CST-Jの導入手順|OT向け対象・実施・記録【PDF付き】

臨床手技・プロトコル
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CST-Jの導入手順|OTが最初に決める対象・実施・記録

CST-JをOTが導入するときは、最初から運動や二重課題を盛り込むのではなく、CST-J本来の枠組みと、施設で追加する活動を分けて設計することが重要です。CST-Jは認知症の人を対象とした集団認知刺激療法であり、運動と認知課題を組み合わせるコグニサイズとは目的・対象・枠組みが異なります。

この記事では、CST-Jを導入するときにOTが迷いやすい対象の見方、セッション設計、運動・認知課題を追加する場合の考え方、負荷調整、記録を整理します。研究上のCST-Jと、施設ごとの実務上の工夫を混同せず、次回へつながる記録まで残せることを目標にします。

最初に押さえる3点
① CST-Jとコグニサイズは別のプログラムとして考える
② まずCST-Jの参加・反応を観察し、追加課題は別に記録する
③ 次回は「1つだけ変える」ことで、調整理由を追えるようにする

CST-Jとは?まず研究上の基本枠組みを確認する

CST-Jは、認知症の人を対象としたCognitive Stimulation Therapy(CST)を日本の文化や生活背景に合わせて適応した日本版プログラムです。日本版の臨床研究では、14セッションを週2回、7週間実施しています。

原法のCSTも、基本プログラムは14セッション、1回45分、週2回、7週間で構成されています。CST-Jの研究では、認知機能、気分、QOLの一部で改善が報告されていますが、研究結果をそのまま個々の対象者への効果保証として解釈するものではありません。

CST-Jを導入するときに区別したい「研究上の枠組み」と「施設で決めること」
項目 研究・原法で確認できること 施設で別途判断すること
実施形式 集団での認知刺激を基本とする 人数、場所、スタッフ配置
回数 14セッション 施設事情による実施可能性
頻度 週2回・7週間 日程、欠席時の対応
追加活動 CST-Jそのものと区別する 運動、認知課題、環境調整など
記録 研究評価と日常記録は目的が異なる 参加、反応、調整、次回変更点

実務上のポイント:14回・週2回・7週間は、CST-J研究で用いられた実施条件です。施設事情に合わせて変更する場合は、「CST-J研究と同一条件で実施した」とは扱わず、どこを変更したかが分かるように記録しておくと整理しやすくなります。

CST-Jとコグニサイズは同じ枠組みではない

最も重要なのは、CST-Jに運動を加えれば、そのままコグニサイズになるわけではないという整理です。

CST-J本体と追加する運動・認知課題を分けて考える流れ
CST-J本体で参加・反応を確認し、必要な場合のみ運動や認知課題を追加します。追加内容は別に記録し、次回は1変更点だけ調整します。

国立長寿医療研究センターは、コグニサイズを「運動と認知課題を組み合わせた、認知症予防を目的とする取り組み」としています。全身を使った運動と、同時に認知的な負荷を加えることが基本です。

一方、CST-Jは認知症の人を対象とした集団認知刺激療法です。したがって、認知症の人へCST-Jを実施するときに運動や二重課題を追加する場合は、「CST-Jそのもの」と「OTが追加した運動・認知課題」を分けて設計・記録する方が整理しやすくなります。

CST-Jとコグニサイズの違い
項目 CST-J コグニサイズ
中心となる目的 認知症の人への認知刺激 認知症予防
基本構造 テーマを用いた集団活動・交流 運動+認知課題
主な対象 認知症の人 認知症予防を目的とする人
OTで追加活動を行う場合 どちらかの名称へ無理に当てはめず、実際に行った運動・認知課題を具体的に記録する

つまりこの記事では、「CST-J×コグニサイズ」という独立した標準プロトコルを提示するのではなく、CST-Jを軸にしながら、必要な運動や認知課題を追加する場合の実務上の整理方法を扱います。

対象の選び方|診断名だけでなく「参加できる条件」を確認する

CST-Jの導入では、認知機能だけで参加可否を決めるのではなく、集団でのやり取りを続けられる条件が整っているかを確認します。

研究で設定された選択基準は、そのまま日常臨床の絶対的な適応基準ではありません。実務では、対象者ごとに医学的状態、認知・コミュニケーション、視聴覚、疲労、行動・心理症状、集団参加への影響を確認します。

CST-J導入前にOTが確認するポイント
確認 見ること 調整例
会話・理解 問いかけや周囲の発話へ反応できるか 短い問い、選択肢、視覚的手がかり
視覚・聴覚 教材や他者の発話を捉えられるか 座席、文字サイズ、補聴器などを調整
疲労 活動時間を維持できるか 休憩、実施時間、時間帯を調整
行動・心理状態 強い不穏、興奮、苦痛などが前景にないか 原因確認や個別対応を優先
身体面 座位保持や追加する運動を安全に行えるか 姿勢、運動量、スタッフ配置を調整

