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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪
基礎代謝量(BMR)とは
まずはじめに、基礎エネルギー消費量(BEE)というワードよりも、基礎代謝量(BMR)というワードの方が馴染みがあると思いますが、基礎エネルギー消費量と基礎代謝量については同義となります。
基礎エネルギー消費量とは、生体が生命維持活動をするために最低限必要なエネルギーの量になります。具体的には、安静状態における呼吸や血液の循環、体内の生合成と分解、体温維持に要するエネルギーの量のことを指します。
また、基礎代謝におけるエネルギーの多くは筋肉で消費されます。そのため、筋肉の量が多くなるにしたがって基礎エネルギー消費量は高くなります。言いかえれば、体を動かす習慣やスポーツに取り組んで筋肉を維持していくことは、基礎代謝を維持することにもつながることになり、脂肪が付きにくい体質を作ることになるといえます。
基礎代謝と理学療法士の役割
基礎代謝は加齢や活動量の低下によって減少しやすく、廃用症候群やサルコペニアの進行と密接に関わります。理学療法士は運動介入を通じて筋量維持を支援することで、基礎代謝を高め、全身状態の安定化を図る役割を担います。
BMRの臨床応用
- 栄養管理の基準値として活用
- 廃用予防・筋力維持の効果判定
- サルコペニアやフレイルの早期予防に貢献
BMRの算出式
基礎代謝量(BMR)の代表的な算出法には、ハリス・ベネディクト方程式(1919 年発表、その後 1984 年に改訂)と、より国際的に広く用いられる Mifflin-St Jeor 式(1990 年発表)があります。
両者は身長・体重・年齢・性別を基盤とし、安静時のエネルギー消費量を予測します。近年の研究では、Mifflin-St Jeor 式が現代人の身体組成に適合しやすいとされ、臨床栄養の国際ガイドラインでも推奨されています。
理学療法士にとって、これらの算出式を理解することは、低栄養やサルコペニアの予防、運動処方に基づく筋量維持戦略を考えるうえで不可欠です。
ハリス・ベネディクト方程式
男性:66.47 + (13.75 × 体重) + (5 × 身長) - (6.76 × 年齢)
女性:665.1 + (9.56 × 体重) + (1.85 × 身長) - (4.67 × 年齢)
※体重:kg 身長:cm 年齢:歳
ハリス・ベネディクトの式(Harris-Benedict equation)は、基礎代謝量(BMR)を推定するために広く用いられてきた計算式です。1919 年に提唱され、体重・身長・年齢・性別を基に安静時のエネルギー消費量を予測します。その後 1984 年に改訂され、精度が高められました。
基礎代謝は 1 日の総エネルギー消費の大部分を占め、栄養管理やリハビリ計画の立案に欠かせない要素です。理学療法士にとっては、廃用症候群やサルコペニア患者の栄養必要量を推定する際に有用であり、運動療法との組み合わせで筋量維持や機能回復の方針決定に役立ちます。
近年は Mifflin-St Jeor 式の活用も増えていますが、歴史的に最も知られ、今も臨床現場で用いられる重要な指標です。
下記で Harris-Benedict の式の活用例をご紹介します。
症例 1:40 歳、男性 170 cm、70 kg
66.47 + [13.75 × 70] + [5.0 × 170] - [6.75 × 40] = 約 1,609 kcal
症例 2:20 歳、男性 170 cm、70 kg
66.47 + [13.75 × 70] + [5.0 × 170] - [6.75 × 20] = 約 1,744 kcal
Mifflin-St Jeor 式
男性:10 × 体重 + 6.25 × 身長 − 5 × 年齢 + 5
女性:10 × 体重kg + 6.25 × 身長 − 5 × 年齢 − 161
※体重:kg 身長:cm 年齢:歳
Mifflin-St Jeor式(1990)は、基礎代謝量(BMR)を推定するために広く用いられる算出式です。体重・身長・年齢・性別を変数としており、現代人の身体組成に適合しやすいと報告されています。
従来のハリス・ベネディクト方程式と比較して予測精度が高く、欧米を中心に国際的な臨床栄養のガイドラインでも推奨されています。理学療法士にとっても、リハビリ栄養の評価や運動処方における基礎データとして有用です。
基礎代謝量の平均値
基礎代謝量(BMR)は年齢とともに変化し、加齢による筋肉量の減少やホルモン分泌の低下に伴い徐々に低下していきます。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020)」によれば、男性では 20 歳代で約 1,660 kcal、70 歳代で約 1,335 kcal、女性では 20 歳代で約 1,316 kcal、70 歳代で約 1,097 kcalと報告されています。
【男性】
- 20 歳:1,660 kcal
- 30 歳:1,651 kcal
- 40 歳:1,594 kcal
- 50 歳:1,527 kcal
- 60 歳:1,470 kcal
- 70 歳:1,335 kcal
【女性】
- 20 歳:1,316 kcal
- 30 歳:1,297 kcal
- 40 歳:1,254 kcal
- 50 歳:1,211 kcal
- 60 歳:1,168 kcal
- 70 歳:1,097 kcal
