脳卒中上肢リハのrTMS実務|適応・手順・記録の型

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脳卒中上肢リハの rTMS 実務|随意運動の立ち上げを反復へつなぐ運用ガイド

脳卒中上肢リハで rTMS を使う目的は、刺激自体を主役にすることではなく、「随意運動の立ち上げ」→「課題反復の成立」へ確実につなぐことです。特に、随意が弱く反復練習が途切れやすい局面では、実施直後の課題接続を固定するだけで介入効率が大きく変わります。

本記事は、現場で迷いやすい「対象選定」「当日チェック」「実施後の反復設計」「安全管理」「最小記録」を、実装順で整理します。細かな刺激パラメータより先に、評価軸・反復課題・中止基準をチームでそろえることを優先します。

まずの結論|迷ったらこの 3 点だけ

  • rTMS 後 30 分を反復に使う:実施直後に「できる課題」を当てると、反復が回りやすい。
  • 成功率 7 割で回す:難度を下げてでも成功反復を維持し、代償固定を避ける。
  • 判定は機能+課題+使用頻度: FMA-UE だけでなく課題達成と日常使用を併記する。

rTMS の役割|どの局面で使うか

rTMS は、随意運動が弱く「やりたい課題が成立しない」局面で候補になります。運用上の要点は、実施そのものより、実施後に何をどれだけ反復するかを先に決めることです。課題が不成立のままでは、当日の改善が翌週へつながりません。

脳卒中上肢リハにおける rTMS 導入判断(成人・実務の最小セット)
判断項目 導入を考える局面 見送りを考える局面 実務ポイント
運動出力 随意が弱く反復課題が成立しにくい 課題成立しており練習量で改善可能 「成立困難の打開」が目的かを確認
課題遂行 開始遅延・失敗率高値が続く 代償管理のみで改善傾向がある 実施直後に短距離・低難度で接続
安全・体調 当日体調が安定し同意・理解が得られる 体調不良・睡眠不足・不安が強い 施設 SOP の禁忌・注意を最優先
チーム運用 記録項目と役割分担が明確 評価軸がばらつき再現性が低い 反復回数・成功率・代償を固定記録

1 セッションの型|準備 10 分 → 実施 → 反復 20 分 → 再評価 3 分

  1. 準備( 5–10 分 ):疼痛、疲労、覚醒、体調、当日の目標を確認し、「今日のねらい」を 1 つに絞る(例:把持成功率を上げる)。
  2. rTMS 実施:施設 SOP に沿って実施し、反応や不快症状の有無を記録する。
  3. 反復( 20–30 分 ):実施直後に、成立しやすい課題(短距離リーチ・大きい物体把持など)で成功反復を確保する。
  4. 再評価( 2–3 分 ):同一課題で成功率・所要時間・代償を確認し、次回の難度調整に接続する。

rTMS 実施後の反復設計|「できる形」に翻訳する

実施後に難しい課題を直接当てると、成功反復が切れやすくなります。まずは課題を分解し、成功率 7 割を維持できる工程から始めると、量と質を両立しやすくなります。

rTMS 実施後の課題接続(工程別の最小運用)
課題工程 開始時の設定 崩れたときの調整 次回の進め方
到達 距離短め、対象大きめ 距離をさらに短縮し成功優先 成功維持で距離を段階的に延長
把持 把持しやすい形状を選択 保持時間を短くして反復優先 保持時間を徐々に延長
リリース 置き場所を近位・広めに設定 工程分割(離すのみ反復) 到達→把持→離すを再統合

現場の詰まりどころ|失敗を早めに修正する

rTMS の詰まりは、刺激条件よりも「反復設計不足」で起きることが多いです。まず よくある失敗 を確認し、続けて 記録テンプレ で再発防止を固定してください。評価指標の整理は 評価ハブ で横断的に確認できます。

  • 実施後に難度が高すぎると成功反復が途切れます。
  • 回数優先で代償を見逃すと質が低下しやすくなります。
  • 翌日影響を記録しないと継続設計が不安定になります。

