脳卒中リハの評価項目:病期別フローで全体像を整理

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脳卒中リハ:評価項目の全体像(病期別フロー付き)

脳卒中リハビリの評価は「何を・なぜ・いつ測るか」を病期(急性期/回復期/生活期)で整理すると迷いが減ります。本ページは 評価項目の全体像を“病期別フロー”で可視化し、代表スケールの役割分担と再評価のリズムまで一望できる 総論としてまとめました。

網羅ではなく 目的適合が原則です。数値は 動作観察本人の主観(困りごと/生活背景)とセットで扱い、ゴール(生活再建)に接続してください。外部文献リンクは新規タブで開きます。

評価の“型”を整えると、臨床の伸びと働き方の選択肢が一緒に増えます。 理学療法士の転職ガイド|臨床スキルと両立する進め方(#flow)

病期別フロー(図解)

急性期 → 回復期 → 生活期で、目的・優先評価・補助評価・実務ヒントを 1 枚に整理しました。スマホでは横にスクロールすると読みやすいです。

脳卒中リハ:病期別フロー(急性期→回復期→生活期) 急性期・回復期・生活期の 3 段階で、目的・優先評価・補助評価を一覧化したフローチャート。左から右へ矢印で連結。 病期別フロー:急性期 → 回復期 → 生活期 何を/なぜ/いつ測るかを一目で整理(成人・2025 年版) 急性期(安全の即時判定) 目的 二次悪化の回避と離床・体位変換の可否判断 優先評価 ・NIHSS/JSS・意識:JCS/GCS ・バイタル:BP・HR・SpO₂・起立性低血圧・嚥下スクリーニング 補助 ・体幹/基本動作の簡便観察(TCT/FACT の観点) 実務ヒント 体位変換→端坐位→立位の順に段階刺激。都度、バイタル・意識・症状を再評価。 回復期(機能回復の見取り図) 目的 障害像の特定と回復ステージ把握、介入ターゲティング 優先評価 ・SIAS( 22 項目 )・BRS(上肢/手指/下肢) ・ROM/MMT・体幹:FACT/TCT 補助 ・注意・無視:CBS・プッシャー:SCP 実務ヒント 「体幹 ⇄ 上肢 ⇄ 下肢」の連結課題で段階化。到達に合わせて負荷と環境を調整。 生活期(転倒と参加の最適化) 目的 転倒予測・歩行耐久・IADL を含む生活設計 優先評価 ・BBS(Berg)/TUG/FRT・10 m 歩行(速度・歩数) ・IADL:Lawton/老研式 補助 ・ADL:Barthel/FIM・心理:GDS/HADS ・呼吸循環:Borg/mMRC 実務ヒント 屋内→屋外→公共交通の順に難易度を上げ、環境整備と教育(家族含む)を並走。 ※BBS は Berg Balance Scale を指し、文献により FBS と表記される場合があります。

病期×目的×優先評価(早見表)

脳卒中リハ:病期ごとの目的と優先評価(成人・2025 年版)
病期 主目的 優先評価(例) 記録ポイント よくある失敗
急性期 安全判定・二次悪化予防・離床可否 NIHSS/JSS、JCS/GCS、BP・HR・SpO₂、起立性低血圧、嚥下スクリーニング 体位・補助の有無・測定タイミング(前/中/後)を固定して残す 点数だけ残して、条件(体位/酸素/薬剤)を書かない
回復期 障害像の特定とターゲティング SIAS、BRS、ROM/MMT、体幹(FACT/TCT)、注意・無視(CBS)、プッシャー(SCP) 主要アウトカムは“同条件”で週次、日々はボトルネック動作で追う 評価が増えすぎて介入が薄くなる(測る順番を決めない)
生活期 転倒リスク・耐久・参加最適化 BBS/TUG/FRT/10 m 歩行、ADL(Barthel/FIM)、IADL(Lawton/老研式)、心理(HADS/GDS) 屋内/屋外、補助具、疲労(Borg)をセットで記録して“再現性”を担保 「できる(能力)」と「やっている(実行)」を混ぜて結論がズレる

