JSSの評価方法|計算手順と再評価のコツ
JSS(Japan Stroke Scale)は、脳卒中の神経症候を重み付きで数値化し、重症度や経時変化を共有するための評価尺度です。各項目の区分を選ぶだけではなく、対応する加重値を合計し、最後に定数の「−14.71」を加えてスコアを算出します。
この記事では、JSSの項目構成、計算手順、スコアがマイナスになる理由、記録方法、再評価で条件をそろえるコツを整理します。公式調査票の項目文や選択肢の全文は転載せず、臨床で迷いやすい判断と運用に絞って解説します。
脳卒中の重症度評価を選ぶところから確認したい方へ
NIHSS・CNS・JSSの使い分けで、それぞれの役割と選び方を整理しています。
JSSとは脳卒中の重症度を重み付きで表す尺度です
JSSは、意識、言語、無視、視野、眼球運動、瞳孔、顔面麻痺、足底反射、感覚、運動といった神経症候を評価し、それぞれに設定された加重値から総合スコアを算出します。
各項目を単純に足す尺度ではなく、症候の重症度への影響を考慮した重み付きの計算を行う点が特徴です。スコアは、単回の重症度把握だけでなく、同じ条件で繰り返したときの経時変化を共有する目的にも使用できます。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Japan Stroke Scale |
| 主な目的 | 脳卒中の神経学的重症度を定量化する |
| 評価領域 | 意識、言語、無視、視野、眼球運動、瞳孔、顔面麻痺、足底反射、感覚、運動 |
| 計算方法 | 各項目の加重値を合計し、定数−14.71を加える |
| スコアの方向 | 数値が大きいほど重症度が高い |
| 実務上のポイント | 単回値だけでなく、評価条件と前回からの変化を残す |
JSSだけで治療方針や安全性を判断するものではありません。
画像所見、バイタルサイン、嚥下機能、ADL、発症経過、薬剤や鎮静の影響などと合わせて評価します。
JSSで評価する10領域
JSSは、公式調査票に沿って10領域を評価します。項目の順番を固定して実施すると、確認漏れを防ぎやすくなります。
| 評価領域 | 主な観察内容 | 記録時のポイント |
|---|---|---|
| 1.意識 | 覚醒状態、呼びかけや刺激への反応 | GCSまたはJCSのどちらを用いたかを残す |
| 2.言語 | 口頭命令、呼称、復唱、会話の成立 | 失語、構音障害、聴力、注意の影響を分ける |
| 3.無視 | 線分二等分や行動上の空間的な偏り | 視野欠損との違いが分かる所見を添える |
| 4.視野 | 同名性視野欠損や半盲の有無 | 左右と確認方法を記録する |
| 5.眼球運動 | 側方視の制限、共同偏視 | 不十分な側方視と固定した偏視を区別する |
| 6.瞳孔 | 瞳孔径、左右差、対光反射 | 片側か両側か、観察時の条件を残す |
| 7.顔面麻痺 | 鼻唇溝や口角の左右差 | 安静時と動作時の所見を混同しない |
| 8.足底反射 | Babinski反射やChaddock反射 | 左右と反応の有無を記録する |
| 9.感覚 | 感覚障害の有無と程度 | 注意低下や失語による反応の不確かさを残す |
| 10.運動 | 手、上肢、下肢の運動機能 | 疼痛、可動域制限、固定具、失行の影響を分ける |
実際の採点では、日本脳卒中学会が公開している最新の公式調査票を使用してください。項目文や判定区分を記憶だけで採点すると、加重値の選択を誤る可能性があります。
日本脳卒中学会「Japan Stroke Scale調査票(第5版)」を確認する
JSSの計算手順は3ステップです
JSSの計算では、採点と計算を分けて進めることが重要です。各項目を確認しながら暗算するのではなく、区分をすべて決めてから加重値を合計し、最後に定数を処理します。
- 公式調査票で各項目の区分を選ぶ
- 選んだ区分に対応する加重値を合計する
- 加重値合計から14.71を引く

JSSスコア = 各項目の加重値合計 − 14.71
公式調査票では「CONSTANT −14.71」と記載されています。そのため、「−14.71を加える」と「14.71を引く」は同じ計算です。
計算例
各項目の加重値を合計した結果が20.00だった場合、JSSスコアは次のように計算します。
20.00 − 14.71 = 5.29
