嚥下カンファの進め方|多職種の役割・決定事項・記録例

栄養・嚥下
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嚥下カンファの進め方:共有だけで終わらず実施条件まで決める

嚥下カンファでは、評価結果を順番に報告するだけでなく、食事姿勢、一口量、介助方法、担当者、周知先、再評価日まで決めることが重要です。対象は、嚥下障害のある患者・利用者について、多職種間の情報は集まっているものの、実際の対応が統一できていない医療・介護従事者です。本記事では、会議前・会議中・会議後の流れ、職種別の共有内容、決定事項、SBARによる記録例を整理します。A4記録シートを使い、翌日から同じ条件で運用できる形まで落とし込めます。

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嚥下カンファで条件をそろえ、多職種で共有し、担当者と再評価日まで決める流れ
嚥下カンファは所見の報告だけで終わらせず、「誰が・何を・いつまでに行うか」まで決めます。

嚥下カンファで最初にそろえるのは「条件」と「決定」です

嚥下カンファのゴールは、参加者全員が同じ評価結果を知ることではなく、翌日から同じ条件で支援できる状態を作ることです。姿勢、一口量、食事ペース、介助方法、食形態などが担当者ごとに変わると、むせや摂取量の変化が嚥下機能によるものか、観察条件の違いによるものか判断しにくくなります。

会議の最後には、少なくとも次の5項目を確認します。

  • 実施条件:姿勢、食形態、一口量、食事ペース、介助方法
  • 担当者:評価、介助、環境調整、周知を担当する職種
  • 周知先:病棟、施設、家族、訪問スタッフなど
  • 再評価項目:何を同じ条件で比較するか
  • 再評価日:いつ方針を見直すか

会議終了時の確認

「様子を見る」で終わらず、誰が観察し、どの変化が起きたら再検討するかまで言葉にします。

嚥下カンファは会議前・会議中・会議後の3段階で進めます

会議前に比較条件を確認し、会議中に問題と対応を絞り、会議後に決定事項を記録・周知します。所見を会議中に初めて整理すると時間がかかるため、事前に最低限の情報を集めておくことが重要です。

嚥下カンファの基本的な進行
段階 行うこと 残す内容
会議前 姿勢、覚醒、一口量、食事ペース、食事環境などの観察条件を確認する どの条件で得られた所見か
会議中 現在の問題、背景、評価、対応案を多職種で共有する 優先して変更する条件
会議後 担当者、周知先、再評価項目、再評価日を記録する 翌日から実施する方針

会議前:比較できる条件で情報を集める

食事場面の所見を持ち寄る前に、どのような条件で観察したかを確認します。同じ患者でも、覚醒状態、座位姿勢、介助者、一口量、食事ペース、周囲の刺激によって所見が変わることがあります。

会議前に確認したい項目は次のとおりです。

  • 覚醒状態と日内変動
  • 食事姿勢と頭頸部の位置
  • 食形態と水分形態
  • 一口量と食事ペース
  • 自力摂取か介助か
  • 使用している食具
  • 食事時間と摂取量
  • むせ、咳、湿性嗄声、呼吸状態の変化
  • 口腔内残留や咽頭残留を疑う所見
  • 本人・家族の希望

会議中:問題を絞って対応案を決める

会議中は、すべての所見を詳しく読み上げるのではなく、現在の問題、変化した背景、評価結果、推奨する対応の順に整理します。意見が分かれた場合は、安全性だけでなく、摂取量、栄養、水分、服薬、疲労、本人の希望、介助者が継続できるかという点も含めて検討します。

会議後:決定事項を同じ表現で周知する

会議で決めた内容は、議事録だけでなく、実際に食事介助を行う人が確認できる場所へ反映します。電子カルテ、食札、ベッドサイドの申し送り表、ケア手順書など、施設内で決められた方法を使用してください。

変更前の指示が別の場所に残っていると、古い条件と新しい条件が混在します。誰が表示や記録を更新するかまで決めておくことが重要です。

多職種では「同じ情報」ではなく職種ごとの判断材料を共有します

多職種連携では、各職種が同じ評価を繰り返すのではなく、それぞれの専門性から食事の安全性と継続可能性を判断します。参加職種は施設の体制や患者の課題によって異なりますが、次のように役割を整理できます。

