【EIH:疼痛抑制効果】運動による痛み改善【リハビリテーション】

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身体・運動機能
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この記事の内容
  1. この記事は「EIH:疼痛抑制効果」をキーワードに内容を構成しています。
  2. EIH(Exercise-Induced Hypoalgesia:運動誘発性疼痛抑制)は、運動が一時的に痛みを軽減させる生理学的メカニズムを指します。
  3. 中枢神経系における内因性オピオイドやセロトニンの関与が報告されており、慢性疼痛患者に対するリハビリテーション戦略として注目されています。
  4. 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が EIH の作用機序や運動処方を理解することで、疼痛緩和と機能改善を両立させた介入が可能となります。
  5. 本記事では EIH の特徴と臨床応用を解説します。
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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪

リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 9 月時点:186 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリ等)
  4. 講師活動(脳卒中、褥瘡等をテーマに複数回講演)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級
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EIH(疼痛抑制効果)とは

近年、運動によって侵害刺激に対する痛覚感受性が一時的に低下する現象が報告されています。この現象は Exercise-Induced Hypoalgesia(EIH:運動誘発性疼痛抑制) と呼ばれ、疼痛マネジメントの分野で注目されています。

EIH の発生機序は完全には解明されていませんが、内因性疼痛調節系の関与が有力視されています。特に、脳幹から脊髄にかけて働く下行性疼痛抑制系や、内因性オピオイド(エンドルフィン、エンケファリンなど)の放出が関与するとされます。また、運動による心拍数や呼吸の変化、交感神経活動の亢進も痛覚閾値を上昇させる要因と考えられています。

運動がもたらす効果として、「筋力向上」「持久力改善」「肥満予防」「気分の改善」などが一般的に知られていますが、EIH はこれらとは異なり運動そのものが疼痛抑制作用を示す点が特徴です。有酸素運動、レジスタンストレーニング、さらには中等度の運動でも一時的な痛覚閾値の上昇や自覚的疼痛の軽減が報告されています。

このような作用は、慢性疼痛や運動器疾患、線維筋痛症、変形性関節症、腰痛などのリハビリテーションにおいて有用です。薬物療法や物理療法と組み合わせることで、疼痛軽減と身体機能向上を同時に図ることが可能であり、近年の理学療法において運動療法の位置づけはますます重要になっています。

身体活動の全身的効果

日常の身体活動量を増やすことは、メタボリックシンドロームを含む循環器疾患、糖尿病、がん、その他の生活習慣病の発症リスクや、これらによる死亡リスクを低下させます。また、加齢に伴う生活機能低下の予防にも寄与します。さらに、身体活動はメンタルヘルスや生活の質(QOL)の改善効果も示されており、うつ症状の軽減やストレス耐性の向上にも関連しています。

運動療法の利点

運動療法は薬物療法と比較して、高額な費用を必要とせず、副作用のリスクも極めて低いのが特徴です。日常生活の中で就業中や通勤時に身体活動量を増やしたり、余暇にレジャーやスポーツを取り入れたりするなど、実行性が高い点も大きな利点です。これらの活動を継続することで、身体機能や生活習慣の改善に加えて、疼痛抑制効果である EIH を得る可能性があります。

有効な運動様式とエビデンス

EIH(運動誘発性疼痛抑制)の発現に有効とされるのは、継続的な有酸素運動と筋力増強運動です。

  • 有酸素運動
    • ランニング、ウォーキング、スイミングなどが代表的で、頸部痛、線維筋痛症、慢性腰痛などの慢性運動器疾患における疼痛軽減効果が報告されています。
    • 特にウォーキングは特別な器具や高度なスキルを必要とせず、強度調整が容易で導入しやすい運動です。1 回あたり 20 ~ 60 分、週 2 回以上を 6 週間以上継続すると、疼痛軽減や機能改善が期待できます。
    • また、有酸素運動は精神心理的健康、認知機能、代謝機能の改善にも有効であり、慢性疼痛患者が合併しやすい抑うつや生活習慣病にも好影響を与えます。
  • 筋力増強運動
    • 身体の一部に一定以上の負荷をかけることで筋力を高める運動で、自重を利用したホームエクササイズから開始できます。
    • 痛みのある部位以外を鍛えることでも全身的な疼痛抑制効果が得られることが知られています。
    • ただし、導入初期から強い抵抗運動を行うと心理的負担や疼痛悪化のリスクがあるため、まずは有酸素運動などで運動への抵抗感を軽減し、自信がついてから開始することが望まれます。

運動の強度設定

有酸素運動・筋力増強運動ともに、低 ~ 中等度強度でも疼痛や機能改善は得られることが示されています。特に長期不活動状態の患者では、健常者に推奨される標準強度より低めから開始する方が安全です。

一方で、高強度の運動でも副反応なく効果が得られた報告もあり、スポーツ復帰や身体的に高い要求のある職業復帰を目指す場合には、段階的に強度を引き上げ、最終的に高強度運動を処方することも適切です。

臨床的活用のポイント

  • 開始は低強度・短時間から行い、漸増的に強度と時間を拡大する
  • 急性期や炎症期は疼痛増悪の可能性があるため回避する
  • 患者に EIH の作用機序や効果の即時性・持続性を説明し、運動継続の動機付けを行う
  • 有酸素運動と筋力増強運動を組み合わせ、疼痛軽減と機能向上の相乗効果を狙う
  • 痛みのある部位だけでなく、全身的な運動を取り入れることで疼痛抑制効果を最大化する

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「EIH(疼痛抑制効果)」をキーワードに解説させて頂きました。

こちらの記事を読むことで EIH(疼痛抑制効果) についての理解が深まり、臨床における疼痛管理の一助へとなれば幸いです。


痛みの原因は多岐にわたります。痛みの原因のひとつが精神・心理面になります。そのため、精神・心理面の評価も重要になります。このテーマについては、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【HADS(評価法)についての記事はこちらから

参考文献

  1. 上勝也,田島文博,仙波恵美子.運動による疼痛抑制とmesocortico-limbic system.PAIN RESEARCH.35(2),p80-91,2020. 
  2. 上勝也,田島文博,仙波恵美子.運動による疼痛抑制 (exercise-induced hypoalgesia) の脳メカニズム.日本運動器疼痛学会誌.11(2),p175-181,2019.

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