計算途中で定数を入れると、符号や小数点のミスが起こりやすくなります。「加重値合計」と「最終スコア」の欄を分けて記録する方法が実務的です。
| 順番 | 確認すること | 避けたい方法 |
|---|---|---|
| 1 | 全項目の区分を先に確定する | 評価しながら加重値を暗算する |
| 2 | 対応する加重値だけを並べる | A・B・Cの記号だけを足す |
| 3 | 加重値の合計を確認する | 途中で定数を混ぜる |
| 4 | 最後に14.71を引く | 14.71を足す、または符号を省略する |
| 5 | 前回値と評価条件を確認する | 最終スコアだけを記録する |
JSS-MやJSS-Hとは定数が異なります。
JSSは−14.71、JSS-Mは+14.60、JSS-Hは+14.00です。別の調査票の定数を混同しないようにしてください。
意識はGCSまたはJCSの条件をそろえて評価します
JSSの最初の領域は意識です。公式調査票にはGCSとJCSが記載されており、該当する区分から加重値を選びます。
経時変化を比較するときは、評価者ごとにGCSとJCSが入れ替わらないよう、施設内で使用方法を統一します。同一患者では、前回と同じ尺度、同じ刺激方法、同じ時間帯に近い条件で再評価すると比較しやすくなります。
- 鎮静薬や睡眠薬の変更
- 覚醒に日内変動がある時間帯
- 発熱、低酸素、低血糖などの全身状態
- 失語や聴力低下による反応の分かりにくさ
- 疲労や睡眠不足
これらの影響がある場合は、点数だけでなく評価時の条件も記録します。意識状態に急な変化がある場合は、JSSの採点を続けることよりも、施設の緊急対応手順に沿った報告と医学的評価を優先します。
項目別に迷いやすい観察ポイント
JSSでは、症候そのものだけでなく「反応が得られない理由」を切り分ける必要があります。特に言語、無視、視野、運動は、複数の要因が重なりやすい領域です。
言語は理解と表出を分けて考える
言語項目では、口頭命令、呼称、復唱、会話の成立を確認します。反応が不十分な場合は、失語だけでなく、構音障害、聴力低下、注意障害、意識障害、発語失行の影響も考えます。
記録には「言語障害あり」だけでなく、理解と表出のどちらが主に難しかったかを短く残すと、多職種で共有しやすくなります。
無視と視野欠損を分けて観察する
半側空間無視と視野欠損では、どちらも一側への探索が少なく見えることがあります。視野の確認と空間探索を分けて行い、「見えていない」のか「注意が向いていない」のかを整理します。
一度の課題だけで決めず、食事、整容、車椅子操作、周囲への反応など、行動上の所見も合わせて記録します。
眼球運動・瞳孔・顔面麻痺は左右差を明確にする
眼球運動では、側方視が不十分なのか、共同偏視によって反対側へ動かせないのかを確認します。瞳孔は、大きさ、左右差、対光反射を観察し、顔面麻痺は鼻唇溝や口角の状態を確認します。
眼球偏位や瞳孔所見に新しい変化がある場合は、評価点の変化だけで完結させず、速やかに医療チームへ共有します。
感覚・運動は外乱を先に切り分ける
運動項目は、手、上肢、下肢を公式票の方法に沿って確認します。動作ができない場合でも、麻痺以外に疼痛、関節可動域制限、固定具、点滴ルート、失行、注意低下などが影響していることがあります。
感覚評価でも、失語や意識障害があると回答の信頼性が下がります。反応が一定しない場合は、無理に断定せず、評価可能性と反応の再現性を記録します。
JSSスコアの見方
JSSは、数値が大きいほど神経学的重症度が高いと解釈します。ただし、特定の点数だけで重症・軽症を機械的に区切るのではなく、初回値、前回値、項目別の変化、臨床所見を合わせて判断します。
特に実務で重要なのは、最終スコアが変化したときに「どの項目が変わったか」を確認することです。同じスコア変化でも、意識、瞳孔、眼球偏位、運動など、変化した領域によって臨床的な意味は異なります。
| 確認順 | 確認内容 |
|---|---|
| 1 | 前回と評価条件がそろっているか |
| 2 | 最終スコアがどの程度変化したか |
| 3 | どの評価項目が変化したか |
| 4 | 画像所見や全身状態に変化があるか |
| 5 | 嚥下、ADL、安全管理へどのように影響するか |
JSSスコアがマイナスになる理由
JSSでは、各項目の加重値合計から14.71を引くため、軽症例では最終スコアがマイナスになることがあります。計算結果がマイナスでも、それだけで計算ミスとは限りません。
