HDS-Rのやり方と採点|記録例・PDF・自動計算

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HDS-Rは30点満点の認知機能スクリーニングです

HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)は、認知機能低下の可能性を短時間で確認する30点満点のスクリーニングです。20/21点が一般的なカットオフで、20点以下は追加評価を検討する目安ですが、得点だけで認知症を確定する検査ではありません。

この記事では、PT・OT・STなどの医療従事者に向けて、実施条件、採点結果の見方、領域別所見、記録例、再評価を整理します。設問全文は転載せず、日本老年医学会の公開用紙を案内したうえで、A4記録用紙のPDF・Excelと自動計算ツールを使い、結果を安全管理やチーム共有へつなげる方法を解説します。

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HDS-Rとは?目的と使用場面

HDS-Rの役割は、認知症を診断することではなく、認知機能低下の可能性を拾い、追加評価や受診、生活機能の確認が必要かを判断する入口を作ることです。現在のHDS-Rは、質問項目と採点基準を見直した改訂版として1991年に報告されました。1

年齢、時間・場所の見当識、3単語の即時記銘と遅延再生、計算、数字の逆唱、物品記銘、言語流暢性の9項目で構成され、合計は30点です。日本老年医学会では所要時間の目安を6〜10分としています。3

設問・教示・採点方法は公開用紙で確認してください

本記事と当サイトの記録シートには、設問文、教示、詳細な採点基準を収載していません。検査の実施には、日本老年医学会が公開しているHDS-R用紙と、施設内で定めた運用手順を使用してください。検査用紙などのCGAツールを複製・公開するときは、著作権上の取り扱いにも配慮が必要です。5

日本老年医学会のHDS-R公開用紙を見る(PDF)

HDS-Rを検討しやすい場面

  • 指示の保持が難しい:説明直後は実施できても、時間が経つと手順が抜ける
  • 転倒や危険行動が増えた:見当識や注意の変化が安全管理へ影響していないか確認したい
  • 自己管理に不安がある:服薬、水分、補助具、予定管理などのIADLも含めて確認したい
  • 退院支援で情報を共有したい:家族聴取や生活機能評価へ進む必要性を整理したい
  • 経時変化を確認したい:状態が整った条件で再評価し、前回との差を確認したい

HDS-Rだけでは、生活上の支障や必要な支援までは確定できません。低得点や気になる誤り方がある場合は、ADL・IADL、家族情報、行動観察、必要に応じた追加評価と組み合わせます。

HDS-Rのやり方|実施前に条件をそろえる

再現性を高めるには、検査を始める前に、覚醒、体調、感覚器、コミュニケーション、環境を確認します。条件が整っていないまま実施すると、認知機能以外の理由で得点が下がり、再評価との比較も難しくなります。

HDS-Rを実施して次の対応を決める4ステップ。実施条件の確認、公開用紙に沿った実施、点数と誤り方の記録、次の対応の決定を示す図版
HDS-Rは、実施条件を整え、公開用紙に沿って実施し、点数と誤り方を記録したうえで次の対応を決めます。
  1. 公開用紙を準備する:日本老年医学会のHDS-R用紙と施設内の運用手順を確認する
  2. 覚醒と体調を確認する:眠気、疼痛、呼吸苦、発熱、脱水、低血糖が疑われる状態などを確認する
  3. 感覚器を確認する:眼鏡、補聴器、照度、騒音を確認する
  4. コミュニケーションを確認する:失語、難聴、構音障害などが検査の成立へ影響しないか確認する
  5. 環境を整える:周囲の会話、テレビ、人の出入り、同席者の介入を減らす
  6. 実施中の反応を記録する:聞き返し、反応時間、注意の中断、保続、途中離脱をメモする

聞こえにくい、理解しにくいという理由で、検査者が独自に設問を言い換えたり、手がかりや回答方法を変更したりすると、標準化された得点として解釈できなくなる場合があります。公開用紙で示されていない変更は避け、成立しなかった理由を記録してください。

検査の成立度を3区分で記録する

得点を共有するときは、合計点と一緒に「どの程度、標準的な条件で成立したか」を残します。記録シートv2では、次の3区分から選べます。これはHDS-Rの公式な判定区分ではなく、結果の解釈上の制約を共有するために当サイトが設けた実務上の記録区分です。

HDS-Rの実施成立度と結果の扱い
実施成立度 目安 結果の扱い
標準条件で成立 必要な眼鏡・補聴器と環境を整え、公開用紙に沿って完遂した 得点、領域別所見、生活情報を合わせて解釈する
条件付き参考値 難聴、失語、覚醒、疼痛、環境などの影響が残った状態で完遂した 制約を明記し、標準条件の結果と同等に扱わない
中止・未完遂 体調、拒否、意思疎通、注意持続などの理由で完遂できなかった 無理に合計点を確定せず、中止理由と代替する観察・評価を残す