嚥下カンファで共有する職種別の情報
職種・参加者 主に共有する内容 決定への関わり
医師・歯科医師 原疾患、全身状態、予後、検査・治療方針 医学的な安全性と検査・治療の必要性を判断する
看護師 覚醒、日内変動、食事場面、服薬、呼吸状態、介助の実行可能性 病棟で継続できる方法と観察項目を整理する
言語聴覚士 嚥下機能、食形態、一口量、食事ペース、代償方法 直接的な嚥下評価に基づいて食事条件を提案する
理学療法士 座位保持、頭頸部・体幹機能、呼吸、離床、疲労 食事姿勢と継続可能な支持条件を提案する
作業療法士 上肢機能、食具操作、注意・認知、食事環境 自力摂取と環境調整の方法を提案する
管理栄養士 摂取量、必要栄養量、水分量、栄養密度、食形態 安全性と栄養充足を両立する方法を検討する
薬剤師 剤形、服薬方法、粉砕・簡易懸濁の可否、関連薬剤 安全に継続できる服薬方法を提案する
歯科衛生士 口腔衛生、義歯、口腔乾燥、口腔機能 口腔環境を整える方法と実施者を確認する
介護職 日常の食事介助、本人の反応、生活場面での継続可能性 現場で再現できる介助方法かを確認する
本人・家族 食べたいもの、生活上の優先事項、受け入れられる負担 目標と選択肢について意思を共有する

全職種の参加を必須とするのではなく、現在の問題を解決するために必要な職種を選びます。本人が参加できない場合も、本人・家族の希望や生活上の目標を確認し、会議の判断材料に含めます。

会議では食事条件・担当・再評価まで決定します

決定事項は、現場で再現できる具体性で記録します。「姿勢に注意する」「少量ずつ介助する」のような表現だけでは担当者によって対応が変わるため、必要な支持物、食具、一口量の調整方法、確認する反応などを記載します。

嚥下カンファで決める項目
決定項目 具体的に決める内容 記録例
食事姿勢 座位角度、骨盤・足底・体幹・頭頸部の支持、使用物品 車椅子座位。足台を使用し、前腕をテーブル上で支持する
食形態・水分 採用する形態、提供時の注意、変更範囲 主食・副食・水分の形態を食札とケア手順へ反映する
一口量・ペース 使用する食具、量の調整方法、次の一口へ進む条件 小さめのスプーンを使用し、嚥下と呼吸の安定を確認して進める
介助方法 介助位置、声かけ、本人が行う動作、必要な確認 正面から急がせずに介助し、口腔内を確認してから次へ進む
口腔ケア・服薬 実施時期、方法、剤形、担当者 食後の口腔ケア方法と服薬手順を病棟内で統一する
観察項目 むせ、声質、呼吸、摂取量、食事時間、疲労など 食前後の声質、呼吸状態、摂取量を記録する
担当・周知 評価者、介助者、記録更新者、周知先 看護師が手順を更新し、病棟スタッフへ申し送る
再評価 再評価日、比較条件、見直しを早める変化 同じ食事条件で再評価し、状態変化時は予定を待たず相談する

数値は患者ごとに決めます

一口量、食事時間、再評価間隔、臨時相談の基準を、すべての患者に共通する固定値として扱わないでください。嚥下機能、全身状態、食事内容、目標、施設の体制に応じて決定します。

SBARを使うと決定に必要な情報を同じ順番で整理できます

SBARは、状況・背景・評価・提案を一定の順番で共有するための書式です。嚥下カンファでは、情報量を増やすためではなく、現在の問題と次の対応を短く結びつけるために使用します。

嚥下カンファでのSBAR記録例
項目 記載する内容 記録例
S
Situation
現在生じている問題 昼食時のむせと湿性嗄声が増え、摂取量も低下している
B
Background
疾患、経過、直近の変化、関連する背景 離床時間の延長後から食事後半の疲労が目立つ
A
Assessment
嚥下機能、姿勢、呼吸、栄養などの評価 食事後半に骨盤後傾と頭部後屈が生じ、呼吸も不安定になる
R
Recommendation
変更する条件、担当者、周知先、再評価 支持物と休憩方法を統一し、病棟で共有したうえで同条件にて再評価する

