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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪
栄養スクリーニングとは

栄養スクリーニングは、対象者に低栄養のリスクがあるかどうかを簡便に把握する一次的評価です。問診、体重減少の有無、食欲や摂取量の変化、BMIなどを用いて短時間で実施できます。
MNA®-SF、MUST、NRS-2002 などが代表的で、医療・介護現場で汎用されます。非侵襲的で短時間に行えるため、「誰に詳細な評価(アセスメント)が必要かを振り分ける」役割を担います。
栄養アセスメントとは
栄養アセスメントは、スクリーニングでリスクが示唆された対象に対して行う詳細かつ包括的な評価です。
身体計測(体重・筋肉量・皮下脂肪厚)、生化学的検査(アルブミン・CRP)、食事調査、身体機能評価などを組み合わせ、栄養障害の診断や介入方針の決定を行います。
時間やコスト、専門知識を要しますが、介入計画を立案するためには不可欠です。
栄養評価の主観的評価と客観的評価

リハビリテーションの臨床において、栄養状態の正確な把握は回復過程の根幹を支える要素です。特にサルコペニアやフレイル、嚥下障害を有する高齢者では、低栄養が運動機能や ADL に直結します。栄養評価には「主観的評価」と「客観的評価」があり、それぞれの特徴を理解し、適切に使い分けることが重要です。
主観的評価
主観的評価は、臨床医や医療従事者が面接や診察所見をもとに行う総合的な判断です。体重減少や食欲不振、消化器症状、身体活動量の変化といった病歴の聴取に加え、筋肉や皮下脂肪の減少、浮腫などの身体所見を総合して低栄養の有無を判定します。

SGA(主観的包括的栄養評価)が代表例で、特別な検査を要せず、短時間で実施可能な点が利点です。一方で、評価者の経験や観察力に依存するため、一定のトレーニングが必要となります。リハ専門職は、歩行時の疲労感、筋力低下、食事動作の変化といったリハ場面での観察を組み込むことで、より精度の高い主観的評価が可能です。
SGA で低栄養と判定された患者については、より詳細な評価が必要となります。このため、SGA のつぎの段階の栄養評価では、さまざまな計測値や検査値から、患者の栄養障害の程度や型、不足している栄養素の種類などを評価します。
このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【主観的包括的栄養評価:SGAについての記事はこちらから】
ODA(客観的栄養評価)
客観的評価は、数値データに基づいて栄養状態を明確に示す方法です。身体計測、生化学検査、免疫能、機能的指標などを総合して判定します。
身体計測
- 理想体重(IBW:ideal body weight):理想体重の算出方法は、身長(m)× 身長(m)×22
- BMI:現体重(kg) ÷ [身長(m)] 2
- %理想体重:現体重kg ÷ 理想体重kg × 100
- %通常時体重:現体重kg ÷ 通常時体重kg × 100
- 体重減少率:(健常時体重kg – 現体重kg)÷ 健常時体重kg × 100 ※身体計測における栄養評価については、体重減少率が最も重要な評価項目になります。
皮下脂肪厚測定
- 上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)
- 上腕筋囲(AMC):骨格筋量との相関が高く、上腕周囲長(AC)と上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)から算出します 上腕筋囲(AMC)= 上腕周囲長(AC) -π×上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)
血液・尿生化学検査
- 血清タンパク(総タンパク・アルブミン・R T P )
- 血漿アミノ酸分析(BCAA/AAA=Fischer比)
- 血漿脂質(総コレステロール・トリグリセライド)
- その他(クレアチニン身長係数・尿中3-メチルヒスチジン排泄量・尿素窒素排泄量・窒素バランス・血中微量栄養素)
免疫能
総リンパ球数 = 白血球数 × % リンパ球 ÷ 100で算出することができます。900/mm 3 以下で高度栄養不良と判定します。感染では、値が増大するため、栄養状態が反映されない場合があります。
機能性の評価
握力や呼吸筋力などが評価指標として用いられています。
栄養評価に身体計測は不可欠
リハビリテーションの現場では、低栄養は筋力低下やサルコペニア、嚥下障害を悪化させ、ADL の制限や転倒リスク増大にもつながります。そのため、栄養状態を正しく把握することは機能回復を支える基盤となります。数ある評価方法の中でも、身体計測は栄養評価の出発点として必須のプロセスです。
身体計測が果たす役割
身体計測は、簡便・安価・非侵襲的に行える栄養評価の基本指標です。体格や体組成の変化を直接反映し、対象者すべてに適用可能であるため、最初に行うべき評価手段とされています。
特にリハビリ場面では、栄養不良が運動機能低下の背景にあるかどうかを確認するうえで重要な情報源となります。
主要な身体計測項目
- 体重変化
- 急激な減少は栄養状態悪化のサインです。
- 以下の基準は臨床で特に重視されます。
- 1 週間で 2 % 以上減少
- 1 ヶ月で 5 % 以上減少
- 3 ヶ月で 7.5 % 以上減少
- 6 ヶ月で 10 % 以上減少
- BMI(Body Mass Index)
- 栄養不良(<18.5)だけでなく、肥満(>25.0)も栄養障害として考慮されます。
- 日本人における至適BMIは 22 前後とされており、理想体重算定にも用いられます。
- %UBW(%通常体重)、%IBW(%理想体重)
- 過去の健康時や理想値と比較することで、栄養状態の程度を把握できます。
- 皮下脂肪厚(TSF)・上腕筋囲(AMC)
- 脂肪量や筋肉量の指標として有効で、サルコペニア評価にも活用されます。
身体計測の限界と補完すべき視点
身体計測は栄養評価の基盤ですが、短期的な栄養変化の検出には限界があります。例えば急性期の炎症や浮腫は体重や BMI を過大評価する可能性があります。
そのため、生化学検査や免疫能評価と組み合わせ、多角的に栄養状態を判定する統合的アプローチが求められます。
リハ専門職が身体計測を活かすポイント
- 理学療法士
- 体重減少と筋力低下の関連を捉え、運動療法や転倒予防に反映
- 作業療法士
- 日常生活動作(食事・調理動作)の変化を背景に身体計測結果を解釈
- 言語聴覚士
- 嚥下障害による栄養不良の可能性を、体重減少や BMI と照らし合わせて評価。
リハビリ職種は身体機能・生活機能と栄養状態を結びつけて理解できるため、身体計測を軸に多職種連携を推進できる存在といえます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
栄養評価は、まず栄養スクリーニングで低栄養リスクの有無を簡便に把握し、必要に応じて詳細な栄養アセスメントへと進みます。スクリーニングは問診や BMI などで誰でも実施可能ですが、アセスメントは身体計測・生化学検査を組み合わせて専門的に行う包括的評価です。
また評価方法は、臨床所見や病歴を総合する主観的評価(SGA)と、体重・血液データなど定量的に判定する客観的評価(ODA)に大別されます。両者を適切に組み合わせることで、精度の高い栄養状態の把握が可能となり、リハビリテーション効果の最大化に寄与します。
今回は栄養評価について全体を包括的に述べましたが、実際の栄養スクリーニングやアセスメントについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【栄養スクリーニングツールについての記事はこちらから】
参考文献
- 溝上祐子,石川環.栄養スクリーニング・アセスメント・栄養管理の概要.日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌.17巻,1号,2013,p1-10.
- 関根里恵.臨床栄養学総論・栄養アセスメント.心身医.Vol.58,No.1,2018,p80-87.