糖尿病足病変の評価|PTが見る項目とIWGDFリスク分類

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糖尿病足病変の評価は「赤旗→5領域→IWGDF分類」で進める

糖尿病患者の足部評価では、10 gモノフィラメントだけを実施して終えるのではなく、まず潰瘍・感染・虚血・Charcot神経骨関節症を疑う所見がないか確認し、そのうえで既往・皮膚と足部変形・神経・血流・足部機能を整理することが重要です。

ADA Standards of Care in Diabetes—2026では、糖尿病患者に少なくとも年1回の包括的な足部評価を行い、皮膚、足部変形、神経学的所見、下肢・足部の血管所見を確認することが推奨されています。本記事では、さらに理学療法士が確認したい関節可動域、歩行、荷重、履物まで加え、IWGDFリスク分類0〜3と次の対応へつなげる方法を整理します。

この記事の結論:「傷がないか」だけを見るのではなく、赤旗を先に除外し、LOPS(保護感覚消失)・PAD(末梢動脈疾患)・足部変形を軸にIWGDF分類へつなげます。PTは分類とは別に、関節可動域・歩行・荷重・履物を確認すると介入へ結びつけやすくなります。

糖尿病足病変で最初に確認する評価項目

最初に評価項目の全体像を決めておくと、視診だけ、あるいはモノフィラメントだけで評価が終わることを防げます。PTが初回評価で押さえたい項目は、次の5領域です。

糖尿病足病変の評価フローとIWGDFリスク分類を示したPT向け図版
図:糖尿病足病変の評価フローとIWGDFリスク分類(PT版)
糖尿病足病変の評価項目と次の判断
領域 主な確認項目 何を判断するか
1. 既往・症状 潰瘍・切断・Charcot足・血行再建歴、腎疾患、神経症状、跛行・安静時痛など もともとの足潰瘍リスクと追加評価の必要性
2. 皮膚・足部変形 潰瘍、亀裂、胼胝、発赤、水疱、爪、趾間、外反母趾、槌趾、突出部など 創傷・前潰瘍性病変・圧上昇部位の有無
3. 神経 10 gモノフィラメント、振動覚、温度覚、痛覚など 末梢神経障害とLOPSの有無
4. 血流 足背動脈、後脛骨動脈、毛細血管再充満、色調、冷感など PADを疑う所見の有無と血管評価の必要性
5. PT追加評価 足関節・足趾可動域、歩行、荷重、足底圧が高そうな部位、履物・装具 機械的ストレスの原因と介入・環境調整

順番は「赤旗確認→既往→視診→神経→血流→PT追加評価→IWGDF分類」とすると整理しやすくなります。すべての項目を同じ重みで評価するのではなく、最初に緊急性を確認することがポイントです。

まず潰瘍・感染・虚血・Charcotを疑う所見を確認する

開放性潰瘍や原因不明の腫脹・発赤・皮膚温上昇などがある場合は、IWGDFのリスク分類を完成させることより、必要な専門評価へつなぐことを優先します。

足部評価を続ける前に共有したい主な所見
所見 考えること PTの対応
開放性潰瘍・新規創傷 活動性の足病変として評価が必要 部位・大きさ・滲出液などを確認し、速やかに共有する
発赤・腫脹・皮膚温上昇 感染や活動期Charcot神経骨関節症などを鑑別する必要がある 安易に荷重評価・歩行練習を進めず、医師・専門チームへ共有する
排膿・悪臭・壊死・壊疽など 感染や重度組織障害を疑う 通常のスクリーニングで経過観察せず、緊急度に応じて連携する
急な脈拍消失・著明な色調変化 血流障害を疑う 施設の連絡手順に沿って速やかな血管評価へつなぐ

特に、神経障害のある患者で「赤い・熱い・腫れている足」を認める場合は注意が必要です。疼痛が乏しくても安全とは限らないため、「痛くないから歩ける」と判断しないことが重要です。

既往・症状から足潰瘍リスクを確認する

足を見る前に既往を確認すると、視診では分からない高リスク患者を拾いやすくなります。ADA 2026では、足潰瘍・切断・Charcot足、血管形成術や血管手術、喫煙、網膜症、腎疾患などの既往と、神経・血管症状の確認が挙げられています。

  • 足潰瘍の既往:過去の部位、治癒後の再発、現在のフットケア状況
  • 下肢切断歴:切断部位、対側足への荷重集中、義足・履物
  • Charcot足の既往:変形、装具、荷重指示、専門科フォロー
  • 血管治療歴:血管形成術、バイパス術など
  • 神経症状:しびれ、灼熱感、疼痛、感覚低下
  • 血管症状:歩行時の下肢疲労、間欠性跛行、安静時痛
  • 自己管理:毎日の足観察ができるか、視力・認知・身体機能による困難がないか

