脊髄小脳変性症の理学療法評価|リハビリ評価の使い分け

疾患別
記事内に広告が含まれています。

脊髄小脳変性症(SCD)の理学療法評価|チェックリスト&使い分け

理学療法の進め方(全体像)を 3 分で復習する

本ページは SCD の臨床で迷いがちな「入口の確認 → カテゴリ選択 → 再評価固定」を、チェックリストと段階フローで統一します。安全を最優先に、同条件・同指標での経時比較を徹底します(外部リンクは新規タブ)。

最短フロー(安全 → 静的 → 動的 → 歩行)

矢印は左から右(負荷が上がる)で正しい並びです。初回はスクリーン中心、精査は別日に分けても構いません。

安全確認・バイタル 静的バランス ロムベルグ/mCTSIB 動的バランス FRT/四方向リーチ 歩行 10 m/TUG

評価チェックリスト(入口 → カテゴリ → 再評価固定)

  • 入口の確認:主訴/転倒歴/補助具・装具/既往(脳梗塞・末梢神経障害など)/睡眠・疲労/起立性低血圧の有無。
  • カテゴリ選択(必要に応じて追加)
    • 総合重症度:SARA(基軸)/ICARS(精査)
    • バランス:ロムベルグ/mCTSIB → FRT・四方向リーチ → Mini-BESTest(精査)
    • 歩行:10 m・TUG(装具/補助具・介助量も固定)
    • 協調:指鼻・膝打ち・踵膝・回内外反復(速度×正確性)
    • 眼球運動:滑動追従・サッケード・注視眼振(所見の方向と誘発条件)
    • 体幹・姿勢:座位保持・立ち上がり・方向転換の安定性
    • 構音・嚥下:発話明瞭度/EAT-10・RSST(必要に応じ VF/VE)
    • ADL/IADL:FIM(している ADL)/Lawton IADL(買い物・金銭・服薬など)
    • 自律神経:起立試験(血圧・心拍)/便秘・排尿障害の聴取
  • 再評価を固定:同時間帯・同環境・同設定(床面/靴/足位/補助具/開始姿勢)で実施し、内服タイミングと疲労度を必ず併記。

代表指標の使い分け(要点早見)

SCD 臨床で用いる代表指標(目的・要点・注意)
領域代表指標目的要点(SCD でのコツ)注意
総合重症度□ SARA/◆ ICARS 運動失調の重症度と経時変化 順路固定・説明は簡潔。疲労の影響に留意。 同条件で再評価。動画記録が有用。
静的バランス□ ロムベルグ/□ mCTSIB 入力依存(視覚・前庭・体性感覚) 床面・足位・靴を固定。最大保持秒で記録。 高リスクでは近接監視・支持者配置。
動的バランス□ FRT/□ 四方向リーチ/◆ Mini-BESTest 姿勢変換・リーチ時の安定性 身長・腕長を併記(比較補正)。代償動作を言語化。 踏み換えの有無を所見で残す。
歩行□ 10 m/□ TUG 速度と機能的移動能力 助走 2 m+計測 10 m+余裕 2 m。介助量・補助具を固定。 小脳性失調歩行の特徴(歩隔・測定変動)を併記。
協調□ 指鼻・膝打ち・踵膝 dysmetria/dysdiadochokinesia の把握 速度×正確性で採点。崩れ方(過小過大・反復で悪化)を書く。 疼痛・ROM 制限の影響を除外。
眼球運動□ 追従/サッケード/注視眼振 小脳・脳幹所見のスクリーニング 方向・誘発条件(側方注視など)を固定語彙で記録。 複視・めまい強いときは中止・安静。
構音・嚥下□ 明瞭度/□ EAT-10・RSST(VF/VE 連携) 窒息・誤嚥リスクと介入要否 体位と食形態を揃える。薬剤性口渇に注意。 スクリーニングの限界を説明し ST と連携。
ADL/IADL□ FIM(している ADL)/□ Lawton IADL 支援設計・家族教育 介助様式・時間・環境条件を具体化。 介護者負担感も評価。

記録テンプレ(同条件で再評価)

評価メモ(コピー用:設定・条件を固定)
項目設定・条件結果備考
ロムベルグ/mCTSIB足位/靴/床面(フォーム)/視覚保持 s(最長 30–60)ふらつき方向・支持物の有無
FRT/四方向リーチ腕長 cm/開始姿勢/方向到達 cm(3 回平均)体幹屈曲・踏み換え
10 m 歩行2 m+10 m+2 m/補助具・装具m/s(3 回平均)歩隔・左右差・ふらつき
TUG椅子高/靴/介助量秒(×3 回)立ち上がり・方向転換の安定性
SARA順路固定/説明簡潔合計 /40崩れ方(協調低下の特徴)

実務のコツ

  • 一度に全部やらない:疲労で成績が崩れます。スクリーン→精査で段階化。
  • “崩れ方”を言語化:数値+代償(方向・タイミング・反復で悪化)を短文で残す。
  • 起立性低血圧の管理:起立前の水分・弾性ストッキング・腹帯の装着手順と再評価をセットに。

参考文献(DOI / PubMed)

  • Schmitz-Hübsch T, et al. Scale for the Assessment and Rating of Ataxia (SARA). Neurology. 2006. PMCID:PMC6927357
  • Trouillas P, et al. International Cooperative Ataxia Rating Scale (ICARS). J Neurol Sci. 1997;145:205-211. PubMed:9149072
  • Franchignoni F, et al. Mini-BESTest. J Rehabil Med. 2010;42:323-331. PubMed:20461334
  • Duncan PW, et al. Functional Reach. J Gerontol. 1990;45(6):M192-M197. DOI:10.1093/geronj/45.6.M192
  • Dite W, Temple VA. Four Square Step Test. Arch Phys Med Rehabil. 2002;83(11):1566-1571. DOI:10.1053/apmr.2002.35469
  • Podsiadlo D, Richardson S. Timed “Up & Go”. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. DOI:10.1111/j.1532-5415.1991.tb01616.x
  • Belafsky PC, et al. EAT-10. Ann Otol Rhinol Laryngol. 2008;117:919-924. PubMed:19140539
  • Lawton MP, Brody EM. IADL Scale. Gerontologist. 1969;9(3):179-186. PubMed:5349366

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ

おわりに

実地では「安全の確保 → 段階刺激(静的→動的→歩行) → スケール記録 → 再評価」というリズムが最重要です。数値とともに崩れ方を短文で残すと、チーム共有から介入設計まで一気通貫になります。働き方を見直すときの抜け漏れ防止に、面談準備チェック(A4)と職場評価シート(A4)も活用してください。印刷してそのまま使えます。

タイトルとURLをコピーしました