腱板テストまとめ|Empty/Full Can・ER lag・Lift-off を“筋別”に最短整理
腱板( rotator cuff )の評価で詰まりやすいのは、「痛みで力が出ない」状態が多く、テストを増やすほど痛み抑制による“見かけの筋力低下”が混ざることです。そこで本記事では、腱板を棘上筋・棘下筋 / 小円筋・肩甲下筋の 3 ブロックに分け、最小セット 2〜4 個で仮説を作り、介入と再評価に落とす“運用”を固定します。
ポイントは「陽性 / 陰性」よりも、どの肢位・どの角度で・痛みか力の抜けかを 1 行で残すことです。親記事(肩の整形外科テスト一覧)と合わせると、肩の評価が一気に回ります。
同ジャンルで回遊して、判断を速くする:腱板は「肩の全体像(親)→部位別ハブ→共有指標」で揃えるとブレが減ります。
- 部位別ハブ:整形外科的テスト一覧(部位別)
- 共有指標:QuickDASH の評価(計算・欠損ルール・解釈)
5 分で回す|腱板評価の最短フロー(初回の型)
腱板は「痛みで抑制される」症例が多いので、初回は情報を増やしすぎないほうが正確です。まずは痛みの主座・痛み角度・ AROM の代償を押さえ、筋別の最小セットで当たりを付けます。
再評価は、痛み角度( 1 つ)+代表テスト( 1〜2 個)だけ固定すれば十分に変化が追えます。
| 順序 | 見ること | 観察・記録の型(例) | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 問診 | 外傷 / 急な挙上不能 / 夜間痛 / 反復頭上作業 | 外傷や急激な機能低下は医師連携も検討 |
| 2 | 痛みの主座・角度 | 外側痛、前面痛、挙上 “ 70–120° ” で増悪など | 混在(インピンジメント等)を想定 |
| 3 | AROM / 代償 | 肩甲帯挙上・前方化、体幹側屈、振り上げ | 代償が強いほど偽陽性が増える |
| 4 | 筋別 最小セット | 棘上筋: Can /外旋: ER 抵抗 or ER lag /肩甲下: Lift-off など | “痛み抑制か真の低下か” を分けて書く |
| 5 | 介入→再評価 | 痛み角度+代表テスト( 1〜2 個)を同条件で | 同条件で変化を 1 行共有 |
筋別に整理|腱板 3 ブロックと“当てるテスト”
腱板は筋別に整理すると、テストの選択が速くなります。初回は「棘上筋」「外旋(棘下筋 / 小円筋)」「肩甲下筋」の 3 ブロックに当て、必要時のみ追加します。
筋力低下は、痛み抑制と真の低下を分けて記録すると、方針が立ちやすいです(例:“痛みで抑制” と “保持できず落下” は意味が違います)。
| ブロック | 主に見る | 代表テスト(例) | 書き方の要点 |
|---|---|---|---|
| 棘上筋 | 挙上・外転の出力(痛み抑制が混ざる) | Empty Can / Full Can | “痛みで抑制” と “真の低下” を分ける |
| 外旋(棘下筋 / 小円筋) | 外旋保持・外旋出力 | ER 抵抗、 ER lag sign(必要時) | 保持できず落ちる / 力が抜ける反応を明記 |
| 肩甲下筋 | 内旋保持・前面の安定 | Lift-off 、(必要なら Bear Hug など) | 可動域制限で形が作れない場合は無理をしない |
最小セット( 2〜4 個)|迷わない組み合わせ
腱板評価は「全部やる」ほど情報が崩れます。まずは筋別に 2〜4 個に絞り、反応が揃うかを見ます。インピンジメントの混在が強い場合は、先に痛み角度(疼痛アーク)を押さえてから腱板に入ると偽陽性が減ります。
| 場面 | まずやる(最小) | 追加するなら | 目的 |
|---|---|---|---|
| まず筋別に当てたい | Full / Empty Can + ER 抵抗 + Lift-off | ER lag(必要時) | 3 ブロックで当たりを付ける |
| 大断裂疑い(保持できない) | 抗重力での挙上可否 + ER 抵抗 | Drop Arm(安全に可能なら) | “保持できず落下” の反応を取りに行く |
| 痛みが強く偽陽性が多い | 痛み角度( 1 つ)+ Can( 1 個) | 外旋 or 内旋を 1 個追加 | 比較できる情報を優先(増やしすぎない) |
記録の型|“痛み抑制”と“真の低下”を分ける 1 行テンプレ
腱板は、所見の書き方が揃うとチーム共有が速くなります。次の 3 点だけを 1 行にすると、再評価が崩れません。
特に Can 系は、痛みで力が出ない(抑制)のか、力が抜けて保持できない(真の低下を示唆)のかを分けて残してください。
| 要素 | 書き方 | 例 |
|---|---|---|
| 痛みの主座・角度 | 部位+角度帯 | 外側痛、挙上 90–120° で増悪 |
| 筋別の反応 | どの筋ブロックで、何が起きたか | Can:痛みで抑制、 ER:保持できず、 Lift-off:形が作れず |
| 再評価の固定 | 痛み角度+代表テスト 1〜2 個 | 次回:挙上 100° の痛み+ ER 抵抗のみで追う |
現場の詰まりどころ|解決の三段(必須)