HDS-Rの採点と20/21点の考え方

HDS-Rは30点満点です。日本語原著と英語での検証報告では、20/21点が認知症スクリーニングのカットオフとして示されています。20点以下は認知症が疑われる範囲ですが、診断確定値でも、重症度を単独で決める基準でもありません。12

HDS-Rの得点を解釈するときの基本
得点 基本的な位置づけ 次に確認すること
21〜30点 一般的なカットオフでは基準点以上 生活上の困り、本人・家族の訴え、領域別の誤り方を確認する
0〜20点 認知機能低下の可能性を検討する範囲 実施条件、急性変化、ADL・IADL、家族情報、追加評価を確認する

基準点以上でも軽度の認知機能低下や生活上の問題を否定できず、20点以下でも認知症が確定するわけではありません。せん妄、意識・覚醒の変化、抑うつ、疼痛、感覚障害、急性疾患などが疑われる場合は、その要因を先に確認します。

年齢、教育歴、性別などの背景因子とHDS-R得点との関連を示した研究もありますが、対象集団によって結果の当てはまりは異なります。背景因子が必ず影響する、または影響しないと一律に決めつけず、機械的な点数補正も行わず、対象者の背景と検査中の反応を併記してください。4

点数の見方|合計点と領域別の誤り方を確認する

HDS-Rは合計点だけでなく、どの領域で、どのような条件下で誤りが生じたかを確認すると、追加評価や関わり方を決めやすくなります。

HDS-Rの領域別に残したい観察所見
領域 確認する視点 記録する所見 次に確認すること
時間・場所の見当識 誤りが固定しているか、時間帯で揺れるか 誤答内容、日内変動、周囲の手がかりへの反応 せん妄、病棟内行動、迷行、環境変化
記銘・遅延再生 直後に保持できるか、時間経過後に想起できるか 自発的な想起、反応時間、同じ誤りの反復 予定、服薬、訓練手順などの生活上の保持
注意・計算・逆唱 課題の途中で注意が切れないか 中断、保続、聞き返し、周囲刺激への反応 複数指示、二重課題、安全確認
物品記銘・言語流暢性 視覚情報の保持や語の検索がどの程度保たれているか 想起数、反応の遅れ、同じ語の反復 失語、視覚認知、語流暢性、生活上の物品管理

領域別所見は、そのまま認知機能障害の診断名へ置き換えるものではありません。「追加で何を確認するか」「リハ中にどの条件を調整するか」を決める材料として使います。

記録と再評価|点数・条件・所見・次の対応を残す

記録は「HDS-R ○点」だけで終わらせず、実施成立度、条件、得点、検査中の所見、生活上の情報、次の対応を一緒に残します。

  1. 実施成立度:標準条件で成立、条件付き参考値、中止・未完遂
  2. 実施条件:時間帯、場所、眼鏡・補聴器、覚醒、疼痛、周囲環境
  3. 得点:合計点と、必要な領域別得点
  4. 検査中の所見:聞き返し、反応時間、注意の揺れ、保続、途中離脱
  5. 生活上の情報:指示理解、服薬、移動、予定管理などのADL・IADL
  6. 次の対応:条件をそろえた再評価、家族聴取、追加評価、医師への相談

1行記録例:「HDS-R 19/30点(条件付き参考値)。午後、病室、補聴器未装着で実施。時間の見当識と遅延再生で失点し、聞き返しと注意の中断あり。補聴器装着・静かな環境で再評価し、服薬管理について家族へ確認予定。」

再評価時にそろえる項目

  • 前回と同じ時間帯または覚醒状態か
  • 疼痛、発熱、呼吸苦、薬剤変更などの条件差がないか
  • 眼鏡・補聴器と実施環境が同じか
  • 合計点だけでなく、変化した領域はどこか
  • ADL・IADLや安全行動に変化があるか

小さな点数差だけで改善・悪化を断定せず、条件差、領域別所見、生活上の変化を並べて判断します。

HDS-R自動計算ツール

HDS-Rの各下位項目の得点を入力すると、合計点と判定の目安を自動表示します。設問文は掲載していないため、日本老年医学会の公開用紙に沿って検査・採点した後の集計補助として使用してください。

HDS-R自動計算ツールを開く

記事内でプレビューを見る

1項目でも未入力がある場合は、合計点と判定を確定表示しない仕様です。ツールの結果だけで判断せず、当日の状態、検査中の所見、ADL・IADLと合わせて解釈してください。

HDS-R記録用紙|PDF・Excelをダウンロード

HDS-R記録シートv2は、基本情報、実施前の確認、検査の成立度、9項目の得点と反応所見、合計点、生活場面、次の対応、再評価時の条件差をA4縦1ページで記録できます。設問文、教示、詳細な採点基準は収載していないため、日本老年医学会の公開用紙と併用してください。

  • PDF版:A4縦1ページで、そのまま印刷して使いたい場合
  • Excel版:施設名や記録欄を調整し、編集用原本として使いたい場合
PDF版を記事内でプレビューする