よくある失敗|原因 → その場の対策

rTMS 実装で起きやすい失敗(原因・対策・予防)
よくある失敗 原因 その場の対策 次回の予防
実施後に反復が回らない 課題難度が高く成功が続かない 短距離・低難度へ戻し成功率を確保 易しい版/標準版を事前準備する
代償が増えて質が悪化 回数優先でフォーム監視不足 回数を一時減らして質を回復 代償 2 項目を固定記録にする
翌日に疲労・不調が残る 当日負荷が高く休憩不足 当日の反復量を調整し休憩固定 翌日影響を必ず記録して最適化
効果判定がチームでずれる 評価軸が統一されていない 同一課題で短い再評価を実施 機能+課題+使用頻度を固定運用

安全管理|中止・延期基準を固定する

rTMS の安全確認(施設 SOP 優先・最小セット)
確認場面 中止・延期の目安 見落としやすい点 記録ポイント
開始前 体調不良、不安強い、禁忌該当 睡眠不足、脱水、当日の体調変動 実施可否理由、同意確認
実施中 頭痛増悪、強い不快感、全身症状 我慢して継続しがち 症状発生時刻、対応内容
実施後 疲労蓄積で反復成立困難 休憩不足、課題難度過多 反復量、成功率、翌日影響

記録テンプレ| 1 分で残す最小セット

rTMS 介入の最小記録(チーム共有用)
項目 書き方の例 目的
今日のねらい( 1 つ) 到達成功率を上げる 介入焦点を固定する
課題(固定) 短距離リーチ 40 回、把持 20 回 再現性を担保する
反復回数 / 成功率 成功 42 / 60( 70 % ) 量と成立度を可視化する
代償チェック( 2 項目) 肩すくめ:軽度、体幹代償:軽度 質低下を早期発見する
安全反応 頭痛なし、強い不快感なし 継続可否を判断する
次回の一手 距離 + 5 cm で同課題継続 継続介入へ接続する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

頭に機器を当てることは本当にあるのですか?

あります。rTMS は頭皮の上からコイルを当てる非侵襲的脳刺激で、手術は不要です。目的は刺激単独で完結することではなく、実施後の課題反復を成立させる補助にあります。現場では適応・禁忌・当日体調を確認し、施設 SOP に沿って安全に運用します。

rTMS 後は何を優先して練習すべきですか?

実施直後は、成功反復を確保しやすい課題を優先します。短距離リーチや把持しやすい物体から開始し、成功率 7 割を維持しながら段階的に難度を上げると、量と質を両立しやすくなります。

FMA-UE だけで効果判定してもよいですか?

FMA-UE は重要ですが、課題達成率や所要時間、日常使用頻度を併記すると臨床判断が安定します。機能指標だけでなく、実際の課題遂行を短く記録してください。

代償が増えた日は中止すべきですか?

即中止ではなく、まず課題難度と回数を調整して質を回復します。代償が持続し課題成立が崩れる場合は、工程分割や休憩固定で立て直し、再評価して継続可否を判断します。

翌日に疲労が残る場合はどう対応しますか?

当日の反復量が過多な可能性があります。翌日影響を記録し、次回は反復量・休憩・課題難度を 1 つずつ調整してください。連続して不調が出る場合は実施計画を見直します。

チームで記録がばらつくのを防ぐ方法は?

「反復回数」「成功率」「代償 2 項目」「安全反応」「次回の一手」を固定記録にすると、誰が担当しても評価軸がそろいやすくなります。

次の一手

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  1. van Lieshout ECC, Visser-Meily JMA, Neggers SFW, et al. Timing of repetitive transcranial magnetic stimulation onset for upper limb function after stroke: A systematic review and meta-analysis. Front Neurol. 2019;10:1269. doi: 10.3389/fneur.2019.01269
  2. Chen G, Lin T, Wu M, et al. Effects of repetitive transcranial magnetic stimulation on upper-limb and finger function in stroke patients: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Front Neurol. 2022;13:940467. doi: 10.3389/fneur.2022.940467 / PubMed: 35968309
  3. Hsu WY, Cheng CH, Liao KK, et al. Effects of repetitive transcranial magnetic stimulation on motor functions in patients with stroke: A meta-analysis. Stroke. 2012;43(7):1849-1857. doi: 10.1161/STROKEAHA.111.649756 / PubMed: 22535274
  4. Xie Y, Wang L, He C, et al. Repetitive transcranial magnetic stimulation for upper limb function after stroke: an updated systematic review and meta-analysis. Am J Phys Med Rehabil. 2021;100(12):1171-1183. doi: 10.1097/PHM.0000000000001794

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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