NPI-NHの使い方|施設での面接・記録・再評価【PDF】

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NPI-NHの使い方|正式評価と施設運用を分けて回す

NPI-NH(Neuropsychiatric Inventory – Nursing Home Version)は、施設で生活する認知症の人について、日常ケアに関わる専門職から情報を得て、BPSDなどの神経精神症状を頻度 × 重症度で整理する評価尺度です。

施設で活用するときに重要なのは、正式なNPI-NHの面接・採点と、評価後に行う観察・介入・再評価を混同しないことです。この記事では、情報提供者と評価対象期間の決め方、面接で守ること、記録、多職種カンファ、再評価までを整理します。尺度の設問全文やNPIとの詳細比較は扱いません。

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NPI-NHで最初に確認する4点|情報提供者・期間・面接・採点

NPI-NHを継続して使うなら、まず誰から、どの期間について、どのように情報を得たかを明確にします。施設独自の観察ログや介入方法を決める前に、尺度としての評価条件をそろえることが重要です。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

NPI-NHを実施するときに先に確認する4点
確認項目 NPI-NHで確認すること 施設運用で残すこと
情報提供者 対象者の日常ケアに関わり、対象期間の状態を把握している専門職 勤務帯・担当状況なども記録する
評価対象期間 過去1週間、またはあらかじめ定義した期間 再評価時も同じ期間設定で比較する
面接 正式な検査用紙の質問に沿って実施する 独自の観察質問とは分けて記録する
採点 各領域で頻度と重症度を評価し、領域得点を算出する 職業的負担度は領域得点の総合点とは分けて扱う

重要:NPI、NPI-NH、NPI-Qおよび翻訳版には著作権と利用条件があります。本記事や後述するPDFは、正式なNPI-NH検査用紙を置き換えるものではありません。実際の評価では、使用する用紙・翻訳版の利用条件を確認してください。

NPI-NHを施設で回す5ステップ|正式評価から再評価まで

施設では、正式なNPI-NH評価を中心に置き、その前後へ観察・介入・再評価を接続すると整理しやすくなります。介入を1つに絞ることや1〜2週間で再評価することはNPI-NHの公式必須条件ではなく、変化を確認しやすくするための施設運用例です。

  1. 評価条件をそろえる:情報提供者、評価対象期間、使用する用紙・領域を確認する。
  2. 正式なNPI-NHを実施する:検査用紙に沿って面接し、頻度と重症度を評価する。
  3. 結果と具体例を整理する:領域得点と、場面・誘因・対応などの観察情報を分けて残す。
  4. 多職種で介入を検討する:安全性、本人への影響、職員への影響、誘因を合わせて判断する。
  5. できるだけ同じ条件で再評価する:対象期間や情報提供条件をそろえ、変化を確認する。
NPI-NHを施設で回す流れを、評価条件、正式評価、結果整理、多職種介入、再評価の5ステップで示した図版
NPI-NHの正式評価と施設独自の運用を分けて整理した流れです。「介入を1つに絞る」「1〜2週で再評価する」は効果を確認しやすくするための施設運用例であり、NPI-NHの公式必須条件ではありません。

導入準備|誰からどの期間について聞くかをそろえる

NPI-NHでは、対象者の日常ケアに関わり、評価対象期間の状態を説明できる専門職から情報を得ます。評価のたびに情報提供者や振り返る期間が大きく変わると、得点の変化が症状そのものによるものか、情報条件の違いによるものか判断しにくくなります。

施設内で複数職員の観察情報を共有することは有用ですが、今回のNPI-NHを誰の情報をもとに評価したかは分かるように記録しておきます。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

NPI-NH導入前にそろえておきたい項目
項目 確認すること 記録例
使用条件 使用する正式用紙・翻訳版・施設内ルール 「施設採用用紙で実施」
情報提供者 対象期間の日常状態を把握している専門職 「主担当・日勤」
対象期間 過去1週間またはあらかじめ定義した期間 「8月1日〜7日」
観察情報 時間帯・場面・行動・対応・結果 「夕食前の待機中に大声」
薬剤・体調 定期薬、頓用薬、急な身体状態の変化など 「頓用あり」「発熱なし」
再評価予定 施設の目的やケアサイクルに合わせて設定する 「2週間後のカンファで再確認」

1〜2週間後の再評価は、短いケアサイクルを回す場合に使いやすい運用例です。ただし、NPI-NHそのものが「必ず1〜2週間後に再評価する」と定めているわけではありません。再評価時期よりも、比較する際の対象期間と情報条件を明確にすることを優先します。

