改訂版 PGC モラールスケールとは?(主観的幸福感を 0〜17 点で捉える)
改訂版 PGC モラールスケール( Revised Philadelphia Geriatric Center Morale Scale )は、高齢者の主観的幸福感(モラール)を短時間で把握する質問紙です。身体機能が改善しても「気分」「孤独感」「老いの受け止め方」が追いつかない場面があり、そこを数値化できるのが強みです。
本記事では、臨床で使うための実施手順・採点の考え方(逆転)・解釈のコツを整理します。単回で結論を出すより、ベースライン → 介入 → 再評価で変化を見る運用が向いています。関連:評価ハブ|スケールと手順をまとめて引く
何を測る?3 つの側面(下位尺度)
改訂版( 17 項目 )は、回答を通じて心理的な落ち着き、老いへの態度、孤独・不満足感といった側面を捉える枠組みが示されています。評価の狙いは「診断」ではなく、主観的幸福感の輪郭を掴み、介入の仮説につなげることです。
実務では、合計点に加えて「どの側面が下がっているか」をメモしておくと便利です。例えば、孤独感が強いなら社会参加や役割、老いへの態度がつらいなら成功体験の積み上げや環境調整、といった具合に次の一手が見えやすくなります。
いつ使う?おすすめの場面
改訂版 PGC は、回復期・地域・通所・施設など場面を選ばず使いやすく、身体機能評価だけでは拾いにくい「生活の満足感」を補えます。特に、退院前後の心理的適応、活動量や外出の増減に伴う気分変化、社会参加を促す介入の前後で有用です。
一方で、急性増悪・せん妄・強い疲労などで回答が不安定なときは、実施タイミングの調整が必要です。測れない状況を無理に数値化するより、「今は測定条件が整わない」ことを記録しておく方が臨床的に誠実です。
実施前の準備(対象・環境・中止の目安)
対象は、質問内容を理解し、二択で自己回答できる方が基本です。視力低下や疲労がある場合は読み上げ形式で負担を下げます。家族同席の場合は、本人の回答を優先することを先に共有しておくとブレが減ります。
中止や延期を考える目安は、強い眠気・疼痛・呼吸苦、注意の持続が難しい状態、強い不安や涙が続く状況などです。心理面の評価ほど「今のコンディション」に左右されるため、条件を揃える意識が重要です。
実施手順(迷わない 5 ステップ)
所要時間は目安として 3〜5 分です。短時間だからこそ、導入を毎回同じ型にすると、再評価での比較がしやすくなります。評価者の反応(同意・励まし)が強いほど誘導になりやすいので、淡々と進めます。
①目的を一言(気分や満足感の確認)→ ②回答形式(二択・迷ったら近い方)→ ③休憩の許可(疲れたら止める)→ ④淡々と進行(誘導しない)→ ⑤最後に一言メモ(自由記述は点数とは別枠)という流れが扱いやすいです。
採点の考え方(逆転で迷わない)
合計点は 0〜17 点で、一般に高いほどモラールが高いと解釈します。採点は「高モラール側の回答を 1 点」に揃える考え方ですが、項目には表現上の都合で逆方向になるものが含まれます。
現場で事故が多いのが逆転の取り違いです。運用としては、採点ルールを固定したチェック表を使い、初回は 30 秒だけ見直し(逆転の取り違いがないか)を習慣化すると安定します。
解釈のコツ(点数だけで決めない)
改訂版 PGC は「良い/悪い」を決める道具ではなく、状態像を捉える道具です。単回の点数よりも、同じ条件での経時変化(介入前後)と、どの側面が下がっているかに注目します。
点数が上がった(下がった)ときは、活動量・外出・役割・疼痛・睡眠など、同時に起きている変化を 1〜2 個だけ併記すると、記録の説得力が上がります。
現場の詰まりどころ(よくある失敗)
詰まりやすいのは、①二択で迷って止まる、②本音と建前が混ざる、③家族が横から答えようとする、の 3 つです。ここで評価者が焦って誘導すると、再評価で比較できなくなります。
対策は、①迷ったら近い方で良いと先に伝える、②相づちは最小限にする、③本人回答を優先することを冒頭で共有する、の 3 点です。条件を整えるだけで、スケールはかなり使いやすくなります。
よくある誤りと対策(早見表)
| よくある誤り | 起きやすい影響 | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 逆転の取り違い | 合計点が実態と逆になる | 採点表を固定し、初回は見直しを入れる | 「採点表に基づき採点」など手順を一言残す |
| 誘導(同意・励まし) | 回答が良い方向に寄る | 淡々と読み上げ、相づちは最小限 | 実施条件(読み上げ/自己記入)を記録 |
| 家族が代答する | 主観が本人でなくなる | 本人回答を優先すると先に共有 | 同席の有無(同席あり/なし)を残す |