男女ともに 10 年ごとに約 50 ~ 100 kcalずつ低下し、特に活動量が減少する中高年以降で顕著になります。理学療法士にとって、この基礎代謝量の変化を理解することは、栄養指導や運動介入を適切に組み合わせ、低栄養やサルコペニア予防につなげる上で不可欠です。
総エネルギー消費量(TEE)の求め方
総エネルギー消費量(Total Energy Expenditure:TEE)は、1 日に必要なエネルギー量を示す指標で、基礎代謝量(約 60 %)、食事誘発性熱産生(約 10 %)、身体活動量(約 30 %)から構成されます。
臨床では BEE(基礎エネルギー消費量)× 活動係数(AF)× ストレス係数(SF) により算出されます。
総エネルギー消費量 = 基礎エネルギー消費量(BEE) × 活動係数(AF)× ストレス係数(SF)
活動係数は安静度やリハビリ参加状況を反映し、ストレス係数は手術・感染症・熱傷などの侵襲度を加味します。
理学療法士は、患者の活動レベルを正確に評価し、適切な AF を設定することで、栄養管理チームに貢献できます。
また、ストレス係数を理解することで、廃用予防やサルコペニア対策に直結する運動処方を考慮できる点が重要です。TEE の適切な算出は、リハ栄養の実践に欠かせない基盤となります。
活動係数(Activity Factor:AF)
活動係数は、安静から日常生活動作、さらにリハビリテーションや労働に至る身体活動の強度を反映する数値です。TEE の中で変動が大きい因子であり、患者の運動量やリハ参加状況に応じて調整します。理学療法士がベッド上活動から機能訓練室での訓練までを評価することで、精度の高いエネルギー消費量の推定が可能になります。
- 代表的な活動係数
- 寝たきり(意識障害、JCS2~3桁):1.0
- 寝たきり(覚醒、JCS1桁):1.1
- ベッド上安静:1.2
- ベッドサイドリハビリテーション:1.2~1.4
- ベッド外活動:1.3
- 機能訓練室でのリハビリテーション:1.3~2.0
- 軽労働:1.5
- 中~重労働:1.7~2.0
ストレス係数(Stress Factor:SF)
ストレス係数は、外科的侵襲や炎症、感染、熱傷などにより代謝が亢進する度合いを反映する数値です。疾患や病態による代謝亢進は安静時消費エネルギーを大きく上回るため、SF を加味することが不可欠です。理学療法士も、創部痛や発熱の有無など臨床所見を把握し、多職種と連携してエネルギー需要を検討する必要があります。
- 代表的なストレス係数
- 術後3日間:手術の侵襲度によって1.1~1.8
- 骨折:1.1~1.3
- 褥瘡:1.1~1.6
- 感染症:1.1~1.5
- 熱傷:深達度と面積によって1.2~2.0
ハリスベネディクトの式 自動計算
ハリスベネディクトの計算については、そんなに難しくはありませんが手作業で計算するには、やや複雑なところがあります。そのため筆者の場合、栄養管理に関する Excel シートで管理しており、ハリスベネディクトの計算式も数式で組み込んでいます。
しかし、そういった作業も手間だとは思いますので、お気軽にハリスベネディクトの式を活用してみたい場合には、こちらの Web サイトに自動計算のツールが組み込まれています。このサイトでは基礎代謝量だけではなく、活動係数とストレス係数を入力することで、全消費エネルギー量まで算出できるようになっています。
ハリスベネディクトの式 問題点
ハリス・ベネディクトの式は基礎代謝量の推定に広く用いられてきましたが、いくつかの問題点が指摘されています。
第一に、この式は 20 世紀初頭の欧米人データを基盤としており、日本人を含むアジア人の体格や体組成に必ずしも適合しない点があります。そのため、日本人に適用するとエネルギー必要量を過大評価する傾向が報告されています。
第二に、算出後に用いる活動係数やストレス係数は科学的根拠が十分ではなく、算定者の主観に依存する部分が大きいという課題があります。さらに、同じ体重でも筋肉量と脂肪量を区別せずに扱うため、実際の代謝量との乖離が生じやすいことも問題です。
理学療法士は、これらの限界を理解した上で、栄養士や医師と連携し、間接熱量測定や体組成評価を補助的に活用しながら、より正確なエネルギー管理に努める必要があります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
ハリス・ベネディクトの式は、体重・身長・年齢・性別を基に基礎代謝量(BMR)を推定する代表的な方法です。基礎代謝量は生命維持に必要な最小限のエネルギー消費量であり、総エネルギー消費量の大部分を占めます。この式は栄養管理やリハビリ計画の基盤として広く活用され、活動係数やストレス係数を組み合わせることで 1 日の必要エネルギー量を算出できます。
一方で、日本人では過大評価の傾向や体組成を反映しにくい点が課題です。そのため理学療法士は、式の特徴と限界を理解し、運動介入や体組成評価を踏まえた栄養管理に多職種と連携して活用することが重要です。
リハビリテーションや運動により消費しているエネルギーを計算する方法にMetsという単位があります。Metsについては、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【運動強度を表す単位:METsについての記事はこちらから】
参考文献
- 田中茂穂.エネルギー消費量とその測定方法.静脈経腸栄養.Vol.24,No.5,2009,p5-11.
- 宮澤靖.各種病態におけるエネルギー、基質代謝の特徴と、 至適エネルギー投与量(高齢者および長期臥床患者).静脈経腸栄養.Vol.24 ,No.5,2009,p57-62.