SBARだけですべての情報を残そうとすると長くなります。詳細な評価結果は別欄に記録し、SBARには判断と行動に必要な内容を優先して記載します。

嚥下カンファ記録シートをダウンロードできます

記録シートは、患者情報、姿勢条件、T位置、GSグレード、SBAR、再評価メモをA4用紙1枚にまとめています。会議で得た所見をすべて書き写すのではなく、翌日から実施する条件と再評価に必要な情報を残すために使用してください。

シート内のT位置とGSグレードは、すべての患者で必須となる評価ではありません。PTが補足的な評価として使用する場合に記載し、使用しない場合は空欄のままで構いません。

嚥下カンファ用 A4記録シート

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記録シートの使い方

  1. 会議前に患者情報と現在の食事条件を記入する
  2. 会議中に現在の問題と各職種の評価を整理する
  3. SBAR欄へ決定に必要な情報をまとめる
  4. 担当者、周知先、再評価項目、再評価日を記入する
  5. 会議後に実際の指示やケア手順へ反映する

記録シートを保存すること自体が目的ではありません。シートに記録した内容と、病棟・施設で実際に使用する食事指示や介助手順を一致させてください。

PTは姿勢・呼吸・活動耐容能を嚥下評価へつなげます

PTが嚥下カンファで共有する中心情報は、食事姿勢を保てる条件、呼吸状態、頭頸部・体幹機能、疲労、離床状況です。T位置やGSグレードは補足的に使用できますが、単独で嚥下障害を診断したり、訓練方法を決定したりする指標ではありません。

嚥下評価全体の流れやベッドサイドでの観察項目は、摂食嚥下評価の基本で整理しています。

姿勢は「理想的な形」より食事中に維持できる条件を確認する

骨盤、足底、体幹、頭頸部、上肢の支持条件を確認します。開始時には整っていても、食事後半に崩れる場合があるため、時間経過と疲労を含めて評価します。

PTが嚥下カンファで共有する姿勢情報
項目 確認する内容 共有例
骨盤・体幹 後傾、側方偏位、前方への崩れ、支持物 食事後半に骨盤後傾が増えるため、座面と背部支持を調整する
足底 接地、足台、下肢の支持 足台を使用すると体幹の前方崩れが減る
頭頸部 後屈、回旋、前方頭位、可動域、支持 疲労時に頭部後屈が生じるため、支持方法を統一する
上肢 前腕支持、食具操作、テーブルの高さ 前腕支持により体幹が安定し、食具操作も継続しやすい
呼吸・疲労 呼吸数、息切れ、食事中の休憩、活動耐容能 食事後半に呼吸が速くなるため、休憩を含む介助手順とする

T位置とGSグレードは補助的な評価として扱う

T位置は、オトガイから甲状軟骨上端までの距離であるGTと、甲状軟骨上端から胸骨上端までの距離であるTSを用い、相対的な喉頭位置を整理する指標です。GSグレードは、頭部挙上保持の状態から舌骨上筋群の筋力を段階的に評価する方法として報告されています。

これらの指標は、脳血管疾患患者の嚥下障害に関連する身体機能を検討した研究で使用されています。ただし、研究対象や測定条件が限定されており、T位置やGSグレードだけで誤嚥リスク、食形態、訓練内容を決めることはできません。

T位置・GSグレードを共有するときの注意点
評価 共有できること 単独では決められないこと
T位置 測定条件下における相対的な喉頭位置 誤嚥の有無、食形態、具体的な訓練方法
GSグレード 測定条件下における頭部挙上保持の状態 嚥下機能全体、経口摂取の可否、強化訓練の適否

測定する場合は、体位、頸部位置、支持の有無などの条件をそろえ、同じ条件で経時的に比較します。頸部可動域、姿勢保持、呼吸、覚醒、直接的な嚥下所見と合わせて解釈してください。

再評価では同じ条件で変化を比較します

再評価項目は、日常的に確認する項目と、一定期間ごとに見直す項目へ分けます。観察項目を増やしすぎると記録が続かないため、今回の決定に関係するものを選びます。

嚥下カンファ後のモニタリング項目
区分 確認項目 記録のポイント
食事ごと むせ、咳、声質、呼吸、食事姿勢 有無だけでなく、食事のどの場面で生じたかを残す
日ごと 摂取量、飲水量、食事時間、疲労 前日や介入前と比較できる表現にする
定期的 体重、栄養・水分状態、経口摂取レベル 同じ方法と条件で経時的に比較する
状態変化時 発熱、呼吸状態、意識、神経症状、食事摂取の急な変化 定例日を待たずに医師や担当職種へ相談する