面接方法|正式質問と施設独自の聞き取りを混ぜない

NPI-NHの正式評価では、検査用紙に記載された質問をそのまま用いることが基本です。情報提供者が質問を理解できない場合は、意味を変えない範囲で別の言葉による説明ができますが、評価者が作った独自質問で置き換えて採点する方法とは区別します。

一方、「いつ起きたか」「どの場面だったか」「何がきっかけだったか」「どの対応で変わったか」といった情報は、介入を考えるうえで重要です。これらはNPI-NHの正式面接とは別の観察・運用情報として整理すると、尺度の結果とケア判断を混同しにくくなります。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

NPI-NH正式評価と施設運用情報の分け方
段階 行うこと 位置づけ
スクリーニング 正式用紙の質問に沿って症状の有無を確認する NPI-NH正式評価
詳細確認 該当する領域について正式用紙に沿って確認する NPI-NH正式評価
採点 頻度・重症度を評価し、領域得点を算出する NPI-NH正式評価
職業的負担 使用するプロトコルに含む場合に評価する NPI-NH正式評価
場面・誘因 時間帯、直前の出来事、対応、その後の変化を残す 施設の観察・運用情報
介入 評価結果と観察情報をもとにケア方針を検討する 評価後の臨床判断

記録方法|得点と具体的な観察情報を分けて残す

記録では、NPI-NHの尺度結果介入につなげるための観察情報の両方を残します。点数だけでは「どの場面を変えるか」が分かりにくく、具体例だけでは尺度として症状の変化を比較しにくいためです。

  • 評価条件:評価日、情報提供者、勤務帯、評価対象期間。
  • NPI-NH結果:該当領域の頻度、重症度、領域得点、必要時の職業的負担度。
  • 観察例:いつ・どこで・何の前後に・どのような行動がみられたか。
  • 対応と結果:どのように対応し、その後どう変わったか。
  • 次の介入:次の期間で重点的に変更・確認すること。
  • 再評価条件:次回時期と、そろえる評価対象期間・情報提供条件。

記録例:「夕食前の待機中に立ち上がりと大声がみられ、制止後に拒否が強くなった。NPI-NHは正式用紙で評価。次の期間は待機時間の短縮を主要な変更点とし、同じ評価対象期間で再確認する」のように、尺度としての結果と施設での介入メモを区別すると、多職種で経過を共有しやすくなります。

NPI-NH運用補助シート(PDF)

NPI-NHの結果を施設のケアへつなげやすくするため、観察ログ・対象領域・今回の方針・成功指標・次回条件を1枚で整理できるA4運用補助シートを用意しています。

このPDFはNPI-NHの公式検査用紙ではありません。正式なNPI-NHの面接・採点は、使用する正式用紙と利用条件を確認したうえで行ってください。このPDFは、評価後の観察情報、介入方針、再評価条件を整理するための当サイト作成の運用補助資料です。また、PDF内の「主担当+夜勤」「1〜2週」「1サイクル1変更」は施設運用の一例であり、NPI-NHの公式必須条件ではありません。

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多職種カンファ|得点だけで介入対象を決めない

NPI-NHの得点は、症状の重みや変化を共有する材料になります。ただし、最も得点が高い領域へ必ず介入すると機械的に決めるのではなく、施設でのケア判断では他の情報も合わせて考えます。

カンファでは、得点に加えて、本人・周囲の安全、本人への影響、生活への影響、職員への影響、変えられる誘因があるかを確認し、何から対応するかを決めます。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

NPI-NHの結果からケア方針へつなげる確認項目
確認 見ること カンファで決めること
安全性 転倒、自傷・他害、離棟などの危険 優先して対応する必要があるか
症状の変化 NPI-NHの領域得点と前回からの変化 継続して追う領域
本人への影響 苦痛、睡眠、食事、活動などへの影響 何を優先して軽減するか
職員への影響 職業的負担度や日常ケアへの影響 支援方法や体制調整が必要か
誘因 時間帯、環境、ケア手順、身体状態など 変更できる要素は何か

介入効果を振り返りやすくする目的では、主要な変更点を1つに絞る方法があります。ただし、これはNPI-NHの採点・実施ルールではありません。安全確保や急な身体状態の変化など、複数の対応が必要な場合は必要な対応を優先します。

再評価|対象期間と情報条件をそろえて変化を見る

再評価では総合点だけを見るのではなく、どの領域が、どの条件で、どのように変化したかを確認します。前回と情報提供者や対象期間が大きく異なる場合は、その違いも記録して解釈します。