| 疲労・疼痛の強い時間帯 | 否定的回答が増えやすい | 実施タイミングを固定(午前/食後など) | 時刻・体調(痛み、息切れ)を短くメモ |
記録テンプレ(コピペ用:項目文なし)
再評価で比較するために、実施条件と合計点が同じ枠で残るテンプレがあると便利です。下位尺度の内訳は、施設の採点表に合わせて運用してください(ここでは記録欄のみを用意しています)。
| 実施日 | 合計( 0〜17 ) | 下位尺度メモ | 実施条件 | 自由記述( 1 行 ) |
|---|---|---|---|---|
| 20XX / XX / XX | 点 | (例)孤独感が目立つ/老いの受け止めがつらい | 午前・読み上げ・同席なし | (例)外出が減って不安が強い |
| 20XX / XX / XX | 点 | (例)落ち着きが改善 | 午前・読み上げ・同席なし | (例)デイで役割ができた |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. どのタイミングで実施するのがよいですか?
A. 初回評価でベースラインを取り、介入の節目で再評価するのがおすすめです。心理面は日内変動があるため、可能なら同じ時間帯(午前/午後、食後など)で条件を揃えると解釈が安定します。
Q2. 認知機能が低い方でも使えますか?
A. 二択で自己回答できる範囲なら実施できますが、回答の安定性が担保できない場合は延期や別指標の併用を検討します。まずは注意の持続と意思表出の可否を確認し、無理に点数化しない判断も重要です。
Q3. 点数が下がったとき、どう記録するとよいですか?
A. 合計点だけでなく、同時期の変化(活動量、外出、役割、疼痛、睡眠など)を 1〜2 個だけ併記すると、介入の仮説につながります。「どの側面が落ちたか」を短く書くのも効果的です。
Q4. ほかの評価と併用するなら何がおすすめですか?
A. 目的が「活動・外出の変化」なら運動機能や活動量の評価と組み合わせると読みやすくなります。たとえば MFS( Motor Fitness Scale ) のような指標とセットにすると、心理面と身体面の変化を同じカルテで説明しやすくなります。
おわりに(条件を揃えて「変化」を拾う)
改訂版 PGC モラールスケールは、実施条件を揃える → 採点ミス(逆転)を防ぐ → 合計と側面で解釈する → 介入仮説を更新する → 再評価するというリズムで回すと、主観的幸福感の変化を臨床記録に落とし込みやすくなります。
評価が整理できたら、面談準備チェックと職場評価シートで環境面も一緒に整えると動きやすくなります。こちら(ダウンロード)からまとめて確認できます。
参考文献
- Lawton MP. The Philadelphia Geriatric Center Morale Scale: a revision. J Gerontol. 1975;30(1):85-89. PubMed
- Morris JN, Sherwood S. A retesting and modification of the Philadelphia Geriatric Center Morale Scale. J Gerontol. 1975;30(1):77-84. DOI: 10.1093/geronj/30.1.77
- Liang J, Bennett J, Akiyama H, Maeda D. The structure of PGC Morale Scale in American and Japanese aged: A further note. J Cross-Cultural Gerontol. 1992;7(1):45-68. DOI: 10.1007/BF00116576
- Liang J, Bollen KA. The structure of the Philadelphia Geriatric Center Morale scale: a reinterpretation. J Gerontol. 1983;38(2):181-189. PubMed
- Ma L, Green KE, Cox EO. Stability of the Philadelphia Geriatric Center Morale Scale: A multidimensional item response model and Rasch analysis. J Appl Gerontol. 2010;29(4):475-493. DOI: 10.1177/0733464809339623
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