「現在は傷がない」という情報だけではリスクを判断できません。潰瘍歴・切断歴・腎疾患などはIWGDFリスク分類にも関わるため、既往と現在の所見を分けて記録します。

皮膚・爪・胼胝と足部変形を左右で確認する

視診では潰瘍の有無だけでなく、潰瘍につながる前段階の変化を拾います。足背だけで終わらせず、足底、踵、趾間、爪まで確認してください。

視診で確認するポイント
部位・項目 確認する所見 PTが考えること
皮膚 乾燥、亀裂、発赤、水疱、出血、潰瘍 摩擦・圧・ずれ・セルフケアとの関連
胼胝・鶏眼 部位、厚さ、左右差、胼胝下出血 繰り返し荷重されている部位を推定する
爪・趾間 爪変形、陥入、皮膚損傷、感染を疑う変化 履物やセルフケアによる外傷リスクを確認する
足部変形 外反母趾、槌趾、突出した中足骨頭、Charcot変形など 局所的な圧上昇、靴との干渉、歩行への影響を考える

胼胝や変形を「ある・ない」で終わらせず、その場所に歩行・立位でどのような機械的ストレスが加わっているかまで考えると、PTによる評価へつながります。

10 gモノフィラメントと追加神経評価でLOPSを確認する

10 gモノフィラメントは、潰瘍リスクに関わる保護感覚低下を確認する代表的な方法です。ただし、モノフィラメントだけで糖尿病性末梢神経障害全体を評価するものではありません。

ADA 2026では、10 gモノフィラメントまたはIpswich touch testに加えて、痛覚、温度覚、振動覚など少なくとも1つの追加神経学的評価を組み合わせることが示されています。モノフィラメントの反応だけを見て、神経障害の有無を一律に決めないことが重要です。

記録のポイント:「モノフィラメント異常」の一言ではなく、左右、評価条件、追加神経評価の結果、LOPSをどう判断したかまで残すと再評価しやすくなります。

PADを疑う血流所見を確認する

PTによる足部評価ではPADを確定診断するのではなく、追加の血管評価が必要な患者を拾うことが目的です。

初期確認では、足背動脈・後脛骨動脈の触知に加えて、毛細血管再充満、依存性発赤、挙上時蒼白、色調や温度などを確認します。問診では、下肢疲労、間欠性跛行、安静時痛なども合わせて確認します。

脈拍の低下・消失やPADを疑う症状がある場合は、ABIや足趾血圧などを含む血管評価へつなげます。糖尿病では動脈石灰化などによってABIの解釈が難しい場合もあるため、PTが単一の数値だけで「血流は問題ない」と判断しないことが大切です。

PTは関節可動域・歩行・荷重・履物まで評価する

ここが、一般的なフットチェックとPTによる評価を分けるポイントです。IWGDFでは、LOPSまたはPADがある場合、足部変形、足・足関節の関節可動性低下、過剰な胼胝、前潰瘍性病変などの追加確認が示されています。

PTではさらに、これらの所見を「どこに、なぜ負荷が集中しているか」へつなげます。

PTが追加して確認したい足部機能
評価 見るポイント 介入につなげる視点
関節可動域 足関節背屈、MTP・足趾の可動性、左右差 歩行時に別部位へ代償的な負荷が集中していないか
立位・歩行 荷重偏位、蹴り出し、歩隔、疼痛回避など 胼胝・発赤などの部位と動作を対応させる
足底への負荷 胼胝、発赤、変形から圧上昇が疑われる場所 荷重量、歩行量、履物・インソール調整を検討する
履物・装具 サイズ、圧迫、擦れ、異物、靴底、インソール 足部所見と履物の接触部位が一致していないか確認する

重要なのは、ROM制限や歩行異常そのものはIWGDFリスク0〜3を直接決める項目ではないという点です。公式のリスク分類と、PTが介入方針を決めるための機能評価を混同しないようにします。

IWGDFリスク分類0〜3と再評価頻度

評価結果は、LOPS、PAD、足部変形、潰瘍・切断歴、末期腎不全などを組み合わせてIWGDFリスク分類0〜3へ整理します。独自の「低・中・高」分類を作るより、国際的な分類にそろえた方が多職種間で共有しやすくなります。

IWGDFリスク分類と足部評価頻度の目安
分類 潰瘍リスク 主な条件 評価頻度の目安
0 Very low LOPSなし、かつPADなし 年1回
1 Low LOPSまたはPAD 6〜12か月ごと
2 Moderate LOPS+PAD、LOPS+足部変形、またはPAD+足部変形 3〜6か月ごと
3 High LOPSまたはPADがあり、さらに足潰瘍歴・下肢切断歴・末期腎不全のいずれかがある 1〜3か月ごと

評価頻度は固定された予約間隔ではなく、IWGDFが示す目安です。現在の病変、患者個別の状況、専門科からの指示、施設内の運用がある場合はそれらを優先してください。

迷いやすい境界

足部変形があるだけで自動的にリスク2になるわけではありません。リスク2は、LOPSまたはPADと足部変形の組み合わせなどで判定します。一方、変形そのものは局所的な機械的ストレスにつながるため、リスク分類とは別にPT評価・介入へ反映します。

また、活動性の潰瘍、感染疑い、原因不明の発赤・腫脹・皮膚温上昇などがある場合は、「リスク3だから1〜3か月後に再評価」と扱うものではありません。リスク分類より先に、必要な専門評価・治療へつなげます。

