【痛みの強さの評価方法】5つの評価スケール【疼痛の主観的評価】

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基礎的評価
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めて訪問して下さった方はよろしくお願いします。サイト管理者のリハビリくんです!

   
この記事は「痛みの強さの評価方法」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

痛みの評価については、初回評価時から定期的に実施する必要があります。痛みの評価は主観的な感情となるため、評価にばらつきが出やすい特徴があります。

   

例えば痛みの評価で有名な NRS や VAS を測定するにしても、検査者の説明の仕方や振る舞い方次第で、患者の訴えが変わる可能性があります。検査者によって評価結果にばらつきが生じてしまうと、痛みの程度をうまく追えなくなり、鎮痛剤の調整にも支障を来します。

  

この記事では、患者様の痛みを正確に評価することができるように、痛みの評価スケールについて整理していきたいと思います!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

   

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


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痛み、疼痛とは

痛みは、多くの人が日常生活の中で経験する極めて一般的かつ重要な症状のひとつです。国際疼痛学会(IASP)は、痛みを「実際の、または潜在的な組織損傷に関連する、あるいはそのような損傷に類似した体験として表現される不快な感覚および情動体験」と定義しています。

この定義が示すように、痛みは単なる神経生理学的な反応だけではなく、「体験」としての側面を含んでいます。たとえば、痛みによって生じる不安や恐怖、苦しさ、怒りといった情動的な反応も痛みの一部です。そのため、痛みは単に身体的な損傷の有無だけでは測れない、複雑な現象といえます。

痛みの多面的性質

痛みの成立には、身体的要因(例:組織損傷、神経障害)だけでなく、心理的要因(例:不安、抑うつ)、社会的要因(例:職場のストレス、家族関係)、さらにはスピリチュアルな要因(例:生きがいや信念の喪失)など、複数の因子が複雑に関与しています。これらを統合的にとらえる考え方が「全人的痛み(total pain)」です。

このような多次元的な視点は、慢性痛の患者にとって特に重要です。単なる薬物療法だけでは対応できない背景要因が潜んでいることが多いため、包括的なアプローチが求められます。

理学療法士が痛みに対して考えるべきこと

理学療法士にとって、痛みは治療方針の決定や目標設定に直結する重要な評価項目です。ただし、痛みの訴えを「主観的な感覚」と軽視するのではなく、その背景にある要因を多面的に評価することが重要です。

たとえば、運動療法によって痛みが悪化する場合、その動作に対する恐怖心(運動恐怖)や過去の痛み体験が影響している可能性もあります。このようなケースでは、痛みのスクリーニングに加えて、不安尺度や痛み行動の観察も必要になります。

また、痛みの評価は一時点の数値化(NRS や VAS など)だけでなく、日常生活への影響や QOL、活動量、睡眠、気分などの多側面にわたる評価が重要です。近年では、痛みの慢性化に関するリスク評価(例:Yellow Flagの確認)も臨床で活用されています。

痛みへの多面的な評価と対応の重要性

痛みを適切に理解し、対象者の言葉や行動からその本質を汲み取ることが、理学療法士の専門性のひとつです。痛みの訴えを単なる“主観的な情報”と捉えるのではなく、患者の生き方や価値観にも目を向け、適切な介入につなげる姿勢が求められます。

理学療法士は、運動療法や物理療法だけでなく、認知行動療法的アプローチや教育的介入を通じて、痛みのコントロールを支援する役割を担っています。そのためにも、痛みを「感じ方」として理解し、患者と共に痛みと向き合っていく姿勢が大切です。

痛みの評価方法

痛みの評価は、理学療法の臨床現場において欠かせない重要なプロセスです。痛みは本質的に主観的な体験であり、患者ごとに感じ方や表現方法が異なります。そのため、正確な評価を行うためには、多面的な視点からのアプローチが必要となります。

一般的に、痛みの評価方法は以下の 3 つに大別されます。

  1. 痛みの主観的評価

主観的評価は、患者自身の訴えに基づいて痛みの状態を把握する方法です。もっとも基本的であり、臨床で広く用いられています。主な評価項目には以下が含まれます。

  • 痛みの強さ(VAS、NRS など)
  • 痛みのパターン(時間帯や活動との関係)
  • 痛みの性状(ズキズキ、ピリピリ、鈍いなど)
  • 生活支障度(日常生活活動への影響)
  • 生活の質(QOL)への影響

中でも、「痛みの強さ」は評価の中核をなす指標です。継続的に記録・観察することで、治療の効果判定や介入方針の調整に役立ちます。

  1. 痛みの客観的評価

痛みの表現が困難な高齢者や認知症患者、あるいは小児などに対しては、行動や動作から痛みの兆候を読み取る「客観的評価」が有効です。代表的な指標には以下が挙げられます。

  • 顔のしかめ
  • うめき声
  • 体動の回避などの非言語的行動
  • 関節可動域や筋力の制限
  • 動作速度や歩行パターンの変化

これらの観察から、痛みの存在やその影響の程度を推定することが可能です。

  1. 生理的測定

痛みは交感神経を介した生理反応を伴うため、心拍数や血圧、呼吸数といった生理指標を用いて間接的に評価することもあります。特に、意識レベルが低い場合や重度障害者の評価において有効ですが、あくまで補助的な手段として位置付けられます。これらの指標は痛み以外の要因にも影響を受けるため、慎重な解釈が求められます。

痛みの主観的評価(痛みの強さ)

