AWGS2019 サルコペニア診断基準|カットオフ早見表と評価のコツ

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AWGS2019 サルコペニア診断基準(結論)

AWGS2019 サルコペニア診断基準では、確定には「低筋量 +(低筋力 または 低身体機能)」が必要で、3 要素すべての低下は重症と定義されます。AWGS2019 はアジア人データに基づき、握力・歩行速度・ SPPB ・ 5 回立ち上がり・ ASMI( DXA / BIA )・ふくらはぎ周囲長( CC )などの閾値を整理した実務向けコンセンサスです。

補足:「最新基準」を探している場合は AWGS 2025 が公開されています。本ページはあくまで「AWGS2019 の基準値を確認したい」方向けに、カットオフと運用の詰まりどころを辞書として整理します( AWGS 2025 の一次情報は文末の参考文献に掲載)。

AWGS2019 の確定条件(最短)
判定 必要条件
サルコペニア確定 低筋量 +(低筋力 または 低身体機能)
重症 低筋量 + 低筋力 + 低身体機能

本稿では 基準の要点とカットオフ早見表、および 測定の実務ポイント現場で詰まりやすいポイントを簡潔にまとめます。臨床では スクリーニング( SARC-F / CC )→ 筋力・機能 → 筋量 → 重症度 の順で評価し、同じ手順で 縦比較 できるようにしておくことが重要です。

診断アルゴリズム(コミュニティ/クリニカル)

続けて読む:病棟で「疑い → 測定 → 判定 → 再評価」までを 1 本の手順に落とす場合は、AWGS2019 サルコペニア評価プロトコル【 PT 向け 】にまとめています。

コミュニティ: CC(男 < 34 cm / 女 < 33 cm)や SARC-F( ≥ 4 )、 SARC-CalF( ≥ 11 )で疑い例を抽出し、握力または 5 回立ち上がり・歩行速度・ SPPB のいずれかで身体機能の低下を確認します。スクリーニング陽性であれば、可能な範囲で筋量( ASMI )評価を追加し、フォロー頻度を決めます。

クリニカル:症状や ADL 変化とあわせて、①握力、②歩行速度( 6 m 通常歩行 )・ 5 回立ち上がり・ SPPB、③ ASMI( DXA / BIA )の順で評価します。低筋量 +(低筋力 または 低身体機能)=サルコペニア確定、3 要素すべての低下で重症と判定します。病態(急性期・回復期・慢性期)に応じて、再評価のタイミングを計画に書き込んでおくとチーム共有がスムーズです。

AWGS2019 カットオフ早見表

サルコペニア診断で用いる主なカットオフ( AWGS2019 )。成人高齢者・アジア人対象。
区分 項目 基準値 補足
筋力 握力( kg ) 男 < 28 / 女 < 18 代表指標。左右 2~ 3 回で最大値を採用。
身体機能 歩行速度( m/s ) < 1.0 6 m 通常歩行を想定(助走と減速を確保)。
身体機能 SPPB(点) ≤ 9 0~ 12 点。立位バランス・ 4 m 歩行・ 5 回立ち上がり。
身体機能 5 回立ち上がり(秒) ≥ 12 椅子座面高を統一し、腕組みで実施。
筋量( DXA ) ASMI( kg/m² ) 男 < 7.0 / 女 < 5.4 四肢骨格筋量 ÷ 身長²。
筋量( BIA ) ASMI( kg/m² ) 男 < 7.0 / 女 < 5.7 機種間差に留意し、同一機種で縦比較。
スクリーニング ふくらはぎ周囲長( cm ) 男 < 34 / 女 < 33 腓腹最大周径を水平に測定。浮腫は可能な範囲で軽減。
スクリーニング SARC-F ≥ 4 質問票 5 項目。簡便で特異度が比較的高い。
スクリーニング SARC-CalF ≥ 11 SARC-F に CC < 基準で +10 点。

測定の実務ポイント(再現性重視)

握力:座位・肘屈曲 90°・前腕中間位・手関節軽度背屈で統一し、左右 2~ 3 回ずつ測定して最大値を採用します。痛みや変形がある側は、測定可否と理由をカルテに残すと追跡しやすいです。

歩行速度: 6 m 区間を明示し、その前後に助走・減速ゾーンを確保します。通常歩行を 2 回測定し平均(または最速など、施設内で統一した採用ルール)を用い、補助具の有無は記録に明記します。

5 回立ち上がり:座面高(例: 40 cm 前後)を固定し、足底接地・腕組みで途中停止なく連続立ち上がり。測定の「椅子」「足位置」「腕の使い方」を固定しないと、改善/悪化の解釈がぶれます。

SPPB:採点ルールを事前にチームで共有し、失敗条件や中止基準をメモとして残しておくと再現性が高まります(特にバランス課題と 5 回立ち上がりで差が出やすいです)。