  1. 評価対象期間をそろえる:前回が過去1週間なら、再評価でも同じ長さの期間を振り返る。
  2. 情報提供条件を記録する:誰から情報を得たか、勤務帯や担当状況を残す。
  3. 対象領域の変化を見る:総合点だけでなく、今回注目した領域を確認する。
  4. 具体的な行動も比較する:場面、頻度、対応後の変化などを確認する。
  5. 薬剤・身体状態の変化を残す:介入以外に変化した要因がないか確認する。

1〜2週間は、当サイトで短期的なケアサイクルを回す場合の目安です。NPI-NHの公式な再評価間隔ではありません。症状や介入内容、施設のカンファレンス周期などに合わせて設定してください。急な状態変化や安全上の問題がある場合は、予定した再評価日を待たず、必要な医学的評価や対応を優先します。

NPI-NH運用で避けたい5つの失敗

NPI-NHを施設で活用するときは、独自の工夫を増やすことより、正式評価と施設独自の観察・介入を混同しないことが重要です。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

NPI-NH運用で起こりやすい失敗と修正方法
場面 避けたいこと 修正方法
面接 独自の質問だけでNPI-NHを採点する 正式用紙に沿った面接と施設独自の観察質問を分ける
情報源 毎回違う人の印象を条件記録なしで比較する 情報提供者・勤務帯・対象期間を記録する
得点 総合点だけで介入を決める 領域ごとの変化と具体的な観察情報も確認する
職業的負担 頻度×重症度による総合点へ混ぜる 職業的負担度は別に集計・解釈する
再評価 「必ず1〜2週」が公式基準だと解釈する 施設の運用間隔とNPI-NHの評価対象期間を分けて考える

NPI-NHのよくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

Q1. NPI-NHは10領域と12領域のどちらを合計しますか?

NPI-NHのマニュアルでは、最初の10領域の領域得点を合計して総合点を算出することが基本とされています。睡眠・夜間行動や食欲・食行動などの神経栄養症状が特に重要な場合には、12領域の得点を合計する方法も示されています。経時比較では、どの領域を集計したかをそろえて解釈してください。

Q2. 質問をスタッフ向けに言い換えてもよいですか?

正式評価では、検査用紙に記載された質問をそのまま行うことが基本です。質問が理解されない場合には意味を変えない範囲で別の言葉による説明ができますが、評価者独自の質問で掘り下げてNPI-NHを採点する方法とは区別します。場面や誘因を詳しく聞く場合は、施設独自の観察情報として整理すると分かりやすくなります。

Q3. NPI-NHは1〜2週間ごとに再評価する尺度ですか?

「必ず1〜2週間ごと」という公式ルールではありません。NPI-NHでは過去1週間または別途定義した期間について評価し、その期間は用途によって設定できます。本記事の1〜2週間は、短期のケアサイクルを回す場合の施設運用例です。

Q4. 職業的負担度はNPI-NHの総合点に加えますか?

頻度×重症度によるNPI-NH総合点には加えません。職業的負担度を評価するプロトコルでは、専門職の仕事量、時間、負担などへの影響を別に評価し、総職業的負担度として分けて扱います。

次の一手|NPIとの違いと使い分けを確認する

NPI-NHの施設運用が整理できたら、情報提供者や職業的負担度の違いを含めてNPIとの関係を確認すると、どの尺度を選ぶか判断しやすくなります。

NPIとNPI-NHの違い・使い分けを見る


参考文献

  1. Cummings JL. Neuropsychiatric Inventory – Nursing Home Version (NPI-NH): Instructions for Use and Administration. 2009. NPI-NH manual
  2. Wood S, Cummings JL, Hsu MA, Barclay T, Wheatley MV, Yarema KT, Schnelle JF. The use of the Neuropsychiatric Inventory in nursing home residents: characterization and measurement. Am J Geriatr Psychiatry. 2000;8(1):75–83. doi:10.1097/00019442-200002000-00010
  3. Shigenobu K, Hirono N, Tabushi K, Ikeda M. Validity and reliability of the Japanese version of the Neuropsychiatric Inventory-Nursing Home Version (NPI-NH). Brain Nerve. 2008;60(12):1463–1469. PubMed
  4. Cummings JL, Mega M, Gray K, Rosenberg-Thompson S, Carusi DA, Gornbein J. The Neuropsychiatric Inventory: comprehensive assessment of psychopathology in dementia. Neurology. 1994;44(12):2308–2314. doi:10.1212/WNL.44.12.2308
  5. Cummings J. The Neuropsychiatric Inventory: development and applications. J Geriatr Psychiatry Neurol. 2020;33(2):73–84. doi:10.1177/0891988719882102
  6. npiTEST.net. What is the Neuropsychiatric Inventory? Accessed August 14, 2026. npiTEST.net

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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