導入初回は「できた・できなかった」だけを見るより、どの条件なら参加が続いたかを残すことが重要です。座席を変えたら会話が増えた、提示をゆっくりにしたら参加できた、といった条件が次回の再現につながります。

CST-J実施・記録シート(A4 PDF)

CST-Jを複数の担当者で実施する場合は、詳細な記録を増やすより、参加・反応・追加課題・調整内容・次回の変更点を同じ型で残す方が引き継ぎやすくなります。

以下の記録シートは、rehabilikunblogが作成した独自の記録補助様式です。CST-Jの公式記録用紙ではありません。CST-Jの実施内容と、必要に応じて追加した運動・認知課題を分けて記載できる構成にしています。

CST-J 実施・記録シート(OT向け)

A4縦1枚。CST-Jの活動内容、参加・反応、追加した運動・認知課題、調整・休憩・中止、次回の「1変更点」を記録できます。

PDFを開く・ダウンロードする

記録のポイント:空欄をすべて埋めることを目的にせず、「何をしたか」「どの条件なら参加できたか」「何を変えたか」「次回何を1つ変えるか」が追える状態を優先してください。

セッション設計|まずCST-Jの流れを安定させる

導入初期は、CST-Jの活動と参加が安定する前に課題を盛り込みすぎないことが重要です。運動、計算、語想起、役割などを同時に増やすと、何が参加を妨げたのか判断しにくくなります。

まずは「導入→活動→まとめ」の流れの中で、対象者が発話・交流・活動へ参加できる条件を探します。そのうえで追加する活動に明確な目的がある場合のみ、運動や認知課題を加えます。

CST-J導入時の基本フロー
順番 やること OTが見ること 記録
1 参加条件を整える 座席、視聴覚、疲労、周囲刺激 必要な環境調整
2 CST-Jの活動を行う 発話、交流、活動への反応 テーマ・活動内容
3 必要なら追加課題を行う 追加によって参加が崩れないか 追加内容を別欄へ記録
4 終了時に振り返る 疲労、表情、症状、達成状況 次回の1変更点

運動・認知課題を追加するとき|目的と記録を分ける

運動や認知課題を追加する場合は、「なぜ追加するのか」を先に決め、CST-J本体とは別に記録します。

たとえば、座位活動の中で身体活動を増やしたい、運動中の注意配分を観察したい、活動の変化を作りたい、といった目的です。「認知症だから二重課題を入れる」と一律に追加する必要はありません。

また、認知症の人へ運動課題を追加する場合は、その人の身体機能や医学的状態に応じた安全確認が前提です。コグニサイズで示される運動強度や認知課題の原則を、そのままCST-J対象者へ適用するものではありません。

追加課題を記録するときの分け方
項目 記録例 次回確認すること
運動 座位で交互足踏み、実施回数 疲労、姿勢、会話への影響
認知課題 語想起、数唱、簡単なルール課題など 停止、ミス、手がかり量
同時実施 運動中に認知課題を実施 どちらの遂行が変化したか
環境 座席、人数、提示速度を変更 参加が保ちやすくなったか

負荷調整|うまくいかないときは1要素だけ変える

活動が難しすぎる、疲労する、沈黙する、参加が崩れるときは、複数の条件を一度に変えず、1要素ずつ調整すると原因を追いやすくなります。

変更候補は「活動内容」「手がかり」「追加した運動」「追加した認知課題」「環境」「休憩」です。すべてを一度に変えると、次回に再現できません。

参加が崩れたときの負荷調整
起きていること 最初に確認すること 1つ変えるなら
沈黙が増えた 問いや課題が難しくないか 手がかりを増やす、課題を簡潔にする
疲労が強い 時間・運動量・休憩 追加した運動量を下げる
会話が減った 追加課題が会話を妨げていないか 認知課題または運動を外す
注意が続かない 周囲刺激や提示速度 座席・環境を変更する
活動が受け身になる 声かけや手がかりが過剰でないか 待つ時間を増やす

「うまくいかなかった」ではなく、どの条件で参加が崩れ、何を1つ変えたかまで残すと、担当者が変わっても調整を続けられます。

休憩・中止・相談|追加課題より安全を優先する

運動や認知課題を追加した場合は、課題の完遂よりも対象者の症状・表情・疲労・注意状態の変化を優先します。

息切れの増悪、めまい、胸部症状、明らかな表情不良、著しい疲労、集中の急な崩れなどがみられた場合は、そのまま課題を続けず、休憩、内容変更、中止、必要な相談を検討します。