マイナスになった場合は、次の3点を確認します。
- 公式調査票の加重値を正しく選んでいるか
- 加重値の合計が正しいか
- 最後に14.71を引いているか
確認後もマイナスであれば、その値をそのまま記録します。0点へ置き換えたり、絶対値に変更したりしないでください。
再評価では点数より先に条件をそろえます
JSSを経時的に使用する場合、評価条件の違いがスコアへ影響します。前回と異なる状態で評価したにもかかわらず、数値だけを比較すると、神経症候の変化と外乱の影響を区別できません。
再評価でそろえる条件
- 評価時刻:可能な範囲で同じ時間帯に近づける
- 覚醒条件:睡眠直後、食後、鎮静後などの違いを残す
- 姿勢:臥位、ベッドアップなどの条件をそろえる
- 補助具:装具、固定具、酸素、点滴ルートの状態を残す
- 声かけ:指示の言い方や刺激方法を統一する
- 疼痛・疲労:評価に影響する外乱の有無を記録する
状態変化を疑う場合は、定期的な再評価の予定を待つのではなく、施設の対応手順や医師の指示に沿って評価と報告を行います。固定された再評価間隔だけで運用しないことが重要です。
再評価の実務ポイント
「前回と何が同じで、何が違ったか」を1行残すだけでも、スコア変化の解釈がしやすくなります。
カルテ記載はスコア・内訳・条件・対応を残します
JSSの記録では、最終スコアだけでなく、変化した項目と評価条件を一緒に残します。以下は、施設の記録様式に合わせて調整できる記載例です。
JSS記載例
JSS:〇点。前回〇点、前回比〇点。
評価条件:〇時〇分、臥位、覚醒良好。疼痛・鎮静変更なし。前回と同条件で実施。
項目内訳:意識〇、言語〇、無視〇、視野〇、眼球運動〇、瞳孔〇、顔面麻痺〇、足底反射〇、感覚〇、運動〇。
変化:前回と比べて〇〇項目が変化。〇〇の影響を考える。
対応:主治医・看護師へ共有。安全管理を〇〇へ変更し、〇時に再評価予定。
最低限残したい5項目
- 最終スコア
- 前回値と変化量
- 変化した評価項目
- 評価時刻と外乱
- 報告・再評価・安全管理などの対応
「JSS〇点」のみでは、後からスコアが変化した理由を確認できません。申し送りやカンファレンスで使用する場合も、主な変化を1行添えると判断を共有しやすくなります。
JSS記録シートPDF
JSSの加重値、評価条件、前回値、変化した項目をまとめて残せるA4記録シートです。初回評価と再評価を同じ形式で記録したいときに使用してください。
JSS記録シートのプレビューを開く
本PDFは記録を補助するためのシートです。実際の評価と採点は、日本脳卒中学会が公開している公式調査票を確認して行ってください。
JSS自動計算ツール
各項目の区分を入力すると、対応する加重値と定数を反映してJSSスコアを計算できます。手計算後の確認や、定数の符号ミスを防ぎたいときに使用してください。
JSS自動計算ツールのプレビューを開く
ツールの結果だけをカルテへ転記するのではなく、公式票の選択区分、評価条件、変化した項目も一緒に記録してください。
JSS評価でよくあるミスと回避策
JSSの運用では、計算ミスだけでなく、条件の違いや症候の取り違えが再現性を下げます。起こりやすい失敗と対策を整理します。
| よくあるミス | 問題点 | 回避策 |
|---|---|---|
| 定数の符号を間違える | 加重値合計に14.71を足してしまう | 加重値をすべて合計した後、最後に14.71を引く |
| JSS-MやJSS-Hと混同する | 別スケールの定数や項目を使用する | 調査票名と定数を計算前に確認する |
| 最終スコアだけを記録する | どの症候が変化したか分からない | 変化した項目と条件を1行残す |
| 無視と視野欠損を混同する | 探索の偏りを一律に無視と判断する | 視野確認と空間探索を分けて行う |
| 運動低下をすべて麻痺と判断する | 疼痛、失行、可動域制限などを見落とす | 神経症候以外の外乱を先に確認する |
| 評価条件が毎回異なる | スコア変化の原因を比較できない | 時刻、姿勢、覚醒、声かけ、補助具を残す |
| マイナススコアを0へ変更する | 公式の計算結果と異なる値になる | 計算を再確認し、正しければマイナスのまま記録する |
| 点数だけで悪化を判断する | 臨床的に重要な変化を見誤る | 項目内訳、全身状態、画像、嚥下、ADLと統合する |
JSSに関するよくある質問
JSSの点数がマイナスになることはありますか?
