
こんにちは!リハビリくんです!
こちらでは「加齢による呼吸筋低下の弊害」をキーワードに記事を書いていきます!
これまで、筋肉が衰えることは加齢による自然な現象であると考えられていました。しかし近年では、加齢だけでなく、低栄養や身体不活動、また各種疾患なども原因となって引き起こされることが明らかになってきております。
この筋肉が衰える現象は「サルコペニア」と呼ばれ、健康寿命延伸のために対策が必要なものとして、注目されています。リハビリテーション専門職の方々は、このサルコペニアを予防および改善させるため、運動療法などを処方して日々尽力していると思います。
このサルコペニアですが、四肢の筋力低下の印象が強いと思いますが、呼吸筋力にも大きな影響を及ぼしていることはご存知でしょうか?呼吸筋サルコペニアと呼ばれており、重大な弊害をもたらします。呼吸筋サルコペニアの理解を深めるためにも、この記事を読むことで下記の事項を理解できるようにしたいと思います!
- 呼吸器系の加齢変化について
- 呼吸筋力低下の特徴
- 呼吸筋サルコペニアってなに?
- 呼吸筋力が低下すると何が起こるのか
- 呼吸筋トレーニングについて知りたい
呼吸機能低下を認める症例のリハビリテーションを実施するうえで、様々な疑問を抱えることがあると思います。そんな方のために、こちらの記事をご用意しました。是非、最後までご覧になってください!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、特に関心が高い分野が「栄養」と「褥瘡」になります!
職場以外の活動としては埼玉県理学療法士会にて活動をさせて頂いております
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
最近は仕事をするにしても、育児を全うするにしても、自分の身体作りが重要ということを再認識しております。身体作りを効果的に行うためにはプロテイン等の健康補助食品が欠かせません。
最近頼りにしているのが、マイプロテインの元社長が立ち上げたサプリメント・プロテイン「Naturecan(ネイチャーカン)フットネス」になります。Naturecan(ネイチャーカン)のプロテインは他ブランドと比べても健康志向であり、安全性も高いといえると思います!
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加齢に伴う呼吸機能の低下
呼吸器系は加齢に伴い機能低下を引き起こす器官であり、呼吸器系の加齢変化は他臓器と比較しても大きく進行していきます。
呼吸器系の加齢による主な生理的変化として肺活量、予備吸気量、予備呼気量、努力性肺活量、一秒量の低下などが生じますが、それ以外で注目したいのは以下の4つになります。
- 呼吸筋の筋力低下:加齢に伴い呼吸筋(横隔膜・肋間筋)が低下し、換気が不十分になる恐れがあります
- 胸壁の硬化:肋軟骨が石灰化することで支持組織の弾力性が低下し、肋骨運動が制限されます
- 肺弾性収縮力の低下:肺弾性の低下により肺コンプライアンスが増大します
- 綿毛運動の低下:気道分泌物の運搬能力の低下により、分泌物が貯留し炎症を起こしやすくなります
加齢に伴い呼吸筋力が低下すると、労作性呼吸困難が出現しやすくなるため、活動量が低下し運動耐容能やADLが低下します。そのため、高齢者のリハビリテーションにおいては、呼吸器疾患の有無に関わらず、呼吸機能における評価や治療についての知識や技術が必要になります。
この記事では上記の1〜4の中でも特に身体機能やADLに直結して影響を及ぼしやすい呼吸筋の筋力低下についてまとめていきます。
高齢者の呼吸筋力低下の特徴
呼吸運動の主動作筋は横隔膜と肋間筋であり、横隔膜は吸気運動の約80%を担っています。横隔膜
を構成する筋組織はType I 繊維が55%、Type II a 線維が21%、Type II b が24%と遅筋線維が多く疲労しにくい特徴があります。
サルコペニアについては骨格筋量低下が1つの指標になりますが、呼吸筋力も四肢骨格筋と同様に加齢に伴い減少します。
横隔膜の筋活動の指標である経横隔膜圧、呼吸筋力計で計測された最大吸気口腔内圧(PImax)、最大呼気口腔内圧(PEmax)を用いて呼吸筋力を測定した結果、加齢により呼吸筋力は30%程度低下することが報告されております。
呼吸筋サルコペニアについて

呼吸筋を含む骨格筋の骨格筋機能不全には、「低下」と「疲労」の要素があります。呼吸筋力の低下は、加齢に伴う肺の構造的変化や機能的変化が影響しており、特に機能的変化は呼吸筋力に大きな影響を与えます。
加齢に伴う呼吸筋力低下のメカニズムは明らかではありませんが、骨格筋や呼吸筋の変化は低酸素、酸化ストレス、低栄養、全身性炎症、投薬、廃用などが関係している可能性が示唆されております。
四肢の骨格筋と同様に呼吸筋においても組織学的な筋線維の縮小や II 型筋線維の萎縮を伴った筋力低下が観察され、サルコペニアとの関連性も示唆されています。