現場の詰まりどころ(最短でほどくコツ)

脳卒中リハで詰まりやすいポイントと対策(目安)
場面 詰まりどころ 対策(型)
急性期 離床可否の判断が人でブレる 体位変換→端坐位→立位の“段階刺激”に固定し、各段階でバイタル・意識・症状を同じ順で確認する
回復期 評価が多くて介入ターゲットが散る 週次アウトカム(例:SIAS/体幹/歩行)を 2〜3 本に絞り、日々は“主ボトルネック動作”で再評価する
生活期 転倒と参加の見立てが弱い バランス(BBS/TUG/FRT)+歩行速度( 10 m )+IADL をセット化し、屋外課題と環境調整を同時に進める

代表的スケールの要点(超要約)

神経学的重症度|NIHSS/JSS

急性期の標準。NIHSS は 0–42 点で高点=重症。JSS は急性期の日本版スケールとして用いられます。離床・検査/治療・観察強度の優先順位付けに直結するため、評価条件(体位・酸素・薬剤・時間帯)を必ず併記します。

運動機能|SIAS・BRS・ROM・MMT

SIAS は障害像を“地図化”する枠組みです。BRS は上肢/手指/下肢をステージ I–VI で整理し、課題難易度の段階化に向きます。ROM/MMT は個別ボトルネック(拘縮・筋出力)を特定し、介入の優先順位を決めます。

体幹|FACT・TCT

体幹は移乗・立位・歩行の“土台”です。FACT は体幹コントロールの可否を、TCT は寝返り/起き上がり/座位保持など基本動作の成立を捉えます。体幹の改善が他課題へ波及するため、回復期の中核に置きやすい指標です。

バランス・移動|BBS・TUG・FRT・10 m

BBS は静的〜準動的バランスの代表。TUG は起立→歩行→方向転換→着座の総合力、FRT は前方リーチの余裕を簡便に見ます。10 m は速度・歩数・ケーデンスを同時に追うと、介入の当たり外れが早く分かります。

高次脳機能|CBS・SCP・時計描画

CBS は日常場面における半側空間無視を行動観察で捉える尺度です。SCP はプッシャーの重症度を整理し、移乗・立位練習の安全管理に役立ちます。時計描画は視空間・計画・遂行のスクリーニングとして“追加評価の要否”を判断する目的で用います。

ADL・IADL|Barthel・FIM・Lawton・老研式

Barthel は「できる ADL」、FIM は「している ADL(介護量)」の側面が強く、退院支援や情報共有に向きます。IADL は買い物・移動・服薬など生活自立に直結し、サービス設計や家族教育(環境調整)に繋げやすい指標です。

心理・呼吸循環|HADS・GDS・mMRC・Borg

心理の落ち込みや不安は活動性の低下に直結します(早期に拾って支援へ)。運動耐容の安全管理は mMRC と Borg を、安静→運動中→回復で連続評価すると“その日の上限”が見えやすくなります。

安全管理・中止基準(目安)

運動/離床時の中止・注意基準(例:施設プロトコルを必ず優先)
項目 目安 記録・運用のコツ
SpO₂ < 90% またはベースから −4% 以上低下 呼吸数、努力呼吸、咳嗽・痰、体位を併記
血圧 収縮期 > 180 または < 90 mmHg、急変動 起立性低血圧( 20/10 低下)では中止し、座位で回復を確認
心拍 安静比 1.4 倍超、もしくは不整脈出現 β 遮断薬等の影響に留意し、症状(動悸・胸部不快)も確認
症状 胸痛、重度呼吸困難、めまい/失神前駆、神経症状悪化 症状→即時中止→再評価→記録(何が増悪したか)

※数値は一例です。患者背景・医師指示・施設基準を厳守してください。

再評価の頻度(目安)