あります。JSSは各項目の加重値合計から14.71を引くため、軽症例では最終スコアがマイナスになることがあります。加重値と計算式を確認し、正しい結果であれば0へ変更せず、そのまま記録します。
JSSではA・B・Cを単純に点数化して足しますか?
単純には足しません。各項目で選んだ区分に対応する加重値を公式調査票で確認し、その加重値を合計します。最後に定数の−14.71を加えてスコアを算出します。
JSSとNIHSSはどのように使い分けますか?
JSSは、神経症候を重み付きの数値としてまとめ、重症度や経時変化を共有する場面に向いています。NIHSSは、神経症候を項目別に詳しく分けて共有する場面に向いています。尺度の優劣ではなく、評価の目的に合わせて選びます。
JSS-MやJSS-Hと同じ計算方法ですか?
各項目の加重値と定数が異なります。JSSは−14.71、JSS-Mは+14.60、JSS-Hは+14.00です。調査票と計算ツールを混同しないようにしてください。
再評価はどのくらいの頻度で行いますか?
一律の間隔ではなく、病期、病状、治療内容、施設の手順、医師の指示に合わせます。定期評価に加えて、意識、瞳孔、眼球偏位、言語、運動などに変化を認めた場合は、必要な報告と医学的評価を優先します。
スコアが変化したら、何を最初に確認しますか?
最初に、前回と評価条件がそろっているかを確認します。次に、どの項目が変化したか、全身状態や薬剤の影響がないか、嚥下やADL、安全管理へ影響する変化かを整理します。
まとめ
JSSは、脳卒中の神経症候を重み付きで数値化する評価尺度です。各項目の区分を公式調査票で選び、対応する加重値を合計した後、最後に14.71を引いてスコアを算出します。
- 公式調査票で区分と加重値を確認する
- 加重値をすべて合計してから14.71を引く
- 軽症例ではスコアがマイナスになることがある
- 最終スコアだけでなく、項目内訳と評価条件を残す
- 再評価では時刻、覚醒、姿勢、声かけなどをそろえる
- 状態変化時は点数より報告と医学的評価を優先する
JSSを「計算して終わる尺度」にせず、前回値、変化した項目、評価条件、対応まで一緒に記録することで、申し送りや多職種間の判断に活用しやすくなります。
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参考文献
- Gotoh F, Terayama Y, Amano T, et al. Development of a novel, weighted, quantifiable stroke scale: Japan Stroke Scale. Stroke. 2001;32(8):1800-1807. doi:10.1161/01.STR.32.8.1800
- 日本脳卒中学会 Stroke Scale委員会. Japan Stroke Scale調査票(第5版). 日本脳卒中学会. 公式PDF
- 日本脳卒中学会 Stroke Scale委員会. 脳卒中運動機能障害重症度スケール調査票(JSS-M). 日本脳卒中学会. 公式PDF
- 日本脳卒中学会 Stroke Scale委員会. 脳卒中高次脳機能スケール(JSS-H). 日本脳卒中学会. 公式PDF
- Amano T. Japan stroke scales and its application for stroke. Rinsho Shinkeigaku. 2002;42(11):1173-1175. PMID:12784697
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設しました。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