腱板評価は「痛みで全部弱い」「どれが主因か分からない」で詰まりやすい領域です。ここは読ませるゾーンなので、ボタンは置かずにページ内で詰まりを潰します。
よくある失敗|“全部弱い”を作らない
腱板は痛み抑制が混ざるため、評価のやり方次第で“全部弱い”が簡単に起きます。下の NG を潰すと、テストの情報価値が上がります。
| ありがち( NG ) | なぜ起きる | 回避( OK ) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| テストを増やしすぎる | 疼痛が増えて抑制が強くなる | 最小セット 2〜4 個に絞る | 実施数を残す( “本日は 3 個まで” ) |
| 痛み抑制を断裂と決める | 痛みで力が出ないだけのことが多い | “痛み抑制” と “保持不能” を分けて書く | 肢位・角度・反応を明記 |
| 代償を見ない | 肩甲帯のすくみ等で評価が崩れる | AROM の代償を先に観察 | 肩甲帯挙上・前方化、体幹側屈 |
| 可動域制限を無視して押し切る | 形が作れず痛みを増やす | 形が作れない日は中止し、別法で情報を取る | “可動域制限で実施不可” を明記 |
回避の手順・チェック|再評価でブレない条件固定
腱板は、条件(体位・角度・肩甲骨固定・抵抗のかけ方)がズレると再評価で比較できません。次の固定項目だけ揃えれば、変化が追える形になります。
| 固定すること | 具体 | 理由 |
|---|---|---|
| 体位 | 座位 / 立位を決める | 代償と出力が変わる |
| 角度 | 開始角度(例: 90° )を固定 | 疼痛条件差が本体になる |
| 肩甲骨固定 | 固定する / しないを明記 | 解釈が変わる |
| 追うテスト | 代表 1〜2 個に絞って固定 | 抑制が増えるのを避ける |
よくある質問(FAQ)
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Empty Can と Full Can はどっちを使う?
臨床では「どちらが正しいか」より、肢位と角度を固定して比較できる情報にすることが重要です。痛みが強く抑制が出やすい日は Full Can を選び、反応の差が欲しいときに Empty Can を補助として使う運用が回りやすいです。記録は “痛み抑制” と “真の低下(保持不能)” を分けて書きます。
“痛みで弱い” と “断裂を疑う弱さ” はどう分ける?
腱板は痛み抑制が多いので、まずは肢位・角度・代償を揃えたうえで、反応が “痛みのみ” か “保持できず落ちる / 力が抜ける” かを区別して記録します。初回はテストを増やしすぎず、追うテストを 1〜2 個に絞って再評価で変化を見るほうが安全です。
Lift-off ができない(形が作れない)ときは?
可動域制限や痛みで形が作れない日は、押し切らずに “実施不可” と明記し、別の情報(前面痛の主座、内旋の出力感、 ADL 動作)で仮説を置きます。評価は “比較できる情報” を優先すると、再評価の精度が上がります。
次の一手|運用を整える→共有の型→環境の詰まりも点検
腱板は症例差が大きく、個人の経験に依存すると運用が揺れやすい領域です。まずは院内で「回す型」を整え、共有の言葉を揃えると、介入の意思決定が速くなります。
- 運用を整える:肩のテスト選択を一覧で揃える → 肩関節の整形外科テスト一覧(親)
- 共有の型を作る:上肢の困りごとを 1 行で共有する → QuickDASH(計算・欠損ルール・解釈)
- 環境の詰まりも点検:教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に「続ける/変える」の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Hegedus EJ, Goode A, Campbell S, et al. Which physical examination tests provide clinicians with the most value when examining the shoulder? Br J Sports Med. 2012;46(14):964-978. doi:10.1136/bjsports-2012-091066
- Lafrance S, Dyer JO, et al. Diagnosing, Managing, and Supporting Return to Work of Adults with Rotator Cuff Disorders: A Clinical Practice Guideline. J Orthop Sports Phys Ther. 2022. doi:10.2519/jospt.2022.11306
- Lewis JS. Rotator cuff related shoulder pain: Assessment, management and uncertainties. Man Ther. 2016;23:57-68. doi:10.1016/j.math.2016.03.009
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