PDFが表示されない場合は、上の「PDF版を開く」ボタンをご利用ください。

本シートは記録・共有を補助する当サイト独自様式であり、HDS-Rの検査用紙や診断書の代わりになるものではありません。施設の規程に合わせてご使用ください。

HDS-Rでよくある失敗と対策

HDS-Rで起こりやすい失敗は、検査条件をそろえず、合計点だけで判断することです。標準化を崩す独自の言い換えや、成立しなかった検査の合計点を無理に確定することにも注意します。

HDS-R運用のOK/NG早見表
場面 NG OK 記録ポイント
聴力・失語が疑われる 独自に設問を言い換え、通常どおり採点する 公開用紙の範囲で対応し、成立しなければ中止または条件付き参考値とする 補聴器、聞き返し、理解面、成立しなかった項目
眠気・疼痛・急性の体調不良 状態が悪い1回の得点だけで判断する 体調を整え、比較可能な条件で再評価する 覚醒、疼痛、発熱、呼吸状態、薬剤変更
未完遂 未実施項目を0点として合計点を確定する 中止・未完遂として理由を残し、代替する観察や評価を検討する 中止時点、理由、本人の反応、代替評価
点数の共有 「19点でした」だけで終える 成立度、条件、領域別所見、生活上の問題、次の対応を添える 誤り方、ADL・IADL、再評価予定
カットオフ 20点以下を認知症と断定する スクリーニング結果として追加評価へつなぐ 背景因子、急性変化、家族情報
再評価 前回と異なる条件の点数だけを比較する 実施条件と領域別変化を並べて比較する 時間帯、環境、感覚器、体調、生活上の変化

HDS-Rについてよくある質問

HDS-Rは何分くらいで実施できますか?

日本老年医学会では6〜10分を目安としていますが、聞き返し、注意の持続、体調、実施環境によって変わります。時間を短くするために教示を省略したり、回答を急がせたりせず、公開用紙に沿って実施してください。3

20点以下なら認知症で確定ですか?

確定ではありません。20点以下は認知機能低下の可能性を検討するスクリーニング上の目安です。実施条件、急性の体調変化、ADL・IADL、家族情報、追加評価を確認し、必要に応じて医師へ相談します。

失語や難聴がある場合も採点できますか?

コミュニケーション上の制約によって、認知機能そのものを適切に測定できない場合があります。補聴器や環境を整えても成立しない場合は、独自に検査方法を変更せず、条件付き参考値または中止・未完遂として理由を記録し、他の観察や評価を組み合わせます。

再評価はいつ行いますか?

一律の間隔ではなく、評価目的と状態変化に合わせます。眠気、疼痛、感染、せん妄などの影響があった場合は、状態が整ってから比較可能な条件で再評価します。退院支援や薬剤変更後など、判断を更新する必要がある時点でも検討します。

自動計算ツールだけで判定してよいですか?

ツールは得点の集計補助です。公開用紙による実施・採点、当日の状態、検査中の反応、ADL・IADL、家族情報と合わせて使用してください。

当サイトの記録シートだけでHDS-Rを実施できますか?

実施できません。記録シートv2は、実施条件、得点、反応所見、生活情報、次の対応を記録する補助用紙です。設問、教示、詳細な採点基準は、日本老年医学会が公開しているHDS-R用紙で確認してください。

次に確認する記事

HDS-Rを評価体系の中で位置づけ直す場合は評価ライブラリへ、近い認知機能スクリーニングとの違いや領域別の見方を確認する場合はMMSEの記事へ進んでください。


参考文献

  1. 加藤伸司,下垣光,小野寺敦志,植田宏樹,老川賢三,池田一彦,小坂敦二,今井幸充,長谷川和夫.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の作成.老年精神医学雑誌.1991;2(11):1339-1347.CiNii Research
  2. Imai Y, Hasegawa K. The Revised Hasegawa’s Dementia Scale (HDS-R): Evaluation of its usefulness as a screening test for dementia. Hong Kong J Psychiatry. 1994;4(2):20-24. Article
  3. 日本老年医学会.認知機能の評価法と認知症の診断.高齢者診療におけるお役立ちツール(2026年8月13日閲覧).
  4. Jeong JW, Kim KW, Lee DY, et al. A normative study of the Revised Hasegawa Dementia Scale: comparison of demographic influences between the Revised Hasegawa Dementia Scale and the Mini-Mental Status Examination. Dement Geriatr Cogn Disord. 2007;24(4):288-293. doi:10.1159/000107592. PMID:17717415
  5. 小宮仁,梅垣宏行,川嶋修司,他.高齢者総合機能評価(CGA)ツールを利用する際の著作権侵害の問題.日本老年医学会雑誌.2021;58(1):1-12.doi:10.3143/geriatrics.58.1

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。本記事は、HDS-Rを合計点だけで断定せず、実施条件、検査の成立度、領域別所見、ADL・IADLを含めてチームで共有できることを目的に作成しました。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門分野

脳卒中、褥瘡・創傷ケア、呼吸リハビリテーション、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下

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