価:同一条件で比較し、変化の要因を介入内容と合わせて読む。
- 修正:結果を次の介入計画へ反映し、観察ポイントを更新する。
現場の詰まりどころ
詰まりやすいのは尺度選定そのものより、条件の未統一と記録の粒度の不一致です。まず失敗パターンを共有し、回避手順を固定すると、運用負荷が下がりやすくなります。
よくある失敗
| 失敗 | 起きる理由 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 目的を決めずに開始する | 「まず測る」運用が先行する | 評価前に目的を 1 行で明記する |
| 実施条件が毎回変わる | 時間帯・姿勢・介助量が未固定 | 条件テンプレを作り同一化する |
| 結果を次介入へつなげない | 記録が点数のみで終わる | 次回観察点を必ず 1 つ追記する |
回避の手順チェック(そのまま使える最小版)
- 評価目的を「重症度追跡」または「初期把握」に固定したか。
- 場所・姿勢・介助量・時間帯を記録したか。
- 再評価タイミング(週次/状態変化時)を決めたか。
- 結果の解釈と次回観察点を 1 行で残したか。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
総論記事と比較記事はどう使い分ければいいですか?
総論は「導入手順と運用設計」、比較は「どの尺度を使うか」の判断に使います。まず総論で条件を固定し、次に比較記事で尺度選定を行う流れが実装しやすいです。
再評価の頻度はどのくらいが実務的ですか?
週 1 回を基本に、状態変化があったタイミングで追加すると、チーム共有と記録の比較がしやすくなります。
点数だけ記録しても問題ありませんか?
点数だけでは次の介入に結びつきにくいため、条件(姿勢・介助量)と次回観察点をセットで残す運用が推奨です。
新人教育では何を最初に教えるべきですか?
尺度の細部より先に、目的・条件固定・再評価の 3 点セットを教えると、記録の質と再現性が上がりやすくなります。
次の一手
- 運用を整える:評価ハブで全体像を整理する(全体像)
- 共有の型を作る:Pusher 尺度の比較記事で使い分けを固定する(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Pedersen PM, Wandel A, Jørgensen HS, Nakayama H, Raaschou HO, Olsen TS. Ipsilateral pushing in stroke: incidence, relation to neuropsychological symptoms, and impact on rehabilitation. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77(1):25-28.
- Karnath HO, Ferber S, Dichgans J. The origin of contraversive pushing: evidence for a second graviceptive system in humans. Neurology. 2000;55(9):1298-1304.
- Babyar SR, Peterson MG, Bohannon R, Pérennou D, Reding M. Clinical examination tools for lateropulsion or pusher syndrome following stroke: a systematic review of the literature. Clin Rehabil. 2009;23(7):639-650.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


