
こんにちは!リハビリくんです!
こちらでは「疼痛生活障害評価尺度(PDAS)」をキーワードに記事を書いていきます!
痛みという症状は皆様がご存知の通り、生活の質を低下させる非常に厄介なものとなります。更に慢性痛というものは、なかなか出口が見えない身体的にも精神的にも辛い症状になります。
国民生活基礎調査によると、「腰痛・肩こり・手足の関節の痛み」に悩む高齢者が多数存在しております。このことから、慢性疼痛を抱えながら生活している高齢者が多く存在することが推測されます。
老年期は加齢に伴う心身の変調や社会的環境など様々な変化への適応が課題となる時期でもあり、心身の変調によってもたらされる慢性疼痛は、生活の継続を阻害する影響要因となると考えられます。
- 痛みの定義について
- 慢性痛の評価方法が知りたい(質問票)
- 疼痛生活障害評価尺度(PDAS)とは?
- 疼痛生活障害評価尺度の結果の解釈について
慢性痛の評価を実施する上で、様々な疑問を抱えることがあると思います!そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
最近気になっている資格なのですが、2023年より、日本急性期ケア協会が主催する急性期ケア専門士認定試験が実施されるようです。急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。 状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、 医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格となっています!
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痛みの定義
痛みについては、国際疼痛学会により「不快な感覚性および情動的体験で、組織損傷を伴うものと、そのような言葉で表されるものとがある」と定義されています。
急性痛は危険を伝える警告信号としての重要な役割がありますが、慢性痛の場合は警告信号としての役目はなくなり、不要な警告信号として患者を悩ませます。
質問票で痛みを多面的に評価する
痛みは常に主観的であるため、客観的な評価は困難ですが、主観の定量化は可能だと考えられます。痛みの分類として侵害受容性、神経障害性、心理社会的疼痛という分類がありますが、痛みがどれか1つに分類されるわけではなく、3つの因子が様々な割合で併存すると考えられています。
侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛については、薬剤選択において意義がありますが、慢性疼痛において治療における薬剤の役割は必ずしも高くないとされ、むしろ心理社会的因子の評価が重要になると考えられています。
心理社会的因子といっても内容は多岐にわたり、一口で説明できるものではないと考えられます。様々な痛みの存在を捉えるには、痛みそのものだけでなく痛みの多面的な評価が必要であります。そんな中で、開発されたものが自己記入式質問票になります。
心理社会的な痛みの評価の1つにHADSという評価方法がございます。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【HADS(評価法)を徹底解説についての記事はこちらから】
疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS)
こちらの評価法は本邦において、慢性疼痛患者の生活障害を測定するために開発されたものとなっております。慢性疼痛は痛いこと自体が問題となりますが、それに伴い日常生活に影響をきたすことも大きな問題となります。
疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS) は日常の身体運動や移動能力について20問の質問を4段階で回答する問診表です。
評価項目について
慢性疼痛息者の身体運動、移動能力が痛みによってどの程度障害されているかを評価する32項目からなる予備尺度を準備しました。
そこから、まず欠損値の多い項目(性生活をする、仕事または学校に行く)を削除しました。残った30 項目を対象として主因子解による項目分析 を行った結果、合計20項目の尺度が構成されました。
評価用紙

疼痛生活障害評価尺度(PDAS)の評価表をダウンロードできるようにしておきました!評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺
回答方法
4件法により回答してもらいます。
- この行動を行うのに全く困難(支障)はない:0点
- この行動を行うのに少し困難 (苦痛)を感じる:1点
- この行動を行うのにかなり困難 (苦痛)を感じる:2点
- この行動は苦痛が強くて私には行えない:3点
評価方法
合計20項目のうち各項目を0〜3点のいずれかで採点します。最低0点、最高60点となり得点が大きいほど生活障害度が高いということになります。
カットオフ値
10点未満を健常、10点以上であれば慢性疼痛と判定します。
注意点
PDASは身体機能評価に含まれますが、下位尺度に腰を使う活動があるので、部位特異的な身体機能評価の側面を持ちます。したがって、腰痛以外の身体機能評価、例えば肩の痛みによる身体機能評価の場合には結果の解釈に注意が必要になります。
慢性疼痛について
これまでの疫学研究では、中等度以上の痛みNRSが 5以上、VASが 50以上が 3カ月あるいは 6カ月以上続いたものを慢性疼痛とみなして調査したケースが多くなっています。
慢性疼痛に悩まされているのは、全人口の15%以上に上るとされており、その多くが運動器(腰・肩・膝・頚など)に長引く痛みを有していることが明らかにされています。
筋骨格系(運動器)の慢性疼痛について調べた調査では、医療および医療類似行為がこれらの治療にあたっていることが多いが、治療満足度は低く約半数が治療施設を変えるなどをしていることが判明している。
また、運動器の慢性疼痛で整形外科を訪れる患者を精神科医が診察した場合、90%以上のケースで精神科的な病名がつくこともわかっている。すなわち、患者の多くが器質的な問題と精神心理的問題を抱えた状態となり、この長引く痛みに苦しんでいるということになります。
痛みの評価方法となるNRSやVASについて上述させて頂きましたが、このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【完全版:痛みの評価方法についての記事はこちらから】
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まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「疼痛生活障害評価尺度(PDAS)」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
慢性痛というものは非常に厄介な痛みとなります。近年、EIH(疼痛抑制効果)が注目されており、運動器慢性疼痛を運動療法で改善させることができると期待されています。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【EIH(疼痛抑制効果)についてについての記事はこちらから】
参考文献
- 有村達之,小宮山博朗,細井昌子.疼痛生活障害評価尺度の開発.行動療法研究.第23巻,第1号,p7-15.
- 太田晴之,齋藤圭介,原田和宏,京極真.慢性疼痛患者の集学的治療標本における疼痛生活障害評価尺度 (Pain Disability Assessment Scale)の因子構造モデルの検討.日保学誌.Vol.23,No.2,2020,p51-59.