CNS(Canadian Neurological Scale)

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CNS( Canadian Neurological Scale )とは?

CNS( Canadian Neurological Scale / カナディアン・ニューロロジカル・スケール )は、脳卒中患者の「意識・見当識」「言語(理解/表出)」「顔面/上肢/下肢の運動」を短時間で把握し、経時変化を追いやすく設計された重症度スケールです。現場では NIHSS が標準になりやすい一方、CNS は病棟・回復期・外来での反復評価に強みがあり、看護師を含む多職種でも再現しやすいのが特長です。

本文では逐語の項目を掲示せず、手順と解釈の「考え方」を中心に整理します。CNS 評価表(記録用)は下のダウンロードから利用でき、運用上は A1(理解良好)A2(理解障害など調整が必要) の分岐を意識すると、失語や注意低下を伴う症例でも評価を継続しやすくなります。

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CNS を使うと良い場面

急性期〜回復期の広い文脈で有用です。例:病棟夜間の悪化早期検知、離床前後のオン/オフ評価、外来・訪問での経時モニタ、カンファレンス用の重症度トレンド化。CNS で変化を素早く掴み、必要に応じて NIHSS で詳細化する二段構えが実務的です。

注意点は「疼痛・固定具・ ROM 制限・眠気・薬剤影響」の取り違え、失語と失行の鑑別、模倣と口頭指示で反応が変わる症例の取り扱いです。体位や補助具など条件を統一し、再現性を高めましょう。

実施の流れ(概要:逐語項目は掲示しません)

1)体位・環境を統一。2)A1/A2 を判定。3)意識・見当識 → 言語 → 顔面 → 上肢 → 下肢の順で左右差と再現性を観察。4)失行/注意障害/半側空間無視の影響をメモ。5)合計スコアを算出し、前回比( ↑/→/↓ )を明記します。

観察の質を上げるコツは、聴力・視力・母語、疼痛、抗重力保持の可否、模倣と随意の差、注意の持続を簡潔に併記することです。

CNS・ NIHSS ・ JSS の違い(使い分け早見)

重症度スケールの比較(概要)
指標 主目的 実施のしやすさ 強み 留意点
CNS 短時間の重症度把握と経時モニタ ◎(多職種で再現しやすい) A2 運用で理解障害があっても継続可/病棟実務と親和 詳細度は NIHSS に劣る場面あり
NIHSS 急性期標準・治療選定の共通言語 ○(訓練と手順遵守が必須) エビデンス・汎用性が高い 所要時間と訓練コスト
JSS 国内での重症度評価 日本の臨床現場で浸透 他指標との互換は施設差あり

ダウンロード(自作リソース:逐語項目なし)

下記は 公式の評価項目文や配布様式を含まない 自作テンプレートです。臨床の記録・学習にお役立てください。

項目別の解説(趣旨・判定基準の考え方・観察ポイント)

意識・見当識( Mentation )

  • 趣旨: 覚醒水準と一貫した見当識を素早く把握し、以降の指示理解の前提を確認します。
  • 判定基準の考え方: 呼名・簡単応答の可否、一貫した正答の有無、遅延や保続の程度を総合で判断(具体的な試問は本文に記載しません)。
  • 観察ポイント: 眠気・鎮静・夜間帯の影響、聴覚視覚の補助具、通訳/方言、せん妄兆候。

言語( Language :理解/表出 )

  • 趣旨: 指示理解と表出の可否・明瞭性を確認し、A1/A2 の分岐を決めます。
  • 判定基準の考え方: 単純指示への追従、呼称・反応の一貫性、構音の明瞭性を 臨床的 に評価します(具体的な試問は本文に記載しません)。
  • 観察ポイント: 失語 vs 構音障害の識別、保続・語間代、模倣で改善するか、疲労で変動しないか。

顔面運動( Facial motor )

  • 趣旨: 片側性の低下や非対称を簡便に把握します。
  • 判定基準の考え方: 自動/模倣での差、随意運動に伴う非対称の明確さを段階付け(段階名の逐語は本文に記載しません)。
  • 観察ポイント: 鼻唇溝・口角・瞬目、疼痛や装具の影響、表情の左右差の持続性。

上肢運動( Upper limb )

  • 趣旨: 片麻痺の重さ(抗重力保持・随意運動)を短時間で評価します。
  • 判定基準の考え方: 抗重力保持の可否・時間、可動域制限や疼痛を除外しつつ段階化します(段階名の逐語は本文に記載しません)。
  • 観察ポイント: 共同運動・失行の関与、模倣での改善、利き手差、肩痛・腱板の影響。

下肢運動( Lower limb )

  • 趣旨: 立位準備や移乗能力に関連する抗重力要素を把握します。
  • 判定基準の考え方: 体位(臥位/座位)での保持・随意、筋緊張や装具の影響を勘案して段階化します。
  • 観察ポイント: つま先下がり・膝折れ傾向、疼痛・浮腫、注意散漫での変動。

スコアの閾値(目安)

CNS の重症度区分(研究・臨床で用いられる例)
区分 合計スコアの目安 運用のヒント
軽症 ≥ 8 離床や訓練のオン/オフで小さな変化を追う
中等症 5–7 A2 運用になりやすい。並行指標( NIHSS など )で補助
重症 1–4 全身状態管理と合わせて経時モニタ。条件を厳密に記録

※ CNS の合計は一般に 1.5–11.5(高いほど良好) の範囲として扱われます。施設ルールや研究によって区分の閾値は異なるため、本表はあくまで目安です。自院ルールを優先してください。

解釈と “他指標との橋渡し”

CNS は 低いほど重症 と解釈します。経時変化( ↑/→/↓ )と体位・投薬・疼痛・補助具などの条件を必ず併記してください。研究では NIHSS = 23 − 2 × CNS という換算モデルが提案されており、研究間の比較や院内の共通言語づくりに活用できます(臨床適用は前提と限界を確認)。評価設計の基本は「目的 → 頻度 → 並行指標 → 記録様式」の 4 点セットです。

実装の詳しい組み立て方は こちら も参考にしてください。

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

なぜ「マイナー」に見えるの? NIHSS だけではだめ?

急性期の標準は NIHSS ですが、CNS は病棟の反復モニタで強みがあります。用途が異なるため、CNS を“変化検知”、NIHSS を“詳細共有”として併用すると相互補完できます。

評価は何分単位で回すと良い?

時間の厳密な設定より、条件を揃えた反復が重要です。看護ラウンドやバイタル測定のタイミングと合わせて短時間で反復し、体位・補助具・疼痛・投薬の状況を毎回メモしてください。

逐語の項目を本文に載せないのはなぜ?

本記事は「考え方」と「実装ポイント」に焦点を当てています。具体的な試問や表現は配布物に従い、本文では要点と観察の質を高めるコツに絞って解説しています。

参考文献

  1. Côté R, Battista RN, Wolfson C, et al. The Canadian Neurological Scale: a preliminary study in acute stroke. Stroke. 1986;17(4):731–737. doi:10.1161/01.STR.17.4.731
  2. Côté R, Battista RN, Wolfson C, et al. The Canadian Neurological Scale: validation and reliability assessment. Neurology. 1989;39(5):638–643. doi:10.1212/WNL.39.5.638
  3. Nilanont Y, Komoltri C, Saposnik G, et al. The Canadian Neurological Scale and the NIHSS: development and validation of a simple conversion model. Cerebrovasc Dis. 2010;30(2):120–126. doi:10.1159/000262454
  4. RehabMeasures Database: Canadian Neurological Scale. sralab.org
  5. StrokEngine: Canadian Neurological Scale(概説). strokengine.ca
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