これはCST-J固有の中止基準ではありません。追加した身体活動を含め、対象者の医学的状態、施設の安全基準、主治医等の指示を優先して判断してください。

記録の残し方|「参加・追加・調整・次回」を残す

記録は細かい項目を増やすより、次回の担当者が同じ判断を再現できる情報を残すことが大切です。

最低限、次の4点を追えるようにします。

  • 参加:発話、やり取り、活動への反応はどうだったか
  • 追加:運動や認知課題を何か追加したか
  • 調整:休憩、課題変更、環境変更などを行ったか
  • 次回:次に1つだけ変えるなら何か

記録例

テーマ活動では問いかけ後に自発発言あり。後半に座位足踏みを追加すると発話が減少したため中止。休憩後は会話へ再参加できた。次回はCST-J活動を優先し、追加運動は行わず参加状況を再確認する。

このように、CST-Jでの反応と追加課題による変化を分けることで、「何が良かったのか」「何が負荷になったのか」が見えやすくなります。

よくある失敗|CST-Jと追加課題を混ぜすぎない

導入初期で最も避けたいのは、活動を増やしすぎて、CST-Jへの参加そのものが見えなくなることです。

CST-J導入時に起こりやすい失敗と見直し方
失敗 問題 見直し方
最初から二重課題を入れる CST-J単独での参加状況が分からない まず基本活動を確認する
追加した活動をCST-Jとして記録する 介入内容の境界が曖昧になる 追加課題を別欄へ記録する
複数条件を同時に変更する 改善・悪化の理由を追えない 1回に1要素だけ変える
課題達成を優先する 参加や交流が受け身になりやすい 発話・交流・反応を見る
研究条件を絶対基準にする 個別の状態や施設条件を無視しやすい 研究条件と臨床判断を区別する

CST-J導入でよくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

CST-Jは必ず14回、週2回で行わなければいけませんか?

日本版CST-Jの臨床研究では14セッションを週2回、7週間実施しています。施設事情で変更する場合は、研究と同じ条件ではないことを認識し、実施回数・頻度・変更理由を記録しておくと整理しやすくなります。

CST-Jに運動を追加してもよいですか?

運動を追加する場合は、CST-Jそのものと追加した活動を区別してください。追加する目的、内容、対象者の身体機能・医学的状態を確認し、参加や会話が崩れる場合は負荷を下げる、または追加しない判断が必要です。

CST-Jに運動と認知課題を加えればコグニサイズになりますか?

同一のものとして扱わない方が適切です。コグニサイズは国立長寿医療研究センターが開発した、運動と認知課題を組み合わせる認知症予防の取り組みです。CST-Jとは目的・対象・枠組みが異なるため、認知症の人へのCST-Jに追加した運動・認知課題は、その具体的内容を別に記録します。

集団が成立しにくいときは課題を簡単にすればよいですか?

課題難度だけでなく、座席、聴覚・視覚、提示速度、疲労、周囲刺激、手がかり量を確認します。どの条件なら参加できるかを1つずつ探す方が、次回の再現につながります。

記録はどこまで残せばよいですか?

少なくとも「参加・反応」「追加した活動」「調整したこと」「次回の1変更点」が追えるようにします。詳細な記録量を増やすより、担当者が変わっても次の判断へつながる情報を優先してください。

次の一手|目的に合わせて次の記事へ

CST-Jとは別に、運動と認知課題を組み合わせた二重課題そのものの設計を確認したい場合は、以下の記事へ進んでください。


参考文献

  1. Spector A, Thorgrimsen L, Woods RT, Royan L, Davies S, Butterworth M, et al. Efficacy of an evidence-based cognitive stimulation therapy programme for people with dementia: randomised controlled trial. Br J Psychiatry. 2003;183:248-254. DOI: 10.1192/bjp.183.3.248
  2. Yamanaka K, Kawano Y, Noguchi D, Nakaaki S, Watanabe N, Amano T, Spector A. Effects of cognitive stimulation therapy Japanese version (CST-J) for people with dementia: a single-blind, controlled clinical trial. Aging Ment Health. 2013;17(5):579-586. DOI: 10.1080/13607863.2013.777395
  3. Aguirre E, Spector A, Orrell M. Guidelines for adapting cognitive stimulation therapy to other cultures. Clin Interv Aging. 2014;9:1003-1007. DOI: 10.2147/CIA.S61849
  4. 国立長寿医療研究センター. 認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」. 国立長寿医療研究センター公式サイト.

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、臨床で確認したい実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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