糖尿病足病変の評価・リスク分類シートをダウンロードする

評価項目を毎回同じ順番で確認し、初回評価と再評価を比較できるように、「糖尿病足病変 評価・リスク分類シート(PT向け)」を作成しました。

赤旗、既往・症状、皮膚・足部変形・履物、神経・血流評価、PT追加評価、IWGDFリスク分類、次の対応、多職種共有までを1枚の流れで整理できます。

糖尿病足病変 評価・リスク分類シート(PT向け)

Excel版は入力・保存・再評価用、PDF版はA4印刷して手書きで使用する場面を想定しています。

Excel版をダウンロードする

PDF版を開く・ダウンロードする

このシートは診断や専門医への紹介判断を自動化するものではありません。所見を見落とさず、「何を確認したか→どう分類したか→誰へ共有したか→次はいつ確認するか」をそろえるための記録補助として使用してください。

記録は「所見・判定・対応・次回」の4点を残す

評価結果を「足部異常あり」「モノフィラメント低下」のような一言だけで残すと、次回評価で比較できません。最低限、所見・判定・対応・次回の4点をセットで記録します。

糖尿病足病変評価の記録例
項目 記録する内容
所見 左右・部位、皮膚、胼胝、感覚、脈拍、変形、履物、歩行など
判定 LOPS・PAD・足部変形の有無、IWGDFリスク分類、判定保留項目
対応 医師・看護師・専門チームへの共有、履物確認、荷重調整、セルフケア支援など
次回 再評価時期と、再評価時に特に比較する項目

たとえば「右第1中足骨頭部に胼胝あり、モノフィラメント反応低下、足背動脈触知可。歩行時に同部への負荷集中を疑う。IWGDF分類を確認し、履物と荷重条件を調整して再評価」のように、所見と次の判断が追える記録にします。

評価後はリスク分類だけで終わらせない

IWGDF分類は再評価頻度を考えるために有用ですが、分類番号を付けること自体が目的ではありません。評価結果に応じて、足の観察方法、履物、機械的ストレス、セルフケア能力、多職種への共有までつなげます。

  • 皮膚トラブル:部位と原因になりそうな圧・摩擦・ずれを確認する
  • LOPS:傷に気づきにくいことを前提に、日常の足観察方法を確認する
  • PAD疑い:荷重・運動量だけを調整して終わらせず、必要な血管評価へつなげる
  • 足部変形・胼胝:歩行と履物を確認し、局所的な圧上昇を減らす方法を考える
  • 自己観察が困難:家族や介護者を含め、誰が日常的に足を確認するか決める

PTが担当している患者では、「足部所見」と「実際の立位・歩行」を別々に考えず、同じ場所へ繰り返し負荷が加わっていないかを確認すると、評価を予防的な介入へつなげやすくなります。

糖尿病足病変の評価でよくある質問

10 gモノフィラメントだけでLOPSを判断してよいですか?

モノフィラメントだけで糖尿病性末梢神経障害全体を判断するのは適切ではありません。ADA 2026では、10 gモノフィラメントまたはIpswich touch testに加えて、痛覚、温度覚、振動覚など少なくとも1つの追加神経学的評価を組み合わせることが示されています。実施条件や左右差も含めて記録します。

足部変形があればIWGDFリスク2ですか?

足部変形だけで自動的にリスク2になるわけではありません。IWGDFリスク2は、LOPS+足部変形、PAD+足部変形、またはLOPS+PADなどの組み合わせです。ただし、変形は足底圧や靴との摩擦に関わるため、分類とは別に重要な評価所見です。

足潰瘍がある患者もIWGDFリスク0〜3だけで管理しますか?

活動性の潰瘍がある場合は、予防目的のリスク分類だけで管理するものではありません。潰瘍の状態、感染、虚血などの評価と専門的な治療が必要になるため、リスク分類より速やかな共有・専門評価を優先します。

IWGDFの1〜3か月、3〜6か月という頻度は必ず守る必要がありますか?

評価頻度は目安であり、IWGDFでも患者個別の状況を考慮する必要があります。新規皮膚所見、履物変更、活動量増加、疼痛、創傷などの変化があれば、予定時期を待たずに再評価します。主治医・専門科の指示や施設プロトコルがある場合は、それらを優先してください。

次の一手|足部評価から検査・糖尿病リハへつなげる

足部評価全体を押さえた後は、目的に応じて次の記事へ進んでください。


参考文献

  1. American Diabetes Association Professional Practice Committee. 12. Retinopathy, Neuropathy, and Foot Care: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1):S261-S276. doi:10.2337/dc26-S012.
  2. Bus SA, Sacco ICN, Monteiro-Soares M, et al. Guidelines on the prevention of foot ulcers in persons with diabetes (IWGDF 2023 update). Diabetes Metab Res Rev. 2024;40(3):e3651. doi:10.1002/dmrr.3651.
  3. Schaper NC, van Netten JJ, Apelqvist J, et al. Practical guidelines on the prevention and management of diabetes-related foot disease (IWGDF 2023 update). Diabetes Metab Res Rev. 2024;40(3):e3657. doi:10.1002/dmrr.3657.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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