病期別:再評価の目安(同一条件の固定が最優先)
病期 日次で追うもの 週次で追うもの 節目で追うもの
急性期 バイタル、意識、症状、離床耐性 (必要時)重症度の推移 病棟移動・治療変更・退院前の説明時
回復期 主ボトルネック動作(移乗、立位、歩行の一部) 機能アウトカム(例:SIAS、体幹、歩行指標) 装具変更、退院前訪問、目標見直し時
生活期 活動量、疲労(Borg)、安全面の変化 バランス/歩行速度/IADL 転居・復職・サービス変更など生活イベント時

評価→介入→再評価の回し方

評価運用の“型”(安全 → 段階刺激 → 記録 → 再評価)
ステップ やること 残す記録
1 仮説立案:病期・合併症・主訴から主要ボトルネックを仮決め 主訴、生活背景、優先課題( 1〜2 個 )
2 最小限計測:病期に適合した優先スケールで安全/機能をスクリーニング 体位、補助、酸素、時間帯、前/中/後の値
3 ターゲット介入:体幹・分離運動・バランス・IADL を回路化して段階刺激 課題難易度、環境、成功条件(何ができたか)
4 再評価:同指標でフィードバック(週次は機能、日次は安全・動作) 同条件での比較、変化量、次の調整点
5 共有:チームで見える化(図表/数値/動画)→目標と支援策を同期 短い結論( 1 行 )+次アクション( 1 行 )

おわりに

実地では「安全の確保→段階刺激→スケール記録→再評価」というリズムが最重要です。病期別に目的適合の評価を選び、数値と動作観察を束ねて生活再建に接続していきましょう。

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よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

急性期に「やってはいけない」評価はありますか?

神経症状が不安定、血圧・心拍・SpO₂ に急変動がある状況では、起立や長距離歩行など 生理負荷の大きい評価は行いません。まずはバイタル/意識/症状(めまい・胸部不快・呼吸困難など)を再評価し、体位変換→端坐位→立位の 段階刺激で進めます。

回復期で評価が増えすぎたとき、何を削ればいいですか?

週次で追う 主要アウトカムを 2〜3 本に絞り、その他は「主ボトルネック動作(例:移乗の一部、立位保持、 10 m の一部)」で日々の変化を拾う運用が現実的です。評価の“順番”と“条件”を固定すると、削っても臨床判断の質が落ちにくくなります。

同じスケールなのに点が揃いません。原因は?

多くは 条件の違いです(体位、補助具、装具、靴、環境、声かけ、練習回数、疲労の程度)。点数と一緒に「条件」をテンプレ化して残すと、施設内の再現性が上がります。

生活期で“転倒予測”に強い評価はどれですか?

単体よりも、バランス(BBS/TUG/FRT)+歩行速度( 10 m )+ IADL を セットで追うと見立てが安定します。屋外課題や公共交通など“実生活課題”へ段階的に接続し、環境調整と教育(家族含む)を並走させます。

“できる ADL”と“している ADL”はどう使い分けますか?

「できる(能力)」は介入の上限を見積もるのに有用で、「している(実行/介護量)」は退院支援・連携に直結します。両者がズレるときは、環境・見守り・手順・疲労・注意障害など“阻害因子”を特定すると、支援策が具体化します。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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参考文献

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  2. Duncan PW, Weiner DK, Chandler J, Studenski S. Functional Reach: A new clinical measure of balance. J Gerontol. 1990;45(6):M192–M197. https://doi.org/10.1093/geronj/45.6.M192
  3. Podsiadlo D, Richardson S. The Timed “Up & Go”: A test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142–148. https://doi.org/10.1111/j.1532-5415.1991.tb01616.x
  4. Berg KO, Wood-Dauphinee SL, Williams JI, Maki B. Measuring balance in the elderly: validation of an instrument. Can J Public Health. 1992;83(Suppl 2):S7–S11. PubMed
  5. 千野直一. Stroke Impairment Assessment Set(SIAS). リハ医学. 1994;31(2):119–125. https://doi.org/10.2490/jjrm1963.31.119

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