ASMI: DXA / BIA とも同一機器・同一条件(時間帯・食事・点滴状況など)での縦比較が原則です。 BIA は脱水・浮腫・直近の食事/運動で値が動くため、条件欄を記録用紙に固定しておくと運用しやすくなります。

CC:非伸縮メジャーで腓腹最大部を 2 回測定し、一致しない場合は 3 回目を追加して中央値(または平均)を採用します。浮腫が強い場合は「測定部位」「体位」「圧のかけ方」を統一し、コメントを必ず添えます。

現場の詰まりどころ(よくある悩み)

① BIA・ DXA が使えない:機器がない施設では「スクリーニング+筋力・機能」で止まりがちです。この場合も、 CC と握力・ 5 回立ち上がり・歩行速度(または SPPB )をセットで記録し、カンファレンスでは「 AWGS2019 上の疑い( low strength / low performance )」として共有するだけでも意思決定が進みます。

② 測定条件のバラツキ:歩行路の長さが毎回違う、椅子の高さがバラバラ、食後すぐに BIA を測ってしまう、などの「条件ブレ」で変化が読めなくなることが多いです。測定曜日・時間帯・場所・用具 をあらかじめ決め、記録用紙のヘッダーに条件欄を固定すると縦比較が安定します。

③ 多職種との温度差:AWGS の用語やカットオフが共有されておらず、「何となく筋力低下」という表現で終わってしまうケースも少なくありません。評価結果は「握力 18 kg ・ CC 31 cm ・ 5 回立ち上がり 15 秒 → AWGS2019 上サルコペニア疑い」のように、数値+判定 をセットで書くことが、チームでの意思決定の第一歩になります。

参考文献

  1. Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. doi:10.1016/j.jamda.2019.12.012
  2. Yamada Y, et al. Validating muscle mass cutoffs of four international sarcopenia-working groups in Japanese people using DXA and BIA. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2021. doi:10.1002/jcsm.12732
  3. Piodena-Aportadera MRB, et al. Calf Circumference Measurement Protocols for Sarcopenia Diagnosis. Ann Geriatr Med Res. 2022;26(3):215-224. doi:10.4235/agmr.22.0057
  4. Chen LK, et al. A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update. Nature Aging. 2025. doi:10.1038/s43587-025-01004-y

おわりに

AWGS2019 に沿った評価は、スクリーニング → 条件固定 → 測定 → 記録 → 再評価というリズムをチームでそろえるほど、日々のリハの中で無理なく回せます。まずは「どの指標を」「どの条件で」測るかを決め、同じ条件・同じ指標で縦比較できる運用を作ることが、介入の手応えを見える化する近道です。

面談準備チェック( A4 ・ 5 分)と職場評価シート( A4 )は、rehabilikunblog 内の「マイナビコメディカル」固定ページのダウンロード欄にまとめています。必要なときに印刷して使えるよう、手元の運用セットに入れておくと安心です。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

SARC-F と SARC-CalF はどちらを使えば良いですか?

忙しい現場では、まず SARC-F( ≥ 4 )で拾い上げ、見逃しを減らしたい場合は SARC-CalF( ≥ 11 )を併用する運用が現実的です。 CC が測れない場面は SARC-F のみでも構いませんが、同じ患者さんを追うときは「毎回同じ入口」を固定して縦比較しやすくします。

BIA / DXA がない施設でも、AWGS2019 は使えますか?

使えます。筋量が測れない場合は「確定」までは届きにくい一方で、CC と握力・歩行速度・ 5 回立ち上がり(または SPPB )をセットで記録すれば、チーム内で「疑い例」として共有し、介入(運動・栄養・環境調整)と再評価を回せます。機器が導入されたタイミングで筋量を追加し、確定に進める設計にしておくとスムーズです。

歩行速度は 4 m と 6 m のどちらが良いですか?助走は必要ですか?

AWGS2019 の文脈では 6 m 通常歩行(カットオフ < 1.0 m/s )がよく参照されます。どちらを採用しても良いですが、助走と減速を必ず確保し、同じ距離・同じ採用ルール(平均/最速など)を固定して縦比較することが最重要です。

5 回立ち上がりと SPPB は、どちらを優先すべきですか?

両方できるなら SPPB が「バランス+歩行+立ち上がり」をまとめて見られます。時間や環境の制約がある場合は、まず 5 回立ち上がり( ≥ 12 秒)を標準化し、必要に応じて SPPB を追加する運用が回しやすいです。施設で「どちらを主指標にするか」を決め、採点の迷いが出ないようにしておくとチーム運用が安定します。

CC が浮腫で増えてしまうときは、どう扱えば良いですか?

浮腫が強いと CC は過大評価されやすいので、測定体位・測定部位・圧のかけ方を固定し、コメント(例:「下腿浮腫あり」)を必ず添えます。そのうえで、CC に依存しすぎず、握力や立ち上がりなど「機能指標」を同時に記録して判断の軸を複線化すると、解釈がぶれにくくなります。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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