FOISは経口摂取レベルの経時的な共有に使用する

Functional Oral Intake Scale(FOIS)は、経口摂取の状態を7段階で整理する尺度です。毎食のむせや姿勢を表す指標ではなく、経口摂取レベルの変化を経時的に共有するときに使用します。

FOISが変化していなくても、食事時間、介助量、疲労、摂取量が悪化していることがあります。FOISだけで状態が安定していると判断せず、食事場面の具体的な所見と組み合わせてください。

定例日を待たずに相談する変化

次のような変化がみられた場合は、予定した再評価日を待たず、施設内の手順に従って医師や担当職種へ相談します。

  • 意識や覚醒状態が急に変化した
  • 呼吸状態が悪化した
  • 発熱や肺炎を疑う症状が出現した
  • むせ、湿性嗄声、喀痰などが明らかに増えた
  • 食事や水分の摂取量が急に低下した
  • 服薬が困難になった
  • 食事姿勢を保てなくなった
  • 新たな神経症状や全身状態の変化がみられた

一律の回数や割合だけで判断するのではなく、患者ごとの通常状態からの変化、複数所見の組み合わせ、変化の持続性を確認します。

嚥下カンファでよくある失敗と修正方法

カンファが機能しない原因は、情報不足だけではありません。観察条件が違う、決定事項が抽象的、担当者が決まっていないなど、運用上の問題を先に修正する必要があります。

嚥下カンファで起こりやすい失敗
場面 避けたい進め方 修正方法
情報共有 各職種が評価結果を順番に読み上げるだけ 現在の問題と意思決定に必要な情報へ絞る
観察条件 介助者ごとに姿勢や一口量が異なる 比較する条件と介助方法を具体的に決める
決定 「注意する」「様子を見る」で終わる 担当者、観察項目、再評価日まで記録する
制限 安全への不安だけで制限を追加し続ける 安全性、栄養、水分、本人の希望を合わせて再検討する
周知 議事録だけ作成し、介助者へ伝わっていない 食札やケア手順など実際に見る場所へ反映する
再評価 前回と異なる条件で評価する 同じ条件を再現し、変化した点を比較する

嚥下カンファに関するよくある質問

Q1. 嚥下カンファで最優先に決めることは何ですか?

まず、翌日から統一する食事姿勢、一口量、食事ペース、介助方法を決めます。続けて、担当者、周知先、再評価項目、再評価日を確認します。

Q2. 参加職種が全員そろわない場合はどうしますか?

現在の問題を解決するために必要な職種を優先します。欠席する職種から事前に情報を集め、会議後に決定事項を共有できる方法を決めておきます。

Q3. T位置とGSグレードは全員に測定しますか?

必須ではありません。PTが頭頸部機能や舌骨上筋群の状態を補足的に確認する必要がある場合に使用します。直接的な嚥下評価、姿勢、呼吸、全身状態と合わせて解釈してください。

Q4. SBARにすべての評価結果を書かなければなりませんか?

詳細な評価結果は別欄に残し、SBARには現在の問題、背景、評価、推奨する対応を簡潔に記載します。特に、担当者と再評価までつながる内容を優先します。

Q5. 再評価日は何日後に設定すればよいですか?

一律の日数では決めません。全身状態、変更内容、リスク、施設の体制に応じて設定します。状態が変化した場合は、予定日を待たずに再検討します。

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嚥下カンファで課題となった所見をさらに整理するときは、嚥下5相に沿って観察することで、どの段階に問題があるかを共有しやすくなります。


参考文献

  1. Yoshida T, Uchiyama Y. Clinical characteristics of swallowing disorders caused by cerebrovascular disease: a study using newly-developed indices for the basic elements of swallowing movement and neck range of motion. J Jpn Phys Ther Assoc. 2007;10(1):11-15. doi:10.1298/jjpta.10.11. PubMed
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  6. American Speech-Language-Hearing Association. Adult dysphagia. Practice Portal. ASHA

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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