AWGS2019を用いたサルコペニアの判定方法では、骨格筋量の減少が必須条件となり、骨格筋量の減少に加えて筋力低下もしくは身体機能低下が認められる場合にサルコペニアと判定します。また、骨格筋量減少、筋力低下、身体機能低下の3指標ともに該当する場合には重症サルコペニアと判定します。
この、骨格筋量や筋力低下については、単に四肢骨格筋のみではなく、呼吸筋にも生じていると近年注目され、「呼吸筋サルコペニア」というワードが注目されています。
日本リハビリテーション栄養学会では、AWGS2019によるサルコペニアの診断に加えて、呼吸筋力や呼吸筋量が低下した状態を呼吸サルコペニアと判定することと、その診断のためのアルゴリズムなどが提案されています。
サルコペニアを合併する高齢者は少なくなく、サルコペニアやフレイルは今後ますます社会的な問題になっていくことが予想されます。そのため今後、呼吸筋サルコペニアに対する検討は発展していくと考えられます。
運動に伴う呼吸筋疲労については、吸気筋代謝性反射という機序があり、運動中の吸気筋の疲労がトリガーとなり、交感神経活性が充進し、末梢骨格筋の血管収縮が促進されるメカニズムとなっております。その結果、酸素輸送の減少、運動筋の疲労、自覚的運動強度の増加が起こります。
AWGS2019については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【サルコペニア診断基準:最新版についての記事はこちらから】
呼吸筋力低下の弊害について
加齢に伴う吸気筋力の低下は1回換気量の低下、呼吸数の増加をきたし、労作時の呼吸困難が出現しやすくなります。
呼吸困難の存在により身体活動量は減少し、身体機能低下・運動耐容能低下・ADL低下を引き起こしていきます。
呼吸筋力については予後にも繋がる重要な指標になると考えられます。サルコペニアでない高齢者と呼吸筋サルコペニア(サルコペニア+呼吸筋力低下)と判定された高齢者を比較すると、後者の方が、握力・膝伸展筋力・歩行速度・椅子立ち上がり・バランス・手段的ADL・生活機能が有意に低下していることが報告されています。
呼吸筋トレーニングについて
息を吸ったり吐いたりする呼吸は、普段は無意識に行っていますが、人間が生きる上で欠かせない重要な動作です。加齢や疾患などにより呼吸筋が弱まることで、息切れ・息苦しさを感じます。呼吸の際に使う筋肉を鍛えることは、症状の緩和につながります。
呼吸筋トレーニングは、吸気筋を対象とした吸気筋トレーニング(IMT)と呼気筋を対象とした呼気筋トレーニング(EMT)に分類することができます。現時点では、臨床では主にIMTが一般的となっています。
IMTの方法は過換気法と吸気抵抗負荷法に分類されます。過換気法は流量型や容量型のインセンティプスパイロメータを用いて実施する方法で、主に肺を拡げることを目的に行います。吸気抵抗負荷法はスレッショルドなどの呼吸筋力トレーニング器具を用いて、呼吸筋力の増強を目的に行います。
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IMTについては、最大吸気圧 (PImax)と持久力を有意に高め、安静時ならびに運動時の呼吸困難感を有意に改善し、運動耐容能を高める傾向があることが示されております。
呼気筋トレーニング (EMT)は、最大呼気圧 (PEmax)が増加し、呼吸機能や換気機能、運動能力が向上し、呼吸困難が低下することなどが報告されています。
一方、EMT によって PEmax の増加を認めなかったとする報告や PEmax の増加以外の効果を認めなかったとも指摘されています。現状ですと、EMTに対する十分なエビデンスは不足している状況となっております。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「加齢による呼吸筋低下の弊害」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
加齢に伴う呼吸筋力の低下は運動耐容能、身体機能、ADL、QOLはもちろんのこと予後にも影響を与えます。そのため、高齢者のリハビリテーションにおいては呼吸筋の評価や治療に対する知識や技術は必要不可欠となります。
超高齢化社会となっていることや、サルコペニアを併存する高齢者が増加していることから、今後更に呼吸筋力への世間の関心は深まるものと推測されます。
今回、呼吸筋力の話をたくさんさせて頂きましたが、筋力増強には栄養管理も重要なポイントとなります。適切な呼吸筋トレーニングに栄養管理を交えることが、呼吸筋サルコペニアの予防・改善に必要となります。
栄養管理については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【栄養学と理学療法についての記事はこちらから】
参考文献
- 齊藤正和,作山晃裕,森沢知之,高橋哲也.加齢に伴う呼吸・循環・腎臓機能の変化.理学療法学.第48巻,第5号,2021年,p542-547.
- 荒井秀典.呼吸器疾患管理におけるフレイル、サルコペニアの意義.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2019年,第28巻,第2号,p206-211.