適切な疼痛評価と管理は、対象者の QOL(生活の質)を維持・向上させるために不可欠です。痛みの評価においては、患者自身の体験に基づく「主観的評価」が基本となります。なぜなら、痛みとは個人的な体験であり、他者が完全に代弁することが難しいからです。

しかし、表現力に乏しい患者や認知機能が低下した患者では、表情や仕草、行動などから他者が推測して評価せざるを得ない場面もあります。ただし、先行研究では、こうした他者評価は過小評価につながる傾向があると報告されており、可能な限り自己申告による痛みの強度評価が望ましいとされています。

そのため、多職種や家族間での情報共有や、治療効果判定のためにも、患者の主観的感覚を客観的に表現できる「定量的な評価指標」を用いることが重要です。以下では、代表的な主観的評価スケールについて詳しく解説します。

VAS(Visual Analogue Scale)

検査に必要なものは、紙に書いた 10 cm(100 mm)の直線になります。

この線の左端を「痛みが全くない」、右端を「最悪の痛み」とした場合に、現在の痛みがどの程度の痛みであるのかを指し示してもらう視覚的な評価スケールになります。

VAS を使用する際には、対象者に 10 cm の直線を示し、その左端を「痛みがない」、右端を 「想像できる最大の痛み」とすることを説明しま す。

今の痛みが直線のどこに相当するのかを示してもらい、直線の左端から対象者が付けた印までの距離を測定します。

その測定値を痛みの強さとして 0 ~ 10.0 cm(0 ~ 100 mm)で記載します。

痛みの絶対値は人によって異なりますが、VAS は個々の患者さんの痛みの推移を評価することに優れています。

また、感度が良く、簡単で再現性があり、世界共通のものであることから、臨床でよく使用されている痛みの評価尺度になります。

NRS(Numerical Rating Scale)

0が痛みなし、10が想像できる最大の痛みとして、 0 ~ 10までの11段階に分けて、現在の痛みがどの程度かを指し示す段階的スケールになります。

NRS は、0 ~ 10 までの 11 段階の数字を用いて、現在の主観的な痛みのレベルを数字で示してもらう評価スケールになります。

数値の設定に規定はありませんが、例として「痛みが全くない」を 0 、「最悪の痛み」を 10 として、現在の痛みについて対象者に示してもらいます。

NRS は、がん、さまざまな神経痛、頭痛、腰痛など疾患を限定せず、痛みを訴えている患者すべてに使用することができます。現状の痛みの評価や、日内変動、治療効果を目的として使用することができます。

簡便でわかりやすく、治療効果判定に有用である反面、患者の性格や環境に影響されやすいこと、小児や意識レベルの低下が見られる患者では痛みの数値化が行えないこと、主観的な評価であるため数字に好みが表れ、他者と痛みの強さを比べることはできないといった短所があります。

VRS(Verbal Rating Scale)

VRS は痛みの強さを表す言葉を順に並べて、現在の痛みの程度を示してもらう評価スケールになります。

VAS や NRS が数値を使用した視覚的なスケールであるのに対し、言語を用いたスケールというところが VRS の特徴となります。

また、認知機能が低下した患者に対しても回答が得られやすいという利点を有しています。

FPS(Face Rating Scale)

笑顔から泣き顔までの数段階のイラストが用いられており、現在の痛みに一番合う顔を選んでもらうことで痛みを強さを視覚的に評価するスケールとなります。

FPS は 3 歳以上の小児の痛みの自己評価において有用性が報告されています。しかし、痛み以外の気分を反映する可能性や段階が少なく痛みを詳細に評価できない可能性があることなどが指摘されています。

VAS、NRS、VRS、FRS の評価用紙が必要な方はこちらからどうぞ☺

簡易疼痛質問票(BPI)

簡易疼痛質問票は英語では brief pain inventory と表現されます。略称で BPI とも呼ばれています。

簡易疼痛質問票(BPI)は、がん性疼痛の評価のために作成された指標になります。

がん以外の疾患や症状によって生じる痛みに対しても、評価の有用性が認められ、他の疾患でも使用されるようになっています。

簡易疼痛質問票(BPI)の評価用紙が必要な方はこちらからダウンロードできます☺

痛みの評価を行ううえでの理学療法士の役割

理学療法士は、患者の身体的・機能的変化に加え、心理的・社会的側面にも目を向けながら痛みの評価を行う必要があります。

単に「痛いかどうか」ではなく、「どのような場面で痛むのか」「痛みによりどのような生活制限があるのか」といった点を明らかにすることで、より適切な治療戦略の立案が可能となります。

また、評価結果を患者と共有し、痛みに対する理解を深めてもらうことも重要です。患者自身が痛みをコントロールできる感覚(self-efficacy)を得ることが、慢性疼痛の改善にもつながります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

痛みは主観的で多面的な症状であるため、その評価には複数の視点を持つことが求められます。主観的・客観的・生理的評価を組み合わせ、対象者の全体像を捉えることが、理学療法における適切な介入につながります。

痛みを単なる「強さ」ではなく、「生活の質にどう影響しているか」という広い視点から捉える姿勢が、今後ますます求められるでしょう。

参考文献

  1. 安藤正志.理学療法における痛みの評価.理学療法科学.2000年,第15巻,第3号,p63-72.
  2. 濱口眞輔.痛みの評価法.日臨麻会誌.2011,Vol.31,No.4,p560-569.
  3. 西村大輔,米川裕子,安部洋一郎.痛みの評価.診断と治療.104(11),p1369-1376,2016.
  4. 加藤涼子.疼痛管理に用いるスケール VAS,NRS,NPS,フェイススケール,オピオイド換算.月刊薬事.66(1),p38-42,2024.
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